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細野ゼミ 補講2コマ目 [バックナンバー]

「細野さんと一緒に聴こう話そう」安部勇磨編

安部勇磨のセッション苦手意識は克服すべきものなのか? 名曲にまつわるエピソードとともに検討する

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細野晴臣が生み出してきた作品やリスナー遍歴を通じてそのキャリアを改めて掘り下げるべく、さまざまなジャンルについて探求する「細野ゼミ」。2020年10月の始動以来、「アンビエントミュージック」「映画音楽」「ロック」など全10コマにわたってさまざまな音楽を取り上げてきたが、氏の音楽観をより深く学ぶべく今年から“補講”を開講している。

ゼミ生として参加するのは、氏を敬愛してやまない安部勇磨(never young beach)とハマ・オカモト(OKAMOTO'S)という同世代アーティスト2人だ。今回の補講のテーマは「ゼミ生が細野晴臣と一緒に聴きたい&話したい曲」。先陣を切るのはソロ活動も活発な安部だ。近年では映画の劇伴を手がけるなどバンド以外での活躍も目覚ましい彼がピックアップしてきたのは、ブラジル音楽や往年の名曲の数々。和気あいあいとスピーカーから曲を流しながらトークを始めた3人だったが、安部がふと口にした疑問から話は思わぬ方向に脱線していく……。

取材・/ 加藤一陽 題字 / 細野晴臣 イラスト / 死後くん

細野晴臣が好きなブラジル音楽

──以前ハマさんから「細野さんと一緒にいろいろな曲を聴いて、それについて話したい」というリクエストがあったので、それをやってみようという趣向です。初回は安部さん編ということで、選曲していただきました。

安部勇磨 選曲、悩んだんですよね。最近の人の曲か、昔の人のか。まずはエリオ・マテウスさんの「Eu, Réu, Me Condeno」から。ブラジルのミュージシャンです。ヌメッと始まるんだけど、イントロがカッコいい。

エリオ・マテウス「Eu, Réu, Me Condeno」

ハマ・オカモト 絶対セッションで作ってるよね。

細野晴臣 そうだろうね。

安部 え、そういうのわかるんだ?

ハマ たぶん、曲が始まる前からセッションをやっていて、その途中から使ったテイクなんじゃない?

安部 なるほどね。最近ブラジルの音楽が好きでいろいろ探していたら、この曲にたどり着いたの。アレンジが面白いなって思った。お二人はこういう陽気な曲って聴きますか?

細野 陽気……には聞こえないかな(笑)。歌が肝心な曲だね。メロディがブラジルならではだから。

ハマ ブラジル音楽としては常温な感じなのかな。

安部 ええ! 僕はこれを聴いて、胡散臭さや怪しさを感じながらも、ちょっと陽気な印象を受けたんですよね。ちなみに細野さんオススメのブラジル音楽はありますか?

細野 最近の人は知らないんだけど、ジョアン・ジルベルト、ルイス・ボンファのような王道な人たちが好きだね。みんなギターがすごくいいんだ。勉強になるところもあるよ。

ハマ セルジオ・メンデスもブラジルですよね。

細野 そうだね。

安部 僕は最近、こういう曲とかジャズとかを聴き始めたんです。皆さん知識が豊富なので、ほかにもオススメがあれば教えてほしくてチョイスしました。細野さんは1960、70年代にリアルタイムでブラジル音楽を聴いて、どう感じていたんですか?

細野 ボサノバの話をすると、日本にはアストラッド・ジルベルトの大ヒットをきっかけにアメリカ経由で入ってきたんだ。彼女はつい最近亡くなったけどね。あとは、スタン・ゲッツとか。それで、聴きすぎちゃって。さらにその後、日本で“カフェミュージック”っていうとボサノバになっちゃったんだよ。だからちょっと辟易としていたよね。

アストラッド・ジルベルト「Água de Beber」

安部 じゃあ「HoSoNoVa」を出したのは?

細野 サンバが好きだから。ジョアン・ジルベルトはサンバのつもりでやってると思ってる。アストラッドの夫ね。

安部 ボサノバとサンバって何が違うんですかね? リズムですか?

細野 リムショットで“タッツタッツ”ってやるじゃない? あれがボサノバだってことになってるよね。それにサンバは、もう少しスピリチュアルな世界なんだよな。ポルトガルのファドみたいなものだと思うんだよ。“サウダージ”っていう概念とかも含めてね。

安部 細野さんはボサノバよりもサンバのほうが好きなんですか?

細野 サンバのほうが歴史もあるし深いからね。そもそもボサノバって言葉、“ニューウェイブ”っていう意味なんだよ。サンバの流れを汲んだ新しい音楽。それが出てきたのが60年代だね。それにボサノバって、踊りがないじゃない。

ハマ 確かにサンバは踊りとかお祭りとかと結び付きがありますよね。ニューオーリンズの音楽とかとも近いのかなって思って聴いていた。

安部 小ちゃいとき、カフェでかかっている音楽、全部ボサノバみたいになってて。

ハマ 「オシャレな音楽のイメージの権化」みたいな感じはあるよね。

安部 でも最近ちゃんと聴くようになって、そういう世論やイメージ、全然違うじゃんって思ったんです。こんな艶かしいというか、セクシーでカッコいい音楽だったんだって。

ロック系ミュージシャンのセッション流儀

安部 いやあ、こうしてみんなで聴いて話せるの、うれしいな。次はデイヴィッド・T.ウォーカーの「Lovin' You」を聴いてほしいんです。

──ミニー・リパートンの大名曲のカバーですね。素敵なトラックです。

デイヴィッド・T.ウォーカー「Lovin' You」

安部 よく“色気があるフレーズ”とか言うじゃないですか。僕、今までそういうのがわからなかったんです。でもデイヴィッド・T.ウォーカーを聴いて、初めて「こんなに艶かしいギターを弾くんだな」って思えて、えらい感動してしまって。ハマくん、聴いてた?

ハマ うん。このカバーは初めて知ったけど、好きなジャンルの重要人物だから。デイヴィッド・T.ウォーカーのギターってすぐにわかる。奏法として、ああいうのなんて言うんでしょうね。“パタパタパタ”みたいなフレーズがあるじゃないですか。あれはもう専売特許みたいな感じ。こういう系統の曲もあればファンキーな路線もあって、個人的にはそっちのほうが印象が強いけど。

安部 そうか。細野さんはどうですか?

細野 聴いていたよ。80年代。YMOを始める頃で坂本(龍一)くんが大貫妙子の作品とかをやっていた時代、それまでフュージョンをやっていたこともあって、アレンジがデイヴィッド・T.ウォーカーっぽくなるんだよ。だからスタジオに来るギタリストがみんなデイヴィッド・T.ウォーカーみたいな弾き方をする。まあ、みんなの憧れだったよね。ニューヨークのStuffとかもそうだけど、演奏が大好きだった。

ハマ セッションマンという呼び方がたぶん一番合ってる。「まさか!」と思うようなアルバムにもクレジットされているし。

安部 この曲もセッションっぽい? というか、細野さんとかハマくんはセッションは好きですか? 僕はセッションに苦手意識があるんです。

ハマ 何、急に(笑)。でもnever young beachで、デモをもとにみんなで演奏して「こうしたら?」みたいなことはあるでしょ?

安部 それは僕の中ではセッションとは言わないんですよね。セッションってのは、みんなで「とりあえず合わせようぜ!」みたいな。

ハマ ああ、ゼロからね。ヘッドアレンジみたいな話だと、細野さんの過去の作品にはありましたよね。ゼロからじゃないけど、みんなでやっていく中で曲ができていくという。

細野 もともとはジャズの世界でやっていたことなんだよね。で、60年代末くらいからロックの世界にはブルースセッションっていうのがあって。それ、すんごい退屈なんだよ(笑)。やっていて面白くはなかったね。

ハマ セッションって、主にギターの人が楽しいんですよね。ベーシストはそんなに出番もないし、ひたすらバッキングに徹することが多いから。

細野 ギタリストのマイク・ブルームフィールドが、スティーヴン・スティルス、アル・クーパーと「Super Session」っていうアルバムを作ったんだよ。そのあたりからセッションブームが始まったんだ。僕も林立夫や高橋幸宏とやってた。でもそれよりも、当時はコピーが楽しかったんだ。好きな曲がいっぱいあるから、「あの演奏の感じを出せるまでやろう」ってね。それがセッションといえばセッションだったな。

安部 その場でゼロからやるのは?

細野 それをやると結局はブルースになっちゃうんだ、みんな。だってコード進行が決まっているわけでしょ。だから退屈になる。ロックに限ればどんなミュージシャンも同じことを言うと思うよ。ジャズの人たちがやるセッションはまた違うというか、本物だと思うけど。The Bandの「ラスト・ワルツ」って映画あるじゃない? あの特典映像でセッションをしているんだけど、それがもう……退屈なんだよ(笑)。ブルースは8分の6拍子のリズムも多かったんで、それで退屈だったのかも。

安部 僕がセッションが苦手な理由は、仮に細野さん、ハマくんと「音を出そう」ってなったときに、ダサいって思われたらどうしようってなっちゃいそうだから。細野さんが今までセッションしたときに、初見で「コイツ全然わかってねえな」って感じた瞬間はありませんでしたか?

細野 ないない(笑)。自分のことで精一杯だよ。

安部 僕が自意識過剰なだけなのはわかってるの。でも、プレイヤーによって合う、合わないとかはあるでしょう?

ハマ それでいうと、俺がINO hidefumiさんのバンドで鈴木茂さんや林立夫さんと演奏していたときに、立夫さんが「ボサノバ調にしてみよう! はい、ワン! ツー!」っていきなりカウントし出したの(笑)。もう痺れるっていうかさ。俺、当時24歳とかで、「7度が入るよな?」くらいしか知らなくて。でも付いていくしかないじゃん。ジェームス・ブラウンのバンドに入った気持ちになった(笑)。だから、そのジャンルの感じをなんとなくでもわかってるかどうかは大事かもね。「そのフレーズはジャンル感的には合わないよね」というのはあるにはあるから、やっぱりいろいろな曲を聴こうって思ったよ。まあいいトラウマですね。

細野 セッションって楽譜がないから、共通の話法を知ってないとできないのは確かだよね。「8小節やったら転調する」とか。だからロック系はみんなブルースをやり出すんだ。複雑なコードではセッションできないよ。

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安部勇磨、細野晴臣に問う「どうやって曲を作ってるんですか?」

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細野晴臣 Haruomi Hosono _information @hosonoharuomi_

【連載】「#細野ゼミ」補講開講中

今回のテーマは「ゼミ生が細野晴臣と一緒に聴きたい&話したい曲」 ブラジル音楽の話をしていたはずが話はどんどん脱線
安部勇磨くんのセッション苦手意識は克服すべきものなのか検討してみた🎸

https://t.co/gf0hbobijx

#細野晴臣 #安部勇磨 #ハマ・オカモト

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