アーティストの音楽履歴書 第47回 [バックナンバー]
のんのルーツをたどる
田舎町のホールから日比谷野音へ──高橋幸宏に導かれ、忌野清志郎に憧れる“創作あーちすと”の音楽人生
2023年6月15日 19:00 5
アーティストの音楽遍歴を紐解くことで、音楽を探求することの面白さや、アーティストの新たな魅力を浮き彫りにするこの企画。今回は“創作あーちすと”として多岐にわたる分野で活動し、2017年から音楽活動にも注力している
取材・
いたずらっ子の目立ちたがり屋、モー娘。に夢中
活発でいたずら好きな子供でした。同い年のいとこが近所に住んでいて、双子みたいに育ちました。それも、めちゃくちゃ生意気な(笑)。2人でいれば無敵!みたいな感じ。地元は兵庫県の田舎のほうなんですが、山に登ったり、秘密基地を作ったり、田んぼで泥だらけになったりして遊んでましたね。近所の家のまだ青い柿を大量に取ってきちゃって、親にメチャクチャ叱られ、持ち主に謝りに行くこともありました。
初めて意識して音楽を聴いたのは小学校低学年の頃、モーニング娘。でしたね。「LOVEマシーン」「恋愛レボリューション21」「ザ☆ピ~ス!」とか、モー娘。の曲にはお祭り感があって、聴くと楽しい気分になったのを覚えています。あの頃のモー娘。って、今のアイドルとはイメージが違いますよね。衣装もちょっとセクシーだったり、カッコよく見えるところにも憧れたなあ。それで夢中になってカードを集めたり、「なかよし」で連載されていたマンガ(田中利花原作、神崎裕マンガによる「娘。物語 モーニング娘。オフィシャルストーリー」)を読んだりしてました。私は特になっち(
私、夢がころころ変わって、いろんなものになりたかったんですよ。ランウェイを歩くモデル、イラストレーター、お洋服を作る人……「キューティーハニーF」のナースハニーが好きだったときは看護師さんが夢でした。それからテレビで「吉本新喜劇」を観ていた影響で、小学校低学年のときにお笑い芸人を目指したことも。同級生とトリオを組んで、コントを作って友達に見せたりしてました。「ニコラ」のモデルオーディションを受けたのは、いろんなお洋服を着れて楽しそうだと思ったから。モー娘。にハマっても、アイドルになりたいと思ったことはなかったけど、歌ったり踊ったりするのは大好きで。町のカラオケ大会があれば参加して「忍たま乱太郎」のオープニングテーマ「勇気100%」を歌ったりしてました。とにかく人前に立つのが好きな、目立ちたがり屋でしたね。
役場の職員のコレクションでGO!GO!7188コピー「バンド最高!」
当時、モー娘。は好きだったし、
中学生になると「ニコラ」の専属モデルとして活動しながら、バンド活動に夢中でした。とにかくギターが弾きたくて、同級生とバンドを組んでは解散して……というのを繰り返してました。小学校6年生から中学2年生までの間に、たぶん5回くらい。大塚愛さんの曲や、「NANA」(2005年公開の映画)の主題歌だった「GLAMOROUS SKY」、
それで中学2年生のとき、
GO!GO!のユウ(G, Vo /
ライブハウスをすっ飛ばし、日比谷野音で「リライト」掻き鳴らす
高校生になると同時に、安子と一緒に上京しました。その頃から役者業に熱中し始めるんですが、最初の時期は時間があり余っていて。寮の部屋で安子を弾きまくってストレス発散する、みたいな日々でした。GO!GO!もそうだし、アジカン、サンボとかを1日中コピーしてましたね。直接注意されたことはなかったですけど、今考えると近所迷惑だっただろうなと思います。
そんなギター練習の成果を発揮する日が来たんです。2012年に「閃光ライオット」の応援ガールに就任して、日比谷野音のステージでアジカンの「リライト」のフレーズを弾いたんですよ。応援ガールは毎年、オープニングで開会宣言としてギターを「ジャーン」と鳴らすことになっていたんですけど、私はただ鳴らすだけじゃなくて勝手にフレーズを弾いて(笑)。ライブハウスのステージに立ったこともなかったですし、あんなに大勢の人の前でギターを弾いたのは、あれが初めてでした。すごく気持ちよかったですね。
その後は、役者業のほうをやったり、自主制作で映像を撮ったりしていて、ギターや音楽活動をサボっている時期が続きました。でも22か23歳くらいのときかな? 人生で初めて作詞作曲に挑戦したんです。その頃の私は「これからは自分の作ったものを発信していく」と決めていて。やっぱり中学生のときにやっていたバンドの熱が忘れられず、「音楽やるぞ!」という気持ちになっていたし、音楽を始めるんだったら自分の曲がないとダメだなと思ったんですよ。それでできたのが「へーんなのっ」(1stアルバム「スーパーヒーローズ」収録)という曲。メロディと歌詞を同時に、2日くらいでガーッと作った記憶がありますね。
高橋幸宏に切り開かれた音楽人生、忌野清志郎の歌声を研究
2017年、
私は一時期、おうちで
2018年には
明るくユーモラス、そしてぎゅっと心をつかめる人を目指して
私がお芝居や音楽、映像など、いろんなことに情熱を注げるのは、言いたいことがあるから。それを作ることで消化しないと気が済まないところがあって。あと、やっぱり人に見てもらうことがもうめちゃくちゃ好きなんですよね。私は役者よりもバンドで人前に立つという経験を先にしているから、その気持ちよさがずっと忘れられない。舞台でも、観ている人が多ければ多いほど、自分がノッてくるのがわかるんです。自分を観てもらえること、リアクションしてもらえることが、たくさんの人と心を通わせて、つながっているような気分になれる。その感覚が大きいんだと思いますね。
自分が音楽の作り手になってから、リスナーとして聴く音楽は多少変わっているかも。
今後の音楽活動では、もっと自分のスタイルを確立していきたい。自分にエンジンかけるときは、怒りがガソリンになってます。悔しいことやムカついたことを楽曲に込めることが多くて、曲を作るときはだいたい怒ってます。憧れはやっぱり清志郎さん。派手なファッションだったり、唯一無二の歌声だったり……清志郎さんの歌声は明るい声色なんだけど、切なさとか痛みとかをすごく感じるんですよ。そういう、明るくユーモラスに振る舞ってるけど、ぎゅっと心をつかめるような人を目指していきます。
のん
俳優・創作あーちすと。1993年生まれ、兵庫県出身。2016年公開の劇場アニメ「この世界の片隅に」で主人公すずの声を演じ、この作品が「第40回日本アカデミー賞」最優秀アニメーション作品賞を受賞した。2022年2月に自身が脚本、監督、主演を務めた映画「Ribbon」が公開に。同年9月公開の映画「さかなのこ」では「第46回日本アカデミー賞」優秀主演女優賞を受賞。10月、映画「天間荘の三姉妹」で主演を務めた。音楽活動では、2017年に自ら代表を務める音楽レーベル「KAIWA(RE)CORD」を発足。2018年に高橋幸宏、矢野顕子、大友良英、真島昌利らが参加した1stアルバム「スーパーヒーローズ」を発表した。2023年6月には2ndアルバム「PURSUE」をリリースする。
のん「PURSUE TOUR - 最強なんだ!!! -」
2023年7月9日(日)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
2023年7月17日(月・祝)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
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