これのドラムを聞け!5秒だけでもいい Vol. 6 [バックナンバー]
茂木欣一(東京スカパラダイスオーケストラ)の耳がとろける5曲
楽曲をどれだけ宝物にできるかの鍵はドラマーが握ってる!!
2023年6月12日 18:05 4
楽曲のリズムやノリを作り出すうえでの屋台骨として非常に重要なドラムだけど、ひと叩きで楽曲の世界観に引き込むイントロや、サビ前にアクセントを付けるフィルインも聴きどころの1つ。そこで、この連載ではドラマーとして活躍するミュージシャンに、「この部分のドラムをぜひ聴いてほしい!」と思う曲を教えてもらいます。第6回は、“NO BORDER”をテーマに掲げて世界31カ国での公演を果たし、イギリス「Glastonbury Festival」、アメリカ「Coachella Valley Music and Arts Festival」、メキシコ「Vive Latino」などの音楽フェスにも出演している
構成
ドラムフレーズが好きな曲とその理由
The Knack「My Sharona」
幼い頃からラジオでヒットチャートを聴いてきた僕にとって、最初に出会った衝撃のドラムイントロといったら間違いなくこれ! これは発明ですね。
人々に「あっ、あの曲だ」と言わせるのに1秒もかからない。反復するドラムパターンに続いてベース、そしてギターが同じ譜割りでリフを弾いていく流れに、当時小学校6年生の僕はワクワク!
5週連続全米No.1をゲットしたThe Knackのデビュー曲。
この1979年にCheap Trick、Queen、The Policeといった、僕の心を揺さぶる特別なバンドたちに一気に出会ったことによって教室の机を指ドラムで叩きまくる日々が始まるのでした。
The Who「My Generation」
中学3年生の夏に、当時の親友である橋本くんの家で初めて聴いたThe Who。
爆発的衝動が詰まりまくったこの楽曲は、10代前半の僕の心を完璧にとらえました。
キース・ムーンのドラミングなくして、この曲がここまで永遠なものになったであろうか?曲に命を吹き込むってこういうことだなって感じました。のちに映像を観て「ドラム破壊しちゃうのか~!」って、これまたビックリ。
この曲のスタジオ録音は、ぜひオリジナル・モノ・バージョンで聴いてほしい。
大好きなフィルインは1分30秒あたりで繰り出される6連のたたみ込み。
ん~、これは僕にとって決定的一打だったなあ。
The Wailers「I Shot The Sheriff」
ボブ・マーリーの存在を教えてくれたのは、大学に入学してフィッシュマンズを一緒に結成することになった佐藤伸治でした。それまでヒットチャートの音楽とロックを中心に聴いてきた僕にとってスピーカーから流れて来たサウンドはこれまでとはまったく違った未知の匂いでした。
キック、スネア、ハイハット、「えっ、こんな使い方があるのか!」。楽曲がエンディングに向かうラスト30秒あたりのドラムとベースのグルーヴのディテールによ~く耳をすまそう。
緊張感に満ちたとんでもなくカッコいいうねりがここにある。
世界は広い、そのことを痛感した10代の終わりでした。
The Meters「Cissy Strut」
うおーっ! なんて歌うドラムなんだ。
こんなパターン、一体どうやって生み出したんだろう? 20歳過ぎの頃、The J.B.'sやThe M.G.'s、そしてSly & the Family Stoneに夢中になる中、この曲が収録されたThe Metersのベスト盤を、僕は毎日のように聴いていました。リズムがハネたりハネなかったり、アクセントの置き方がユニークだったり。
フィッシュマンズの楽曲「あの娘が眠ってる」(1991年リリースの「Corduroy's Mood」収録)のドラミングは、このジョー“ジガブー”モデリストの演奏に大きく影響を受けたものです。自分のドラミングに悩んだりするときは、必ずと言っていいほど彼らの音楽を聴いてリフレッシュしています。
カエターノ・ヴェローゾ「Os Passistas」
僕の最大の憧れであるブラジルのアーティスト、カエターノ・ヴェローゾ。
彼が90年代にリリースした「Tropicalia 2」と「Livro」は最高の芸術作品! 僕のバイブルです。
この楽曲は、さまざまなパーカッションが織りなすあまりにも美しいアンサンブルに耳がとろけます。いつかはこんな響きが生み出されるブラジルに行きたいと思いを募らせ、ついに2015年、初めてリオの地に降り立ったときの感動を、僕はきっと一生忘れないでしょう。
街を颯爽と歩く人たち、広場でサンバを踊る人たち、海岸沿いに吹いてる風の匂い……それらすべてがこの曲が僕にもたらしたブラジルのイメージをまったく裏切らないものだったのです!
自身でドラムフレーズをプレイする際に意識していること
「そのフレーズを口ずさめるかどうか」というのは常に大切にしています。
シンプルで強く、またそのフレーズが楽曲に対して必然性があるものになっているかどうか。
叩いていて快感かどうか、リスナーとして聴いていて快感かどうか。
テンポ設定もメチャメチャ大事ですね。
楽曲をどれだけ宝物にできるかの鍵はドラマーが握ってる!!
自身のプレイスタイルに影響を与えたドラマー
昨年からMeinl(マイネル)のシンバルを使用させてもらっているのですが、マイネルのTwitterで紹介されているドラマーたちの試奏動画がとても興味深いです。
その中で登場するイタリア人ドラマー、Gianluca Pelleritoの演奏がもの凄い!!
僕と同じオープンハンドのプレイスタイルなんだけど、テクニックもグルーヴも半端なく異次元なので、ぜひご覧になってみてください。
茂木欣一
1967年生まれ。大学在学中の1987年に佐藤伸治、小嶋謙介とフィッシュマンズを結成。1991年にメジャーデビューを果たし、「空中キャンプ」「LONG SEASON」「宇宙 日本 世田谷」などを発表する。1999年に佐藤が急逝したためフィッシュマンズの活動は停止を余儀なくされ、その後、2001年に東京スカパラダイスオーケストラに正式加入。2005年にフィッシュマンズの活動を再開させたほか、2010年に加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ)、柏原譲(フィッシュマンズ / Polaris)とともにSo many tearsを結成したり、2018年にシシド・カフカ主宰でスタートしたリズムプロジェクトel tempoに参加したりと精力的に活動している。2023年3月には原広明、tatsu(LA-PPISCH)、大森はじめ(東京スカパラダイスオーケストラ)、WAY WAVEとTHE GOOD KIDSを結成した。
茂木欣一 (@kin_drums) / Twitter
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インタビュー等で The Knack と The Meters の話をしているのは初めてみた気がする