アイドルのセカンドキャリアを考える 第5回 [バックナンバー]
十束おとはは自分の“やってみたい”を叶えてまっすぐに進む(聞き手:レナ)
会社に勤めながらMC業などでも活躍……自分を否定せず、謙遜せず、やりたいことを紙に書き出そう
2023年3月27日 16:30 76
フィロのス卒業の理由、メンバーの反応
レナ フィロのスを卒業するきっかけはなんだったんですか?
十束 2019年に体調を崩して、万全な状態でパフォーマンスができないため1週間お休みをいただいたことがあるんです。メンバーが全力でアイドル活動をやっている中、自分は体調を崩して100%で向き合えなくなってしまった。だからきちんと戦力でいられるうちに卒業したいと思ったんです。ただ当時は、メジャーデビューが決まってみんなでがんばっていこうという時期だったので3年間は続けようと。
レナ そうだったんですね。2019年だと直後にコロナ禍が始まりましたけど、当時はどのように過ごしていましたか?
十束 やっぱりアイドル活動の何が一番楽しかったかと言うと、私はファンの方にライブを観てもらって特典会で感想を教えてもらう一連の流れがすごく好きだったんですね。それができなくなったことで生きがいがなくなった感覚にはなりました。でも、コロナ禍をきっかけにYouTubeを始めてみたり、別の方向にシフトチェンジしてがんばろうとも思えたので、嫌なことばかりではなかったです。
レナ 私は「自分がまだアイドルを続けていたらコロナ禍はどうしていたんだろう?」と考えることがあって。自分なら病んでフェードアウトしていたと思うんです。先が見えない状況で新しいことに挑戦するってすごいですよ。
十束 オンライン特典会や配信ライブができるようになったり、レーベルの方々もいろんな施策を提案してくださったりして。メンバーともリモートでダンスのレッスンをしていたので、あまり寂しい気持ちにはならなかったんです。でも、ファンの人に会えないのはやっぱりつらかったですね。
レナ 2019年に辞めようと思ったときはメンバーに相談したんですか?
十束 いえ……メンバーには相談できなかったです。
レナ それは仲がよかったからこそ?
十束 はい。私自身も本当にそう思っていたんですけど、「みんなでずっと一緒にやっていこう」というムードがあって、自分が抜けてしまうことが申し訳なくて。でも、具合が悪くなってライブの途中でステージからはけちゃったり、メンバーに迷惑をかけている自覚があったので、それ以上は迷惑をかけたくないなと。スタッフさんには事前に相談していたんですけど、メンバーに気持ちを伝えたのは完全に辞める決心をしたあとでしたね。
レナ どんな反応でした?
十束 びっくりしていました。「なんで言ってくれなかったの?」というのが素直な気持ちだと思うんですけど、その場で
レナ そういう場面できちんと会話ができる関係性は素敵です。
十束 みんな大人だからよかったのかもしれません。10代だったら殴り合いの喧嘩になってたかも(笑)。
レナ そんな(笑)。
十束 勝手に辞めるわけだから喧嘩になってもおかしくないじゃないですか(笑)。でも、みんなが大人で優しかったので、無事に円満に卒業することができました(参照:ベスト・フォー、最後のぶつかり稽古!フィロのス十束おとは卒業公演で新メンバーに愛の継承)。メンバーには本当に感謝しています。
今の自分は何ができるんだろう?
レナ 十束さんは現在、ゲーマータレントやMC、裏方のお仕事をしていますけど、それらのセカンドキャリアはどのように志したんですか?
十束 資格がないと就けないお仕事もあるじゃないですか。アイドル卒業後に何をしたいのか考えたときに、資格が必要なお仕事は今の自分にはできないと一旦選択肢から外したんです。それで「今の自分は何ができるんだろう?」と考えたら、ずっと大好きなゲームに携わるお仕事が一番向いているし、挑戦してみたいことだと気付いた。ありがたいことに同じ時期にゲーム関連の会社の方が声をかけてくださって、その方の下でがんばってみたいと思ったんです。
レナ 以前、吉田豪さんの番組「豪の部屋」に出演した際に、動画編集の勉強をしているなどアイドル卒業後の人生を意識した発言をしていましたよね。
十束 あの頃には卒業すると決めていたんです。グループのことを考えて2、3年後に卒業しようとは思っていたけど、それと当時にアイドルとは別軸で自分自身の人生設計を考えていて。長い間アイドルを続けている人はリスペクトに値しますし、素晴らしいと思うけど、そういう人って本当にひと握りじゃないですか。特に女性アイドルは結婚や出産の問題もありますし。今は両立している方もいらっしゃいますけど、アイドルを辞めるきっかけの1つになるとは思うんです。いざ、自分も卒業を意識し始めたときに「自分は辞めたらどんな仕事をするんだろう?」「足りない能力はなんだろう?」といろいろ考えるようになって。
レナ 十束さんは現役時代にもゲーム関連のお仕事をされていましたけど、当時は特にセカンドキャリアは意識していなかった?
十束 はい。ただ好きすぎて言葉に出していたらお仕事が舞い込んできて、対応しているうちにお仕事が増えていったんです(笑)。実際にお仕事をさせていただいたときに、すごくエンタメ性が高いし、楽しくてやりがいがあると感じて。世界に向けて発信できるコンテンツですし、もっと大きくなる業界だと感じたので、自分も深く関わりたいとは思っていました。
レナ お話を聞いていると、十束さんは女の子の人生で経験しておきたいことをしっかり押さえてる感じがする。大学に進学してきちんと就職して、アイドルのようなキラキラした世界も経験しつつ、今は新しくやりがいが感じられるお仕事をされていて。私もそんな人生を送りたかった(笑)。
十束 でも学生時代はすごく陰キャでしたよ?(笑)
レナ 豪さんのアンテナに引っかかるアイドルはどことなく暗いイメージがあるんだけど(笑)、十束さんは暗いけどダーク感がないというか。自己肯定感をしっかり持ち合わせているような感じがするんです。
十束 学生時代、卒業アルバムにコメントを書いてもらうじゃないですか。クラスの明るい女の子に「十束さんはオタクだけど明るい」と書いてもらったことはあります(笑)。
レナ オタクの中の陽キャというかね(笑)。その性格が人生の先を見ながら前向きに歩んでいける秘訣なのかなと思いました。十束さんは自分の中で目標を立てて、その目標に向けてしっかりと努力を積み重ねてる。自信だったり自己肯定感だったりがないと、途中であきらめてしまったりするのかなと思うんです。なんだろう……育ちのよさなのかな?
十束 確かに褒められて育ってきて、親からは、ごはんを食べただけでも「偉い」、どの洋服を着ても「かわいい」と言われていたので自己肯定感は高いのかもしれないです(笑)。でも、学生時代は本当にクラスに馴染めなくて、暗い青春時代を送っていたので順風満帆ではないですね。ただ、「自分は最高だ」という気持ちは常に持っています。
レナ それはすごい(笑)。
十束 学校が小中高どれも肌に合わなくて。受け入れてもらえない悲しさみたいなものを経験した結果、自分で自分を愛すればすべてが解決すると気付いたんです。それは確かに親からもらった愛情がベースにあったからかもしれないですね。中学受験をしたのも小学校に馴染めなかったからで、「この子たちと同じ中学に行くのはいやだ!」と思ったのがきっかけですから(笑)。
レナ (笑)。その頃から自分の道は自分で決める力があったんですね。
十束 自分で自分を励ましながら生きています(笑)。
十束おとはに感じるゲーム愛
吉田光雄 @WORLDJAPAN
十束 相談できる人がいなかったらDM開放してるので連絡ください。本当に相談に乗ります!
レナ すごい! 女版・吉田豪みたいになってる!
十束 豪さんよりは明るいアドバイスができると思います(笑)。
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