「音楽ナタリー編集部が振り返る、2022年のライブ」

音楽ナタリー編集部が振り返る、2022年のライブ

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エモさを語ると野暮になる、安全地帯初ライブで感じた熱視線

文 / 望月哲

安全地帯「40th ANNIVERSARY CONCERT "Just Keep Going!"」2022年11月30日 東京ガーデンシアター

すごいものを観てしまった。

さる11月30日に東京・有明の東京ガーデンシアターで行われた安全地帯40周年ツアーフィナーレ「40th ANNIVERSARY CONCERT "Just Keep Going!"」。僕にとって初の安全地帯ライブ体験だ。初めて生で聴く玉置浩二の歌声は言葉にできないほど、ただただ素晴らしかった。

「ワインレッドの心」「真夜中すぎの恋」「恋の予感」「熱視線」「じれったい」etc……子供の頃から聴き慣れている名曲の数々に心がときめく。決して懐メロ的な感傷ではなく、それらの楽曲は生々しい色気を伴って心の奥深くに迫ってきた。現在進行形のアダルトオリエンテッドロック。ツアータイトル通り“Just Keep Going!”だ。40年以上にわたり活動を共にしてきた安全地帯のメンバーと、武嶋聡(Sax, Flute)やゴンドウトモヒコ(Euphonium, Flugelhorn)といった手練れぞろいのサポート陣、そして3人組女性コーラス隊AMAZONSが玉置の歌声をガッチリと支える。ツアーのサウンドプロデューサーはポルノグラフィティ、aiko、あいみょん、石崎ひゅーいといった、そうそうたるアーティストのプロデュースやアレンジを手がけるトオミヨウ。まさに盤石なんである。

「今、玉置浩二と目が合ってる?」──明らかに錯覚でしかないのだが、ライブの間、玉置の爆レス(熱視線)を猛烈に感じるような瞬間が幾度となくあった。

「もしかして俺に向かって歌ってる?」──ここまでくると、もはや妄想でしかないのだが、初めて体感した玉置の生の歌声は聴き手にそこまで思わせてしまうくらいの圧倒的な魅力と魔力に満ちあふれていた。

虚空を切なげに見つめながら唇を震わせて歌う玉置。昂ぶる感情を破裂させるがごとく短くシャウトする玉置。観客とのディスタンスを1mmでも縮めんばかりに狂おしい表情で客席に手を伸ばす玉置……かと思えば安全地帯のメンバーとさりげなく戯れるお茶目な玉置もいて。そんな玉置浩二の一挙手一投足に会場全体が恋に落ちていく感覚と言うか。1人1人が安全地帯の楽曲に出てくる「あなた(貴女 / 貴方)」になれる恍惚のひととき。間違いなく今まで味わったことのないライブ体験だった。

人は本当にすごいものや大好きなことを説明するとき、とめどなく言葉があふれてしまう。ヲタが推しの魅力を説明するとき、ついつい早口になってしまうように。そして、そんなとき言葉は悲しいくらい無力だ。説明すればするほど言葉が上滑りしていく、あのもどかしい感覚……じれったい。かつて、とある日本酒のCMで中尾彬が「うまさを語ると野暮になる」 と言っていたが、同じ意味で、エモさも語ると野暮になると思う。「エモい」「ヤバい」「カワイイ」「尊い」……時代ごとに生まれるそうした言葉の数々には、言葉で表現しえない無数のエモーションが蠢いている。

そしてライブ終了後、安全地帯のメンバーたちと肩を組みステージから去っていく玉置の後ろ姿を見つめながら、僕の頭に浮かんでいたのはこんな言葉だった。

玉置浩二、神ってる。

まるで夢みたいな「世界で一番綺麗なBiSH」、解散日の発表に涙止まらず

文 / 田中和宏

BiSH「世界で一番綺麗なBiSH」2022年12月22日 国立代々木競技場第一体育館

BiSHは12月22日に東京・国立代々木競技場第一体育館で行ったワンマンライブ「世界で一番綺麗なBiSH」のアンコールにおいて、“2023年6月29日の東京・東京ドーム公演をもって解散すること”を発表しました。セントチヒロ・チッチさんがアンコールで放った「私たちBiSHには結成した当初から大きな夢がありました。私たちBiSHは夢だった東京ドームで……6月29日に解散します」という言葉には自然と涙があふれました。人目もはばからず、大粒の涙がボロボロと出るなんて、そう多くは経験したことがありません。

さかのぼることほぼ1年前。2021年12月24日に東京・中野heavysick ZEROで行われたBiSHの早朝ライブ「THiS is FOR BiSH」では、チッチさんが「私たちBiSHは、2023年で解散します」と発表。その模様はYouTubeで生中継され、7万人を超える視聴者が解散発表をリアルタイムで見届けました(参照:BiSH、2023年で解散することを発表)。しかし、その際は「2023年をもって解散」という情報しかなく、解散が1月1日なのか、はたまた12月31日なのか、わからないままでした。

「世界で一番綺麗なBiSH」はBiSHの解散日が発表された日というだけでも、大きな節目のライブになったと思います。しかしそれ以上に、この日のライブそのものが非常に素晴らしい内容でした。“世界で一番綺麗なBiSH”が何を意味しているかは開演するまでわからなかったのですが、イントロダクションの演奏が始まって緞帳が上がったときにわかりました。ステージに立つBiSHの後ろにいたのは、バックバンドのメンバーと大所帯のフルオーケストラ。過去にもストリングス隊が参加したBiSHのライブはあったけれど(2018年12月に千葉・幕張メッセ9~11ホールで開催されたワンマンライブ「THE NUDE」)、全曲をフルオーケストラとともに届けるライブを実現させたアーティストは数えるほどしかいないのではないでしょうか。ダンスボーカルグループやアイドルの枠で考えるとなかなか類を見ない規模だと思います。個人的な感想で恐縮ながら、「世界で一番綺麗なBiSH」には、Metallicaが1999年にオーケストラと共演した際のライブアルバム「S&M(Symphony & METALLICA)」における「Master of Puppets」(特にイントロ)に近い高揚感を感じました。

BiSH with オーケストラ+バンド編成の「世界で一番綺麗なBiSH」ではバラード調にアレンジされた楽曲もありましたが、基本的にはポップな曲も激しい曲も原曲にオーケストラをプラスするイメージ。全曲においてオリジナルの持つグッドメロディな部分やキャッチーな部分、エモーショナルな部分がより胸に響くような、そんな広がりのある素晴らしいアレンジでした。「遂に死」「MONSTERS」といった激しい曲とオーケストラの融合は、新鮮そのもの。過激な歌詞の「NON TiE-UP」はスタジオ音源自体がオーケストラをイメージした音像だったので、生のオーケストラが原曲を“完全再現”するというかなり豪華な仕立てだったと思います。BiSHが繰り広げる壮大なステージに、1曲終わるごとに「おおー」という感動の声、どよめきが漏れるフロアの様子も印象的でした。アンコールの「beautifulさ」ではオーケストラの皆さんも楽しそうに動いていて、夢みたいな光景が広がっていました。解散日を発表したあとだったこともあって、涙であまりはっきり見えていませんでしたが、そんなシチュエーションも含めて夢みたいな時間でした。

初めてBiSHのステージを観たのは2017年6月。代々木公園の野外ステージで行われたミニアルバム「GiANT KiLLERS」のリリース記念フリーライブで、私が音楽ナタリー編集部におけるWACK所属グループの番記者的な立ち位置になったばかりの頃でした(参照:BiSH、野外で「GiANT KiLLERS」全曲披露&ゲテモノツアー行きの2人が決定)。あれから5年半の間に代々木公園野外ステージの近くにあるNHKホールでワンマンライブをしたときもそうですし、代々木第一体育館で3回もライブをしたという事実にも深い感慨を覚えます。2021年に「NHK紅白歌合戦」に出場したときは、「BiSHがついに紅白に出たぞ……!」と一介のWACK担当記者ながら誇らしい気持ちになりました。キャパ80人の小さなライブハウスから始まったBiSH。彼女たちが有終の美を飾る場所は、ひときわビッグな東京ドームです。「BiSH解散」が現実味を帯びてきたことには悲しさもありますが、“最高”を更新し続けてきたBiSHが最後に見せる最高な景色を楽しみにしていたいと思います。

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吉田山田の山田義孝 @yamadayositaka

来年も沢山ライブします✨ https://t.co/EfcxLgzHPM

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