土岐麻子の「大人の沼」 ~私たちがハマるK-POP~ Vol.12(前編) [バックナンバー]
「&AUDITION」で投げかけた「音楽、好き?」の真意
Soma Genda(HYBE LABELS JAPANサウンドディレクター)と語る“指導者”側の思い
2022年10月7日 17:30 51
シンガー
BTS、嵐、Def Techなどさまざまなアーティストの楽曲制作に携わっているSoma Genda。彼は9月3日にファイナルラウンドを終えたHYBE LABELS JAPANのグローバルデビュープロジェクトのオーディション番組「&AUDITION - The Howling -」(以下「&AUDITION」)に出演し、参加者のボーカルトレーニングやミッションの講評などを担当していた。今回はそんなSoma Gendaと土岐が、「&AUDITION」の舞台裏やそこから誕生した新たなグローバルグループ・
2人は2021年11月に土岐がリリースしたアルバム「Twilight」にSoma Gendaが2曲楽曲提供をするところから交流が始まったが、リモートで制作が行われたため、実はリアルでは今回の対談が初対面。前編ではまず、出会った際のお互いの印象などからトークが弾んでいった。
取材・
2人の出会い、気持ちを上げてくれたレコーディング
土岐麻子 対面ではやっとやっとの“はじめまして”ですね。改めて、アルバム「Twilight」に「travellers」と「birthday song」という素敵な曲を2曲も作っていただいて、ありがとうございました(参照:土岐麻子「Twilight」インタビュー)。
Soma Genda こちらこそ、お話をいただく前から土岐さんの作品は普通に聴いていたので、携われてとてもうれしかったです。楽曲の世界観的に自分とは遠い存在だと勝手に感じていたのですが、「Twilight」のディレクターさんは僕もとてもお世話になっている方で、声をかけていただいて「ぜひ」という感じでした。
土岐 ディレクターから「すごくいい作家がいるから」と推薦してもらったんですよ。アルバムの制作が動き始めた、2020年の暮れくらいかな。そしたらすぐに、Somaさんがアルバムの「夕暮れ」というコンセプトに合わせて1曲仕上げてくださったのが送られてきて。びっくりしました。
Soma 「travellers」ですね。あの曲は佐々木萌さん(エドガー・サリヴァン / snowy)とのコライトなんですけど、ちょうどそのときエドガー・サリヴァンが活動休止して、彼女がちょっと落ち込んでいた時期だったんです。お話をいただいたときにすぐ「萌さんと書いたらいい曲になりそう」と思って声をかけて、すごくいい曲ができましたね。「巡り合わせだな」と思いました。「birthday song」のほうは土岐さんから曲のイメージをいただいて、打ち合わせしながら一緒に作っていきましたね。
土岐 最初はSomaさんが制作で韓国に滞在していたときに、Zoomで打ち合わせをしましたよね。
Soma そうそう。僕は渡韓直後で、隔離期間中でした(笑)。
土岐 あ、そうでした! 「どんな部屋で過ごしてるのかな。心配だね」ってスタッフと話してましたよ。そして曲ができあがってからは、スタジオ同士をリモートでつないで、ディレクションしてもらいながらレコーディングしました。
──レコーディングのときに印象的だったことは何かありますか?
土岐 歌を録るとき、ヘッドフォンに直接Somaさんの声を返してもらってディレクションしていただいたんですけど、タイムラグを感じずに鮮明な音でやりとりできたし、Somaさんがめちゃくちゃ細かく丁寧なディレクションをくれたので、すごくやりやすかったですね。
Soma 本当ですか? 僕はあのとき実は手応えがなかったんです。僕のほうは1人だし、遠隔で土岐さんのスタジオの空気がわからなかったので、「大丈夫かな?」ってずっと思っていました。
土岐 「この人が今私の歌を聴いてくれてるな」っていう安心感を持てるようなディレクションをしてくれましたよ。ボーカルブースって孤独感のある場所で、トークバックで返ってくるディレクションの声が命綱になるんですけど、Somaさんのディレクションはすごく気持ちを上げてくれる感覚がありました。
Soma よかったです。土岐さんの歌について僕が言えることなんてないと思うんですけど、曲の世界観をどう作っていくかを相談させていただきながら録らせてもらいました。
土岐 「travellers」はめっちゃ難しい曲でしたね。体になかなか浸透しないような変拍子がベースになっていて。
Soma 苦労されている感じは伝わってきました。変拍子だけど変拍子感のない曲にしたかったので、レコーディングでもそこを念頭に置いてディレクションさせてもらったと思います。
土岐 そう、聴いていると複雑な変拍子には聞こえないんですよね。そこがいい曲だなって。でも歌う側としては難しくて、拍を数えてる感じを出さずに歌えるようにかなりがんばりました。
Soma 萌さんにドラフトを上げてもらった段階では、もっと複雑な変拍子だったんですよ(笑)。「これはさすがに難しいな」と思い、ちょっとずつ構成やメロディを作り直していきました。
土岐 すごく今っぽいアレンジで。変拍子もエッセンスになってるなと思いました。
Soma それが不思議な世界観を生み出していますよね。一筋縄ではいかない感じに作れた実感があって、ここ数年で作った曲の中ではけっこうお気に入りです。
土岐 うれしい! 私も気に入っています。ただ、ライブでは難しすぎてなかなか歌えなくて(笑)。この前萌ちゃんが観に来てくれたライブでは、ピアノを工夫してもらい、がんばって歌いました。
韓国語で「領収書ください」しか話せないって言うから……
土岐 Somaさんは「&AUDITION」で多くの方に知られる存在になったと思うんですけど、まだミステリアスというか、どんな方なのか知らない人もたくさんいるだろうなって。これまでどんな道を歩んできたのか、読者の方に向けて教えていただいてもいいですか?
Soma 6歳から歌とピアノをやっていました。ミュージカルを18歳くらいまで習っていて。なので歌に関しては、6歳からディレクションを受けていたんです(笑)。
土岐 だからディレクションが上手なんだ!
Soma (笑)。最初はギタリストになりたくて、東京に出てきました。いろんな人に話をして、SHŌGUNの芳野藤丸さんに弟子入りさせてもらって。自分のバンドでギターボーカルを担当しつつ、アーティストへの曲提供やプロデュースをするようになり、だんだんそっちの活動がメインになってきた感じですね。
土岐 K-POPに携わるようになったのはどんなきっかけからなんですか?
Soma 「K-POPをやりたい」と特別に意識をしたことはなくて、コンペティションに参加していたら自然とそうなっていきました。BTSさんの「Crystal Snow」(2017年リリース)を書かせてもらったことがいろんなことのきっかけになりましたね。そこからHYBEとの縁が始まって、今回「&AUDITION」に参加させてもらうことになりましたし。
土岐 それでここしばらくは長らく韓国に滞在されていたんですね。
Soma そうですね。今も拠点は日本ですが、制作期間は行ったり来たりしています。
土岐 リモートでお話しさせてもらっていた間も、とにかくお忙しそうだなあと思っていました。もう韓国には慣れましたか? アルバムの制作期間にお話ししたときは「友達がいない」「ごはんを1人で食べに行ってる」って言うもんだから、思わず向こうにいる私の知人を紹介しましたよね(笑)。
Soma 本当に助かりました! 土岐さんにこうしてお会いするより前に、土岐さんのお友達と何十回も飲みに行っていたという(笑)。その方のおかげで、今は土岐さんよりもだいぶ韓国に詳しくなりましたね。
土岐 韓国語は少し身につきました? 以前は「領収書ください」しか言えないっておっしゃってて(笑)。覚える気持ちもあんまりなさそうだったから、ちょっと心配してたんですけど。
Soma いやー、まだまだです(笑)。でも3カ月くらい語学学校に通いましたね。
指導者でありつつチームの一員という関係性
──「&AUDITION」は、ENHYPENを輩出した超大型プロジェクト「I-LAND」に参加したメンバーであるKさん、NICHOLASさん、EJさん、TAKIさんの“デビュー組”4人と、練習生11人の計15人がデビューを目指すというプロジェクトで、そこから選ばれた9人が&TEAMとして12月にデビューすることが決まっています(参照:ENHYPENも駆けつけた!「&AUDITION」終えた&TEAM「今日は“15人”が世界で一番輝いた日」)。Somaさんは「&AUDITION」でプロデューサーとして15人の指導と評価にあたっていらっしゃいました。
土岐 指導者の立場に就くのは「&AUDITION」が初めてですよね。初めて15人と会ったときはどう感じましたか?
Soma 僕も彼らもお互い「どんな人だろう?」と緊張していましたね(笑)。でもすぐに打ち解けました。指導者的な立場は初めてですけど、若いアーティストさんと接する機会も多いので、わりと自然に馴染めたとは思います。もちろんオーディションなので、みんなプレッシャーを感じているような印象はありましたけどね。
土岐 Somaさんの立ち位置としては指導者でもあり評価をする立場でもあり……なかなか過酷でしたよね。
Soma そうなんです。自分で育てて自分で評価する、という。心苦しい部分もありました。
土岐 きっと複雑な気持ちなんだろうな、と思いつつ観ていました。でも第7話で、メンバーが輪になっている中にSomaさんも入ってディレクションしていた姿が印象的で。よくあるような、ピアノの横に生徒を立たせて……という感じじゃないその距離感が、先生でもありつつチームの一員みたいだったというか。上下関係ではなく、引っ張っていくリーダーのような関係性のように思えました。
Soma 土岐さんがご覧になった映像は、ライブの練習をしていたときのものですね。15人の中には、そもそも人の前でライブをした経験がないメンバーもたくさんいました。なので「ライブに出るときはこうするんだよ」とバンドマスターみたいな役割で教えて、同じステージを作る感覚で進めていました。
土岐 あの1シーンだけで信頼関係が伝わってきました。ちなみに15人からはなんと呼ばれてたんですか?
Soma みんな「Somaさん」でしたね。
土岐 15人の中には日本語を母語としない方もいましたよね。日本語が得意ではない人にはどうやって指導していたんですか?
Soma 英語でコミュニケーションを取るか、覚えたての韓国語でがんばって伝えていました。あとは翻訳アプリに打ち込んだテキストを見せたり、僕が歌ったお手本をミラーリングしてもらったりもしました。
土岐 確かにSomaさんの歌をメンバーが真似するシーンもありましたね。歌となると、実際はあんまり言葉の壁はないのかもしれないですね。
Soma ええ。意外となかったです。
土岐 ボーカルディレクションのシーンを見ていて思ったんですが、皆さんの中にR&Bをベーシックとした歌い方が前提としてあるのかなって。K-POP全体がわりとそうなのかもしれないですけど。
Soma K-POPの根底にはアフリカンアメリカンにルーツを持つ音楽の雰囲気がありますよね。参加者もみんなそういう感じが好きだったから、その雰囲気が自然と歌唱に出ていたのかもしれないです。みんな若くて音楽をイチから始めたようなメンバーも多かったのですが、トレーニングを重ねてきたメンバーたちは、グローバルに通用するアーティストを目指してきているので、早い段階からR&Bの楽曲に馴染んでいると思います。
15人とは線を引いていた
🅦🅔 & 🅛🅤🅝🅔́ @lunewelune
懐かしいインタビューを読み返してる
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