若旦那とこひろ。

若旦那と大沢伸一はなぜカフェ経営を始めたのか?ヴィーガンを救う「THE NUTS EXCHANGE」

元バニビ・リサも携わるおいしいヴィーガンメニューの秘密と店作りのこだわり

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代々木八幡駅と代々木公園駅のほど近くに位置するTHE NUTS EXCHANGE(ザ・ナッツエクスチェンジ)は、コーヒー豆専門店・TORIBA COFFEEのオーナーである鳥羽伸博氏、MONDO GROSSOこと大沢伸一、本名の新羅慎二としてソロ活動も行う湘南乃風若旦那の3者が共同経営するヴィーガンカフェ。ゼロウェイストを目指すこちらの店舗では、店内の石臼で挽いたマカダミアナッツミルクをはじめ、厳選された素材で作ったこだわりのヴィーガンメニューが提供されている。

音楽ナタリーでは、オーナーの1人である若旦那に取材を行い、出店に至った経緯やメニューへのこだわり、店舗で取り組む環境問題へのアクションなど、本人から話を聞いた。また店長を務める元バニラビーンズのリサにも、THE NUTS EXCHANGEに関わることになった理由やヴィーガンメニューに対する思いなどを明かしてもらった。

取材・/ 清本千尋 撮影 / YURIE PEPE

ナッツミルクとの出会い

THE NUTS EXCHANGEの店先にて。

THE NUTS EXCHANGEの店先にて。

カフェラテが好きでよく飲んでいたという若旦那。ある日、体の中に結石ができてしまい、その原因が乳製品であることが判明。乳製品の代用品として、マカダミアナッツからできたナッツミルクの存在を知ったという。

マカダミアナッツミルク(ホット)

マカダミアナッツミルク(ホット)

「ナッツミルクは輸入物がほとんど。アメリカやオーストラリアでの需要が高く、日本では品薄な時期もよくあるんです。自分がナッツミルクを知ったときはちょうどそういう時期だったんですが、友人の大沢伸一さんの家に遊びに行ったときにたまたま手作りのナッツミルクを勧めてもらい、飲んだら想像以上においしかった。大沢さんはちょうどTORIBA COFFEEの鳥羽さんと一緒にナッツミルクを提供するお店を出そうとしていたところで、そこに僕も誘ってもらって、この3人でお店を出すことになったんです」と、若旦那はTHE NUTS EXCHANGEのメンバーが集った経緯を教えてくれた。

マカダミアナッツミルクの副産物でできたフードが人気メニューに

こだわりの詰まったメニュー。価格は取材当時のもの。

こだわりの詰まったメニュー。価格は取材当時のもの。

THE NUTS EXCHANGEで提供されているナッツミルクは店内で石臼を使って作られている。市場に流通しているナッツミルクはマカダミアナッツだけではなく、アーモンドやオーツ麦といったほかの原料や甘味料、添加物などを加えて生産されるが、THE NUTS EXCHANGEのナッツミルクはマカダミアナッツ100%。挽きたてはマカダミアナッツ特有の青臭さがあり、1日ほど寝かせることでエグみが抜けまろやかな味わいになるという。実際にTHE NUTS EXCHANGEで提供されているナッツミルクを飲んでみると、マカダミアナッツの香ばしい風味とほんのりとした甘みが口の中に広がった。植物性のミルクらしい軽い口当たりで飲みやすく、若旦那が言う通り、アイスでもホットでも青臭さは感じない。このナッツミルクを使ったドリンクも豊富で、カプチーノならぬ“マカデチーノ”やフルーツと組み合わせたマカダバナナ、マカダマンゴー、マカダベリーもTHE NUTS EXCHANGEでしか飲めないスペシャルメニューだ。

人気のグラノーラ。ミルクに浸さずスナック感覚で食べるのもオススメ。

人気のグラノーラ。ミルクに浸さずスナック感覚で食べるのもオススメ。

クッキーとミックスナッツ。どちらもさまざまな種類があり思わず迷ってしまう。

クッキーとミックスナッツ。どちらもさまざまな種類があり思わず迷ってしまう。

レジ下のショーケースにはデリやケーキ、カウンターには手作りのグラノーラやクッキー、フレーバー付きのマカダミアナッツが並ぶ。グラノーラやクッキーの主原料は、ナッツミルクの副産物であるマカダミアナッツの絞りかす。ナッツミルクを絞らないと発生しない絞りかすだが、ナッツミルクの需要に対して副産物からできるフードの需要が上回ってしまうこともあるという。「お店を出すときにゴミをなるべく出さないようにしようと決めていたんです。でも、メイン商品であるマカダミアナッツミルクを絞るときにけっこうな量の絞りかすができてしまう。これをどうするのかが課題でした。その問題を解消してくれたのがこのクッキーとグラノーラ。普通のヴィーガンショップで、この価格でこのクオリティのナッツクッキーとグラノーラはまず出せないと思います。正直、価格設定を間違えたと思うくらい(笑)」と若旦那は笑う。

ヴィーガンじゃなくても楽しめるヴィーガン料理

人気のエックマフィン。一見小ぶりに見えるが、1つで大満足の食べ応えだ。

人気のエックマフィン。一見小ぶりに見えるが、1つで大満足の食べ応えだ。

人気メニューの“エックマフィン”はマカダミアナッツの絞りかすを使用したメニューではないが、プラントソーセージとゆばでできた卵とチーズというヴィーガン仕様のマフィンサンドで、普段ヴィーガンメニューを食べない人でも大満足の食べ応えと味わいにもかかわらず700円という破格の値段で販売されている。毎週末に青山の国連大学前で開催されている青山ファーマーズマーケットで食材を仕入れて店内で手作りされているデリも100gあたり350円とお手頃価格だ。

ウッド調のおしゃれな店内。

ウッド調のおしゃれな店内。

メニューについて若旦那は「ヴィーガンをもっと広く知ってもらいたいというよりも、ヴィーガンの人が飽きずにおいしく食べられてリーズナブルなものを提供したかったんです。ヴィーガン難民っているんですよ。ヴィーガン食をしたいけれど、どこで食べたらいいのかわからない人やおいしく食べる方法がわからない人。そういう人に喜んでもらいたいと思ったんです。そしてその人がヴィーガンじゃない友達を連れてきてもおいしく食べられることも大事にしました」と語ってくれた。

店長のリサ。(撮影:臼杵成晃)

店長のリサ。(撮影:臼杵成晃)

メニュー開発は若旦那、大沢、鳥羽さんではなく店舗スタッフや外部のフードディレクターが行っている。スイーツ部門のメニュー開発の中心を担っているのが、店長を務める元バニラビーンズのリサ。大沢の10年来の知り合いで、若旦那ともテレビ番組で共演経験があるというリサは、バニラビーンズ解散後は、築地で両親が営んでいた日本料理屋を継いだが、2020年の東京オリンピック開催に伴い店舗が立ち退きに。ヴィーガン食に関心があり、THE NUTS EXCHANGEが掲げるゼロウェイストの取り組みにも共感したリサは、大沢の声かけによりこの店の店長になった。

青山ファーマーズマーケットで仕入れた野菜で作る人気のデリ。価格は取材当時のもの。

青山ファーマーズマーケットで仕入れた野菜で作る人気のデリ。価格は取材当時のもの。

「飲食店を継いでみて『こんなに毎日ゴミが出るんだ』と驚いたんですよ。そんな中で環境に配慮した取り組みをするお店はいいなと思ったし、昔からこのあたりに住んでいて馴染みのある街のお店を任せてもらえるのはうれしかったです」と語るリサ。「ヴィーガンが食事を選ぶときの選択肢の1つになったらいいなって思うんです。『和食にする? 中華にする? ヴィーガンにする?』みたいな。そんなふうに考えながらメニューを考えています」と、ヴィーガンではないリサならではの持論を明かしてくれた。

環境問題と向き合って

若旦那

若旦那

ゼロウェイストを目指すTHE NUTS EXCHANGEの店内には、もちろんゴミ箱は置かれていない。ドリンクはガラス製のジャーや色とりどりのマグカップに入れて、フードメニューも陶器のお皿に乗せて提供される。食器は若旦那が長野の別荘地で譲り受けた廃品で、中には高級なブランドのものもちらほら。店舗の内外に使われている木材も若旦那が長野の別荘地で手に入れた廃材だ。

若旦那の愛犬・こひろもよく遊びに来る。

若旦那の愛犬・こひろもよく遊びに来る。

なぜ長野にこだわるのか。そこには若旦那のルーツが関係している。「僕は東京生まれ東京育ちなんですが、長野の諏訪に別荘があるんです。親戚全員で話し合って建てた別荘は、僕が昔から馴染みのある場所。もともとは鳥羽さんの知り合いに内装を頼む予定だったんですが、せっかくゼロウェイストのお店を開くのであれば、内装や食器も新しいものではなくリユース品がいいと僕から提案させてもらいました。別荘地なので廃品も立派なものが多く、まだまだ使えるものばかりなんですよ」と、お店のコンセプトと、若旦那は自身のルーツにある土地が結びついた理由を語った。

THE NUTS EXCHANGEの店内。

THE NUTS EXCHANGEの店内。

アーティストである以上、商業的な活動だけではなく、社会活動も行うべきと考える若旦那は、ハイチ大地震が起きた2010年からこれまでさまざまな復興支援活動を行ってきた。日本国内では2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震と、2018年に西日本で起きた記録的な豪雨……2010年代は大きな災害がいくつも起き、各地で多くの被害が発生した。被災地に足を運んだ若旦那が各地で出会ったのは、現地の小規模な農家。「JAに所属していないインディペンデントな農家は、自分たちで農作物を作ってインターネットで直販して生計を立てている人たちが多いんですが、その感じがミュージシャンよりミュージシャンらしいと感銘を受けたんですよね。そういう人たちから話を聞いて、近年の災害はどれも複合的な問題があると知ったんです。例えば熊本は震災から復興しないうちに豪雨があったり、東北は原発問題があったり……豪雨は気候変動の影響で起きたものだし、そもそも気候変動は原発のようなエネルギー問題から起きていて。災害の被害を大きくしているものは、環境問題なんですよね。環境問題とは向き合わざるを得ない時期に入ってきた」と、若旦那は言う。THE NUTS EXCHANGEのアイデンティティとも言える本棚には、10年以上続けてきた復興支援活動の中での気付きや出会いが詰まった、自ら編集長を務めた書籍「循環」も置かれている。

若旦那の今後のビジョン

若旦那とこひろ。

若旦那とこひろ。

現在、若旦那は東京の西多摩エリアに位置する青梅に畑を借り、農業に取り組んでいる。高畝式の畑を半年かけて耕し、この夏に大豆を植えた。若旦那は「生産から販売までをしっかりやるのが今後のビジョン。高畝式はけっこうマニアックな農法なんですけど、そのうちTHE NUTS EXCHANGEでも自分の畑で作った野菜を使ったメニューを出して、その農法のファンに食べに来てもらいたいです。マニアックすぎるかもしれませんが……(笑)。でもそれだけじゃなくて、時代に合っている写真映えするようなメニュー作りも心がけます。農家の料理ってもちろんおいしいんですけど、あれは農家で食べるからおいしいもの。うちの店では思わず写真を撮りたくなるようなビジュアルも追求していきたいですね」と今後のTHE NUTS EXCHANGEのビジョンを明かす。そして「ミュージシャンとして20年やってきたから、自分らしいミュージシャンであるために土着的にやっていきたいんです。前に農家作業を手伝ったあとに『たくさん採れたから持っていきなよ』って野菜をもらったことがあって。そのお返しとしてギターで1曲弾き語りをして、歌と野菜の物々交換をした経験がすごくいいなと思ったんです。なんかそういうふうに音楽と農業とを続けていけたらいいなと思っています」と笑った。

THE NUTS EXCHANGE

東京都渋谷区富ヶ谷1-51-1 1F
[火]9:30~18:00
[水木金]11:30~21:00
[土日]10:00~18:00
定休日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日休み)。営業時間変更の可能性もあるので、来店の際にはInstagramを確認を。

THE NUTS EXCHANGE(@the_nuts_exchange)・Instagram photos and videos

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読者の反応

Risako @cha_maru

もうずっとお世話になっている
大好きナタリーさんにTHE NUTS EXCHANGEを取材していただきました♡
ぜひ読んでください🌞 https://t.co/iTg8rPpFw9

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