田口淳之介

アーティストにも広がる麻雀の熱狂 後編 [バックナンバー]

田口淳之介が見据えるプロ雀士としての未来とは

「あこがれの対象になるよう、日々努力する。そして勝つ」

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今年3月に日本プロ麻雀協会へ入会してプロ雀士となった田口淳之介に、麻雀の魅力などについて聞くインタビュー。前編では麻雀にハマったきっかけやプロになることを決意したエピソードを紹介したが、後編では現在の目標やプロ論、ますます盛り上がりを見せる「Mリーグ」に対する思いなどをお届けする。

取材・/ 丸澤嘉明 撮影 / 押尾健太郎

プロになってからの活動

──世間一般からするとプロ雀士が何をやっているのかわからない人も多いと思います。なので3月にプロ雀士になってからの活動をお伺いできますか?

プロ雀士の主戦場として、団体ごとのリーグ戦があります。日本麻雀連盟だったら鳳凰戦、最高位戦日本プロ麻雀協会だったら最高位戦というように。僕の所属している日本プロ麻雀協会は雀王戦というリーグ名でA1、A2、B1、B2、C1……とあって、僕は今年から参加して13ランクあるうち一番下のE3リーグにいます。半年で5節あって、その大事な初戦である1節目で、4回戦あるうち4着、4着、3着、4着を取ってしまったんですよ……。ホント最下層からのスタートなんですけど、それもなんか面白いなと思って。団体の一番ビリにいるところから這い上がっていくぞと思ってやっています。2節目はそこそこよかったんですけど、3節目が振るわず、今期は昇級は絶望かなと思っています。

──サッカーの「Jリーグ」のように、勝って上位に入れば上のカテゴリーで戦えるわけですね。

昇格ラインがあって、E3リーグに40人ほどいる中で、上位14名までがワンランクアップで上位4名に入れば2ランクアップします。そのリーグ戦が月イチくらいのペースであって、そのほかには団体タイトルのトーナメントもあります。今僕が参加しているのは「fuzzカップ」というトーナメントなんですけど、ベスト64まで勝ち残っているんですよ。これで優勝すると一気にB2リーグまで上がれるので気合い入ってます。5年分くらいのジャンプなので。

──リーグ戦だとせいぜい半年に1級か、よくて2級しか上がれないところを。

そうそう。次の対局が9月7日にあります。そういうタイトルを取ることによって実績を積むのが大事だと思ってがんばっています。

田口淳之介

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プロの条件

──プロの対局は放送対局として人に見られる機会も多いですが、麻雀ってわりとみんなが口を出したがる競技ですよね。「あの場面ではあの牌を切るべきではなかった」みたいに。そういう外野の声がメンタル的にキツいというプロの方もいるようですが、田口さんはそのあたりはどうですか?

僕は新人だしそういうことを言われるものだと思っているので、特に気にしていないですね。ミスしたら自分でもわかるので、そこを「ミスしたね」と言われるのは納得できるというか、「そうですよね」という感じ。ただ結果論について言うのは違うなとは思っています。麻雀って不確定要素の強いゲームで、結果よりもプロセスが大事なので。そこのプロセスが自分的に間違ってなかったらそれは正解だし、そうじゃないところに関して言われたとて全然揺るがないというか。

──例えばリーチして上がれなかったとしても、リーチに行くまでの手順が大事で、上がれるかどうかはまた別の話というか。

そうですね。自分もまだまだミスがたくさんあってそれはわかっているし、日々勉強しているので。幸い、僕の放送対局においてコメントがひどいということはなくて。むしろ僕のファンの方が応援してくれていて、それがすごくうれしいです。今の僕は応援していただいてなんぼなので、所作も含めてプロとしてどう打つべきかを考えながら打っています。

──まさにプロとしての心構えについても伺えればと思っていて。

例えばプロ野球選手やプロサッカー選手はあこがれの対象だと思うんですけど、麻雀プロもそうあるべきだと思います。「こういう雀士になりたい」とか「こういうプレースタイルを持っている人にあこがれる」って思われる対象に自分がなれるよう、日々努力する。そのうえで勝負どころでちゃんと勝つ。プロである以上勝利が求められるので。そこは意識していますね。

田口淳之介

田口淳之介

音楽活動との類似点

──音楽活動とプロ雀士としての活動で似ていると感じる部分はありますか?

ないですね。

──即答ですね(笑)。

まったく違うんですよ。応援してくださっている方も違うので、Twitterも麻雀用のアカウントを別に作っています。麻雀アカウントをフォローしてくださっている方は純粋に麻雀好きな方が多くて。でも最近、もともと僕のファンだった方が麻雀に興味を持ち、僕の麻雀教室に足を運んでくれたりするんです。僕をきっかけに麻雀を好きになってくださるのはうれしいことだし、少しでも麻雀界に貢献できたらいいなと思っていますね。

──田口さんきっかけで麻雀を好きになっている方は多そうですね。

うちの協会でやっているプロアマ混合の「チャンピオンロード」というワンデー大会があって、アマチュアの方も参加費を払えば参加できるんですけど、そういうのにも足を運んでいただいたり。僕もゲストとして同席したときに、「田口プロっていいな」と思っていただけるように心がけています。プロとしてお金をいただいている以上は楽しませてあげたいし、参加してよかったと思ってもらいたいので。

──音楽活動に限らず、芸能界での経験が生きている部分はありますか?

ツキはあると思いますね。土壇場での勝負強さはあるんじゃないかと。

──初めての放送対局での初上がりが倍満[※1]ですもんね。それこそ放送対局で人に見られることに関しても、昔から何万という人から見られているからその耐性もあるのでは?

そうですね。自分がどういう人を見たいのかという視聴者目線と、自分自身がどういうふうに見られたいかという両方の意識があります。そこは強みかもしれないですね。

──主観と客観があるということですね。麻雀は今までマイナー競技だったから、そうやって多くの人目に晒されることにまだ慣れてないプロの方もまだいらっしゃるのかなと。

麻雀って歴史は長いじゃないですか。アンダーグラウンドなイメージもあるし、牌の扱い方1つとっても例えば強打するのは今の風潮にはそぐわないと思うので、そういうふうにしないよう気を付けています。

※1. 上がりの際に獲得できる点数のこと。役の合計が8~10翻あり、子の場合は16000点、親の場合は24000点という高得点。

田口淳之介

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今後の目標とあこがれの選手像

──今の田口さんの目標はなんでしょうか?

Mリーガーになることです。自分の団体のリーグやトーナメントで結果を出してタイトルを取るのはもちろん大事ですけど、やっぱり「Mリーグ」[※2]という華やかな舞台に自分が立てるようになりたいと思っています。「Mリーグ」からスター選手が生まれていますし、これだけ麻雀プロが脚光を浴びる場所があるのはうらやましいので、そこは目指したいですね。

──「Mリーグ」の魅力ってどういうところですか?

「Mリーグ」が始まって1年目のときにパブリックビューイングに遊びに行っていたんですよ。麻雀に対してタバコの煙が充満した雀荘でやるギャンブルのイメージを持っている人も多いと思うんですけど、こんなにスポーツとして見せることができるんだということに感動して。パブリックビューイングでたくさんのお客さんと一緒に観ることで一体感がすごく生まれていて、そこは1つ大きな魅力だと思いますね。

──サッカーの日本代表戦をみんなで応援するみたいな。

そうですね。コロナのせいでパブリックビューイングの機会は少なくなっちゃったけど、同じチームを応援する人たちが集まってリーグ戦を観るとサポーターとしては一緒に戦ってる気分になってすごく楽しいし、本当にスポーツだなと思いますね。

──推しのチームはあるんですか?

僕は村上淳プロのプレースタイルにあこがれがあるので、赤坂ドリブンズ推しですね。

──村上プロも「リーチ超人」の異名の通り、なるべく門前[※3]で進めてリーチするスタイルですよね。

そうですね。

──では最後に、これから麻雀を始めたい人に向けてメッセージをお願いします。

音楽ナタリーさんなので本来ならば新曲リリースの話をするべきだと思うんですが(笑)、本当にそれだけ今麻雀が注目されていて。ABEMAには麻雀チャンネルもあって「Mリーグ」をはじめ、そのほかの対局もいくらでも観られるので、将棋や囲碁を観る感覚で伝統スポーツとして麻雀が認知されていったらうれしいなと思います。タレントの方でやっている人も多いので、自分の好きな推しを見つけるのも楽しいと思いますし、今からでも遅くないのでぜひ麻雀の楽しさに取りつかれてほしいです。

※2. 2018年7月に発足した、競技麻雀のチーム対抗戦のナショナルプロリーグ。参加する各選手をMリーガーと呼ぶ。

※3. ポンやチーなどの鳴きを使わず、高打点を目指す雀風。麻雀では鳴くと1飜下がる役が多い。

一番好きな牌はリャンピン。理由は「田口」に見えるからとのこと。

一番好きな牌はリャンピン。理由は「田口」に見えるからとのこと。

田口淳之介

1985年11月29日生まれ。2006年、KAT-TUNのメンバーとして「Real Face」でデビュー。2016年にKAT-TUNを脱退後、同年11月にシングル「HERO」でソロデビューを果たす。2017年9月に1stアルバム「DIMENSIONS」を発表。俳優、モデルとしても活動しているほか、2022年3月に日本プロ麻雀協会21期前期生プロテストに合格したことを発表し、現在はプロ雀士としての顔も持つ。

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