「NCT 127 2ND TOUR ‘NEO CITY:JAPAN - THE LINK’」を鑑賞する土岐麻子。

土岐麻子の「大人の沼」 ~私たちがハマるK-POP~ Vol.11 [バックナンバー]

土岐麻子が観た、NCT 127ドームツアー

ドームの隅々まで心を“LINK”させた壮観なステージを約1万字で熱烈レポート

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同じアーティストとして驚いた最後の1曲

その後は「Love On The Floor」。一度生で観たかった、あの山型に折れるステージの装置が登場。急傾斜を滑り下りて寝そべり、また後ろ向きに駆け上がり。それをゆっくり回転しながら見せる。梨乃さんによる画期的な演出と、それを昇華するメンバーによる、セクシーなパフォーマンスだ。

「NCT 127 2ND TOUR ‘NEO CITY:JAPAN - THE LINK’」大阪公演の様子。(撮影:田中聖太郎)

「NCT 127 2ND TOUR ‘NEO CITY:JAPAN - THE LINK’」大阪公演の様子。(撮影:田中聖太郎)

テヨンの振り付けで客席をいっそう煽る「Bring The Noise」。この曲はコード感を排除したリズムとベース中心のトラックで、ラップとメロディパートで構成される。

そしてMCで「1人で日本から韓国へ来たときの苦悩を思い出しながら、新しい自分に飛び立つような覚悟の曲」として紹介されたユウタのソロ曲「Butterfly」へ。歌い上げる姿には彼のロックルーツを感じた。ラストの、捲り上がったシャツからの蝶のタトゥーをアップにしたカメラワークが素晴らしかった。

その後メンバーそれぞれがラフなデニムスタイルのリンクコーデで登場し、全員での「Paradise」「Love Me Now」と明るい開放感のある曲が続く。

「Chica Bom Bom」はトロッコ上だったのでドヨン、マーク、ヘチャンを至近距離で観ることができたが、後半の曲で、しかもトロッコ上であっても、1つひとつの動きを流さずに踊る彼ら。キレキレ。そして疲れもまったく見せない。本当に全力なボーイズたちである。

そんな彼らは、次の日本の新曲「Colors」の冒頭で仰向けに。そうそう、そのまま休んでーと思うも、歌い始めて8小節ほどでムクリと起き上がる。インタールードでまた仰向けボーイズになったものの、やっぱり8小節で起きるボーイズ。タフネス。

「TOUCH」ではあの綱引き的なダンスを20mの距離で見られてアガった。

メンバーのブラックミュージックセンスが発揮された「Pilot」、マークのドライブ感のあるラップが印象的だった「Cherry Bomb」と続き「皆さん、これは、最後の曲です!」との宣言から放たれたのは「Sticker」。この選曲には驚いた。

だって、いい意味であの人を食ったような素っ頓狂な笛のリフから始まり、複雑な構成で展開される、コラージュ感満載のスリリングなチューンですよ。そう思いつつ、私はこの事実にこの日一番胸が高鳴った。演者の本能としては、さっきの開放感のままそのムードを拡張して熱くなって終わりたくなるものだ。なのに再び公演スタート時のような、冷静さと集中力が必要な曲に自ら引き戻すとは。なんともすさまじい。フィーリングのコントロール的には過酷なはずだ。

しかし最後の曲であっても、表情もダンスも的確に見せるメンバー。彼らは表現のコントロールが抜群なグループなのだ、と思い知ったところで本編が終わった。

「NCT 127 2ND TOUR ‘NEO CITY:JAPAN - THE LINK’」大阪公演の様子。(撮影:田中聖太郎)

「NCT 127 2ND TOUR ‘NEO CITY:JAPAN - THE LINK’」大阪公演の様子。(撮影:田中聖太郎)

実感した“LINK”の意味

アンコールでは「멀리 떨어져서도 여러분들이 내 마음 속에 있습니다.」というメンバーの言葉が印象的だった。「遠く離れていても、皆さんは僕の心の中にいます」という意味だ。まだコールができなかったこの名古屋公演時、どう応援する?という戸惑いがシズニの中にありそうだと感じたが、パフォーマンスと拍手、そして見えないけれど絶対的なものでつながっていく心。これが“LINK”ということかと、あの冒頭のユウタの説明を実感を持って理解した。

歌ったのは、横一列のスタンドマイクで披露した「Dreams Come True」、日本の新曲「Sunny Road」。後者は有名な魔法の呪文のラップから始まる、明るいポップナンバー。長い長いランウェイを、メンバーを追い抜きながら駆け抜けるテヨンの姿はどこか青春的で印象に残った。一方でジョンウの走り方も印象に残る。砂浜で「ちょっと待って~」な女子のそれ!

「NCT 127 2ND TOUR ‘NEO CITY:JAPAN - THE LINK’」大阪公演の様子。(撮影:田中聖太郎)

「NCT 127 2ND TOUR ‘NEO CITY:JAPAN - THE LINK’」大阪公演の様子。(撮影:田中聖太郎)

この日最後となったMCでは、メンバーはまずテイルの不在に触れ、「今はこの場にいないけど、もっと元気な姿を見せられるはずだ」と言ってファンを安心させた。

そして、メンバーたちをリアルに感じられるような言葉が続く。

「シズニを、同窓会で会った古い友達のように感じる」と韓国語で語ったジェヒョン。長い空白期間をも一瞬で埋めるような、信頼の歴史があるということだろう。また彼が「(名古屋での長い隔離期間を経たうえで)今日、公演をしながら生きているという実感があった。そんな実感をくれてありがとうございます」と話すと会場が沸いた。

「ドームに連れて来てくれた皆にありがとうと言いたいです。いつかここでできなくなったとしても、皆がいたらどこでも歌って踊れるなと思った」と清々しく話すユウタ。「健康で会いに来てくれてありがとう」とシズニの体を気遣い、「実は少しうまくいかなかったところもあったけど」と正直に話す真面目なマークは「夢であったドームツアーを叶えられてうれしい」と語った。

「ナゴワ~、あ、名古屋~! 最高~!」と呼びかけ、「僕たちはこの日のためにたくさん練習してきました。NCT 127、カッコいいじゃないですか? かわいいじゃないですか?」とフワフワしながらも日本語で話すテヨン。

「隔離期間を入れて名古屋で8日目を過ごしているが、7回ひつまぶしを食べました」と韓国語で告白したヘチャン。驚くシズニにすかさずメンバーたちから「ヘチャンだけ!」と日本語で声が上がる。

「めちゃんこやっとかめ日本に来ました」と言うドヨン。彼は最後まで粘り強く、やっとかめ話法をこだわり抜いてみせた。

「ご覧のスポンサーの提供でお送りします」とアナウンサーばりの日本語芸を披露するジョンウ。

「メンバー全員幸せだったと思います。幸せを分かち合えるこのような機会を与えてもらえてうれしい」とジャニ。

最後の曲は、さわやかなポップナンバー「Promise You」。

リラックスしたフリーなパフォーマンスで、全員の生歌のバランスが上がり、よく聞こえて人間味を感じられた。

「またね기다려(待ってて)」

という声を残し、彼らはゴンドラに再び乗って上空に帰って行った。

マイクを使わずに「ありがとう」と叫ぶテヨンの声。草鈍器をフリフリしたり拍手で応えるシズニ。

ノートを1冊使い切るほどメモをしっかりと取って、この体験記を熱く書き上げてくれた土岐麻子。

ノートを1冊使い切るほどメモをしっかりと取って、この体験記を熱く書き上げてくれた土岐麻子。

その後私とMICAさんはほかのシズニたちと合流し、駅に向かう長い陸橋や薄暗い住宅地の路地を歩きながら、感想を言い合った。

推しは決まったかと聞かれたが、実のところ今日の公演を観てさらにわからなくなった。ジャニ、テヨン、ユウタ、ドヨン、ジェヒョン、ジョンウ、マーク、ヘチャン……全員が素晴らしくて特別だったから。そしてやはり、テイルの生パフォーマンスを観るまでは決められないという気持ちも。

遠くないうちに、また絶対に足を運ぼうと決意した。

幸せな時間をありがとう、素晴らしいチームNCT 127、そして美しいシズニ들!!

「NCT 127 2ND TOUR ‘NEO CITY:JAPAN - THE LINK’」大阪公演の様子。(撮影:田中聖太郎)

「NCT 127 2ND TOUR ‘NEO CITY:JAPAN - THE LINK’」大阪公演の様子。(撮影:田中聖太郎)

土岐麻子

1976年東京生まれのシンガー。1997年にCymbalsのリードボーカルとしてデビュー。2004年の解散後よりソロ活動をスタートさせる。本人がCMに出演したユニクロCMソング「How Beautiful」(2009年)や、資生堂「エリクシール シュペリエル」のCMソング「Gift ~あなたはマドンナ~」(2011年)などで話題を集める。最新作は2021年11月にリリースしたオリジナルアルバム「Twilight」。CM音楽やアーティスト作品へのゲスト参加、ナレーション、TV・ラジオ番組のナビゲーターなど、“声のスペシャリスト”として活動。またさまざまなアーティストへの詞提供や、エッセイやコラム執筆など、文筆家としても活躍している。K-POPでの最推しはMONSTA XのジュホンとBLACKPINKのジェニ。

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※記事初出時、誤りがあったため、一部本文を変更しました。

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LINKの名古屋公演レポを土岐さんが詳細に書いてくれた回 https://t.co/fljNvlhr2m

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