佐々木敦&南波一海の「聴くなら聞かねば!」 10回目 前編 [バックナンバー]
ハロプロソングを中心に名曲連発!気鋭作家の仕事に迫る
シンガーソングライター山崎あおいとアイドルソングの作家仕事を考える
2022年6月24日 19:00 60
構成
オーディション時に秋元康からかけられた一言
佐々木敦 こういう取材って今までありましたか?
山崎あおい シンガーソングライターとして取材を受けることはあるんですけど、作家としてお話しするという機会はほとんどなくて。今日はすごく緊張しています。何を言われるんだろうって(笑)。
佐々木 いえいえ、ずっとお会いしたいと思ってたので光栄です。今日はよろしくお願いします。
山崎 はい、よろしくお願いします。
南波一海 まずは基本的な質問なんですけど、山崎さんはもともとアイドルソングに興味をお持ちだったんですか?
山崎 はい。シンガーソングライターとしてデビューした頃から、いつか作家仕事もしてみたいなと思っていたんです。3歳下の弟がAKB48の大ファンで。私も弟の影響を受けてAKBを好きになって、そこからアイドルにも興味を持つようになりました。それで、いつかアイドルさんに自分が書いた曲を歌ってもらえたらいいなと思っていて。
佐々木 シンガーソングライターではなくアイドルになりたいという願望はなかったんですか?
山崎 私は高校1年生のときにシンガーソングライターとしてオーディションに出て、優勝した流れでデビューしたんですけど、そのときの特別審査員が秋元康さんだったんですよ。
佐々木 なんと!
山崎 最後に秋元さんから賞をいただいたんですけど、そこで「アイドルとは別の方向性でがんばってください」って言われちゃって。「あなたは違う道で」って(笑)。
南波 その後上京してシンガーソングライターとして2012年にメジャーデビューされるわけですが、アイドルソングの作家仕事はどういう経緯でスタートしたんですか?
山崎
転機となったハロプロ研修生北海道への楽曲提供
南波 そこから具体的にはどんな動きを?
山崎 私はYUIさんが大好きで、彼女のプロデュースをされていた近藤ひさしさんに「作家をやりたいんです」と人生相談をしにいきました。その流れでお仕事をいろいろ紹介していただいて。ハロプロ研修生北海道の仕事も近藤さん経由でお話をいただいたんですよ。
南波 そうだったんですね。
山崎 近藤さんも北海道出身なんですけど、「ハロプロが北海道出身の作家チームで曲を作ろうとしてるみたいだから挑戦してみたら?」って。それで北海道出身という縁もあって「ハンコウキ!」という曲で作詞作曲をさせてもらったんです(2018年7月に発売されたハロプロ研修生北海道 feat.稲場愛香のシングル「ハンコウキ! / Ice day Party」収録)。あの曲をきっかけにアイドルソングの作家仕事が本格的にスタートしました。
南波 そこから、あれよあれよという感じで。
山崎 本当に恵まれていて。
佐々木 実際、2010年代後半からの山崎さんの活躍ぶりはすごいですよね。名曲連発で。ちなみに「BUBKA」という雑誌の年間ベストランキングで僕は去年ハロプロソングを10曲選んだんですけど、上位3曲が山崎さんの書いた曲でした(1位:つばきファクトリー「涙のヒロイン降板劇」 / 2位:アンジュルム「愛されルート A or B?」 / 3位:Juice=Juice「がんばれないよ」。すべて作詞)。
山崎 ありがとうございます(笑)。
佐々木 先ほども話に挙がりましたけど、作家活動を本格的に始めてからはコンペにも積極的に参加されてきたんですか?
山崎 実はそうでもなくて。最初はコンペに積極的に参加していたんですけど、ハロプロさんの曲を書かせてもらうようになってからは、その曲を聴いたレーベルさんや事務所さんからオファーをいただくことが増えてきて。
南波 ちなみにハロプロはコンペじゃないですよね。
山崎 そうですね。だいたい決まった作家さんが書いています。
佐々木 僕はアイドルソングがどういう工程を経て世の中に出ていくのかにすごく興味があるんです。1曲ができあがるまでに何度も書き直しをさせられたりするという話をよく聞くんですが、実際そういうことってけっこうあるんですか?
山崎 まるまる1曲書き直すということはあります。逆に微調整につぐ微調整というのは、私はあまりなかったですね。たまに作家同士で集まって話をすると、そういうパターンもけっこうあるみたいですけど。
佐々木 その座談会、聞きたいな(笑)。
南波 ハロプロ研修生北海道の曲を書いてからは、どういう感じで話が進んでいったんですか?
山崎
最近は家でペンライトを振りながら曲を作っています
南波 ご自身で歌う曲とアイドルが歌う曲って、まったく別物だと思うんですけど、例えば反抗期の真っただ中にある10代が主人公の歌詞とか、どういう気持ちで書いているのでしょうか。
山崎 自分が歌う曲を書くときは私個人の体験とか気持ちをもとに書けばいいので、すごく楽といえば楽で。「自分の書いたものが正解でしょ」っていうテンションでやっているのであまり悩まないんですけど、楽曲提供するときは、その曲の主人公になるというよりも、神様の視点になって、すごく俯瞰した気持ちで書くというか。難しくて、うまく言葉で説明できないんですけど(笑)。
南波 アイドルグループに曲を提供するときって、技術的な部分でも制限があると思うんです。理想のメロディがあるけど、歌唱力に合わせて歌いやすくしなきゃいけないとか。歌唱力が高いメンバーがいれば、そうじゃないメンバーもいるわけで。そういうところで制限を感じたりすることもありますか?
山崎 逆にある程度、制限があったほうが私的には書きやすくて。アイドルグループに曲を提供する場合って、「Aメロ全体で聴いたらグッと来るよね」という感じではなくて、1人ひとりの歌割に見せ場を持ってくる必要があるんです。なので歌詞を書くときは、極力表情が付けやすい言葉を選ぶように心がけていて。それって、ある種の制限だと思うんですけど、短いスパンでインパクトのある言葉を選んでいく作業って、私的にはすごく面白いんですよね。
南波 山場の作り方が歌割ごとにあるみたいな。
山崎 曲作りには、小さい山をいくつか作る場合と、大きい山を1つ作る場合の2パターンがあると思っていて。アイドルソングを作る場合は、小さい山をたくさん作るようにしています。自分が歌う曲や、ソロシンガーの方に提供する曲では大きな山を作るという意識です。
佐々木 アイドルソングは、「サビだけで勝負!」ってことではないわけですね。
山崎 「絶対こっちの語尾のほうがかわいく歌ってもらえるはず」とか、「ここは切ない表情で歌ってもらえそう」とか、いろんな山場を頭の中で考えながら歌詞を書いています。それが楽しいですね。
佐々木 でも基本的に誰がどの歌割を歌唱するかは、歌詞を書いた時点ではわからないわけですよね?
山崎あおい はい。
佐々木 そうすると、誰が歌ってもヒロインになれるような感じで歌詞を書いていくということですか? それってすごく大変じゃないですか?
山崎 はい。でも面白いですね。頭の中でアイドルグループがライブをしているようなイメージじで。最近は家でペンライトを振りながら曲を作っています(笑)。
佐々木・南波 あははは。
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山崎あおい/Aoi Yamazaki @aoi_punclo
佐々木さん、南波さん!ど緊張しながら行きましたが、とっても楽しい時間でした!ありがとうございました!是非に〜〜↓↓
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