NHK Eテレ「シャキーン!」ロゴ(写真提供:NHK)

番組終了を迎えるEテレ「シャキーン!」の音楽面を掘り下げる (前編) [バックナンバー]

驚きのアーティストが続々登場、ネットを騒がせた“音の振動で紙相撲”コーナーはどうやって作られたのか

サンダーキャット、人間椅子……歴戦のエピソードとともに振り返る番組作りの裏側

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音楽担当サキタハヂメ氏が考える「シャキーン!」らしさ

「シャキーン!」の音楽を担当しているミュージカルソー(のこぎり)奏者のサキタハヂメ氏は、レギュラー放送開始前のパイロット版から番組に関わっている。現在も放送されているオープニングテーマ「シャキーン!のテーマ」や、エンディングテーマ「シャキーン!の木」は、すでにその頃から流れていた楽曲。「シャキーン!の木」は「とんがったって まるくたって ちっちゃくたって 進みましょう」という、子供たちがそれぞれ持つ個性を肯定するような歌詞が印象的だ。

これらのテーマソングを含む、最初期に作られた曲についてサキタ氏に聞いた。

サキタハヂメ氏にはリモートで取材を実施。(撮影:梅原渉)

サキタハヂメ氏にはリモートで取材を実施。(撮影:梅原渉)

「普段は作曲をすることが多くてあまり歌詞は書かないんですけど、テーマソングの2曲は歌詞も書きました。メインテーマをちょくちょく変える番組もあるけど、この曲は初オンエアから15年間、本当にみんなに守ってもらいましたね。『シャキーン!のテーマ』は大阪のアルケミースタジオで、『シャキーン!の木』は滋賀のスタジオボスコで、気のおけないミュージシャン仲間たちに集まってもらってレコーディングしました。エレクトロとアコースティックと気合いと生々しい歌声を絶妙に混ぜた"お目覚めサウンド"を作りたくて試行錯誤したことを覚えています。NHKの朝ってことで、『シャキーン!』のテーマの中に『NHKのど自慢』のあの鐘のフレーズをぶっ込んでみました」

「『シャキーン!ミュージック』1曲目の『るるるの歌』はアニメの絵も担当されたマメコミさんが作詞をしています。歌は僕がデモで歌ったつもりのものが『これすごくくいいじゃん!』とプロデューサーに言われて、そのまま流れ、しかもたくさんのバージョンができました(笑)。手塚治虫さんの『火の鳥 ◯◯編』みたいに」

サキタハヂメ氏

サキタハヂメ氏

現在に続く「心と体の目覚めを促す」という番組コンセプトは15年前の時点ですでにあり、サキタ氏はこのコンセプトに沿ったいくつかの音楽をパイロット版のために提出。この頃から一貫して「今まで横だと思ってたものを縦に見てみたら面白いかもよ?」「見方を変えてみることで日常が変わるよ?」というメッセージを、楽曲を通して視聴者に提案し続けている。

これまでに番組のために何曲作ってきたのか聞くと、サキタ氏は「すさまじい数があるので数えないようにしてきたけど、たぶん500曲まではいってないんじゃないですか?」と言って笑った。というのも、初期の「シャキーン!」はディレクターや作家が毎週新しいコーナーを考え、そのたびに彼にオリジナルの音楽を発注していたのだ。これらの曲を作るうえで、サキタ氏は何を意識していたのか?

「うちも息子が2人いるからわかるんですけど、朝7時に子供を起こすって相当大変なことなんですよ。そんな簡単に起きるわけがない。だからビックリさせるような展開を作ったり、アホみたいなアレンジにしたり、視聴者参加型で歌やダンスやゲームをしてもらえるようにしたり……そういうことはいっぱいやってたかな」

このような工夫の一環として、かつては番組の感想やファンレターの宛先を歌にして募集していたこともあった。この歌は「おくってね!」というタイトルで2018年発売のアルバム「NHKシャキーン!10周年ベスト盤」に収録されている。

V.A.「NHKシャキーン!10周年ベスト盤」ジャケット

V.A.「NHKシャキーン!10周年ベスト盤」ジャケット

「最近はハガキじゃなくてメールでお便りをもらうことが多いんですけど、『この曲のおかげで今でもNHKの郵便番号を覚えてる』という書き込みをSNSでよく見かけるんですよ(笑)」

企画会議の場ではよく「それはシャキーン!的だ」「これはシャキーン!的ではない」という会話が繰り返されていたとサキタ氏は語る。

「『それじゃ普通のバラエティと一緒だよね』とか。あとはファンタジーの入れ方もですね。例えば、我々は魔法を使えないのに、魔法で何かが解決するのはシャキーン!的ではない。だから『それ魔法やん』って言われて却下した企画はけっこうあった気がします。音楽に関しても考え方は同じなので、いろんなジャンルの曲を作ってきましたが、そこに乗せる言葉がなんなのかが重要なんですよ。僕が作った『シャキーン!ミュージック』の曲は詞先が多かったです」

サキタ氏が作った楽曲でもっとも“シャキーン!的”だったものは何かと尋ねると、彼は「全部です。『シャキーン!』らしくない曲は1曲もないです」と断りを入れつつ、月替りの歌のコーナー「シャキーン!ミュージック」最後の曲として現在オンエア中の「卒業~ここからはるかへ~」を挙げた。

歴代MCが集結した、ここ&はるか「卒業~ここからはるかへ~」のミュージックビデオ。(写真提供:NHK)

歴代MCが集結した、ここ&はるか「卒業~ここからはるかへ~」のミュージックビデオ。(写真提供:NHK)

「作曲だけするのかと思ったら『サキタ、歌詞書いてみたら?』って言われたので、迷わずOKしました。この番組でやりたかったこと、伝えたかったことをガーッて書いていった結果、これが一番“シャキーン!的”な歌詞になったなと感じています」

後編では「シャキーン!ミュージック」を担当していたスタッフに、このコーナーから生まれたたくさんの名曲に関する話を聞く。

後編に続く

※記事初出時、本文に一部誤りがありました。お詫びして訂正いたします。

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読者の反応

やついいちろう @Yatsuiichiro

凄い面白いインタビュー
驚きのアーティストが続々登場、ネットを騒がせた“音の振動で紙相撲”コーナーはどうやって作られたのか | 番組終了を迎えるEテレ「シャキーン!」の音楽面を掘り下げる (前編) https://t.co/42nkzI6RWr

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