優里

優里が年間総合1位を獲得!Billboard JAPANチャートから振り返る2021年の音楽シーン

一気にスターダムを駆け上がったニューカマーから、さらなる躍進を遂げたポップスターまで

10

223

この記事に関するナタリー公式アカウントの投稿が、SNS上でシェア / いいねされた数の合計です。

  • 48 126
  • 49 シェア

下半期リリースで大健闘したback number

back number

back number

 back numberの「水平線」(年間28位)も去年から今年を象徴するような曲ですよね。

Kei 下半期リリースなのでなかなか年間上位は難しいですけど、ただMVはずっと再生されてますし、カラオケでも回っているので、かなり健闘したと思います。

 「水平線」は昨年インターハイが中止になってしまった高校生の手紙を受けて作った曲なので、MVが公開されたのは去年の夏ですけど、1年後に配信するという(参照:back numberがインターハイ曲「水平線」配信開始、この曲を必要としてくれている人に寄り添うため)。従来のリリースの仕方から外れてますよね。

松島 特別中の特別だと思いますよ。ストリーミングで先に解禁するというのはありますけど、MVが先に出てそれが1年続くってあり得ないですから。それでも戦えているのはすごいことだと思います。

 彼らのいくつもある代表曲を超えそうな勢いの曲を今またここで生み出せるのがback numberの強さというか。ソングライティングと歌の浸透力の強さみたいなものが如実に表れた感じがしますね。

松島 数字が全然落ちずに聴かれている感じが「ドライフラワー」っぽいんですよね。みんなが知ってるいい曲というか。

Kei 高校生の手紙を受けて書かれたというエピソードもあって、back number自体が若年層に浸透している感じがありますよね。ストリーミングの指標で上位にくる人たちって2010年代後半にブレイクしたわりと若手のアーティストが多いですけど、その中でback numberが上位に食い込むようになったのはすごいと思います。

若者の共感を生んだ優里の「ドライフラワー」

──そして年間1位は優里さんの「ドライフラワー」でした。

Kei この曲、実はウィークリーで1位は取ってないんですよ。Billboardチャートがやっぱりまだフィジカルのウエイトが強く、首位が毎週のように入れ替わるということで、このウエイトはさらに下げる必要があると個人的には思っています。「Dynamite」もそうですけど、週間1位を取れなかった曲はたくさんあるので。

 「ドライフラワー」が年間1位になったことを受けてなぜこの曲がヒットしたのかを考えなきゃいけないというか、いろんな人に「なんで?」って聞かれると思うんですが、説明するのが難しいんですよね。

松島 わかります。「いい曲だから」ってなっちゃうんですよね(笑)。

 先ほど松島さんが「back numberが『ドライフラワー』的な聴かれ方をした」とおっしゃったのもなるほどと思ったんですが、ストリーミングサービスが高校生を中心に10代にまで普及してきたとなると、やっぱり失恋やスポーツのような思春期的なモチーフの楽曲が継続してランキングに入ってきやすくなっているのかもしれない。back numberと優里をくくると見えてくるものがある気がする。全然別のアーティストですが、両方を好きな人は多そう。

──「ドライフラワー」のチャートインサイトを見てみると、カラオケの指標もずっと1位をキープしていて、そのあたりも若いリスナーが共感して歌っているのかもしれません。

 そうだ、“共感”だと思います。実は2010年代は“共感”よりもむしろ“参加”がヒットの原理になっていたと思っていて。その代表がAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」のような、自分の恋愛をそこに重ねるというよりも、一緒に踊ってみんなで楽しむ曲。星野源の「恋」も「恋ダンス」が流行った。ああいう参加型のヒット曲が2010年代は強かった気がしていて。もちろんUGCは依然としてすごい勢いがあるので参加型の曲がなくなったわけではないんですが、ひさしぶりに恋愛の共感ソングがヒットのど真ん中に戻ってきたのが「ドライフラワー」という感じがします。瑛人の「香水」も恋愛の曲ではありますが、あれはどちらかと言うとTikTokの現象面が強かったので。

──Adoさんの「うっせぇわ」も、コロナ禍でさまざまな自制を求められる今の社会状況にフラストレーションを抱えている人たちの共感を生んだ気がしますね。

 「水平線」と「うっせぇわ」って実は背中合わせの曲だと思います。「水平線」はある種優等生的な人が抱える葛藤に寄り添っている。一方で「うっせぇわ」のほうは「ふざけんな!」って怒りをぶつけてる。同じ状況の裏表だなって。

Kei TikTok発のヒットは今もたくさんありますけど、“参加する”から“共感する”方向にシフトしているんですかね?

松島 それはあるんじゃないですかね。TikTokで誰かがカバーしている「ドライフラワー」を歌詞とともに観る人が多かったと思いますし、共感を得やすい状況ではありますよね。

 TikTokで倖田來未がカバーしたラッツ&スターの「め組のひと」が流行ってた頃って、共感ではなく参加だと思うんですよ。もちろんそういうダンスモノのバズも変わらずあるんですが、カップル動画とか夏の思い出ムービーのBGMという新しい楽曲の広がり方が出てきた。さらに弾き語りの人たちもたくさん登場しましたが、優里だけが頭ひとつ抜けたっていう感じですよね。「ドライフラワー」がリリースされたのが2020年10月25日。リリースがだいたい1年前なんですよね。2021年のヒット曲って2020年の終わりぐらいに出てくるんだなって。

松島 「うっせぇわ」も昨年の10月23日リリースですもんね。ということはちょうど今頃に来年のヒット曲が出てるかもしれない(笑)。

 今のうちにアンテナを張っておかないといけないですね(笑)。

上段左からKei、松島功、下段は柴那典。

上段左からKei、松島功、下段は柴那典。

座談会参加者プロフィール

柴那典

音楽ジャーナリスト。「ヒットの崩壊」「初音ミクはなぜ世界を変えたのか」など著書多数。最新刊「平成のヒット曲」が11月17日に発売。
柴 那典@新刊『平成のヒット曲』発売 (@shiba710) / Twitter

松島功

音楽専業のデジタルプロモーション / マーケティング会社arne代表。インディペンデントのアーティストサービス、レコード会社のデジタル事業サポートを務める。
arne - アーティストと長期的なファンコミュニティを作り上げる。音楽専業デジタルプロモーション・マーケティング-
Ko Matsushima / 松島 功 (@komatsushima) / Twitter

Kei

音楽チャートアナライザー。ブログ「イマオト」で日々Billboardチャートなどについて発信している。
イマオト - 今の音楽を追うブログ -
Kei (@Kei_radio) / Twitter

この記事の画像・動画(全19件)

読者の反応

柴 那典 @shiba710

音楽ナタリーにて取材受けました、

arne代表の松島功さん、ブログ「イマオト」のKeiさんと、「Billboard JAPANチャートから振り返る2021年の音楽シーン」というテーマで座談会に参加しております。 https://t.co/nYJtbzN1nn

コメントを読む(10件)

関連記事

優里のほかの記事

あなたにおすすめの記事

このページは株式会社ナターシャの音楽ナタリー編集部が作成・配信しています。 優里 / Ado / BTS / YOASOBI / back number / TOMORROW X TOGETHER の最新情報はリンク先をご覧ください。

音楽ナタリーでは国内アーティストを中心とした最新音楽ニュースを毎日配信!メジャーからインディーズまでリリース情報、ライブレポート、番組情報、コラムなど幅広い情報をお届けします。