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細野ゼミ 7コマ目(後編) [バックナンバー]

細野晴臣とニューウェイブ

ニューウェイブたらしめるものとは何か、アーティストの音楽性やスタンスから考証する

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活動50周年を経た今なお、日本のみならず海外でも熱烈な支持を集め、改めてその音楽が注目されている細野晴臣。音楽ナタリーでは、彼が生み出してきた作品やリスナー遍歴を通じてそのキャリアを改めて掘り下げるべく、さまざまなジャンルについて探求する連載企画「細野ゼミ」を展開中だ。

ゼミ生として参加しているのは、氏を敬愛してやまない安部勇磨(never young beach)とハマ・オカモト(OKAMOTO'S)という同世代アーティスト2人。第7回ではニューウェイブおよび80'sの音楽をピックアップする。前編ではニューウェイブの始まりなどについて細野に解説してもらったが、後編ではJapanやジューシィ・フルーツなど国内外のアーティストについて触れつつ、その音楽性や定義について考察した。

取材 / 加藤一陽 / 望月哲 題字 / 細野晴臣 イラスト / 死後くん

ニューウェイブはカルチャーとしてへんてこりんなものが混じってる

ハマ・オカモト 僕はJapanが大好きなんですけど、細野さん、Japanのデヴィッド・シルヴィアンとは親交があったんですか?

細野晴臣 僕はあんまり外交的じゃないんで、付き合いはないんだけど、弟のスティーヴ・ジャンセンとは時々会ってたな。

ハマ スティーヴ・ジャンセンはドラムでしたっけ?

細野 そうだね。YMOのほかの2人は、けっこう積極的に付き合ってた。

──高橋幸宏さんはスティーヴ・ジャンセンのドラムの師匠ですよね。

ハマ 僕が買ったJapanの本の帯で、幸宏さんがコメントしてました。細野さんは当時Japanをどう見ていたんですか?

細野 カッコいいと思ってたね。あのベース。

ハマ ミック・カーンですね。

細野 ミック・カーンは素晴らしいな。ああいうふうに弾けないよ。

ハマ 僕にとっても憧れの対象ですね。

細野 ああいうベーシスト、ほかにいないもんね。

ハマ Japanは最初ニューウェイブパンクみたいな音楽性だったんだけど、途中から急にエキゾチックになるんですよね。

細野 Japanって言うぐらいだからね(笑)。当時ドイツのフォルカー・シュレンドルフって人が作った「ブリキの太鼓」っていう映画があって、みんなそれに影響されて。Japanの「Tin Drum(邦題『錻力の太鼓』)」というアルバムも、その映画からインスパイアされたんじゃないかな。

ハマ そうですね。「Tin Drum」で明らかにサウンドの方向性が変わったんで。

細野 「ブリキの太鼓」の影響力はすごかったよ。ニューウェイブって、カルチャーとしてへんてこりんなものが混じってるっていうね。決してポップなだけじゃない。

ハマ Japanいいんだよなあ。解散ツアーは一風堂の土屋昌巳さんがギターを弾いてるんですよね。

細野 そうなの?

ハマ そうなんですよ。

安部勇磨 Japanだと、どのアルバムがオススメ?

ハマ やっぱり「Tin Drum」かな。

──せっかくなので聴いてみましょうか。

安部 あっ、カッコいい!

ハマ ベース、カッコよ!

細野 こういうサウンドが多かったな、当時は。

ハマ Japanはバンド名もあってなのか、当時日本の音楽メディアがプッシュして、日本での人気が高いんですよね。

細野 男前が多いし。デヴィッド・シルヴィアンは今のヴィジュアル系の元祖だよね。

細野晴臣、「つくば万博」を機にニューウェイブに白ける

細野 あと、ニューウェイブの時代にYMOと呼応してたバンドだと、Depeche ModeとかThe Human Leagueとかがいたな。

ハマ そのあたりのグループ、僕は全然わからなくて。

細野 だんだん思い出してきた(笑)。当時そういうイギリスやアメリカのちょっと尖がった連中とはコミュニケーションがあったんだよ。Devoはけっこう近かったかもね。

ハマ エナジードームでおなじみDevo(笑)。

細野 よく、みんな日本に来てたんだよね。行き来があった。

ハマ 80年代って、元気な音楽がたくさんある印象です。経済的にも豊かで、みんな幸せな感じがするっていうか。

細野 全然不安がなかった時代だよね。

ハマ 呼び屋の人とかも元気いっぱいだったんだろうなって。当時の来日ポスターを見ると、すごいなと思います。「いろんな外タレ呼べてるなー」みたいな。

細野 時代背景が今とは全然違うね。

ハマ 潤沢な時代ですよね。日本の音楽だって素晴らしいものばっかりだし。

細野 日本ではジューシィ・フルーツの「ジェニーはご機嫌ななめ」、あれがニューウェイブだよね。

ハマ ジューシィ・フルーツやP-MODEL、PLASTICSが日本のニューウェイブの筆頭ですよね。あと日本でニューウェイブというと……。

細野 あとはヒカシューかな。

安部 ヒカシューさんってニューウェイブなんですね。

ハマ カテゴリーで分けると、そうなるんじゃないかな。

──80年代初頭に盛り上がったニューウェイブブームって、いつぐらいからクールダウンしていったんでしょうか?

細野 テクノも同じだけど日本では1985年の「つくば万博」を境に下火になっていった。白けちゃったんだよね。

安部 白けちゃった……ですか?

細野 うん。僕はテクノの集大成が「つくば万博」だと思ってたわけ。いわゆる科学博覧会だ。それまでYMOって、そういうことやってたからね。テクノロジーの融合みたいなことをロマンチックにやってたんだけど、「つくば博」があまりにもダサくて(笑)。

ハマ なんか違うなってなったんですね。

細野 がっかりしちゃって、これでおしまいだと思って。一気に白けた覚えがあるね。

──それは細野さんだけではなく?

細野 たぶん僕だけかもしれないけどね(笑)。それからは煮詰まった時代になってきちゃったよね。ニューウェイブの盛り上がりも、それくらいまでだよ。

ハマ 確かに同じ音像だけど、アメリカでもイギリスでも、シンガー主体の音楽が流行りますもんね。もうちょっと元気なパワーポップみたいな。

細野 MORとかいろいろ出てくるし。

ハマ 80年代中盤は、俗に言う80'sの洋楽が一番盛り上がっている時期ですよね。

細野 そうなんだよ。主にアメリカで。だからニューウェイブっぽい人は少ないよね。Blondieとか、あとThe Carsっていうバンドもいたけど。YMOがアメリカでやったときにThe Carsが楽屋を訪ねてきて、みんな忙しくて無視したっていう(笑)。

ハマ ははは。

細野 アメリカではけっこう人気あったみたいだね。

ハマ 楽屋に来たけど無視したって、すごい話ですね(笑)。

細野 自分だけかもしれないけどね(笑)。当時のアメリカのニューウェイブバンドって、The Cars、Blondie、Devo、Talking Heads……ほかに誰がいたんだろう。なんか話し忘れてる人がいるんじゃないかな……(パソコンで検索して)あ、アンディ・パートリッジが出てきた。

──XTCはニューウェイブの重要バンドですね。

細野 XTCもすごくよかった。

ハマ 確かにXTCは忘れてましたね。XTC、すごく硬派でカッコいい。

YMOのシャツを着ていたThrobbing Gristle

──これまで、わりとポップで華々しいイメージのアーティストたちが話題に挙がりましたが、一方でニューウェイブにはアンダーグラウンドなバンドもたくさんいますよね。例えばThrobbing Gristleとか……。

細野 おお、それだ! 前回話題に挙がったYMOのシャツを着てたグループ。

──えっ! Throbbing GristleのメンバーがYMOのシャツを着てたんですか。 めちゃくちゃカッコいいんですけど、ポップさのかけらもないみたいな(笑)。

ハマ 聴いてみたい(笑)。

──ちょっと違うかもですけど、ジョン・ライドンのPublic Image Ltdと同じ系譜というか。

細野 怖い人たちだ(笑)。

ハマ安部 怖い人たち(笑)。

──Public Image Ltdもニューウェイブですよね。

細野 そういえばCanもそうだね。

ハマ あっ! 確かに! Canを忘れてた。ジャーマンプログレとも言いますけどね。オクラの缶のジャケットで有名な「Ege Bamyasi」っていうアルバムがある。

安部 Canもニューウェイブになるんですね。

ハマ うちのバンドのメンバーは、すごくCanが好きなんですよ。学生の頃よく聴いてたから逆に今出てこなかったな。僕はホルガー・シューカイが好きでした。ワンショルダーでムスタングのベース弾くんだよ。ストラップを、ちゃんと肩にかけないの。片方だけかけてさ。

安部 弾きづらいよね、それ?

ハマ めちゃくちゃ弾きづらい(笑)。なんであんなことするんだろうって。一時期真似してたもん。すぐやめたけど(笑)。

──しかしThrobbing GristleがYMOのシャツを着てたって、すごい話ですね。

ハマ すごい話ですね。

細野 ジャケットに写ってるみたいだね(※1981年に発表されたThrobbing Gristleのベストアルバム「Greatest Hits」の裏ジャケットでメンバーのジェネシス・P・オリッジが着用)。

安部 その後、仲よくなったりしたんですか?

細野 仲よくはならない(笑)。だけど喜んだよね。「着てるよ、着てるよ!」って(笑)。

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ニューウェイブの定義って?

読者の反応

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細野さんの記事で、スクリッティ・ポリッティの衝撃が語られていて、確かに言説上ではよく語られるんだけど、実際に聴いてみて、何がすごいのか意味がわかっていなかったのだけど、この記事でようやく理解。こういうサウンドはそれまで存在しなかったけど、みんな真似してあっというまに世俗化した、と

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