ZONE「secret base ~君がくれたもの~」ジャケット

20年後の8月 また出会えるのを信じて――ZONEのヒットの裏側と、短くも濃密な活動の記録

あれから20年、楽器を手にした少女たちの願いは今も人々の心の中に

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解散という結論を導き出した理由

翌2004年1月7日、ギターに加えてピアノも弾きこなす、歌唱力にも定評のあったTOMOKAが新たに加入し、新生ZONEがスタートした。即戦力であり、ZONEの選抜メンバーにギリギリまで残っていたこともあってメンバーからの信頼も厚かったTOMOKAの加入は、バンドのパワーアップに大きく貢献。“パワフル、ポップ、キュート”をテーマに一気に疾走する、その原動力となる。

新生ZONEのアーティスト写真。左から2番目がTOMOKA。

新生ZONEのアーティスト写真。左から2番目がTOMOKA。

2月28日にリリースされた3rdアルバム「N」は、前半が新生ZONE、後半が第2期の楽曲で構成されているため、新生ZONEとしての音楽的な進化は正直見えづらいところもあるのだが、アルバム曲としてレコーディングを進めていたスピード感あふれるポップロックナンバーの「卒業」を、メンバーの希望で急遽リードシングルとして発表したことにより、当時アーティストブック「ここから」でMAIKOが発言した「TOMOKAちゃんはTAKAYOちゃんの代わりではない。抜けたところを埋めるために入ったわけではない」という言葉の意味は、明確に伝わったのではないだろうか。

その証として夏には、ホールバージョンとライブハウスバージョンという2つのスタイルの公演が交錯するツアー「ZONE SUMMER LIVE 2004 ガツン!といっきまSHOW!!」にトライし、それぞれがボーカリストとして、プレイヤーとして、ZONEを構築する1人としてのグロウアップを結実させ、骨太かつ華のあるライブを展開。メンバー間の結束もさらに強固なものとなり、過去の自分たちを次々と塗り替えていく様はとても清々しいものだった。

しかし……2005年2月7日、春の全国ツアーも決定している中、MIZUHOの脱退表明によりZONEは解散することを決断する。

高校を卒業するタイミングで、駆け抜けてきた10代の日々を振り返りながら自分の未来を考えたい――そのMIZUHOの気持ちを受け入れ、一時は残りの3人で活動を継続することを選んだが、MIZUHOが参加する最後のシングル「笑顔日和」のジャケット撮影時に、3人がぞれぞれ「ZONEは4人だ」と感じたことが、最終的に解散という結論を選ぶきっかけとなった。

ティーンエイジャーたちの、迷いと苦悩と心に秘めた思いと声。けれども、ここでのそれは脆さとは少し異なる。「笑顔日和」のジャケット撮影でMAIKOが「ZONEはこういう雰囲気を持っているグループなんだな」と改めて感じたという、その“こういう雰囲気”が何物にも代え難いものであるからこそ、彼女たちは解散という道を選んだのだ。

2005年4月1日、「ZONE SPRING TOUR 2005~夏まで待てない!ZONE 桜ツアー~改め ZONE卒業コンサート」のツアーファイナル、日本武道館でのライブを最後に、惜しまれながらもZONEはメジャーデビューから約4年間の活動にピリオドを打つ。

“10年後の8月”の再会と、再びの別れ

時は流れ、「secret base ~君がくれたもの~」の中の願いの言葉――「10年後の8月 また出会えるのを 信じて」――の言葉どおり、ZONEはMIYU、MAIKO、TOMOKAの3人で、2011年8月に1カ月限定での再結成を果たす。そもそもはその年の3月に起きた東日本大震災を受けて、3人で札幌の街頭に立ち募金活動を始めたこと、チャリティライブを行ったことがきっかけであり、“10年後の8月”に向けた再結成の動きがあったわけではない。けれども、それはおそらく必然だったのだろう。願いは願いであって、約束ではなくとも。

2011年に再結成したZONEのアーティスト写真。

2011年に再結成したZONEのアーティスト写真。

8月10日、さまざまなアーティストがZONEの楽曲をカバーするトリビュートアルバム「ZONEトリビュート~君がくれたもの~」がリリースされた。そのアルバムの中には、ZONEの歴史を彩った名曲たちのタイトルを織り込んだ、メンバー3人の作詞によるZONEのひさびさのオリジナル曲「約束~August, 10years later~」も収録。14、15日には再結成ライブ「『10年後の8月…』ZONE復活しまっSHOW!!~同窓会だよ全員集合!~」が東京・赤坂BLITZにて開催された。この公演内で再結成の期間延長も発表されたが、10月31日にTOMOKAが体調不良による突然の脱退および引退を発表。以降はMIYUとMAIKOの2人で活動を継続していくことになる。

2人体制になったZONEのアーティスト写真。

2人体制になったZONEのアーティスト写真。

2人になったZONE。それでも活動の継続を決めたのは、彼女たちにとっても、もちろん支えてくれている人たちにとっても、ZONEという存在がかけがえのないものであることを知っているから。だからこそ2012年6月16日には、7年ぶりのシングル「treasure of the heart ~キミとボクの奇跡~」を発表し、全国ライブツアーも行ったのだ。

そう、知っていたはず。

しかし、2013年2月に所属事務所がMIYUとの契約を解除。MAIKOのみになったZONEは、4月7日の「ZONE FINAL EVENT」でその活動を完全終了する。“10年後”からの、短くも、さまざまな意味で濃密だった時間。20代になったメンバーたちが、ティーンエイジの頃とはまた異なる、個々が抱える、向き合う、身を置く現実と付き合いながらも、ファンの人たちの期待や希望に応えていた、ひととき。

あの再会のときから、また10年。“10年後の10年後”、20年後の8月がやってきた。柔らかなメロトロンの音色に導かれるように。

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