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細野ゼミ 4コマ目(後編) [バックナンバー]

細野晴臣とソウルミュージック

細野晴臣をビビらせたソウルミュージシャンとは? 伝説的アーティストとのエピソードに安部勇磨&ハマ・オカモト仰天

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細野晴臣、ドクター・ジョンに肩を揉まれる

安部 細野さんは歴史的な数々のアーティストとやりとりされてるんですね。アンビエントでもなんでもそうですけど。

ハマ 接点があるのはすごいですよね、やっぱり。

細野 まあ、すれ違ったりしてね(笑)。そんな中で僕が一番影響されたのはドクター・ジョンだ。

ハマ おー! ニューオリンズの! 魔法使いですよ。

一同 (笑)。

ハマ 呪術師でいいのかな? 土地に根付いている呪術を曲のテーマにしたりするような。ドクター・ジョン、カッコいいですよね。

細野 ドクター・ジョンとはYMOのときにレーベルメイトだったんだよ。「ホライゾン」っていうレーベルの。あるとき、プロデューサーだったトミー・リピューマのマンションの部屋に呼ばれたんだけど、そこにドクター・ジョンも来たんだよ。

ハマ ええ!

細野 僕はそれ以前に、ロニー・バロンっていうドクター・ジョンの弟分的なアーティストのアルバムをプロデュースしてたから、向こうが仲間意識を持ってくれて。「ロニー・バロンのお母さんや親戚が喜んでるよ!」って言ってくれた。それで帰りがけに、ドクター・ジョンが僕の肩を揉んで「ショービジネスには気を付けろよ」って(笑)。

ハマ安部 はははは(笑)。

ハマ うっわ、すごい話だなあ!(笑) ドクター・ジョンに肩揉んでもらったんですね。

細野 そう。

ハマ 何かのマジックに絶対かかってますね(笑)。

細野 確かに(笑)。彼はその後、神経症になっちゃってドラッグをやめて。ピアノの弾き語りライブとかで何度か来日したから、そのときは必ずお見舞いに行ってね。で、メディスンマンが好きなスマッジスティックっていうセージの棒をあげるとすごい喜ぶんだよ(笑)。さすがメディスンマンだなって(笑)。

ハマ やっぱ、そっちの人なんですね。

細野 あの喜びようったらね(笑)。だからうれしくて。

ハマ すごい話ですよね。それ全然知らなかったなあ。

細野 この話は本にも出てないね。ちなみにドクター・ジョンがすごくいいのはThe Metersとやってるときだからね。

安部 聴いてみます! The Metersもチェックしよう。

細野 ついでに話すと、彼らのプロデュースを手がけていたアラン・トゥーサンがこのスタジオに来たことあるよ(笑)。

一同 えー!!

ハマ それは対談とかですか?

細野 当時、痛い思いをしたんだよ。誰かが勝手にブッキングして、アラン・トゥーサンを呼んじゃって。

ハマ そんなことあるんですか?(笑)

細野 「アラン・トゥーサンがスタジオに来ますよ!」って突然電話がかかってきたから、急いで飛んでったわけ。そしたらアラン・トゥーサンは、どうもセッションをやるつもりなんだよ。

ハマ めちゃくちゃですね!(笑)

細野 でも、こっちは何も用意してないから(笑)。寝耳に水で、何もできないって言ったら「今度来るときはちゃんと用意してくれ」って言われて帰っちゃった(笑)。

ハマ えー、それで終わっちゃったんですか?

細野 そう。自分にとっては先生だから頭上がんなくて、ちょっと怖いよね。

ハマ 細野さんのスタジオに……。

安部 ゼミ長の先生が!(笑)

細野 ここにいたんだよ。

ハマ ブッキングした人、すごいですね。なんの手違いなのか。

細野 わからない。気を利かせたつもりだったんじゃないかな。

──音源化とかを想定していたんですかね?

細野 いやいや、そんな深いことじゃなくてノリで呼んじゃったんだと思う。

安部 すごいなあ(笑)。

細野 こっちは困ったけどね。ちゃんとやりたかった。

ハマ そうですよね。機会があるなら。

細野 いつか一緒にやりたいなと思ってたら亡くなっちゃったよ(2015年没)。

細野晴臣、ジェームス・ブラウンにビビる

──ソウルの大御所アーティストで言えば、細野さんはF.O.Eのレコーディングでジェームス・ブラウンとも共演してるんですよね。

細野 スタジオで「Sex Machine」を一緒にやったんだよ。

ハマ ジェームス・ブラウンってどんな感じなんですか?

細野 当時はちょっと落ち込んでた時期だね。もう歳取っちゃって、しばらくヒットもないし。そのあとにヒットした曲はなんだっけ?

──「Living in America」です。

細野 そうだ。それで返り咲いたけど、その前の低迷してた時期で。

──低迷期だったんですね。

細野 といっても、アトランタあたりのボールルームでライブをやると人がいっぱい来るしね。すごい人なんだけど、まあでも当時レコーディングはあんまりしてなかったよね。

ハマ 会話とかも、ちろんあったんですよね?

細野 いやもう恐れ多くてね(笑)。なんでこんな展開になっちゃったんだろうって(笑)。サックスのメイシオ・パーカーも来てるし。ビビるよね。

ハマ安部 (笑)。

細野 まだこっちも若いからさ(笑)。好きにやってくださいっていう。

ハマ いいなあ、細野さんの「ビビるよね」(笑)。

細野 なんか申し訳なくて。

ハマ 会ったのはその1回だけですか?

細野 そのあとアトランタまで行ってインタビューしたんだよ。

ハマ インタビューはすごい。

細野 でも出番前にちらっと話したけど興奮してたから話になんなくて(笑)。「Sex Machine!!」ってずっと連呼してるから(笑)。

ハマ安部 はははは(笑)。

安部 実際そっち方面がすごかったって話は聞いたことありますけど(笑)。

ハマ 「Sex Machine!!」って本番前に言ってるの、なんかモノマネの人みたいですね(笑)。

細野 インタビューどころじゃなかった(笑)。

細野 そういえば数年前にJBの伝記映画があったじゃない(「ジェームス・ブラウン~最高の魂(ソウル)を持つ男~」 / 2014年公開)。あれもけっこうよかった。

ハマ 面白かったですね。

細野 これも読者の人たちには観てほしいね。スタジオでのリハーサルの再現をやってるんだけど、JBがあのブラスのメンバーにクレームをつけるわけ。リズムが悪かったんだろうね。それで、「ブラスもドラムだよ!」って(笑)。

ハマ 「お前はなんのパートだ?」って聞くんですよね。で、「トランペットです」って言うと「お前もドラムだよ!」みたいな。

細野 そうJBにとっては全部ドラムなんだよ(笑)。

安部 ははは(笑)。

ハマ あとJBに「チーズバーガー買ってこい」って言われたらクビだって話知ってます?

細野 へえ、知らないなあ。

安部 知らない!

ハマ 「お前チーズバーガー買ってこい」って言われて人数分持ってくると、自分の代わりにほかの人がメンバーに加わってるんだって。

安部 へえ……!

ハマ 「チーズバーガー買ってこい」=クビみたいな。

細野 すごいな。付いてけない(笑)。

ハマ 実際、付いていけなくて全員離れちゃったみたいです(笑)。

一同 (笑)。

ソウルビギナーへのオススメは“聴きやすい&覚えやすい”モータウン

──ソウルミュージックについてお話をいろいろお聞きしてきましたが、最後に、ビギナーの人におススメするとしたらどのあたりのアーティストになりますかね?

細野 今日話した中でもいっぱい出てきてるし。

ハマ 入り口としてはモータウンがいいんじゃないですかね。

細野 うん、モータウンはちょうどいいね。

ハマ 設立60周年を記念して、2019年に3枚組のコンピレーションが出てるはずなんですよ。ソウルの入門編にはぴったりだと思います。

モータウン60

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細野 聴きやすいし、覚えやすいし。

安部 僕も今日の話を参考にして聴いてみます。

ハマ いいコンピでしたよ。50年代から80年代ぐらいまで代表曲が収録されていて。モータウンはオススメですね。聴いたことある曲も絶対あるだろうし。

細野 いいと思うね。モータウンは入りやすい。

細野晴臣

1947年生まれ、東京出身の音楽家。エイプリル・フールのベーシストとしてデビューし、1970年に大瀧詠一、松本隆、鈴木茂とはっぴいえんどを結成する。1973年よりソロ活動を開始。同時に林立夫、松任谷正隆らとティン・パン・アレーを始動させ、荒井由実などさまざまなアーティストのプロデュースも行う。1978年に高橋幸宏、坂本龍一とYellow Magic Orchestra(YMO)を結成した一方、松田聖子、山下久美子らへの楽曲提供も数多く、プロデューサー / レーベル主宰者としても活躍する。YMO“散開”後は、ワールドミュージック、アンビエントミュージックを探求しつつ、作曲・プロデュースなど多岐にわたり活動。2018年には是枝裕和監督の映画「万引き家族」の劇伴を手がけ、同作で「第42回日本アカデミー賞」最優秀音楽賞を受賞した。2019年3月に1stソロアルバム「HOSONO HOUSE」を自ら再構築したアルバム「HOCHONO HOUSE」を発表。この年、音楽活動50周年を迎えた。2020年11月3日の「レコードの日」には過去6タイトルのアナログ盤がリリースされた。

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安部勇磨

1990年生まれ、東京都出身。2014年に結成されたnever young beachのボーカリスト。2015年5月に1stアルバム「YASHINOKI HOUSE」を発表し、7月には「FUJI ROCK FESTIVAL '15」に初出演を果たす。2016年に2ndアルバム「fam fam」をリリースし、各地のフェスやライブイベントに参加。2017年にSPEEDSTAR RECORDSよりメジャーデビューアルバム「A GOOD TIME」を発表した。2019年に4thアルバム「STORY」を発表し、初のホールツアーを開催。近年は中国、台湾、韓国、タイでもライブを行うなど海外でも活躍している。

never young beach オフィシャルサイト
never young beach (@neveryoungbeach)|Twitter

ハマ・オカモト

1991年東京生まれ。ロックバンドOKAMOTO'Sのベーシスト。中学生の頃にバンド活動を開始し、同級生と共にOKAMOTO’Sを結成。2010年5月に1stアルバム「10'S」を発表する。デビュー当時より国内外で精力的にライブ活動を展開しており、最新作は2020年8月にリリースされたテレビアニメ「富豪刑事 Balance:UNLIMITED」のエンディングテーマ「Welcome My Friend」を収録したCD「Welcome My Friend」。またベーシストとしてさまざまなミュージシャンのサポートをすることも多く、2020年5月にはムック本「BASS MAGAZINE SPECIAL FEATURE SERIES『2009-2019“ハマ・オカモト”とはなんだったのか?』」を発売した。

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