「VTuber楽曲大賞」会場の様子。

栄冠は誰の手に?約3500人が投票した「VTuber楽曲大賞2020」結果発表

2大事務所が上位を占める中、 “個人勢”も活躍した2020年ランキング

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2019年に初めて開催された「VTuber楽曲大賞」の結果発表イベントが、今年も12月3日に東京・LOFT9 Shibuyaで行われた。2019年11月28日から2020年11月27日までに発表されたVTuberのオリジナル曲を対象に、一般投票で人気曲の年間ランキングを決めるというこの企画。今年も昨年と同様に、ミュージックビデオのクオリティから選ぶ「MV部門」と、曲のよさから選ぶ「楽曲部門」の2部門で投票を受け付けた。なお今年の総投票数は、昨年の2045票から大きく伸ばして3448票となった。

2019年の第1回はMV部門、楽曲部門共に、1位はHIMEHINAの「ヒトガタ」、2位はにじさんじ「Virtual to LIVE」となったが、VTuber人口がさらに増えた2020年はどんな曲が支持されたのか。この記事では、発表されたランキングと共にイベント登壇者たちのコメントを紹介する。

取材・/ 橋本尚平

VTuber楽曲大賞 楽曲部門

今回の開票イベントには、VTuber事務所ホロライブ内の音楽レーベル・イノナカミュージックを主宰するツラニミズ氏、VTuber音楽イベント「VIRTUAFREAK」主催者でクリエイティブユニオン・CAMBR代表取締役の飯寄雄麻氏、編集者でライターの森山ド・ロ氏、バーチャルトラックメイカー&ラッパーのワニのヤカ(YACA IN DA HOUSE)という昨年と同じ面々に加えて、東京・秋葉原エンタスの責任者でInterFM897「Vtuber Music DJ's」のナビゲーターを務めるTAKUYA the bringerも登壇。会場でしか聞けない裏話なども盛り込みつつ、2時間半にわたってトークが繰り広げられた

左から飯寄雄麻氏、森山ド・ロ氏、TAKUYA the bringer氏。

左から飯寄雄麻氏、森山ド・ロ氏、TAKUYA the bringer氏。

「楽曲部門」の1位から30位までのランキングは以下の通り。

  1. NEXT COLOR PLANET / 星街すいせい
  2. それゆけ!学級委員長 / 月ノ美兎
  3. Say!ファンファーレ! / 白上フブキ
  4. 失礼しますが、RIP▽(▽はハートマーク) / Mori Calliope
  5. Ahoy!! 我ら宝鐘海賊団☆ / 宝鐘マリン
  6. D.I.Y. / BOOGEY VOXX(Prod by D.watt)
  7. アンチグラビティ・ガール / 月ノ美兎
  8. 私論理 / 花譜
  9. イツライ / 緑仙
  10. 食虫植物 / 理芽
  11. Mr.VIRTUALIZER / HIMEHINA
  12. 255 / MonsterZ MATE
  13. ヘテロスタシス / ChroNoiR
  14. 戸惑いテレパシー / 花譜
  15. 畢生よ / 花譜
  16. VOLTAGE / Rain Drops
  17. WITHIN / 加賀美ハヤト
  18. 52Hzの鯨 / 隣町本舗
  19. HOWL / 天開司
  20. ラブしい / Kizuna AI×花譜(Prod. 川谷絵音)
  21. haze / メリッサ・キンレンカ
  22. 光の向こうへ / HACHI
  23. こだまのうた / 羽子田チカ
  24. LET IT BURN / ChroNoiR feat.加賀美ハヤト
  25. 危ノーマル / 花譜
  26. サクラカゼ / さくらみこ
  27. Beep☆CARAMEL / MonsterZ MATE
  28. Last Judgement / MonsterZ MATE
  29. 幽体離脱 feat.チャンチョ&ぽんぽこ / ピーナッツくん
  30. オントロジー / Rain Drops

ホロライブの星街すいせい、白上フブキ、Mori Calliope(森美声)、宝鐘マリン、にじさんじの月ノ美兎と、楽曲ランキングは2大事務所のアーティストが上位を占め、その人気と勢いを感じさせる結果に。そんな中でセルフマネジメントのいわゆる“個人勢”であるBOOGEY VOXXの「D.I.Y.」が6位にランクインし、2人の健闘ぶりに登壇者たちは口々に「マジですごくないですか」と喜びの声を上げていた。

飯寄氏は「2020年にBOOGEY VOXXが現れてくれてよかった。『バーチャルシーンって大丈夫かな?』という思いもあったけど、BOOGEY VOXXがバーチャルシーンでこういうものを作ってくれたのはありがたかった」と振り返り、ツラニミズ氏は「BOOGEY VOXXが引っ張ってきた人たちで、今年1年のシーンがすごく変わったし、それはめちゃくちゃデカい。BOOGEY VOXXたちとその周りのクルーの活動がカルチャー全体の層を厚くしたところがある。VTuberのアンダーグラウンドの中心にはBOOGEY VOXXがいた」と評価。TAKUYA氏は「日本のクラブで間違いなく今年一番かかったVTuberの楽曲。この曲をDJがプレイすることでバーチャルアーティストに興味を持った人がすごく増えたので、本当に歴史的楽曲だと思う」と語った。なお“個人勢”としてはこのほかに、隣町本舗の「52Hzの鯨」が18位にランクインしている。

10位に入った理芽「食虫植物」はTikTokで火が点き、YouTubeでMVが2200万再生されるという、ほかのVTuber楽曲とは異なった“バーチャル版「香水」”とも言えるバズり方をしている楽曲。ワニのヤカ氏はこれについて「今年のグラミー賞にはマデオンとケイトラナダとDisclosureがノミネートされていて、アメリカではビリー・アイリッシュが人気だけど、日本にはそういう音楽のヒットはまだない。そんな中で、ビリー・アイリッシュ的な歪み具合とローの、少ない楽器でシンプルに作られた『食虫植物』がヒットしたから、僕らは『ああ、やっとこういう音楽が聴いてもらえる』って思えて感謝しているんです」と楽曲制作側からの感想を述べた。

VTuber楽曲大賞 MV部門

MV部門の1位から20位までのランキングはこちら。

  1. それゆけ!学級委員長 / 月ノ美兎
  2. Mr.VIRTUALIZER / HIMEHINA
  3. NEXT COLOR PLANET / 星街すいせい
  4. Beep☆CARAMEL / MonsterZ MATE
  5. Say!ファンファーレ! / 白上フブキ
  6. 星凪の地 / 羽子田チカ×Niwa
  7. ゴールデンスパイス / GEMS COMPANY
  8. ラブしい / Kizuna AI×花譜(Prod. 川谷絵音)
  9. 8月31日 / エルセとさめのぽき
  10. アンチグラビティ・ガール / 月ノ美兎
  11. ヘテロスタシス / ChroNoiR
  12. 私論理 / 花譜
  13. 失礼しますが、RIP▽(▽はハートマーク) / Mori Calliope
  14. Throwback / LADY'S ONLY feat. Marpril
  15. Ahoy!! 我ら宝鐘海賊団☆ / 宝鐘マリン
  16. VOLTAGE / Rain Drops
  17. POLYFULL! / まりなす(仮)
  18. Drippin' Life / ピーナッツくん
  19. まぼろし / エルセとさめのぽき
  20. そして檸檬は爆発する / 浮遊信号

月ノ美兎のデビュー曲「それゆけ!学級委員長」が1位、昨年2冠を達成したHIMEHINAの「Mr.VIRTUALIZER」が2位、そして今年の楽曲部門1位だった星街すいせい「NEXT COLOR PLANET」が3位という結果になった。4位のMonsterZ MATE「Beep☆CARAMEL」のMVには、総勢52名のVTuberが友情出演。会場ではこのMVに登場するVTuberたちの裏設定についての考察で盛り上がった。MonsterZ MATEについて飯寄氏は「第一人者であり、道を切り拓いている人たちという印象がすごくある。今バーチャルシーンで活動している人は、ある程度舗装された道の上を歩いていることを自覚して、MonsterZ MATEのように新しいことを切り拓くエレルギーを持って活動してほしい」と語っていた。

6位の羽子田チカ×Niwa「星凪の地」と7位のGEMS COMPANY「ゴールデンスパイス」は、いずれも楽曲部門にはランクインしていない作品。飯寄氏は「星凪の地」のMVについて「表現したいことが詰まりまくってる。技術よりもアニメーションのすごさよりも、クリエイティビティが勝っている。バーチャルとか関係なく、作り手の思いに感動を覚えてしまった」と絶賛し、羽子田チカに対しても「去年もノミネートされてるんですけど、表現したいことがちゃんと続いてるのはすごくいいことだと思う」と語っていた。

※動画は現在非公開です。

GEMS COMPANYの「ゴールデンスパイス」に関しては、ツラニミズ氏は「振り付けの難易度を落としたことで、見え方の幅にゆとりができた。そのおかげで、ダンスだけでカットを回しても画になる。これがアイドルなんです」と解説。飯寄氏は「もちろん、もともと全員かわいいんだけど、何度も観たくなるっていうのは、かわいくなるように見せてるMVだからです」と熱弁した。このほか登壇者たちはこのMVについて、TikTokのようにモーションに合わせて流れるエフェクトや、リリックビデオの流れを汲んだような“演出要素としての歌詞”などにも言及。またツラニミズ氏は楽曲自体についても「主語がデカくて明るい曲って、2020年の締めくくりとして選ぶべき曲だし、来年もっと聴きたくなる曲なんだろうと思う。今年は『イベントができない』『クラブやライブハウスがしんどい』みたいな閉塞的な話がどうしても多かったけど、来年は開いていく年になると思ってる。そうなるとみんなはディスコっぽい明るい曲調を聴きたくなるだろうし、そのときに『ゴールデンスパイス』は重要な楽曲になると思う」とコメントした。

ツラニミズ氏コメントと個人ベスト5

今回、より広く開かれた投票になったという感覚だったんですけど、現地はより狭い飲み会みたいになってて、このギャップはすごい面白いなと思いました。たぶんやり続けることに意味があると思うので、来年もやりたいなと思います。

飯寄雄麻氏コメントと個人ベスト5

飯寄雄麻氏

飯寄雄麻氏

2年連続での「VTuber楽曲大賞」の開催おめでとうございます。すごく流動的なこういったシーンで、ランキングから何か新しいことを見いだせるのはすごく貴重な機会だと思うので、来年以降も継続して続いていってほしいです。

森山ド・ロ氏コメントと個人ベスト5

森山ド・ロ氏

森山ド・ロ氏

よくも悪くもランキングらしくなってきたなという印象です。個人勢が上位に上がってきた例もありますし、このランキングを見てVTuberアーティストのモチベーションにつながればいいなと思いました。

TAKUYA the bringer氏コメントと個人ベスト5

TAKUYA the bringer氏

TAKUYA the bringer氏

来年は今年よりもさらにいろんなアーティストさんがいろんな楽曲をリリースされると思います。投票者をもっと多くするためにも、皆さん来年もバーチャルアーティスト業界の布教活動をよろしくお願いいたします。

ワニのヤカ(YACA IN DA HOUSE)氏コメントと個人ベスト5

ワニのヤカ

ワニのヤカ

2回目も呼んでいただき誠にありがとうございます。今回は作詞作曲家目線でいろいろ話せたかなと思います。2021年もVTuber界隈のみならずいろんな場所で曲を作っていけたらなと思います。

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