左から宮城太郎氏、出羽香織氏。

令和のアーティストとSNS 第6回 [バックナンバー]

TikTok宮城太郎&LINE MUSIC出羽香織が振り返る、2020年の音楽シーン

歌詞のインパクトと共感が生んだエモのスパイラル

8

78

この記事に関するナタリー公式アカウントの投稿が、SNS上でシェア / いいねされた数の合計です。

  • 6 14
  • 58 シェア

TikTokには偶然の出会いがある

──今年TikTokで流行ったアーティストの皆さん、インタビューで口をそろえて「こんなにバズるとは思わなかった」と言いますよね。無名だった人でも一気に有名になれるのがTikTokというSNSの大きな特徴のように思うのですがいかがですか?

宮城 TikTokは、フォロワーがゼロでも、初めて上げた1本目の動画でもバズる可能性があるのが特徴なので、新規のファンを獲得するのに向いてるかもしれないです。ほかのプラットフォームだと基本的にフォローしている人の投稿がタイムラインに流れてくるので、偶然の出会いが少ないですよね。TikTokはまったく予期せぬ角度からボール飛んでくるので。川崎鷹也さんの「魔法の絨毯」という曲があるんですけど、その曲が最初にバズったのは無名のカップルが上げてる動画だと本人が言っていて。なんでその動画がバズったのかわからないんですけど、とにかくどの動画がバズるかわからないので、思いもかけないところから新しい何かが生まれる可能性はありますね。

出羽 私はユーザーさんのピュアさにも支えられてるんじゃないかなと思います。ほかのSNSだと内容によっては「こんなの上げたらディスられたり炎上したりするんじゃないか」という心配もあると思うんですけど、TikTokはそういうことがないとユーザーの子たちは安心してますよね。例えば「これなんて曲ですか?」って普通に質問しますし。ほかのSNSだったら「こんなこと知らないの?」みたいなリアクションを気にして聞けないこともあると思うんですけど、たぶんユーザー同士の信頼感があるから「この曲なんて曲ですか? すごくいいですね」っていうコミュニケーションが発生しやすいのかなって。

宮城 昔、学校で音楽詳しい人がよく「今流行っている曲は『◯◯』だよ」って教えてくれたと思うんですけど、アプリ内にもそういう人がいるし、「みんな知らないだろうけど俺はこの曲使ってるよ」みたいな感じでセンスのよさをアピールしている投稿者とかもいて、そういうところも面白いですね。

──TikTokとしてギスギスしない雰囲気作りを心がけている部分もあるんですか?

宮城 いや、そこはもうユーザーがのびのびとやっていただければよくて、僕らがタッチすることはほとんどないですね。

出羽 自然とバズるから面白いですよね。大人が何かやろうとすると流行らなかったり(笑)。

宮城 そうそう、思いっきりスベったりするので。

出羽 自然発生的に名もなきアーティストの曲がピュアにバズるのがすごくいいというか、そこに大人が介入したらたぶんユーザーも離れちゃいますよね。

左から出羽香織氏、宮城太郎氏。

左から出羽香織氏、宮城太郎氏。

TikTokに対するイメージが変わってきた

──ひと口にTikTokでバズると言っても、アーティストの楽曲が弾き語りのカバー動画として流行るパターンと、BGMとしてユーザーにいろんなシチュエーションで使われて流行るパターンとあるのかなと思うんですけど、そのあたりはいかがでしょう?

宮城 パターンで言うと、何か特定のパターンがあるというより、もう無数にある気がします。あとでこの楽曲はこれで盛り上がったんだなってわかるんですけど、最初からわかるかというとわからないですね。

出羽 これは何型だねっていう法則みたいなものはないということですね。

宮城 歌詞で言うと、shimamoさんの「YOU」という曲が去年すごく投稿数を集めたんですね。「YOU」はラブソングなのでたぶん好きな人を思い描いて書かれた曲なんですけど、ユーザーが“YOU”をペットでも親でも友達でも好きなように解釈して多様な動画が生まれたんです。ほかにも大原櫻子さんの「大好き」という曲で大好きなごはんを撮る人もいたりして。「愛してる」とか「好き」とか、そういう歌詞を書くとユーザーがいろいろなシチュエーションで使ってくれるんですよね。グルメ動画に使ってくれるかもしれないし、風景動画に使ってくれるかもしれない。今年はより具体的な歌詞が盛り上がったなという印象があります。

出羽 動画にリリックが乗りますもんね。

宮城 そう。その具体的な強さを求めるというか。例えばさっきも話に挙がったRin音さんの「Loadingで進まない毎日」もそうですね。

──アーティストがTikTokに新規参入するケースも増えて来ていると思いますが、そのあたりはどう捉えていますか?

宮城 最近アカウントを開設していただいた方で言うと福山雅治さんとかそうですね。前は「アカウント開設しても何を上げていいかわからない」とか「踊らなきゃいけないんですか?」と質問されることが多かったんですけど、今年はそういう質問もなくて、TikTokに対するイメージもだいぶ変わったかなと思いますね。福山さんはまだ顔出ししないで弾き語り動画を上げられています。認証マークが付いていなかったら本当に福山雅治さんなのか疑われる状態ですけど(笑)、おそらくご本人が面白がってやられているんでしょうね。そういうふうに、TikTokは自由だということをわかっていただけているのかなと思います。

@masaharu_fukuyama

明日Mステ、バズリズム2。福 #福山雅治   #心音 #リモラブ #Mステ #バズリズム2

♬ オリジナル楽曲 - 福山雅治

──なるほど。キャリアのあるアーティストで言うとナオト・インティライミさんもけっこう早い段階からやられていますよね。

宮城 ナオトさんはTikTokにハマっていただいた方の1人で、今年に入ってものすごい勢いで上げ始めていただいて(笑)。TikTokの中に飛び込んでいるというか、あのナオトさんみたいにキャリアを確立された人があえてこっちに飛び込んでくるみたいなパターンでコンテンツも面白いので印象的ですね。

@naotointiraymi

あらためて#自己紹介 させてー #よく聞かれる質問 #みんなに見せたい動画 #WHOA #ナオトインティライミ #naoto

♬ son original - Sergi Aliberch🥀

LINE MUSICとTikTokの親和性

──いくつかあるサブスクサービスの中でもLINE MUSICとTikTokの親和性が高い印象があるんですが、実際どうなんでしょう?

出羽 TikTokで流行った曲で、LINE MUSICで初めてチャート1位になったと言っていただくことはよくありますね。おそらくTikTokで音楽を敏感にキャッチするのって女子高生とか若年層が多くて、LINE MUSICも同じ層のユーザーが多いので連動しているんだと思います。LINE MUSICでは女子高生を集めて最近のトレンドについて話す「LINE MUSIC部」という定例会を毎月やっているんですけど、「この曲どうやって知ったの?」って聞くと「全部TikTok」みたいなことがあって。TikTokでまず曲を知って、よく聴くからLINE MUSICで調べて再生をするという流れがすごく多いんです。レーベルさんにも新人を探すんだったらTikTokとLINE MUSICのチャートを常に照らし合わせたほうがいいと言っていただいています。

──LINE MUSICの中にTikTokのプレイリストもありますよね。

宮城 TikTokで人気のプレイリストを、再生回数に応じたランキングでお渡しさせていただいています。

出羽 毎週更新しているんですけど、すごく人気ですね。TikTokで聴いた曲がまとまっているのがユーザーにとっても便利みたいです。

出羽香織氏

出羽香織氏

次のページ
カバー動画の投稿に対する敷居が下がっている

読者の反応

  • 8

Kiyoshi @Kiyoshileo

チェック → 令和のアーティストとSNS 第6回 TikTok宮城太郎&LINE MUSIC出羽香織が振り返る、2020年の音楽シーン https://t.co/k4j86315W3

コメントを読む(8件)

瑛人のほかの記事

リンク

あなたにおすすめの記事

このページは株式会社ナターシャの音楽ナタリー編集部が作成・配信しています。 瑛人 / Rin音 / 優里 / オレンジスパイニクラブ / 福山雅治 / ナオト・インティライミ / りりあ。 / 川崎鷹也 / もさを。 / さなり の最新情報はリンク先をご覧ください。

音楽ナタリーでは国内アーティストを中心とした最新音楽ニュースを毎日配信!メジャーからインディーズまでリリース情報、ライブレポート、番組情報、コラムなど幅広い情報をお届けします。