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細野ゼミ 1コマ目(後編) [バックナンバー]

細野晴臣とアンビエントミュージック(後編)

細野流アンビエントの定義とは? “ゼミ生”安部勇磨(never young beach)&ハマ・オカモト(OKAMOTO'S)と考える

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細野晴臣サブリミナル効果

──前後編にわたってお話を聞いてきましたが、お二人は細野さんなりのアンビエント感はつかめましたか?

安部 ああ、やっぱり細野さんだ、みたいな。好きなことと向き合って楽しみながら作っているからこそ、皆さんが細野さんの音楽に惹かれるのかなと思いました。真面目にやればいいというわけではない。

ハマ アンビエントが、これまでやられてきたことの大きな部分を占めているんだな、というのがよくわかりました。

細野 うん、僕にとっても大事な時期だったかな。

ハマ 細野晴臣の音楽という部分をかなり担っているんですね。90年代に意識的にやっていた時期も、その前後もアンビエントが占めているんだなと思って、連載の第1回らしいなと。あと勇磨が言った通り、細野さんはその都度、興味のあるものや好きなものと純粋に向き合って自分の音楽に取り入れられているから、アンビエント的な作品を出しても「何これ?」とはならないんでしょうね。きちんとした流れがあるから。

安部 それ、すっごい思う。細野さんって何をしても細野さんなんだよね。で、聴く側にも免疫があるから。細野さんは自分が好きなことを常に追求していて、聴き手がそれを理解するという関係性がしっかりできあがってるんだなって思う。

ハマ 月日も大事だよね。続けてきてるからこそというのはあると思う。だから俺らも好きなことを追求し続けるしかないんだよ。

安部 そうだね。

細野 うん、それでいいんだよ。

ハマ あと細野さんのサブリミナル効果みたいなのは自分の中でずっとあるんだよね。だから何をやっても違和感がないというか。

安部 それ、わかる! 当たり前にある。

ハマ だから「万引き家族」のサントラも筋が通ってる。細野さんはあれをアンビエントとして作ってないと思うけど。

安部 僕、最近ずっと聴いてます。

細野 ホント?

ハマ その筋の通り方、細野晴臣サブリミナル効果を僕らは常に感じてるんです。

細野 邪魔じゃないかな?

ハマ そんな嫌なチラつきではないです(笑)。それはすごくあるんだなと、今日お話を聞きながら思いました。

細野 でも、みんなが突然アンビエントやり出したら似合わないよ。

ハマ 自分の中に源流がないから。

細野 アンビエントに飛ぶ前に、自分の音をいかに作っていくか。そこからみんなが喜ぶような音に変えてていく。音がやっぱり大事かな。今、僕も自分の音がダメだなと思っていて、ちょっと変えようとしてるんだけど。

「細野ゼミ」の卒論は……

ハマ 今日のお話を聞いた以上、アンビエントというものを前より意識するようにはなると思いますけど、いざ自分が作るかというと話は別ですよね。「アンビエントに挑戦!」って、めちゃめちゃダサいと思うので(笑)、それはやらないでおこうかなと。勇磨のほうが自然にやれそう。

安部 実は今そういうものを勝手に作ってて。YAMAHAのCS-60を弾きながら作ってるんですけど、お客さんに向けてとか、そういう気持ちでは作っていないんですよね。そういう意識になるとできないことも出てくるし。そうなってくると、もう個人でやるしかないのかなって。コロナ禍以降、気持ちに変化があって「音楽をやるってどういうことなんだろう?」って思いながら作ってるんです。それをいつか細野さんに聴いてほしいなと思ってるんですけど。

細野 それ聴かせてよ。

安部 えっ!

細野 この連載は「細野ゼミ」だから。提出して。

──言い忘れていましたが、この連載では最後に卒論もあります。

安部 えええ!

ハマ 卒論あるんですか(笑)。

──はい。卒論をクリアしないと卒業はできません。

ハマ じゃあ、一生提出しないようにしようかな(笑)。

安部 でも卒論を出して細野さんにちょっと怒られたい気もするな。「これはダサいよ」って言われたいかも。

ハマ それはそれでいいな(笑)。

──卒論の代わりに手紙を出すとかはダメですよ。

ハマ 直談判ですね。

細野 僕、大学の頃出したよ。

──それは反面教師ということで(笑)。

ハマ 次回以降は、僕と勇磨が交互に違う授業を受けるんですよね。

──その予定ではあったのですが、当面はゼミ形式で進められたらと思っています。その都度、細野さんと話してみたいジャンルなどがあれば事前にお聞かせください。

ハマ それをひねり出すのに悩んじゃうなあ。

安部 僕は細野さんの機材とかを見たいです。レコーディング風景とか、マイクと口の距離とか、そういうのを知りたい。シンセサイザーをどうやって録ってるのか、とか。

──卒論は曲作りとかにします?

安部 すごい!

細野 僕が添削するよ。

安部 赤ペンでピーッとか。

ハマ 細野さんが何か書くたびに怯えるという(笑)。

安部 でもうれしいかも。そんな機会はないから。

ハマ FedExで音源のファイル送ろうよ。メールじゃなくて。

安部 ははは(笑)。それか実技でいくか。

ハマ 連載のゴールとしてはめちゃめちゃいいですね。

細野 いいね。楽しみだな。

細野晴臣

1947年生まれ、東京出身の音楽家。エイプリル・フールのベーシストとしてデビューし、1970年に大瀧詠一、松本隆、鈴木茂とはっぴいえんどを結成する。1973年よりソロ活動を開始。同時に林立夫、松任谷正隆らとティン・パン・アレーを始動させ、荒井由実などさまざまなアーティストのプロデュースも行う。1978年に高橋幸宏、坂本龍一とYellow Magic Orchestra(YMO)を結成した一方、松田聖子、山下久美子らへの楽曲提供も数多く、プロデューサー / レーベル主宰者としても活躍する。YMO“散開”後は、ワールドミュージック、アンビエントミュージックを探求しつつ、作曲・プロデュースなど多岐にわたり活動。2018年には是枝裕和監督の映画「万引き家族」の劇伴を手がけ、同作で「第42回日本アカデミー賞」最優秀音楽賞を受賞した。2019年3月に1stソロアルバム「HOSONO HOUSE」を自ら再構築したアルバム「HOCHONO HOUSE」を発表。この年、音楽活動50周年を迎えた。2020年11月3日の「レコードの日」には過去6タイトルのアナログ盤がリリースされる。

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安部勇磨

1990年生まれ、東京都出身。2014年に結成されたnever young beachのボーカリスト。2015年5月に1stアルバム「YASHINOKI HOUSE」を発表し、7月には「FUJI ROCK FESTIVAL '15」に初出演を果たす。2016年に2ndアルバム「fam fam」をリリースし、各地のフェスやライブイベントに参加。2017年にSPEEDSTAR RECORDSよりメジャーデビューアルバム「A GOOD TIME」を発表した。2019年に4thアルバム「STORY」を発表し、初のホールツアーを開催。近年は中国、台湾、韓国、タイでもライブを行うなど海外でも活躍している。

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ハマ・オカモト

1991年東京生まれ。ロックバンドOKAMOTO'Sのベーシスト。中学生の頃にバンド活動を開始し、同級生と共にOKAMOTO’Sを結成。2010年5月に1stアルバム「10'S」を発表する。デビュー当時より国内外で精力的にライブ活動を展開しており、最新作は2020年8月にリリースされたテレビアニメ「富豪刑事 Balance:UNLIMITED」のエンディングテーマ「Welcome My Friend」を収録したCD「Welcome My Friend」。またベーシストとしてさまざまなミュージシャンのサポートをすることも多く、2020年5月にはムック本「BASS MAGAZINE SPECIAL FEATURE SERIES『2009-2019“ハマ・オカモト”とはなんだったのか?』」を発売した。

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ハマ・オカモトが参加する音楽ナタリーでの細野晴臣さん連載企画「細野ゼミ」1コマ目(後編)が公開されました。
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