LOW IQ 01と松田“CHABE”岳二。

渋谷系を掘り下げる Vol.9 [バックナンバー]

対談:LOW IQ 01×松田“CHABE”岳二

AIR JAM世代とのクロスオーバーを語る

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2000年代、ムーブメントの終焉

──2000年には千葉マリンスタジアムで「AIR JAM 2000」が開催されました。Hi-STANDARDの活動休止もあり、ムーブメント的にはあそこでひと区切りついた感覚がありますが、当時を振り返ってみていかがでしょうか?

LOW IQ 01 俺は自分のユニットのMASTER LOWでCHABEたちと一緒に出たんだけど、やっぱり「AIR JAM 2000」で、90年代中盤からの流れにひと区切りついたようなところはあったよね。2000年代はそれぞれのバンドが違うステージに向かっていったような気がする。世の中の音楽的にも、ギターの音が歪んでたのが徐々にシャリシャリしてきて。音楽は常に変わっていくものだし、時代の流れもあったと思うんだよね。

──渋谷系界隈も、小沢健二さんが98年以降、表立った活動を休止したり、ピチカート・ファイヴが2001年に解散したりとさまざまな変化がありました。TOKYO No.1 SOUL SETも99年から実質活動休止状態に突入しましたが、以前その頃の話を川辺ヒロシさんに聞いたとき、「90年代が終わってパーティが1回終わった感じがした」と話されていました。

CHABE ああ、その感覚はすごくわかる。

LOW IQ 01 俺もそういう感じがした。俺らの周りは世代的にみんな2000年前後に30代に突入したんだよね。20代のエネルギーを90年代に使っちゃって、2000年代は、みんなそこからちょっと大人になっていくわけよ。何も考えないで走ってきたけど、そこで一旦立ち止まって、自分のやりたい音楽とか立ち位置を見つめ直したというか。あの頃突っ走ってた連中が、「これからどうしていこうか」と考え始めたのが2000年ぐらいだったんだと思う。

LOW IQ 01

LOW IQ 01

渋谷系とAIR JAM世代の共通点

──渋谷系とAIR JAM世代のアーティストの共通点をあえて挙げるとするとなんだと思いますか?

LOW IQ 01 うーん……わかった! ただの音楽好き!

CHABE そうだね(笑)。

LOW IQ 01 いや、マジで。その一言に尽きると思うよ。音楽とお酒が好きな人が多かっただけ(笑)。それが混ざるとこうなるんだよ。

CHABE でも僕も90年代初頭にレコードショップ(ZEST)で働いていたり、今思えば渋谷系カルチャーのど真ん中にいた感じだけど、実際自分たちが渋谷系だとは思ってなかったよね。特に渋谷系という言葉が出始めた頃は、「僕ら渋谷系って言うんだ?」って感じだった(笑)。

松田“CHABE”岳二

松田“CHABE”岳二

LOW IQ 01 CHABEもそうだし、カジ(ヒデキ)くんやCrue-L Records周辺の人たちとか、みんな洋楽が大好きで自分たちで音楽をやったら、たまたま渋谷系って呼ばれちゃった感じじゃん。

CHABE ホント、そんな感じ。

LOW IQ 01 で、スタイリッシュな雰囲気もあったから、女子たちが王子様扱いしたわけで。俺らも同じく洋楽好きだったんだけど、みんな上半身裸だから王子様って感じじゃなかったよね(笑)。

CHABE ははは(笑)。でも渋谷系とAIR JAM世代って完全に別のシーンとして捉えられてるけど、僕らからすると全然近くにいた感覚なんだよね。

LOW IQ 01 そうだよ。一見対極っぽい感じだけど、音楽好き同士つながってたし。

カジヒデキのサポートでパーカッションを演奏する松田“CHABE”岳二。1996年、下北沢SLITSにて。(写真提供:松田“CHABE”岳二)

カジヒデキのサポートでパーカッションを演奏する松田“CHABE”岳二。1996年、下北沢SLITSにて。(写真提供:松田“CHABE”岳二)

1997年、Neil and Iraizaのライブのバックステージにて。(写真提供:松田“CHABE”岳二)

1997年、Neil and Iraizaのライブのバックステージにて。(写真提供:松田“CHABE”岳二)

──この連載に登場したドレスコーズの志磨遼平さんやカジヒデキさんが「渋谷系はパンクにも相通じる若者によるカウンターカルチャーだった」と言われているんですが、そのあたりはどう捉えていますか。

CHABE 僕もそうだと思います。個人的には特にフリッパーズ・ギターの存在が大きくて。あの2人の態度や発言がまさにパンクでしたからね。それまでの旧態依然とした音楽シーンに牙をむくっていう(笑)。それでいてスタイリッシュで。僕もすごく影響を受けました。

LOW IQ 01 俺も渋谷系はパンクカルチャーだと思う。モッズもそうだけど、それまでの古いカルチャーに対するカウンターという意味でもパンクだったと思うね。実際、パンクみたいに音楽シーンに大きな影響を残したわけだし。

──何かをひっくり返すパワーがあったってことですよね。CHABEさん的に捉えると、渋谷系ってどんなものだったと思いますか。

CHABE さっきイッちゃんが言ったように、めちゃくちゃ音楽を好きな人たちが、それぞれのやり方で世界中のいろんな時代の音楽を吸収して、それをアウトプットする中で生まれたカルチャーというイメージですね。

──引用と再構築のカルチャー。

CHABE そう。だからそういう意味ではSUPER STUPIDも渋谷系ですよ(笑)。カントリーだとか、いろんな音楽の要素が入っているし。

──実際、ZESTでもSUPER STUPIDのアナログ盤を取り扱っていました。

LOW IQ 01 渋谷系周辺の人たちがSUPER STUPIDのレコードをDJでかけてくれたのは、すごくうれしかったよね。あと、ツボイくん(Illicit Tsuboi)がSUPER STUPIDのレコードを2枚がけしてたのも衝撃だったな(笑)。

──では最後に、イチさんが渋谷系カルチャーから学んだことを聞かせてください。

LOW IQ 01 穏やかさですかね(笑)。内に秘めた男らしさというか。渋谷系周辺のアーティストって見た目のイメージで文科系っぽく見える人も多かったけど、みんな本当に音楽が大好きで、熱いこだわりを持ってたじゃん。むしろゴリゴリなロックな人よりも頑固なんじゃないか?って思うくらいに(笑)。自分のやりたいことを誠実に突き通していく大切さを俺は渋谷系から教わったね。

LOW IQ 01と松田“CHABE”岳二。

LOW IQ 01と松田“CHABE”岳二。

LOW IQ 01

10代の頃から数々のバンドでベース、ボーカルなどを担当し、1994年にパンクロックバンドSUPER STUPIDを結成。1996年にアルバム「WHAT A HELL'S GOING ON」でメジャーデビューを果たし、精力的な活動を展開した。その後1999年のSUPER STUPID活動休止と同時にソロ活動を開始。2016年には自主レーベル「MASTER OF MUSIC」を設立。最新作は2019年4月リリースのアルバム「TWENTY ONE」。2020年4月に全国ツアー「LOW IQ 01 LIVE TOUR 2020」がスタートする。

松田“CHABE”岳二

CUBISMO GRAFICONeil and IraizaLEARNERSなど、さまざまなバンドやユニットで活躍。また、FRONTIER BACKYARD、LOW IQ 01のライブバンドMASTERLOWのサポートも務める。ミュージシャンと併行してDJとしても精力的に活動。2001年には、映画「ウォーターボーイズ」の音楽を手がけ、第25回日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞している。2020年2月19日にLEARNERSのニューアルバム「HELLO STRANGER」がリリースされる。

バックナンバー

土屋恵介

音楽ライター。渋谷のレコードショップZEST勤務の傍ら90年代中頃よりINAZZMA★K名義でライターとして活動を始める。以降、ダンスミュージックからアイドルまで幅広いジャンルについて執筆している。共著に「New Korean Music Guidance」(音楽出版社)がある。

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──当時AIR JAM世代のバンドが人気を得た要因ってなんだったと思いますか?

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