毎回、1人のアーティストの“音楽遍歴”を紐解くことで、音楽を探求することの面白さや、アーティストの新たな魅力を浮き彫りにする本企画。第2回目は今年でデビュー30周年を迎える
取材・
なけなしの小遣いで買ったドーナツ盤
実家の工場で父がラジオを流しながら仕事をしてたり、2人の姉が家でよくレコードをかけてたりしたので、自然と流行歌は耳に入ってきました。なけなしの小遣いで初めて買ったのが
アコースティックギターを手にする
小学生の頃、年上の従兄弟が「いらないからやるよ」ってアコギを俺にくれたんですよ。音楽を自覚的に好きになる前にまず楽器を手にした感じ。初心者向けの教則本を買ってきて、弦の巻き方とチューニングと簡単なコードを覚えてジャカジャカ……って、カラオケみたいな感覚でそれに合わせて歌ってました。アリスとか、南こうせつさんとか、
吉田拓郎との衝撃的出会い
初めて買ったLPはThe Beatlesの「Let It Be」
なぜ「Let It Be」かっていうと、角川映画の「
フォークを掘る
拓郎さんをきっかけにフォークに興味を持って、そこから遡って聴いていきましたね。篠島ライブでは鈴木茂さんがエレキを弾いていたり、ホーンセクションが入っていたり、バンドと一緒にやっていたから(瀬尾一三をバンマスとする大編成バンドがバックを務めていた)、はじめはそういうのがフォークだと思い込んでたんだけど、そのうちにギター弾き語りのスタイルが一般的なんだなってのもだんだんわかってきて。
初めて聴いたときは、ピンとこず……
クラスの音楽好きの中で、RCサクセションとYellow Magic Orchestraがとにかく流行って。実は初めてRCを聴いたときはあまりピンとこなかった。地味なフォーク少年にあのメイクバリバリの世界はよくわからなかったんだと思います。RCを本格的に好きになったのは大学に入って自分でもバンドを始めてから。歌詞も演奏も本当にスゴいと思いました。YMO自体には本格的にはハマらなかったんだけど、
パンクを聴くもやはり最初は……
パンクも最初はピンとこず(笑)。友達に「パンクって知ってるか? Sex Pistolsってバンドがいるんだぜ」って教えてもらって。多感な時期だし「すげーバンド名だな!」って。俺は当時反抗期もなくて親とも先生とも仲良かったし、普通のことのようにめっちゃ人気者でしたからね(笑)。そこまでパンク的に反抗する何かがなかったからピンとこなかったのかな。
もちろん今ではパンク大好きですよ。ちゃんと聴き始めたのは大学に入ってから。GEC(Guitar Enjoy Club)ってサークルに入ったんだけど、そこの人たちがパンク大好きで、ジョニー・サンダースの「Chinese Rocks」がみんなのテーマ曲みたいになっていたんです。だから俺も自然とニューヨークパンクにハマっていった。特にリチャード・ヘルが大好きで。ディランのカバーとかやっていて、めちゃ尖っているんだけど知性的な感じがして。新宿LOFTの来日公演にも行ったなー、ガラガラだったけど。今では信じられないですよね。
同時代のシーンに刺激を受けながら
その頃は、自分より上の世代だとTHE ROOSTERSやTH eROCKERS、THE STREET SLIDERSとか日本のバンドも聴いてました。「イカ天」(1989年~1990年にTBS系列で放送された「平成名物TV いかすバンド天国」)のバンドブームもその頃。
スティーブン・スティルスのギターに戦慄
その後もいろいろ音楽を聴いてきたけど、やっぱりルーツはフォーク、それとロックンロールだなって思いますね。The Rolling Stonesの「Love You Live」(1977年発売)に入っているEl Mocam bo Clubでの演奏とか、「これぞロックンロールの真髄だ」って感じで、めちゃくちゃ聴きましたね。
ここ数年だと、Crosby, Stills, & Nashの来日公演でのスティーブン・スティルスの演奏に衝撃を受けました。なんだろう、あのギタープレイの危険でスリリングな感じ。スティルスって日本だとニール・ヤングに比べると人気は落ちる感じだけど、実際に演奏を見てみると、「あー、これはニールがライバル視するのもわかるな」って。商業化する前のロックの剥き出しの緊張感が漂っているというか。マンガの「ONE PIECE」で描かれている鍛錬を積んだ人物だけが体得する“覇気”みたいに、演奏から漂う力と圧がとにかくスゴい。あれにはミュージシャンとしてすごく刺激を受けましたね。
YO-KING
東京出身。1989年大学在学中、音楽サークルの後輩である桜井秀俊と真心ブラザーズを結成。バラエティ番組内の歌合戦にて10週連続を勝ち抜き、同年9月にメジャーデビュー。「どか~ん」「サマーヌード」「拝啓、ジョン・レノン」など数々のヒット曲を世に送り出す。2014年に自身のレーベルDo Thing Recordingsを設立。今年デビュー30周年を迎え、記念ライブツアーやイベントの開催、初のセルフカバーアルバムのリリースなど勢力的な活動を展開している。
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