四谷OUTBREAK!エントランスの看板。

店長たちに聞くライブハウスの魅力 第12回 [バックナンバー]

東京・四谷OUTBREAK!

メインストリームから外れたバンドたちが最後に流れ着く場所

34

438

この記事に関するナタリー公式アカウントの投稿が、SNS上でシェア / いいねされた数の合計です。

  • 102 149
  • 187 シェア

機材面でアップデートができないなら、そこで働く人間が変わっていかないといけない

「ライブハウスをやってる人は当然みんな、もっと新しい人に観に来てほしいと思ってるはずなんですよ。なのに結局やり方は昔のままだから『え?』って感じることがよくあって。だからライブハウスって、コンテンツとして古いし終わりかけてるんです。でも面白い部分はまだまだ確実に存在してるので、どうやってそれを広めていくのかを僕たちが考えないとダメだなと思ってます。まあ、こういうことばっかり言ってるのは、同業者に嫌われるしリスキーであんまりいいことないんですけど(笑)。最近は工夫してて面白い店もどんどんできてるんです。例えば3月にオープンした吉祥寺のNEPOはキャッシュレスを進めたりしてて。とはいえ10年も20年も前からやってるうちみたいな店は機材面では大幅なアップデートができないわけです。機材の入れ替え工事ができないなら、そこで働く人間がどんどん変わっていかないといけない」

佐藤"boone"学氏

佐藤"boone"学氏

「うちではカウンターで耳栓を売ってるんですけど、これが最近すごく売れてます。『友達に連れられて初めてバンドを観に来た』みたいな子たちって、だいたいみんな『耳がキンキンする』って言って帰っていくんですよ。それを誇らしいという昔ながらのライブハウスの感覚はもう捨てようぜって思って」

オランダの耳栓ブランド、BANANAZの音楽用耳栓「THUNDERPLUGS」。

オランダの耳栓ブランド、BANANAZの音楽用耳栓「THUNDERPLUGS」。

「あと、バンドのお客さんのバンドマン率の高さに嫌気がさしてて。『俺も行くからお前も来いよ』みたいに付き合いでライブに行き合うの、閉鎖的でダサいじゃないですか。『お前ら付き合いでしかライブハウスに来ないのに、人には来い来いって言って説得力なくない?』って思うし。だからうちに出てるバンドマンは、ほかのバンドの公演にドリンク代だけで入場できることにしてるんです。まずはバンドマンがライブハウスに行きたくなる環境を作らないと、お客さんも行きたいと思うわけがないので。それにバンドマンにもっと、知らないバンドを観に来て新しい刺激を受けてほしいし。もちろん、バンドマンが無料で入場しても出演バンドのチケットノルマには加算されないんですけど、『俺は金を払って観たいから』って言って払ってくれる人もけっこういるんですよね。そのへんは任せちゃってます」

「テキーラフィッシュ」は合法か非合法か

「うちの店は調理スペースが極端に狭いので、常設のフードメニューはゆで卵くらいしかないんですけど(笑)、代わりにイベントごとにフードを出店してもらうことはよくあります。投げ銭制で食べ放題のビュッフェをやってくれる人がいて、この間アイドルの生誕祭で27時間イベントをやったときに来てもらったんですけど、食べ放題だから27時間ずーっと唐揚げを揚げてましたね(笑)」

カウンターの様子。

カウンターの様子。

「ライブハウスのドリンクはアルコールっていうイメージがありますが、ホットコーヒーを飲みたいっていうお客さん、すごく多いんです。僕もコーヒー好きなんですけど、コーヒーってメニューに入れようとすると難しいんですよ。コーヒーメーカーを使うのはけっこう大変だし。ペットボトルのコーヒーを出してもいいんだけど、ちゃんと淹れたのを飲みたいじゃないですか。でもよく考えたら、この上にコーヒー屋があるんですよね。だから『いいよ、そこで買ってきてよ』ってことにしてます。コーヒー屋さんにメニューをもらってうちの店に貼ったりして。今はやめちゃったんですけど、近所の松屋にうちのチケットを持って行くと卵がタダになるっていうのもやってました。近隣の住民とかお店と仲良くしておくと、もし何かあっても多少のトラブルには目をつぶってくれるんですよね。だから俺、近所の飲み屋に行きまくってめっちゃ仲良くしてます」

「いわゆるドリンクとは違うけど、魚型の醤油差しにテキーラを入れた『テキーラフィッシュ』っていうのも売ってます。頭が悪過ぎますよね(笑)。前はもうちょっと容器が小さくて50円で売ってたんですが、今はショットの3分の1くらいの量で100円です。一応うちが元祖で、完全に悪ノリで作ったものだったんですけど、今はめっちゃいろんな人がやってくれてるみたいで。『テキーラフィッシュ』で検索するとほかの居酒屋とかライブハウスとかでもけっこう売られてるようです。ちなみにネットでバズった結果、『これって法律的に大丈夫なの?』という指摘がありまして。何やら酒類を別の容器に詰め替えて販売するのは違法らしいんですよ。それで国税庁に問い合わせたら、持ち帰らずにその場で飲めば問題ないという返答で。だから『テキーラフィッシュ』は合法です(笑)」

金魚鉢に浮かべて売られている「テキーラフィッシュ」。

金魚鉢に浮かべて売られている「テキーラフィッシュ」。

この店は“巨大な自分の部屋”みたいなもの

「『OUTBREAK!は変なことをやってる店』という認知はされてきたので、マジでそろそろ大きくなるバンドを育てたいですね。ジャンルもバラバラでいいので『四谷で育って大きくなりました』っていうバンドが何組も生まれたらいいなと思う。下地はできてるんですよ。うちは深夜は練習にも使えるし、レコーディングもできるし、映像とかも撮れるし。この場所を24時間フルに使って、1年間かけてバンドを成長させていきたい。CDリリースのノウハウもあるから、『四谷OUTBREAK!が推す10バンド』みたいな感じでコンピを作ったり、バンドとがっつりタッグを組んでみたいなと思ってます。音作りとかライブのゲネプロとかって、スタジオでやるよりライブハウスでやったほうが参考になるんですよ。一緒に音作りの研究をしたりとか、僕もホントに24時間付き合っていろいろやっているので」

佐藤"boone"学氏

佐藤"boone"学氏

「ライブハウスに行く魅力って、僕は『1人になれること』だと思うんですよね。いろんなものから切り離されて、1人きりで音楽やエンタメと向き合える場所。そこに僕は魅力を感じています。だから僕は、お一人様でも楽しめる店にしたいんですよ。もちろん『行けば知り合いがいっぱいいる場所』というコミュニティ的な側面も大きいんですけど」

「ライブハウスって要は入れ物なので、防音がちゃんと整っていてバーカウンターがあれば、それ以外はなんでもいいんです。僕はOUTBREAK!は“巨大な自分の部屋”みたいなものだと思ってるので、演奏をしてもいいし、ごはんを作って食べてもいいし、映画を観てもいいし。みんなに僕の部屋に遊びに来てもらって、そういうことをワイワイやってる感覚だから、この店ではなんでもできるんです。まあ大変だし、仕事として考えたらわりに合わないんですけどね(笑)」

店舗情報

四谷OUTBREAK!ロゴ

四谷OUTBREAK!ロゴ

住所:〒160-0004 東京都新宿区四谷2-10 第2太郎ビルB1F
アクセス:JR四ツ谷駅四ツ谷口から徒歩3分 / 東京メトロ四谷三丁目駅4番出口から徒歩5分
営業時間:公演により異なる
定休日:なし
ロッカー:なし
駐車場:なし
再入場:公演により異なる
キャパシティ:230人
ドリンク代:アルコールは500円、ソフトドリンクは400円
フリーWi-Fi:あり
貸切:可

バックナンバー

この記事の画像(全14件)

読者の反応

安田理央@新刊「日本AV全史」発売中! @rioysd

ホント、アウトブレイクは最高過ぎるんだよ!

東京・四谷OUTBREAK! | 店長たちに聞くライブハウスの魅力 第12回 - 音楽ナタリー https://t.co/qqASmRL7Rr

コメントを読む(34件)

関連記事

リンク

あなたにおすすめの記事

このページは株式会社ナターシャの音楽ナタリー編集部が作成・配信しています。

音楽ナタリーでは国内アーティストを中心とした最新音楽ニュースを毎日配信!メジャーからインディーズまでリリース情報、ライブレポート、番組情報、コラムなど幅広い情報をお届けします。