左から山下直樹、松田“CHABE”岳二(CUBISMO GRAFICO、Neil and Iraiza、LEARNERS)、スガナミユウ

小さなライブハウスの挑戦 第7回 [バックナンバー]

“下北沢がカッコよかった頃”、ZOO / SLITSの時代はこうだった

元SLITS店長・山下直樹と松田“CHABE”岳二に聞く

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“早めの時間”の可能性

松田“CHABE”岳二(CUBISMO GRAFICO、Neil and Iraiza、LEARNERS)

松田“CHABE”岳二(CUBISMO GRAFICO、Neil and Iraiza、LEARNERS)

スガナミ 山下さんは下北に住んでいたんですか?

山下 いや、住んでいないです。その頃は神泉に住んでいて、原チャリで通っていました。池ノ上のほうから回って行ってて、よくフィッシュマンズの佐藤伸治くんとすれ違っていました。通勤のとき、diskunionの上の丘みたいなところで一旦バイクを止めて、下北の街を見るんです。「今日はケンカとか起きないでほしいな」とか思いながら。そうやって願をかけて降りていくと店の入り口に血まみれの人がいて、「また?」って(笑)。そういう苦労はたくさんありましたね。THREEは大丈夫ですか?

スガナミ 大丈夫ですよ、今のところ(笑)。若い子、いい子が多いんで。

山下 ケンカは何度もあって、その対応は大変でした。僕はヤンキーでもなかったので少し病みましたよね(笑)。しかもただのケンカ好きじゃなくて音楽がめちゃくちゃ詳しい人たちだからややこしいし、筋金入りだからすさまじい(笑)。

スガナミ あははは(笑)。ちなみに、SLITSの時代、夜は0時で締めていたんですよね?

山下 1年目は夜中もやっていたんだけど、2年目は0時で締めたんですよ。それでその年に店をクローズしたんです。

スガナミ そうだったんですね。僕ももうすぐ40歳になるので、体力的にも朝までやっていけるのか少し不安があって。

山下 僕も平日はもっと早い時間を有効に使うべきだと思っていて。やっぱり平日の夜中って、人は寝ていて当たり前だなって思う。ディスコは終電までの時間に人が集まっていたんです。それで遊び足りない人がクラブに行く感じ。

CHABE 仕事が終わった人たちが、ごはんに行く前にクラブに行くっていうのはいいですよね。

山下 うん、ごはんのあととかでもいいかもしれません。当時SLITSではライブを22時からにしていました。その代わり、スタッフを終電で帰らせなきゃならないから終わりの時間はバタバタ。以前、代官山のSALOONで火曜と水曜をもらって、早い時間のイベントにトライしたことがあったんです。初めのうちはそこそこ反応がありました。19、20時とかに人が入り始めて、21時にはピークみたいな。そのときは「こんなことができるんだ」って思いましたけど、でもやっぱり夜中に遊びに行きたいなって人も出てくる。家帰って、オシャレして出かけるぞ、みたいな。そのあたりは難しいですけど、まあ、習慣を付けたら早い時間でもできるかもしれないし、そういう時間から踊るって全然ありなんじゃないかな。イギリスに行ったときに1週間ずっとクラブに通ったんだけど、平日の夜はガラガラでしたからね。めちゃくちゃ有名なDJがやっているんですよ。でも3人、みたいな。

スガナミ 結局週末なんですかね。

山下 現地の人に話を聞いたら「やっぱり平日は仕事があるだろ?」って言っていて、そりゃあそうだよなって。だから選択肢の中に、終電前にクラブに行くっていうのがあってもいい。立ち飲み屋とクラブとかが一緒にあるとか、いいと思うんですけど。

CHABE 僕、Organ Barで火曜日の21~27時にイベントをやっているんですけど、もう少し早い時間でもいいなって思ってます。そのほうがお客さんを呼びやすくて。

やれるなら、満たされるような店をやりたい

スガナミ ハコの店長って、その人の性格や趣味がモロに店に反映されますよね。今日いろいろお話を聞いて、やっぱり山下さんだからこそSLITSの感じが出たんだろうなって改めて思いました。山下さんの「いろんな音楽を好きでいいじゃん」ってところから、いろいろ始まっている。お客さんや出演者の皆さんの交流も含めて。自分がどんな理想を持って、場所や音楽について考えていくのか。けっこう自分次第。

山下 スガナミくんと会ってみて、思っていたような人だなあって感じましたね。5月の「FEELIN'FELLOWS」に呼んでいただいたので、去年の「FEELIN'FELLOWS」の内容をネットの記事などで見てみたんです。出演バンドを1つひとつ追ったわけじゃないけれど、オールジャンルなのは雰囲気でわかる。この感じ、僕の思っているような“よさ”を追求しているなって思いました。あとは下北って、老舗も含めていろいろなライブハウスがあるじゃないですか。その中で、この店は自分が考えていたことと似たコンセプトを持った人がやっているんだろうなって勝手に思っていたので、そういう意味でも思った通りの人でした。

「FEELIN'FELLOWS 2019」フライヤー

「FEELIN'FELLOWS 2019」フライヤー

スガナミ うれしいですね。最後に、山下さんが今、もしクラブをやるとしたらどういった店をやりたいですか?

山下 うーん、難しいなあ。自分が働いていて思ったことなんですけど、ディスコって全部あるんです。食べ物にしてもハンバーグとかもあって、めっちゃ食べられる。だから17時くらいからお客さんが来るんですよ。なんかそういう、満たされるようなものをやりたいですね。食事もできるし静かにしゃべることもできる、みたいな。

スガナミ ディスコってそんなに食べられるんですね……すごい(笑)。ちなみにTHREEは夜中に「スタンドかげん」という立ち飲み屋になるんです。食事も出していて。

山下 それはいいですね。あとはまあ、自分としては大きい店はやりたくないです。昔「Straight No Chaser」って雑誌をやっていたポール・ブラッドショウって人がいたんだけど、その人が東京のある大きなクラブに行ったらしいんです。それで、「ああいうところからは何も生まれないぞ」「キャパは300以下じゃないと無理だ」と言っていたんです。「どの国だって同じだ。多すぎるところからは無理だ」と。当時は大きなハコに対して少し思うところがあって、それを読んで勇気付けられたんですね。だからもしやれるとしても、大きなハコには興味がないですね。飯がうまくて、チルできる場所があって、そんなに大きくない、みたいなイメージの店だったらいいですね。

左から松田“CHABE”岳二(CUBISMO GRAFICO、Neil and Iraiza、LEARNERS)、山下直樹、スガナミユウ。

左から松田“CHABE”岳二(CUBISMO GRAFICO、Neil and Iraiza、LEARNERS)、山下直樹、スガナミユウ。

※記事初出時、画像キャプションに誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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スガナミユウ

福島県生まれの38歳。自身のバンドGORO GOLOでボーカリストを務める傍ら、レコードディレクターやイベントの企画などを行い2014年より東京のライブハウス下北沢THREEに在籍している。2016年に店長に就任。8月にGORO GOLOの7inchアナログ「SYMBOL EP」をJET SETからリリースした。

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