YEBISU YA PRO

店長たちに聞くライブハウスの魅力 第11回 [バックナンバー]

岡山・YEBISU YA PRO

失敗から学んだのは、本当に好きな音楽だけで勝負すること

25

575

この記事に関するナタリー公式アカウントの投稿が、SNS上でシェア / いいねされた数の合計です。

  • 129 341
  • 105 シェア

全国のライブハウスの店長の話を通して、店の特徴や“ライブハウスへ行くこと”の魅力を伝える本連載。第11回は岡山YEBISU YA PRO代表の丹正功一氏に登場してもらった。店を始めるまでの経緯や、音楽の楽しみ方など聞いた。

取材・文・撮影 / 松本紀子

アパレル店長からの転身

「僕は20歳の頃からアパレルの店長をやっていました。同時にDJとしても活動していて、クラブにレギュラーで入っていたりしていたんです。28歳のとき、アパレルのほうが行き詰まってやめることに。そこで『一生やりたい仕事は何だ?』と考えたらやっぱり音楽で食べていきたいと思って。とりあえず使い道は置いておいてですが、大きなスピーカーがどうしても欲しくて1年間お金を貯めて買ったんです。それを活用するために野外で音楽イベントを主催するようになりました」

YEBISU YA PRO代表の丹正功一氏。

YEBISU YA PRO代表の丹正功一氏。

お金に目が眩んで……(笑)

「今のビジネスパートナーであるキャプテン(池宗俊二氏)も地元では有名人でした。最初に2人で仕掛けた仕事は、大規模なレゲエの野外フェス『REGGAE Japansplash』を地元で開催すること。儲かるはずだったんですけど、思ったように集客ができず借金を抱えることになりました。チケットを売るために2人でレゲエのレコード店とかに営業をかけに行くんですけど、俺たちあまりレゲエに詳しくなくて、それがレゲエ好きの人たちにすぐバレちゃって(笑)。お金に目が眩んで、本当に好きなことで勝負しなかったのが原因でした。それからは何があっても自分たちの好きな音楽で勝負しようと、デトロイトハウスのDJ、ムーディーマンを呼んでイベントを開催したら、今度はたくさんの人が来てくれました。やっぱり自分が好きなことをやれば人に伝わるんだと。そのあと、FIASCOという今の会社を設立しました。“大失敗”という意味ですが、『ドンマイ! また最初から!』というかけ声としても使われるようで。まさに、失敗から始まった会社でしたから」

左が丹正功一氏、右が池宗俊二氏。

左が丹正功一氏、右が池宗俊二氏。

ヤブノケンセイが描いた2人の肖像画。

ヤブノケンセイが描いた2人の肖像画。

音楽好きが集まれる場所が欲しい

「やりたいことをやっていくためには、イベントだけでなく音楽好きが集まるコミュニティが必要だと思い、音楽ができる店を作ろうと思いました。それからは毎日岡山の町を歩いて、物件を探し回りました。そこで偶然にも以前、自分がレギュラーでDJをやっていたクラブの跡地が貸しに出ていたんですが、借りたくても先立つものが何もない。3つ仕事をしながら、銀行からやっとの思いでお金を借りてそこでライブハウスをオープンしました。とてもハードでしたが、絶対に店を出したいという強い気持ちがあったらからなんとかできたんでしょうね。数年はそこで店をしていたのですが、ビル全体が立ち退きになり現在の場所に移転しました」

地下2階のエントランス。

地下2階のエントランス。

憧れのアーティストをお店に呼べて

「お店をやる前からキャプテンと『普通ではない面白いことをやりたい』と話していて、トップDJである石野卓球さんお店に呼んだんです。卓球さんが岡山でやったのはそれが初めてでした。350枚の前売りチケットが完売してとても盛り上がり、それから卓球さんとの親交を深めていきました。お店を出すときにもいろいろ相談に乗ってもらいました。そのつながりでずっと目標だった、電気グルーヴをお店に呼ぶことができて。そのときは本当に感動しました」

アーティストたちの落書きをそのまま残している楽屋。

アーティストたちの落書きをそのまま残している楽屋。

こだわりは自分たちが好きだと思う音楽

「やっぱり自分が好きだと思うアーティストにやってもらうのが一番です。好きじゃなかったら失敗しますから。とはいえ、いいと思う音楽の幅はとても広いですよ。最近気になるアーティストは、中村佳穂Tempalay。ぜひ生で観てみたいですね。それとKID FRESINOくんは昨年うちに来てくれたんですが、彼のパフォーマンスは圧巻でした。あと、岡山を拠点にハウスシーンで活躍しているKEITA SANOも応援しています」

YEBISU YA PROのステージ。

YEBISU YA PROのステージ。

素晴らしい音楽と星空を

「ライブハウスの運営のほかにも、毎年秋に岡山の井原市美星町で『STARS ON』という野外フェスを主催しています。素晴らしい音楽と星空の下、夜空を見上げることを忘れかけている多くの人に何かを感じてもらえたらいいな、というコンセプトで開催しています。ZAZEN BOYSにはこのフェスに出てもらって、初めてライブを生で観てすごく好きになり、お店の周年ライブに出てもらうようになりました。『STARS ON』に出演してもらったアーティスト、関係者の方たちには本当によくしてもらっています。岡山出身のスチャダラパーのBOSEさんにいろいろアドバイスしてもらいイベントを改善していったりして。そのおかげもあり、イベントは昨年10周年を迎えることができました」

「STARS ON 2018」の様子。

「STARS ON 2018」の様子。

オススメのメニューは高級テキーラ

「一番のオススメメニューは高級テキーラの代名詞と呼ばれているポルフィディオというメキシコのお酒です。普通のテキーラよりも体に優しいお酒で、翌日に全然残らなくて、めちゃくちゃおいしい。飲み口はブランデーみたいです。最初は全然オーダーが入らなかったんですけど、ロバート・デ・ニーロが愛飲していたというところから、“デ・ニーロ”というメニュー名に変えたらすごく人気が出ました(笑)」

ポルフィディオ。サボテンが中に入っている。

ポルフィディオ。サボテンが中に入っている。

ライブはプロレス

「ライブは人を元気にしますよね。どんなに疲れていても、いいライブを観ると元気になる。アーティストはお客さんの熱を目の前にするとすごいパワーを出します。それをしっかりと受けてくれるお客さんがいるから、アーティストももっと熱くなる。その繰り返しで熱狂が生まれる。例えるならプロレスです。いい技をしっかりと受けてしっかり返す、ライブは観客があってのショー。これはライブだからできることなんです。動画を観たりCDを聴いたりするだけではわからないアーティストの魅力が絶対伝わるはずです。ここではとにかく楽しむ、これが一番。僕もいつもバーカウンターの中で踊ってますよ(笑)」

イギリスから取り寄せたレンガを使ったこだわりのバーカウンター。

イギリスから取り寄せたレンガを使ったこだわりのバーカウンター。

※記事初出時、本文に誤りがありました。お詫びして訂正します。

店舗情報

YEBISU YA PROのロゴ

YEBISU YA PROのロゴ

住所: 〒700-0903 岡山県岡山市北区中山下1-10-30 福武ジョリービルB2F
アクセス:JR岡山駅より徒歩15分
営業時間:公演により異なる
定休日:なし
ロッカー:あり
駐車場:なし
再入場の可否:公演により異なる
キャパシティ:450人
ドリンク代:600円
フリーWi-Fi:なし
貸切:あり

バックナンバー

この記事の画像(全11件)

読者の反応

Takkyu Ishino/石野卓球 @TakkyuIshino

岡山・YEBISU YA PRO | 店長たちに聞くライブハウスの魅力 第11回 - 音楽ナタリー https://t.co/0AumyP2FQr

コメントを読む(25件)

KID FRESINOのほかの記事

リンク

あなたにおすすめの記事

このページは株式会社ナターシャの音楽ナタリー編集部が作成・配信しています。 KID FRESINO / BOSE / 石野卓球 / ZAZEN BOYS / Tempalay / 中村佳穂 の最新情報はリンク先をご覧ください。

音楽ナタリーでは国内アーティストを中心とした最新音楽ニュースを毎日配信!メジャーからインディーズまでリリース情報、ライブレポート、番組情報、コラムなど幅広い情報をお届けします。