店長たちに聞くライブハウスの魅力 第2回 [バックナンバー]

大阪・LIVE HOUSE Pangea

3

562

この記事に関するナタリー公式アカウントの投稿が、SNS上でシェア / いいねされた数の合計です。

  • 169 371
  • 22 シェア

全国のライブハウスの店長の話を通して、それぞれの店の特徴や“ライブハウスへ行くこと”の魅力を伝える本連載。第2回は2011年3月に大阪・アメリカ村にLIVE HOUSE Pangeaを設立し、現在も店長を務めている吉條壽記氏に登場してもらった。現役ドラマーとしても活躍している吉條氏の店のこだわりとは。

取材・/ 酒匂里奈(音楽ナタリー編集部) 撮影 / 秋和杏佳

設立の経緯

「昔からライブハウスを作ってみたい、経営してみたいという気持ちがありました。そう思うようになった理由としては、僕がRAZORS EDGEというバンドのドラマーとしてライブハウスに出演していたことと、バンド活動の合間にライブハウススタッフとして働いていたことが大きいと思います。主に関西圏の箱に出演していく中で、関西は個性的な箱が多いけれど、スタンダードな造りの箱が少ないと感じたんです。いろいろなライブハウスを見て、“自分だったらこんな造り、こんな空間にしたい”って気持ちが芽生えたことが自分でライブハウスを作ろうと決めた最初のきっかけですね」

LIVE HOUSE Pangeaの初代店長、吉條壽記氏。

LIVE HOUSE Pangeaの初代店長、吉條壽記氏。

影響を受けたライブハウス

「東京・下北沢SHELTERや大阪・FANDANGOは、敷地自体は広くはないのに楽屋、バー、トイレ、PAブース、照明ブースがバランスよく配置されていて、理想的な空間やなと感動しました。“こういう箱を作りたい”と思いましたね。それとバンドマンの中には、東名阪でツアーを回るならSHELTER、愛知・HUCK FINN 、FANDANGOでライブができたらカッコいいっていう“憧れ”みたいなのがあって。Pangeaもそう思われるような店にしていきたいです。この3軒などを参考にしつつ、Pangeaはフロア重視でライブをメインで楽しめる造りにしました。思い描いていた理想の造りに近いですが、今はもう少しフロア以外のスペースがあってもよかったかなとも思います(笑)。お客さんとアーティストの両方にとって、もっとよりよい店を、と追求していくのは面白いですね」

LIVE HOUSE Pangeaの受付。

LIVE HOUSE Pangeaの受付。

店名の由来

「古代、大陸がすべてつながった“パンゲア大陸”が存在したという説があって、それが名前の由来です。パンゲア大陸の話を聞いて、『音楽も一緒かな』と思ったんですよね。音楽って今はいろいろなジャンルに分かれていますが、もともとは1つだったんじゃないかなって。最近は昔よりも洋楽邦楽ジャンルを問わず、分け隔てなく聴く人も多い。この店を通じて、いつか音楽がパンゲア大陸のように1つになればいいなと言う思いを込めています」

LIVE HOUSE PangeaのPAブース。

LIVE HOUSE PangeaのPAブース。

ロゴのデザイン

「PIZZA OF DEATH RECORDSのデザイナーのHONGOLIANにお願いしました。RAZORS EDGEが過去PIZZAに所属していた経緯もあり、彼とは年齢が同じということもあって仲がいいんです。HONGOLIANが僕の意図を汲み取ってくれて、文字の線がすベてつながっていて、7つの大陸に見立てた図形が含まれています。ステージ後ろの壁の模様も彼に描いてもらったんです。実は模様の中に“Pangea”の文字が隠れているんですよ」

LIVE HOUSE Pangeaのステージ。

LIVE HOUSE Pangeaのステージ。

出演者のジャンル

「基本的にはオールジャンルのつもりでやっていて、僕ともう1人のスタッフがブッキングを担当しています。僕はもともとNirvanaやPixiesなど1990年代のグランジやオルタナが好きですが、そんな自分の好きなジャンルのアーティストにのみ出演してもらっていたら商売は成り立ちません。この仕事を始めるときに、自分の価値観にないものでもどんどん受け入れていこうと決めました。そうすればまた新たなこだわりが出てくると思ったので。でも最初は、自分のバンドつながりのアーティストに出てもらうことが多くて、オープン当初のイメージが残っている人はメロディックパンクやメロディックハードコアバンドの出演が多いと思っているかもしれません」

楽屋のトイレの壁には、過去の公演のポスターが貼られている。

楽屋のトイレの壁には、過去の公演のポスターが貼られている。

注目しているアーティスト、愛はズボーン

「僕はレーベル運営事業も行っているのですが、この事業を始めたきっかけが愛はズボーンでした。最初はライブハウスの人間として、1つのアーティストを贔屓したりせずフラットな立場で応援したほうがいいと思っていたんですが、初めて彼らのライブを観たときに、ライブの内容も面白いしメンバーの個性も強いし“なんやこいつら”って衝撃を受けて。気付いたら声をかけていました。好きな気持ちに蓋をする必要はないって気付かされましたね」

愛はズボーン

愛はズボーン

オススメのドリンクメニューは生ビール

「酒税が上がっても、発泡酒じゃなくて麦100%の生ビールをグラスで出すことにしています。オススメは1Lのジョッキで飲むこと。通常の生ビールの約3杯分が1000円なのでお得だと思います。いいライブを観て美味しいお酒が飲める空間にしたいですね」

LIVE HOUSE Pangeaで提供されているビール。

LIVE HOUSE Pangeaで提供されているビール。

1Lサイズのジョッキを持つ吉條壽記氏。

1Lサイズのジョッキを持つ吉條壽記氏。

ライブハウスの魅力

「音楽を“商売”として考えたときに、ライブハウスのような場所を貸す商売ってなくならないと言うか、“ライブはなくならへんやろな”って思ったんです。演者としてステージに立っているときに、お客さんとは他人同士なはずなのに、音楽を媒介としてわかり合えた気になれるんです。言葉だけで100%わかり合うことって難しいけど、好きなことを共有できるだけで距離が縮まる。そういう“共有できる感覚”をダイレクトに味わえるのがライブハウスの魅力だと思います」

LIVE HOUSE Pangeaのドリンクカウンター。

LIVE HOUSE Pangeaのドリンクカウンター。

店舗情報

LIVE HOUSE Pangeaのロゴ

LIVE HOUSE Pangeaのロゴ

住所:〒542-0086 大阪市中央区西心斎橋2-10-34 心斎橋ウエスト363ビル1F
アクセス:地下鉄四ツ橋線・四ツ橋駅南口より徒歩3分
営業時間:公演により異なる
定休日:不定休
ロッカー:なし ※クロークあり
駐車場:なし
再入場:公演により異なる
キャパシティ:200~250人
ドリンク代:500円
フリーWi-Fi:なし
貸切:可
※情報は11月16日時点のもの。

バックナンバー

吉條壽記

2011年3月に大阪・アメリカ村にオープンしたLIVE HOUSE Pangeaの店長を、設立当初から現在に至るまで務めている。RAZORS EDGEのドラマーとしても活躍している。また愛はズボーン、神頼みレコード、PJJ、LONEが所属するTOUGH&GUY RECORDSの運営も行い、アーティストを支えている。2014年4月からは新世界もつ鍋屋 西心斎橋店のオーナーも務めている。

この記事の画像(全11件)

読者の反応

  • 3

つみかけ 🍑🦊🩸|夜僕黎鮫機構栽培係ファブレッ党 @tsumiX365

https://t.co/T5QI00hAQ3 つれづれでPangea行くときは生ビール飲むか。

コメントを読む(3件)

RAZORS EDGEのほかの記事

リンク

あなたにおすすめの記事

このページは株式会社ナターシャの音楽ナタリー編集部が作成・配信しています。 RAZORS EDGE / 愛はズボーン の最新情報はリンク先をご覧ください。

音楽ナタリーでは国内アーティストを中心とした最新音楽ニュースを毎日配信!メジャーからインディーズまでリリース情報、ライブレポート、番組情報、コラムなど幅広い情報をお届けします。