映画ナタリー Power Push - 「闇金ウシジマくん Part3」「闇金ウシジマくん ザ・ファイナル」
今だから言える!? カウカウファイナンス受付嬢&No.2から見たメンバーの素顔
6年間続いて、「これ以上何をやるんだ?」まで行った
──「Part3」「ザ・ファイナル」を作ると最初に聞いたときはどう思いましたか?
「Part2」の撮影をしているときに、山口雅俊監督は作るつもりなんだろうなと思いました。なぜなら、俺が「原作の『闇金ウシジマくん』でキーワードになっているウサギは出さないんですか?」って聞いたときに、監督が「次に取っておきます」って言ったから。それで現場も一瞬「えっ、次もあるんだ?」ってざわついたんですけど、それからしばらくして、今度は確か(山田)孝之から「そろそろ動きそうだ」と聞いて。そのとき監督は「『洗脳くん編』を深夜ドラマでやって映画で終わりたい」と言い、孝之は「いや、映画を2本立て続けに公開して終わりたい」と言ったんです。でも、俺は「放送する局も時間帯も決まらないままシーズン1を見切り発車したこの作品が、深夜ドラマ→映画→深夜ドラマ→映画の流れでここまで大きくなったんだから、それは守りたい」と主張したんですよね。そしたら結局、深夜ドラマと2本の映画……つまり3本も撮ることになっちゃったんです(笑)。
──「ザ・ファイナル」で原作の「ヤミ金くん編」をやることも決まっていたんですか?
「Part2」が終わった直後ぐらいに、俺が「丑嶋と幼なじみの竹本との中学時代の出会いを描いた『ヤミ金くん編』を映画化して、丑嶋馨とはいったいどういうやつなのか?を映像で残したいよね」って話したんです。そしたら孝之も興味を持ったようで、あえて最後にこのエピソードをやったほうがいいとなったんです。でも撮影に入るときは、俺らはまだ「ザ・ファイナル」とは聞いてなかったんですよ。
──あくまで「Part4」だったんですね。
ドラマのシーズン3でやった「洗脳くん編」は、山口監督のテレビ業界に対してのトライですよね。要は主人公の丑嶋をあまり登場させずに、人と人との関わり方で人生が壊れていくという題材をどこまで描けるのかという挑戦だったんです。そして映画の「Part3」では、登場人物のお金の借り方や使い方、そこから見える心の在り様で人間を描きたいと監督は言っていました。それで「ザ・ファイナル」ですが、撮影中から孝之とも「これをやっちゃったら、もうやらなくてよくないか?」という話はしていて。実際、6年間でスピンオフも含めると10作品。同じ役をこんなにやり続けることはなかなかないから、孝之も「やりたくない」というより、「これ以上何をやるんだ?」という感じだったと思いますね。
柄崎のキャラが普段の自分に寄ってきていた
──この6年間で、柄崎のキャラクターに変化や成長はありました?
観返してみたら、キャラクターがびっくりするぐらいブレてました(笑)。映画の「Part1」は原作に忠実で、とにかく寡黙なんです。それが少しずつ変わっていったというか。これは監督に確認したわけではないけど、どちらかと言うと「柄崎を普段のやべに寄せてきてない?」みたいな感じがしていて(笑)。いずれにしろ、柄崎というキャラクターが俺とは違うところで一人歩きしてくれたなと思う。
──「ザ・ファイナル」で、柄崎は鰐戸三兄弟に拉致されますが、撮影はいかがでした?
拉致されるシーンでは裸の上半身を見せるという設定になっていたけど、そこで柄崎がどういうやつなのかをわかりやすく表現するために、俺は身体を絞らないと決めたんです。ナンバー2のポジションにいる彼が、鍛え上げた肉体で拉致されていたらおかしいですからね。たるんだ身体をしていたほうが柄崎らしいし、観ている人に「お前そりゃやられるだろ」ってツッコミを入れられたほうが面白いと思ったんですよ(笑)。
安藤政信との再共演で、役者を続けてきて本当によかったと思った
──安藤政信さん、YOUNG DAISさん、間宮祥太朗さんという鰐戸三兄弟のキャスティングを最初に聞いたときはどう思いました?
3人の名前を聞いたとき、孝之が初めて「危機感」という言葉を口にしたのがすごく印象的で。これまでは、ドラマ版でも映画版でも自分の丑嶋のキャラクターがブレなければ必ずいいものができると思っていた孝之も、「ザ・ファイナル」では丑嶋の感情も多少動くし、その絶対的なものではなくなっていく不安感の中で鰐戸三兄弟を演じるあの3人と対峙しなければいけなかったから「これはヤバいね。とんでもないキャストが集まったね」って真顔で言ってましたよ。
──やべさんはどうだったんですか?
政信が出るってことが個人的にはうれしかったですね。政信とは彼のデビュー作「キッズ・リターン」のときに一緒にやっていて、「スキヤキ・ウェスタン ジャンゴ」でも共演してるけど、このタイミングでまた組むことができたから、役者をずっと続けてきて本当によかったと思う。そこにYOUNG DAISというラップの世界から出てきたやつがいて、イケメンでありながら実力でガンガン駆け上がってきた祥太朗がいる。この3人が「オマエたちを食ってやる」という意気込みで来るから、俺たちも腹をくくってやらないとやられてしまうと思いましたね。ただ、初日の現場で「きょうすけー!」ってすごい笑顔で走ってきて、「久しぶり! 続けているとこんなこともあるんだねえ」ってうれしそうにしていた政信のスタンスだけは予想外でした(笑)。
──ニコ生特番「やべーぜ!TV ザ・ファイナル」で、鰐戸三兄弟の三男・三蔵を演じた間宮さんが「現場ではやべさんに助けられた」と言っていたのが印象的でした(参照:「闇金ウシジマくん」打ち上げで山田孝之らオムライスに笑顔、シリーズ完結で握手も)。
鰐戸三兄弟のアジトのシーンを撮った倉庫の撮影環境が最悪だったんですよ。とにかく寒いし、Wi-Fiも1カ所しか使えない。しかも話を聞いていると、鰐戸三兄弟の役で初めてこの作品に参加した3人は、どうやら監督の指示や狙いがわからないときがあったみたいで。特に長男の一を演じた政信は台本に書いてないところを現場の空気や相手の役者との距離感で作っていかなきゃいけないのに、どんどん現場で台本が変わるからちょっとイラついていて。だから俺が、「監督が言いたいことはたぶんこういうことだと思うよ」って通訳をしていたんです(笑)。
──撮影現場でですか?
そう。それこそ普段はほかの役者とコミュニケーションを取るために飲み会に参加したりしない政信まで(強制労働者たちのタコ部屋住居として登場する)誠愛の家のセットで飲んで、結果的に三兄弟を演じる役者たちの絆が深まったわけ。政信は「絶対違う」って言うけれど、それが監督の狙いだったとしたらスゴいよね(笑)。祥太朗の「やべさんに助けられた」というのも、そのやり取りの中でフラストレーションが少し解消されたことを言ってるんじゃないのかな。
社長、ちゃんと柄崎のこと好きって言ってください
──でんぱ組.incの最上もがさんがカウカウファイナンスの受付嬢・モネ役で新たに参加したことで、何か変わったことは?
絶対的な関係にある孝之と俺、高田役の(崎本)大海に打ち解けようとしてくれていたけど、彼女はすごい人見知りで。それに気付いた孝之が、デフォルメした彼女の似顔絵を描いて見せたところから「なんですかこれ? 山田さん、何やってるんですか?(笑)」ってだんだん現場になじんでいった感じです。
──劇中で四字熟語を言うのも面白いですね。
今まで社長や柄崎に「駄目じゃないですか」「可哀想じゃないですか」って言ったり、観ている人が「そうだ! そうだ!」って同調できるキャラはいなかったので新鮮でした。俺もボケツッコミみたいな関係が作れたし、すごくやりやすかったですね。
──実は最上さんからやべさんに質問を預かっているんですよ。
最上もがより、やべきょうすけへの質問
ぼくのこと、実は興味ないですよね?(笑)
やべさんは気遣いのプロなので、どんな人にも楽しくさせてあげようという気持ちがあるんです。なのに……「ウシジマくん」が終わってからのやべさんが冷たいです! いえ、全然冷たくはないんですけど(笑)。やっぱり作品が終わると会う機会がなくなるのが個人的には寂しくて。でもなんのときだったか、やべさんにも「俺のこと興味ないよね?」って聞かれたことがありまして。適度な距離感がちょうどいいのでしょうか(笑)。
──本人はこうおっしゃってますが。
興味がない? とんでもない! そもそも興味がないなら、雑誌の取材であれ、なんであれ、俺は断る人ですから! もがちゃんについては長々と語れるほど興味津々ですよ!
──それではカウカウファイナンスのメンバー1人ひとりに、“柄崎”としてこれだけは言っておきたい!という一言をお願いします。
高田には「俺をナメてるだろう?」ってまず言いたい(笑)。歳は上ですけど、「俺より仕事ができると思ってるなら大間違いだからな!」って釘を刺しておきたいです。社長には「俺のこと好きですよね?」って聞きたいですね。劇中で表現されたことがないので、「ちゃんと好きって言ってください、柄崎がいないと駄目だって言ってください」とお願いします(笑)。
──綾野剛さんが演じた丑嶋の幼なじみ・戍亥にも何かあります?
戍亥に対しては「俺、もっとお前と仲良くできると思うんだけど……」っていう気持ちですね。だから「社長がいないときに、たまには俺とサシでメシでも食おうよ」って言いたい。社長に対する愚痴を聞いてくれる人はたぶん彼しかいないと思うので、「戍亥、聞いてくれよ」って話しかけたいです(笑)。
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「闇金ウシジマくん Part3」2017年3月10日(金)配信開始
「闇金ウシジマくん ザ・ファイナル」2017年3月10日(金)配信開始
©2016真鍋昌平・小学館/「闇金ウシジマくん3」製作委員会・MBS
©2016真鍋昌平・小学館/映画「闇金ウシジマくん ザ・ファイナル」製作委員会
やべきょうすけ
1973年11月12日生まれ。大阪府出身。2007年公開「クローズZERO」では片桐拳を演じ、第17回日本映画批評家大賞助演男優賞に輝く。主な出演映画に「工業哀歌バレーボーイズ THE MOVIE」「TAJOMARU」「夢売るふたり」「天空の蜂」「HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス」「任侠野郎」など。俳優活動のほか、本名の矢部享祏名義で演出やプロデュースを担当することも。BSスカパー!のバラエティ番組「BAZOOKA!!!」にMCとして出演中。