同志のような気持ち(白石隼也)
──皆さん、今日お会いするのが初めてですか?
森山未來 5人がこうしてそろうのは初めてですね。
津田健次郎 勢ぞろいはそうです。
白石隼也 同志のような気持ちだったので、早くお話ししてみたいと思ってました。
柄本佑 会見(※編集部注:1月13日開催の完成報告イベント。この座談会の取材はイベント直後に行われた。参照:磯村勇斗、柄本佑、白石隼也、津田健次郎、森山未來が監督作を披露、撮影秘話語る)で未來さんも言ってましたけど「よーい、はい!」の掛け声はどうでした?
津田 いやあ、難しいですよね。俺、芝居を見ちゃってて、カットを掛けるのもよく忘れてました(笑)。
柄本・森山 わかります(笑)。
津田 なんでみんな俺を見てるんだろう?と思って「あ、そうだ。カット!」って慌てて声出してましたね。そのあとも「カットはOKなのかどうか」という皆さんの視線がもうめっちゃ怖かったです。
森山 もう癖付けがないというか「OK」と判断する習慣がないですからね。
柄本 視線が痛いですよね。普段は声を掛けられる側じゃないですか。掛け声がちゃんと言えてるのか、言えてないんだか。「よーい、はい!」で現場が全部動くから、超ムズくて、現場の空気をめっちゃ読んでました。声を掛けると、自分が中に入って一緒に演じたくなる(笑)。
森山 まず「監督」と呼ばれても反応できない。「よーい、はい」じゃなくて「(全員に聞こえるように大きく)よーい、はいっ!」って言わなきゃいけなんだって少しずつ気付いていきましたね。
1人の個性が終わった途端、別の個性が急に始まる(柄本佑)
──それぞれの感想をお聞きしたいです。
白石 自分を含め3人は小さな空間の話だと思うんですけど、磯村さんの「機械仕掛けの君」と津田さんの「GET SET GO」は25分、2日の撮影という制約の中で、かなりスケールの大きな作品を作られていて。あれをやる勇気とやり切った熱量がすごい。そこまで自分はできなかった。
磯村勇斗 最初はまったく違うテイストの作品を考えていて、何かをきっかけにSFに変わったんですよね。日頃からAIなどのテクノロジーに興味があったので、数年後にはこんな世の中になっていくんじゃないか?と発想していきました。
森山 「機械仕掛けの君」と白石さんの「そそがれ」で、植物におしっこかけるのが被ったというのが驚きでしたね(笑)。
磯村 あれは……奇跡ですよね(笑)。
津田 どの映画も小便のシーンがあるらしくて……。僕の映画も、ある人物が「お花を摘みに行きます」ってトイレに行ってます。佑さんの「夜明け」だけ、ないんじゃないですか?(笑)
柄本 俺のだけないのか。俺のやつ比較的トイレ絡みの描写がありそうなのに。
一同 (笑)
津田 僕は5本を1日で観たんですけど、それぞれ何かくるものがありましたね。だから一気に通して観ようと思ったんですけど、1本観ては休んで、観ては休んでの繰り返しになりました。
柄本 もらったDVDも5本バラバラでしたからね。流れで一気に観たら、印象も変わるかもしれないです。
森山 これ視聴者の皆さんはどう観るんですか?
──配信は1本ずつバラバラで、放送はまとめてです。放送順は磯村さん、柄本さん、白石さん、津田さん、森山さんですね。
柄本 あいうえお順で。そうやって流れで観るほうが楽しいかもしれないですね。1人の個性が終わった途端、別の個性が急に始まる感じになると面白そう。
生っぽさ、人物を追いかけていくときの距離感が欲しかった(森山未來)
森山 (「夜明け」で主演の森山)直太朗さんとはもともとつながりがあったんですか?
柄本 一昨年にNHKのドラマで兄弟役として共演していて。それで素敵だなと思っていました。そのあとも俳優として活躍されていたので、今回お願いしてみたんです。
森山 役者さんとしての直太朗さんをそんなに存じ上げなかったから、すげえいいなって。あとスタッフさんも同じ人が多いから、衣装の共通点とかもちょっとあったよね。服が被っちゃってるとかはないけど、同じスタッフがコーディネートしてるニュアンスはなんとなくつかめると思う。
柄本 そう考えると、僕と未來さんだけ撮影が山崎(裕)さんで同じなんですよね。それを観るのは面白かったですね。カメラマンの方が共通だと、やっぱり似てくる。
森山 「夜明け」はFIXの画が多かったよね。それは佑くんがオーダーしたの?
柄本 それは山崎さんと話しながら決めていきました。前半は基本的に三脚を使ったFIXの画が多いんですけど、後半、主人公が慌て始めてから、手持ち(カメラ)にしたかったんです。具体的に決めて相談したわけではないですけど、山崎さんもそう理解してくださっていて。
森山 山崎さんには、手持ちのイメージがあったから。僕はその生っぽさ、人物を追いかけていくときの距離感が欲しかったんです。「in-side-out」ではとにかく同じ部屋での展開が続くから、しばらくはFIXで少しずつカメラを動かしていければと話していて。でも気が付いたら、山崎さんはけっこう序盤からカメラを持っちゃってた(笑)。結果、ものすごい手持ちの映画になりましたね。
柄本 皆さんはカメラマンの方とのコミュニケーションってどうしてました?
津田 「GET SET GO」はボリュームもあったので、イメージも渡して事前にかなり相談してました。カメラマンさんと助監督さんと僕で、それこそ夜中の3時、4時まで打ち合わせを続けて……。
磯村 僕は画に関しては「こういうのを撮りたい」とイメージだけ伝えて、カメラマンさんに任せていました。今回、手持ちで動きのあるカメラにしたかったんです。台本を読んだカメラマンさんも「手持ちでいきたい」とおっしゃっていて、最初からフィーリングが合っていました。現場でも手持ちでずっと撮っていただいて。心の動きも手持ちの揺れでうまく表現したかった。
白石 僕自身はお芝居を面白くすることに専念していて。3人の子役には次のシーンで何するか言わない状態で、本番で神野(三鈴)さんに仕掛けてもらってました。カメラマンさんには、彼らの演技を逃さないようフォローしてほしいと相談してましたね。
──神野さんはアトリエ教室の先生を演じられました。「そそがれ」は子役の3人がとても魅力的に映っていたと思います。
白石 何が出るかわからない状態を僕も楽しんでいたんですけど、先生が子供たちを1人ひとりハグするという台本にはないシーンを急遽撮ったんです。テストはハイタッチで、本番だけハグ。3人が普段からハグに慣れてるかどうかが如実に表れて、その反応が計算したかのように各キャラクターとぴったしハマった。こういう奇跡もあるのか……とモニターを観ていて興奮しましたね。2カメのときは、Bカメにとにかく好きなところをドキュメンタリー的に寄りで押さえてほしいとお願いしてました。
柄本 え、2台体制?
津田 2カメだったんですか?
白石 あれ、ヤバかったですか? 1日だけ2カメにしてくれて……ほかの部分で予算を削ってるのかもしれないです(笑)。
森山 それはどうかな(笑)。
磯村 実は僕も2日目だけ2カメで……。
津田 増えた(笑)。
柄本 でも、俺の映画は2台あっても意味ないか……。
森山 俺のところも狭くて、2台入る余地なかった(笑)。
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編集マンが脳みそに入ろうとしてくれる感覚(津田健次郎)
2021年1月29日更新