“ネット史上最大の事件”を描いた「Winny」撮影の裏側を東出昌大、三浦貴大、吹越満が語る (2/2)

模擬裁判は「そうやらないと思う」ではなく「それはやってなかった」(三浦)

──裁判のシーンについては、撮影とは別に壇先生の監修のもと、模擬裁判を実施されたとか。

三浦 模擬裁判は大変だったけど、実際どういうものだったのかわかったからやってよかったですね。

「Winny」場面写真

「Winny」場面写真

吹越 実際の裁判記録にのっとってやったからね。普通のドラマや映画に出てくる裁判シーンにも、監修してくれる弁護士の方がいらっしゃるんだけど、その方も経験してない、ドラマ上の架空の裁判じゃないですか。「こういうときに弁護士は立ち上がりますよ」とか「資料を見ながらしゃべってもいいですよ」っていうことは教えてくれるけど、その裁判に携わってはないわけだから。

東出 実際に関わった人が監修してるのは大きいですよね。

三浦 「ここではそうやらないと思います」じゃなくて「それはやってなかったです」だから。

東出 そうですよね。「金子くんはこのとき、腕を前に組んでこんな顔だったよ」とかそういうお話も伺ったりしながらやってました。あと「証人はこれを読んでください」って紙を渡されて読んでみたら「ダメダメ! 金子くんはそんなにきれいに読めないから!」「もっとどもって!」「もっと早口で!」とかいろいろ言われて(笑)。

東出昌大

東出昌大

──きれいさよりリアルさ重視なんですね。「Winny」は裁判ものというより、あくまで人間ドラマがメインだと思うんですが、裁判シーンも大きな見どころだと思いました。

吹越 証人尋問に関しては、実際の裁判が映画の台本みたいにきれいだったから、「秋田先生、すげえな」っていうのもわかりましたし。

──映画の終盤で出てくる、金子さんの最終陳述もいかにも映画のセリフっぽいけど、あれも実際の裁判で使われたものだそうですね。

東出 そうなんです。裁判記録の中から陳述用紙を取ってきて使いました。初号の試写を観て、壇先生と監督と、脚本の岸(建太朗)さんと「あれを使ってよかったですね」って話をしてたんですよ。そしたら、最終陳述に「Winnyの開発は早すぎたのでしょうか、それとも遅すぎたのでしょうか、最近私はそんなことを考える」という一文があるんですけど、あれは壇先生が当時(フェデリコ・)フェリーニにハマってたらしく、なんかの映画の一節から使ったんですって。だから映画のセリフっぽいんだ!と。でも、なんで現場でそれを言わなかったんですか!みたいな(笑)。

──(笑)

いっけいさんも俺も本気でやった(吹越)

東出 そういえば、北村役の(渡辺)いっけいさんと吹越さんの呼吸がばっちり合ってたじゃないですか。なんであんなに呼吸が合ってたんですか?

三浦 確かに。

──金子を逮捕した警察官・北村と秋田のやり取りは裁判シーンの見せ場の1つでした。

「Winny」場面写真

「Winny」場面写真

吹越 いっけいさんとは直接の打ち合わせはしてないんですよ。

東出 そこなんですよ。してないですよね。

吹越 いっけいさんも北村を本気でやったんだろうし、俺も秋田を本気でやった。そしたら、実際の裁判と同じで本気になったんだと思う。

東出 そうなんですね。「先輩方、すげえな」と思って。

吹越 あのシーンはやるのが楽しみだったんですよ。

東出 へえー!

吹越 だって、こんな勝ち方したら気持ちいいでしょと思って。変な話、いっけいさん大変だったと思うんです。俺、北村の役じゃなくてよかったなって(笑)。

三浦 ははは! 役の気持ちよさで言ったら(笑)。

東出 (負かされる側は)フラストレーションたまっちゃいますよね(笑)。

三浦貴大

三浦貴大

吹越満

吹越満

──最後になるんですが、この映画はどういう人に観てほしいでしょうか。

三浦 これは書けるかどうかわからないですけど、まず当時Winnyを使って違法アップロードしてた人に観てほしいですね。作った人間がどうなったかを知ってほしい。

──事件の顛末を知らない人は意外と多そうです。

三浦 事件を知っている人にも知らない人にも、幅広い人に観ていただきたい気持ちはあります。でもやっぱり将来何かを作ろうとしている人たち、技術者になろうと思っている人たちには観てほしいですよね。

──映画の中のお話でもありますけど、ソフトを作った人が悪いことになるんだったら、技術者が萎縮して新しいものが生まれなくなるという。

吹越 僕も、観てほしい相手は「誰にでも」ってことになると思いますね。弁護士の役をやったわけですけど、悪いことを実際にやった裁判なら、「やっちゃったことはやっちゃったけど、裁判に勝って刑を軽くする」って意味合いがあるわけじゃない? でもこのお話は、悪くない人の無罪を勝ち取るわけで、すごいことじゃないですか。刑を軽くするんじゃまったく意味がなくて、無罪を勝ち取らないと意味がない裁判なわけでしょ。映画としてのストーリーの気持ちよさじゃなくて、事実としてそういうことがあったんだなっていうことが重要なんだと思いました。誰でもこういう被害者になるかもしれないし、加害者になっちゃう可能性もあるだろうし。裁判に興味ある人にも興味のない人にも観てほしいです。

東出 そうですね。裁判とかテクノロジーとか、ストーリーに出てくる文言だけだと難しそうな話に見えるかもしれません。でも映画として非常に見やすいものになってると思います。それに若者の未来のために闘った裁判という部分が大きな映画なので、Winnyというソフトを知らない若い人たちにも観てもらいたいですね。

左から三浦貴大、東出昌大、吹越満。

左から三浦貴大、東出昌大、吹越満。

auスマートパスプレミアム会員なら「Winny」が土日平日いつでも1100円で観られる!

対象劇場:全国のTOHOシネマズ、ユナイテッド・シネマ / シネプレックス、コロナシネマワールドなど
料金:一般・大学生1100円、高校生以下900円
対象:1クーポンにつき2名様まで

プロフィール

東出昌大(ヒガシデマサヒロ)

1988年2月1日生まれ、埼玉県出身。モデルとして活動したのち2012年に「桐島、部活やめるってよ」で俳優デビューを果たし、同作では第36回日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞した。2014年には「クローズEXPLODE」で映画初主演。そのほか主な出演映画に「デスノート Light up the NEW world」「聖の青春」「菊とギロチン」「寝ても覚めても」や「コンフィデンスマンJP」シリーズ、「峠 最後のサムライ」など。

三浦貴大(ミウラタカヒロ)

1985年11月10日生まれ、東京都出身。2011年、デビュー作である「RAILWAYS 49歳で運転士になった男の物語」で、第34回日本アカデミー賞の新人俳優賞、第35回報知映画賞・新人賞を受賞。同年公開の「学校を作ろう」で映画初主演を飾る。そのほかの出演作に「劇場版SPEC」シリーズ、「キングダム2 遥かなる大地へ」「もっと超越した所へ。」、ドラマ「花燃ゆ」「いだてん ~東京オリムピック噺~」「エルピス―希望、あるいは災い―」「連続ドラマW シャイロックの子供たち」など。

吹越満(フキコシミツル)

1965年2月17日生まれ、青森県出身。1984年に劇団WAHAHA本舗に参加。ソロパフォーマーとして活躍し、退団後はテレビドラマ、映画、舞台などに数多く出演。主な出演作にドラマ「あまちゃん」「軍師官兵衛」、「警視庁捜査一課9係」「特捜9」シリーズ、映画「アンフェア the answer」「冷たい熱帯魚」「宇宙兄弟」などがある。