ワンダと巨像×神田沙也加|自分の信じるものが、必ずしも正義とは限らない

そのストーリーや操作性からPlayStation®シリーズ屈指の名作と語り継がれるアドベンチャーゲーム「ワンダと巨像」。最新技術を用いてグラフィックなどを一新したフルリメイク版が、2018年2月8日にPlayStation®4(PS4®)のタイトルにラインナップされた。

映画ナタリーでは、夫婦でよくゲームを楽しんでいるという神田沙也加をゲストに迎えた特集を展開。実際に「ワンダと巨像」をプレイしてもらい、独特の世界観やお気に入りの巨像、新たな機能「フォトモード」、ゲームを通して考えさせられたという道徳観について話を聞いた。

取材・文 / 小澤康平 撮影 / 吉澤健太 ヘアメイク / 吉田真妃

正解にたどり着いたときの達成感が大きかった

──PS4®をもともと持っていたと伺いました。普段からゲームはされるんですか?

神田沙也加

よくやってますね。夫もゲームが好きなので夫婦の団らんというか。どちらかがプレイしてるのを、もう片方がああだこうだ言いながら観てるんです(笑)。

──なるほど(笑)。「ワンダと巨像」は今回初プレイだったとのことですが、いかがでしたか。

実は前から気になっていて、今回プレイできてうれしかったです。「ワンダ」と同じ上田文人さんが手がけた「トリコ」(「人喰いの大鷲トリコ」)は買ってプレイしていたので。

──Twitterで「人喰いの大鷲トリコ」が気になるという内容のツイートをしてましたもんね。

そうなんです。まだクリアはできてないんですけど。「トリコ」をやっているときも感じたことなんですが、「ワンダ」は必要最低限の説明だけで進めていけるところがいいですよね。長いチュートリアルがなく、あるシチュエーションに放り込まれて「あとは自分で考えなさい」って任される感じがすごく好きです。

──確かに説明が過剰じゃなくて、プレイヤーに考えさせる余地があります。

私は親切すぎるゲームはあまり好きではなくて、自分で「こうなのかな?」と考えながらプレイしていくのが醍醐味だと思っているんです。この「ワンダ」も、道があらかじめ示されているのではなく自分で考えて進んでいく感じのゲームなので、その分巨像の倒し方の正解にたどり着いたときの達成感は大きかったですね。

自分の信じているものが必ずしも正義ではない

PS4®「ワンダと巨像」

──最初の巨像と対面したとき、どう思いました?

第1の巨像はそんなに怖くなかったのを覚えてますね。景色の色が変わって巨像が見えたとき「これが巨像なんだ!」と思って。巨人とも違うし、石像でもない。材質は石や岩のようなものだと思うんですけど、そこはかとなく人間味を感じるというか。

──それはどんなところに?

剣を刺したときのリアクションだったり、巨像の動きですかね。あとは黒い煙の出方も人間っぽくて。だから巨像を倒したときスッキリはするんですけど、心のどこかにモヤモヤした気持ちも残ってるんです。ワンダは少女を救うという目的を持ちつつも、彼が善で巨像が悪とは言えない。道徳観を考えさせられましたね。

──具体的にどういったことを考えたんでしょう。

神田沙也加

普通のゲームだったら、最初に主人公の細かい設定が説明されることが多いじゃないですか。でもワンダに関して明らかなことは少女を救おうとしていることだけで、彼がどんな過去を持っているのかはわからない。そこでワンダは救いの手とも言える天の声を聞くわけですけど、救いを差し伸べてるほうにも何か思惑がある可能性はあるわけですよね。ワンダは巨像を倒し進んでいくことが正しいと信じていても、巨像が苦しんでいる様子を見るとプレイヤーの私は「これは本当に善なんだろうか?」と考えてしまって。

──「ワンダと巨像」のキャッチコピーは「最後の一撃は、せつない。」ですもんね。

そうなんです! 本当に切ないんです……。でもこっちが正義であっちが悪とか、簡単に分けることができないのが「ワンダ」の魅力であって。自分の信じているものが、必ずしも正義であるとは限らない。そういうことを考えさせてくれるところが本当に面白いと思います。

クラシカルなものを生かしつつ、新しい技術も取り入れている

──ゲーム内には16体の巨像が出てきますが、印象的だった巨像はいますか?

個人的に難しかったのは大きな剣で攻撃してくる巨像(第3の巨像)ですね。私は“振り下ろし巨像”って言ってるんですけど(笑)。好きなのは水中ステージで出てくるウナギの巨像(第7の巨像)です! 最初に見たときから「ウナギだ!」と思って、すぐお気に入りになりました。あとは……。

──たくさんいますね(笑)。

そうですね。空を飛んでる巨像(第5の巨像)もカッコよくて好きです。空気抵抗を受けたときの風のなびき方とか光の動き方をリアルに感じることができて。

──グラフィック視点からも楽しんでいると。

PS4®「ワンダと巨像」

もちろん! フォトモードではフィルターをかけることができるので、青味や緑味を強く出した「冷たい」というフィルターを使って写真(スクリーンショット)をよく撮ってました。画面のトーンを変えられる機能ってゲームでは珍しいし、私は収集癖があるので、写真ばっかり撮ってストーリーが進まないこともあったりして。フォーカスを変えたり、画面を回したりすることもできるから、実際にカメラが趣味の方も楽しめる機能だと思いました。

──フォトモードを使っていて、「ワンダと巨像」とほかのゲームで大きな違いを感じたことはありましたか?

「ワンダ」って景色とか雲行きが変わってくる感じとか、実写に近い部分があると思うんです。でも主人公のワンダの表情や建物の質感からは古きよきものが感じられて。クラシカルなものをあえて生かしつつ、新しい技術も取り入れているところが好きですね。

神田沙也加

──現実の要素とファンタジー的な要素が融合しているということでしょうか。

そうですね。やっぱりゲームなのでファンタジー的な部分を消したらダメだと思うんです。リアルな部分があるからこそ「自分がもしここに放り込まれたら、どう考えるだろう」と想像が可能な一方で、非現実のファンタジー的な世界だからこそ自分が自分ではない存在になっているような気持ちを感じることもできる。「ワンダ」はそのバランスが絶妙だと思いました。

PlayStation®4ソフト「ワンダと巨像」
「ワンダと巨像」

2005年にPS2®のソフトウェアとして発表された、PlayStation®屈指の名作と語り継がれるアクションアドベンチャーゲーム。広大なオープンフィールドの美しい景観や、強大な巨像にしがみ付きよじ登るという斬新なゲーム性で話題を集め、現在も世界中で愛されている。2018年2月8日に新たな機能「フォトモード」などを搭載したPS4®フルリメイクが発売された。

ストーリー

「最後の一撃は、せつない。」

その世界では、望めば死者の魂を取り戻せると伝え聞く。

青年の名は、ワンダ。魂を失った少女を救うため、足を踏み入れることを固く禁じられた禁忌の地、果てが霞むほど広大な「古えの地」へと向かう。たどり着いた「古えの地」、祭壇に少女の亡骸をそっと横たえたワンダは、天からの不思議な声を耳にする。

その声は「この古えの祠に立ち並ぶ16体の偶像すべてを破壊することができれば、望みが叶うだろう」と告げる。ワンダは16体の偶像を破壊するために、対となる16体の巨像を探し、打ち倒すことを決意する。

天からの声の主は何者なのか。偶像とは、巨像とは何なのか。たとえその行いが、我が身に恐ろしい結末を招くものだとしても、ワンダは少女の魂を取り戻すため、広大な地を駆ける。たった1人、16体の巨大な敵に挑む。

「ワンダと巨像」公式サイト
神田沙也加(カンダサヤカ)
神田沙也加
1986年10月1日生まれ、東京都出身。2002年に歌手デビューを果たし、「レ・ミゼラブル」「キューティ・ブロンド」といった舞台作品を中心に女優としてのキャリアを積む。ディズニー映画「アナと雪の女王」ではアナの日本語吹替を担当し、第9回声優アワード主演女優賞を受賞。2018年は秋に映画「3D彼女 リアルガール」が公開されるほか、ミュージカル「1789 -バスティーユの恋人たち-」「マイ・フェア・レディ」の上演も控えている。