ゴジラシリーズ4作品をBS12で一挙オンエア!映画監督・田口清隆がメカゴジラの歩みと魅力を徹底解説

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11月3日からはゴジラ70周年・メカゴジラ50周年を記念して「ゴジラ」シリーズが4週連続放送! 釈由美子が主演を務めた「ゴジラ×メカゴジラ」のほか、ハリウッド作品「GODZILLA ゴジラ」「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」「ゴジラvsコング」がオンエアされる。

本特集ではメカゴジラの50年をフィーチャー。かつて「ゴジラ×メカゴジラ」で特撮美術助手やデジタルエフェクトを担当し、「ウルトラマンブレーザー」のメイン監督でも知られる田口清隆がメカゴジラの歩みを解説する。さらに「ゴジラ×メカゴジラ」に登場する3式機龍の美しいフォルム、釈由美子が演じた主人公・家城茜のキャラクター像についても。11月はBS12 トゥエルビでゴジラシリーズをチェックしよう!

文 / 田口清隆(コラム)、大畑渡瑠(作品紹介)

メカゴジラ 進化しつづける鋼の魔神

寄稿 / 田口清隆

巨大な敵に対して人類がスーパーロボットで直接戦うという、みんな大好きなシチュエーション

メカゴジラと聞いて、皆さんは最初にどのメカゴジラを思い出すだろうか? 答えはおそらく世代によって大きく違ってくる。それは1974年に初登場して以来、数年おきに全く違う姿、設定で現れ続けているからであろう。

まずは何と言っても初代。私よりも年上の現在50代以上のゴジラファンの皆さんのほとんどは、「ゴジラ対メカゴジラ」(1974年)、「メカゴジラの逆襲」(1975年)に登場したブラックホール第3惑星人の侵略兵器、初代メカゴジラ(およびメカゴジラⅡ)を想像するに違いない。
初代メカゴジラの燃えポイントと言えば、やはり全身にリベットを配したその無骨な姿であろう。機関車にも似た機能美に溢れるその鉄の塊は、いまだにメカゴジラといえばこのデザイン、初代が絶対に譲らないのである。予想外に軽快なテーマ曲に乗って登場し、頭も手首もぐるぐる回しながら、ど派手な光線やミサイルを敵にぶっ放す。ゴジラを殺すために装備された全身の武装も、メカゴジラのたまらない魅力であろう。「メカゴジラの逆襲」では、指の回転ミサイルを市街地に向けて発射。その爆発の威力でセットが乗っている平台(舞台)ごと勢いよく浮いてしまい、ミニチュアが一斉に吹っ飛んでいくという事態に。あまりにダイナミックなその映像は、映画史に残る伝説のワンカットである。

1980年生まれ、現在44歳の筆者は、平成VSゴジラシリーズ「ゴジラVSメカゴジラ」(1993年)に登場したGフォースの対ゴジラ兵器としてのメカゴジラを最初に思い出す。
初代が機関車ならば今回は新幹線だと言わんばかりのなめらかなフォルム(本作のデザイン案には緑色のまさに戦車のようなデザインのメカゴジラもあり、ちょっと見てみたかったと個人的には思っている)。そもそもが凄い設定だったメカキングギドラの23世紀の技術を応用し、ゴジラを徹底的に研究した国連G対策センターが造り上げた究極の戦闘マシーンである。ロボットと言えば当然人類や宇宙人に建造されているわけであるが、その発進ドックで整備されている姿も、やはりグッとくるポイントの1つであろう。オープニングで伊福部昭先生によるメカゴジラのテーマにのって丁寧に描写される、発進ドックで整備されているメカゴジラは、映画史に残る名シーンである。筆者個人も中学生の頃「発進ドック」という言葉に強く魅了された。プラモデルを、そのランナーや曲がるストローで飾ったドックに収め、ムギ球をつけたり、線香で煙を溜めてライトを後ろに置いてみたり。それを必死に撮影していたものである。

人類の味方としてのメカゴジラは、直接搭乗しゴジラと対決する人間ドラマを作ることもできた。怪獣同士の戦いが始まると観測者になってしまいがちな人類を、戦場のど真ん中に連れて行ったのである。ゴジラの第2の脳に直接アンカーを撃ち込み、猛烈な放電によりそれを破壊するという、ゴジラ抹殺だけに特化した兵器・Gクラッシャー。この作戦で第2の脳の正確な位置を探らせるため、平成VSシリーズのレギュラーキャラクターである三枝未希を搭乗させた。すでにゴジラに感情移入をしていた彼女に、その破壊のスイッチを押させようとする本作の見せ場が用意されたのだ。

余談だが筆者が「ウルトラマンZ」(2020年)で橋爪淳さんと最初に顔合わせした際、少し照れ臭そうに「私、実は昔ロボットに乗ってゴジラと戦ったことがあるんです」と言われ(メカゴジラではなくMOGERA=「ゴジラVSスペースゴジラ」に登場する対ゴジラ兵器の話)、「良く存じております!」と最敬礼したものである。
巨大な敵に対して人類がスーパーロボットで直接戦うという、みんな大好きなシチュエーションが遂にゴジラ映画で達成された「ゴジラVSメカゴジラ」は、1つの到達点だったのではないだろうか。

今までのメカゴジラと全く違う魅力を放つ「3式機龍」、勇姿を目の前で見ていただけに思い入れも強い

そして、その流れは「ゴジラ×メカゴジラ」(2002年)でさらに発展していく。
登場するのは、なんと初代ゴジラの骨をベースに作り出されたメカゴジラ「3式機龍」。
20代から30代のゴジラファンは、メカゴジラと言えば「ゴジラ×メカゴジラ」、「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS」(2003年)に登場した、この特生自衛隊のメカゴジラ“機龍”を思い出すという方も多いのではないだろうか。

個人的には下積み時代、特撮班・特殊美術として現場に関わっていた時に、その勇姿を直接目の前で見ていただけに思い入れも強いメカゴジラである。初代メカゴジラのデザインも意識したシルエットだが、全身のディテールは現代的解釈で強く味付けされた。細かいディテールも、様々な設定が考えられていて、いつまでも見ていて飽きないものとなっている。そして手塚昌明監督の拘りで、各種専門家の科学考証を元に作られた設定と、自衛隊全面協力によって補強された特生自衛隊のリアリティが、今までのメカゴジラと全く違う魅力を放つ。

「ゴジラ×メカゴジラ」より、ゴジラ(左)と対峙する3式機龍(右)©︎2002 TOHO PICTURES,INC. TM&©︎2002 TOHO.CO.,LTD.

「ゴジラ×メカゴジラ」より、ゴジラ(左)と対峙する3式機龍(右)©︎2002 TOHO PICTURES,INC. TM&©︎2002 TOHO.CO.,LTD.

そこに人気女優・釈由美子さん演じるシリーズ史上屈指の戦うヒロイン・家城茜の登場である。冒頭、嵐の中上陸したゴジラに対して出動した90式メーサー殺獣光線車に搭乗し任務に就く主人公・家城。このくだりも本当に名シーンである。彼女は目の前に迫ったゴジラへの一瞬の恐怖によって事故を起こし仲間を死なせてしまう。左遷されその責任を自ら背負いながら、3年間もゴジラと対峙する機会に備えていたところに、対ゴジラ部隊「機龍隊」への配属の命令が下る。自分に課された任務を果たすべく真っ直ぐに突っ走る彼女だが、あの事故で犠牲になった隊員の弟や、命の重さを考え続けるオジギソウを抱く少女と出会い、様々な感情に揺さぶられていく。人間としての弱さ・暗さ、ゴジラと戦う自衛官としての強さ・直向きさを併せ持つ一人の女性として描かれたその人物造形は、準備稿の段階から手塚監督と釈さんが話し合い試行錯誤していたのだという。

昨年、アメリカで開催されたゴジラのファンイベント「G-FEST 2023」のゲストでトークショーに出演された釈由美子さんがサービスで「いくよ! 機龍!」と叫ぶと、会場のお客さんがもの凄い盛り上がり方をしていた。世界のゴジラファンに愛されるヒロインなのだなあと感動する光景であった。元々「修羅雪姫」「スカイハイ」などで特撮ファンにも大人気であったが、最近でも「仮面ライダージオウ」「カミノフデ~怪獣たちのいる島~」「Iké Boys イケボーイズ」など、特撮映画に積極的に出演、活躍してらっしゃるのが本当に嬉しい。

「ゴジラ×メカゴジラ」より、熱線を発射するゴジラ ©︎2002 TOHO PICTURES,INC. TM&©︎2002 TOHO.CO.,LTD.

「ゴジラ×メカゴジラ」より、熱線を発射するゴジラ ©︎2002 TOHO PICTURES,INC. TM&©︎2002 TOHO.CO.,LTD.

人類の味方であろうが、敵だろうが、厳しい各世代のゴジラファンを問答無用で魅了してきた

ネットで簡単にどの時代のゴジラも自由に観られる時代が来てからは、もはや世代は関係なく「好きなモノが好き」になっているので、今の子供達、若者達がどのメカゴジラが好きなのかはもう分からない。
そんな中でもメカゴジラは次々新型が投入されていく。アニメ版「GODZILLA 決戦機動増殖都市」(2018)に登場し***たメカゴジラ。公開日に観に行ってあまりのことに、あのメカゴジラの勇姿を見たくてソフビを買おうと探し回ったがどこにも売ってなく、調べるとまさかの半年後の予約販売で地団駄を踏んだ思い出がある。そしてハリウッドに進出したメカゴジラ。「レディ・プレイヤー1」(2018)では、あのスティーヴン・スピルバーグ監督が撮った。しかも「ゴジラVSメカゴジラ」のポスターで生頼範義さんが描いたメカゴジラらしきデザイン! 劇場で飛び上がるほど興奮した。続いて「ゴジラvsコング」(2021)に登場した人類の邪悪な兵器としてのメカゴジラ。まさかの小栗旬さんがキングギドラの骨の中で白目を剥きながらコントロール。他にもネタバレを防ぐため言えないメカゴジラもいる。
様々なメカゴジラが今も、世代も国も越えて愛され続けているのである。

「ゴジラ×メカゴジラ」より、暴走した3式機龍がビルを突き破るシーン ©︎2002 TOHO PICTURES,INC. TM&©︎2002 TOHO.CO.,LTD.

「ゴジラ×メカゴジラ」より、暴走した3式機龍がビルを突き破るシーン ©︎2002 TOHO PICTURES,INC. TM&©︎2002 TOHO.CO.,LTD.

人類の味方のゴジラに対しては、最悪の侵略兵器として。人類を脅かす怪獣王ゴジラに対しては、人類の最終兵器として。最強の生命体に対して、最強の人工物。真っ黒なゴジラに対して、メカゴジラは鋼の銀色(ゴジラとメカゴジラはあまりにも色が正反対であるため、ゴジラに合わせて照明をあてるとメカゴジラは明るすぎ、メカゴジラに合わせた照明になるとゴジラは暗すぎる。そのため非常に撮影・照明泣かせの対戦カードだという)。
常にゴジラと相反する存在であり続け、戦ってきたメカゴジラ。
それは人類の味方であろうが、敵だろうが、厳しい各世代のゴジラファンを問答無用で魅了してきた。次はどっちの味方で、どんな姿で、我々の前に姿を現すのか、楽しみに待とう。
そして私もいつか監督したいと、心より願っている。

プロフィール

田口清隆(タグチキヨタカ)

1980年5月7日生まれ、北海道出身。映画監督。自主映画「大怪獣映画 G」が認められ、2009年にNHKの番組内企画「長髪大怪獣 ゲハラ」で商業監督デビュー。「ウルトラマンギンガS」(2014年)以降の「ニュージェネレーションウルトラマン」シリーズに10年連続で監督として関わり、「ウルトラマンX」(2015年)、「ウルトラマンオーブ」(2016年)、「ウルトラマンZ」(2020年)、「ウルトラマンブレーザー」(2023年)でメイン監督を担当。主な監督作品は「MM9-MONSTER MAGNITUDE-」(2010年)、「RANGER 陸上自衛隊幹部 レンジャー訓練の91日」(2011年)、「ネオ・ウルトラQ」(2013年)「THE NEXT GENERATION パトレイバー」(2014年)、「ゆうべはお楽しみでしたね」(2019年)、「12人のイカれたワークショップ」(2021年)、「大怪獣ブゴン」(2022年)など。自主ドラマシリーズ「UNFIX」がYouTubeで配信中。「全国自主怪獣映画選手権」や「すかがわ特撮塾」など、後進育成の活動も積極的に行っている。現在、監督としてテレビアニメ「クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-」を制作中。

BS12で一挙オンエア!「ゴジラ」シリーズ 放送作品紹介

「ゴジラ×メカゴジラ」(2002年製作)

©︎2002 TOHO PICTURES,INC. TM&©︎2002 TOHO.CO.,LTD.

©︎2002 TOHO PICTURES,INC. TM&©︎2002 TOHO.CO.,LTD.

ゴジラミレニアムシリーズの第4作となる本作は、半世紀前に日本を襲ったゴジラが再び登場したことから物語が展開。対特殊生物自衛隊(特生自衛隊)は反撃を開始するが、まったく歯が立たず、特生自衛隊員・家城茜は仲間を殉職させたことで自責の念を抱え続けていた。そして日本政府は最新技術によるメカゴジラの開発に着手し、機龍(3式機龍)を完成。操作を任された茜は再びゴジラと対峙するのだった。手塚昌明が監督を務め、茜を釈由美子が演じたほか、宅麻伸、小野寺華那、高杉亘、友井雄亮、水野純一、水野久美、中尾彬がキャストに名を連ねた。

「GODZILLA ゴジラ」(2014年製作)

©︎2014 Warner Bros. Entertainment Inc., Legendary and Ratpac-Dune Entertainment LLC. All Rights Reserved.

©︎2014 Warner Bros. Entertainment Inc., Legendary and Ratpac-Dune Entertainment LLC. All Rights Reserved.

ハリウッド版ゴジラとして製作された「モンスター・ヴァース」の1作目。1999年、日本にある原子力発電所に勤務していたジョー・ブロディは謎の振動と電磁波を探知し調査に向かうが、大きな揺れに襲われて妻を失う。そして15年後、日本で振動の原因を探っていたジョーは息子のフォードとともに原発跡地内の研究施設へ連行されるが、施設内では「モナーク」と称する秘密機関が調査を行っていた。彼らが調査していた生物・ムートーが施設を破壊して飛び去り、太古の昔から敵対していたゴジラも60年ぶりに姿を現したことで、やがて2体は対峙することになる。ギャレス・エドワーズが監督を務め、アーロン・テイラー=ジョンソンらが出演。日本からは渡辺謙が「ゴジラ」精神を受け継ぐ科学者・芹沢猪四郎役で参加した。

「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」(2019年製作)

©︎2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

©︎2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

「GODZILLA ゴジラ」から5年後が描かれた本作。怪獣たちの活動が活発化したことから、政府はモナークへ怪獣たちの抹殺を命じるが、芹沢ら共存を望む科学者は難色を示していた。一方、中国にあるモナークの基地では研究員エマ・ラッセルが特殊な装置でモスラの幼虫との交信に成功するも、アラン・ジョナ率いるテロリスト集団に装置を奪われる。彼らは怪物“モンスター・ゼロ”を復活させることを目的としていたのだった。劇中ではゴジラをはじめモスラ、ラドン、キングギドラなど数々の怪獣たちがバトルを繰り広げる。監督はマイケル・ドハティが務め、カイル・チャンドラーらが出演した。

「ゴジラvsコング」(2021年製作)

©︎2021 WARNER BROTHERS ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.

©︎2021 WARNER BROTHERS ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.

「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」から5年後、モナークは巨大怪獣のルーツを探る一方、髑髏島ではキングコングを巨大なドームの中に入れて管理していた。そしてコングを移送する際に、島から出てきたことに気付いたゴジラから襲来を受けたことで両者は激しい戦闘状態に。その頃巨大テクノロジー企業「エイペックス・サイバネティクス」では対ゴジラ兵器としてメカゴジラの開発が進められていた。アダム・ウィンガードが監督し、アレクサンダー・スカルスガルドが主演を務めた。日本からは小栗旬が芹沢猪四郎の息子・蓮役で参加している。

「ゴジラ」シリーズ 放送スケジュール

  • 2024年11月3日(日・祝)19:00~
    「ゴジラ×メカゴジラ」
  • 2024年11月10日(日)19:00~
    「GODZILLA ゴジラ」(英語・日本語字幕)
  • 2024年11月17日(日)19:00~
    「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」(英語・日本語字幕)
  • 2024年11月24日(日)19:00~
    「ゴジラvsコング」(英語・日本語字幕)

「ゴジラ」シリーズ特集放送 公式ページ