映画ナタリー Power Push - 「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」

宮藤官九郎×長瀬智也×神木隆之介 3人の戦友が語る、“地獄の軽音楽部”誕生秘話

「長瀬くんと僕にしかできないな」って(宮藤)

──鬼のビジュアルはとにかく衝撃的ですよね。

宮藤官九郎

宮藤 もともとロック映画がやりたかったっていうのはありましたけど、日本でそれをやるのはすごく難しいっていうか。「ロッキー・ホラー・ショー」とか洋モノを翻訳してやるのを観たときも、どうにもこっぱずかしい気持ちが拭えない。コスプレして観に行くとか。この映画も、無理しすぎるとそういうのが出ちゃうと思った。でも、これは活字になると自信満々に思われちゃうかもしれないけど、最初にこのビジュアルを見たときに「こんな映画は長瀬くんと僕にしかできないな」って思ったんです。

長瀬 うんうん。

宮藤 今“ロック”っていうと等身大のものが主流ですよね。普段着で……自分のことだけを歌うみたいな。僕がバンドでフェスのバックステージに行くと、誰がアーティストで誰がスタッフだかわかんない。みんな普段着だから。でも、デーモン小暮(デーモン閣下)が歩いてたら一発でわかるじゃないですか、「あっ! 10万53歳の人だ」って(笑)。そういう過剰な部分が映画には必要だし、それがないとただの青春映画になっちゃうな、と。まあ今の若い人が観たら「俺の知ってるロックはこうじゃない」って思うかもしれないですけどね。

──キラーKが人間だった頃のキャラクター、近藤についてはいかがでしょう。

宮藤 近藤さんは特にストイックな、禁欲的な人として作ったんですよ。だから地獄でそれが全部爆発して、キラーKみたいな鬼になってしまったのかも。本当は近藤さんみたいな街のスタジオにいるスタッフさんって、ガンズ・アンド・ローゼズのTシャツ着て、ぴっちりしたジーパン穿いて……。

長瀬 髪の毛がサラサラの(笑)。

宮藤 そう。でもそれだとキラーKとのギャップがあんまりなくなるなって。むしろ、今っぽい感じにしたんです。なんていうか……メガネかけた人(笑)。

長瀬 スッとしてるんだけど、心の中には欲望があるみたいな。

宮藤 うん。なんかさ……衣裳やヘアメイクの参考資料として、やたらロッキング・オン・ジャパンを見せられて(笑)。

一同 (笑)

宮藤 「まあまあ要はこういうことなんですけど(笑)」って言いながら。

神木くんがチャラくすればするほど、板についていない(宮藤)

──神木さんのお芝居に関して、印象に残っていることはありますか?

大助は、修学旅行のバスで無理やりひろ美(森川葵)の隣の席へ。

宮藤 大助が部屋の鏡に向かって彼女に話しかける練習をしてるシーンは、僕は何も言ってないんですよね。「前髪切った?」とかいうセリフも、「全部好きにやってください」っていう指示で生まれた。学校でとんがってるグループに入れない子たちが軽音楽部にいる設定だから、大助もクラスで真ん中くらい。特に勉強ができるわけではないし、モテるわけでもない。やっぱり神木くんがチャラい感じでやろうとすればするほど、何やら板についてない感じが出るのが絶妙によかった。冒頭のシーンも、バスでひろ美の隣になりたかった大助が、松浦に一番前の席を交代してもらって、小芝居するじゃないですか。

神木 はい。「お前、松っ!? お前っ、俺の席、えっ!? おーい!……こりゃ一番前かあ~!?」って(笑)。

宮藤 なんのアピールなんだろうって(笑)。現場でどんどんおかしくなっていくのが、役者さんの面白いところだと思います。そういうのは脚本では作れないですからね。

地獄の撮影に入る前はみんなで「よろしくねー」って(神木)

──すごく楽しい撮影現場だったことが伝わってきます。

神木隆之介

宮藤 ライブシーンの撮影が終わった日は、地獄図(ヘルズ)の4人(長瀬、神木、桐谷、清野)から「打ち上げでーす」って言って写真が送られてきた。

長瀬神木 そうそう(笑)。

宮藤 俺は行けなかったんですけど、バンドっぽいなって思った。

神木 あと地獄の撮影に入る前にはみんなで「よろしくねー」って言っていました。

長瀬 あったね!

宮藤 そんな軽いノリで地獄に来てたの……?

一同 (笑)

宮藤官九郎

宮藤 まあそんなもんですよね。あとクランクイン前に(スタジオ)NOAHに集まってもらって練習したのがすごい印象深かった。実際に音を出して練習したんですけど、清野さんは今回初めてベースに触るくらいだし、神木くんもいきなりみんなと一緒にやるから、最初は緊張してる感じがあって。でもやってみたら意外とうまくいった。そのときは、それまでの衣装合わせとか本読みでは越えられなかった何かをバッと越えられた気がしましたね。

長瀬 その時間が、唯一まともな顔が見られるときでしたもんね。

宮藤 撮影では毎回、別々に入って1時間半くらいかけて特殊メイクするから。俺、結局清野さんの素顔ほとんど見てないから、毎回会うたびに「え? ……あ、邪子だ」ってなりますもん。

神木 確かにそうですね(笑)。

長瀬 メイク落として、若干アイラインとか残ったまんまみんなで焼肉食う、みたいなこともあったりして。ヴィジュアル系バンドマンのオフ会みたいな感じだったよね。

神木 あとは休憩中に、僕や長瀬さんがギター弾いて、健兄(桐谷)が歌ったりとか。

左から神木隆之介、宮藤官九郎。

長瀬 即興コラボみたいな。健太も音楽好きだし、その感じを楽しんでるのがわかった。ご飯食べに行くのも健太が先陣切ってくれて。

宮藤 あのスタジオ練習があったからかもしれないけど、最初の何日かで、地獄の撮影はなんでもうまくいく感じがしたんです。普通の現場で「よろしくお願いします」って始めただけではどうしても出せない何かがあった。チーム感があって、演出してて楽しかったですね。

ABOUT THE MOVIE

「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」2016年6月25日より全国公開
「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」
ストーリー

普通の高校生・大助は、同級生のひろ美のことが大好き。しかし修学旅行中のある日、大助は不慮の事故で命を落としてしまう。彼が目を覚ますと、そこは真紅に染まった空が広がり、ドクロが転がる“地獄”だった。慌てる大助を待ち構えていたのは、地獄農業高校の軽音楽部顧問で、地獄専属ロックバンド・地獄図(ヘルズ)のボーカル&ギターを務める赤鬼のキラーK。彼によると、閻魔大王の裁きにより人間に転生するチャンスがあるという。「ひろ美ちゃんにもう一度会いたい!」と願う大助は、キラーKの“鬼特訓”のもと、生まれ変わりをかけた地獄めぐりをスタートさせるが……。

スタッフ

監督・脚本:宮藤官九郎

主題歌:地獄図「TOO YOUNG TO DIE!」

キャスト

キラーK:長瀬智也
大助:神木隆之介
なおみ:尾野真千子
ひろ美:森川葵、宮沢りえ
COZY:桐谷健太
邪子:清野菜名
松浦:古舘寛治
じゅんこ:皆川猿時
修羅:シシド・カフカ
鬼姫:清
えんま校長:古田新太
その他キャスト:坂井真紀、荒川良々、瑛蓮、みうらじゅん、Char、野村義男、ゴンゾー、マーティ・フリードマン、ROLLY、快速東京、木村充揮、関本大介、ジャスティス岩倉、烏丸せつこ、田口トモロヲ、片桐仁、平井理央、中村獅童ほか

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PROFILE

宮藤官九郎(クドウカンクロウ)

1970年7月19日、宮城県生まれ。1991年より大人計画に参加し、「真夜中の弥次さん喜多さん」「少年メリケンサック」「中学生円山」といった作品の監督を務めるほか、多くの脚本、演出などを手がける。ドラマでは「池袋ウエストゲートパーク」「うぬぼれ刑事」「11人もいる!」「あまちゃん」などの脚本を担当。俳優としての出演作も「ゲゲゲの女房」「バクマン。」ほか多数。1995年に結成したパンクコントバンド・グループ魂ではギタリストを務め、作詞作曲も担当している。

長瀬智也(ナガセトモヤ)

1978年11月7日、神奈川県生まれ。1994年にTOKIOのメンバーとしてデビューし、2014年にはジャニーズ史上初めて夏フェス「SUMMER SONIC 2014」に参加。1995年にドラマ「カケオチのススメ」で初主演を果たし、以降ドラマ「池袋ウエストゲートパーク」「ムコ殿」「タイガー&ドラゴン」「マイ☆ボス マイ☆ヒーロー」「うぬぼれ刑事」などに主演。出演映画には「ソウル」「真夜中の弥次さん喜多さん」「ヘブンズ・ドア」などがある。

神木隆之介(カミキリュウノスケ)

1993年5月19日、埼玉県生まれ。1999年「グッドニュース」でドラマデビュー。2005年に主演作「妖怪大戦争」で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。「11人もいる!」「サムライせんせい」などテレビドラマで活躍する一方、「劇場版 SPEC~天~」「桐島、部活やめるってよ」「るろうに剣心 京都大火編 / 伝説の最期編」「脳内ポイズンベリー」「バクマン。」などに出演。2016年公開待機作に「太陽」や声の出演をする劇場アニメ「君の名は。」ほか。


2016年6月23日更新