サンドラ・ブロック&チャニング・テイタムがダブル主演! 予測不能な謎解きアクションアドベンチャー大作「ザ・ロストシティ」が6月24日に全国で劇場公開される。
謎の大富豪に拉致された悩める小説家が、南の島で伝説の古代都市を巡る! 彼女を助けようと立ち上がったのは、小説の表紙モデルを務めるポンコツ男だった……!? この夏一番の笑える“ポップコーンムービー”にして、実は最愛の夫を失った1人の女性と自分に自信を持てない男性のロマンティックコメディとしての見どころもたっぷりな本作。ブロック演じる主人公ロレッタが新たな扉を開くまでの再生の物語が、ハチャメチャな冒険を通して描かれる。
映画ナタリーではテレビ番組での共演をきっかけに親交を深めたというタレントのSHELLYと、脳科学者の中野信子による対談をセッティング。映画好きのSHELLYはコメディに振り切った本作の愛すべきシーンの数々に言及し、中野は女性の研究者として“学者崩れ”の小説家ロレッタに共感を寄せる。仲良し2人のおしゃべりが止まらない……!
取材・文 / よしひろまさみち撮影 / 間庭裕基
こういう映画が大好き(SHELLY)
──お二人はもともと仲良しなんですよね?
SHELLY そうなんですよ! 仕事でご一緒することのほうが少ないんじゃないかな。
中野信子 SHELLYちゃんと共通の友達もいるので、プライベートでの遊び仲間なんですよね。
SHELLY あ、そうだ、忘れてた(笑)。
──では、一緒に映画を観るのも珍しくないこと?
SHELLY そうでもなくて、映画は趣味が違うんですよね。私はこういう映画が大好き。ラブコメというラブコメは全部観てます。でも、信子さんはラブコメを全然観ないっておっしゃってて、この映画を観たらどんな感じに映るんだろうって興味津々ですね。
中野 私、ラブコメはあんまり観ないんですよね。観るとしたらサイコスリラーとか、三池崇史監督の「殺し屋1」みたいなグログロの作品とか(笑)。
SHELLY やだ。でも、イメージ通り(笑)。
アカデミックな女性は意外とイケメンに偏見がある(中野)
──ではまずSHELLYさんから、本作の率直な感想を。
SHELLY 最近劇場に映画を観に行ったときに「ザ・ロストシティ」の予告編が流れていて、そのときから絶対観ようって思ってたんですよ。もうね、ラブコメやコメディ好きの私にとっては、期待通りというよりも期待以上。おまけに信子さんと語り合える場まで用意していただいて最高ですよ。
中野 よかったねー(笑)。普段観るジャンルじゃないけど、私も楽しみました。
SHELLY 信子さん、どこが面白いと感じました?
中野 サンドラが演じているロレッタが、学者崩れの女性っていう設定じゃないですか。学者なら、彼女みたいなキャラクターに共感できる人は多いんじゃないかな。だいたいこういう人はね、イケメンが嫌いなの(笑)。
──ええ!? そこ!?
中野 アカデミックな女性は意外とイケメンに偏見があるんですよ。メンクイであっても。いや、メンクイならなおさらかな。見た目だけでどうして能力まで高く評価されるんだって。でも、ロレッタはアランとハンモックで背中合わせに寝る終盤のシーンで、自分の偏見に気付くんですよね。アランは彼女の小説の表紙モデルだけど、ロレッタは文字通りアランの「表紙」だけで彼を評価していた。あのシーンでは「私もイケメンのことを表紙で見てしまっていたな」ってハッとさせられたんです。
SHELLY 見た目だけで判断!(笑)
中野 反省した(笑)。それとね、ロレッタが何もかも手に入れている人というわけじゃないのもよかった。もし彼女が男だったらインディ・ジョーンズばりに学者兼作家をやってるという設定になったんじゃないかな。だけど、無意識のバイアスにさらされた結果、考古学者は続けられないって判断で作家になった、という想像ができるんです。
SHELLY そういうところを観てたんですね。
中野 ここも、女性なら共感できるポイントじゃないかなあ(笑)。それもあって、ロレッタがアランへの偏見が解けて2人の関係性がぐぐっと縮まるあのハンモックのシーンがより印象的だったんです。私も男の人を人間として見ないといけないな、と忘れていたことを思い出した感じ。
SHELLY お願い、思い出して(笑)。
──それ、ほぼ学者の呪いですね。
中野 そうなんですよ。
SHELLY 学者だけじゃないですよ。私もイケメンに対してはめちゃめちゃ厳しいので(笑)。
中野 仕事の中身がちゃんとしてる人が好きなんだよね。
SHELLY そうそう(笑)。だから、その点では私も共感しました。チャラチャラした仕事をしてる人に対して偏見を持ってるってわかった。私、アランみたいに語彙力や表現力があまりない男性には、すごいレッテル貼るタイプなんですよね。
──2人とも男性を見る目が厳しいですよね。
SHELLY 厳しいんじゃないんですよ。人とは見るところが違うだけで。
中野 そう、いいこと言った!
SHELLY だって、見た目は変えられないから、ルックスで判断することのほうがよっぽど厳しいと思いますよ。
中野 そうだ、そうだ!(笑)
SHELLY 私たちが見てるのは変えられる部分。努力でなんとでもなる部分なんですよね。
中野 そこを見たいんだよね。人間として尊敬できるかなって。
SHELLY なんの話だ、これ(笑)。
中野 いや、意外と重要なことなんですよ、この作品のテーマの1つでもあるよね、ジェンダー論って。男の人は社会に出てから重圧を背負わされがちである一方、女性はそれを回避できる場合がある。ちょっと語弊があるかもしれないけど、「私にはそれはできません」っていうことを言っても比較的寛容に扱われる場面が多いでしょう。でも、男の人は「逃げるな」とか、「男だろ」とかって厳しく言われてしまうことがある。互いのつらさについて、これまで男女間での対話が十分ではなかったけど、あのシーンは和解の糸口になり得る重要なシーンなんですよね。
SHELLY やっぱり信子さんは、面白い! 私は単純に2人のやりとりをめちゃくちゃ楽しく観ちゃってました。コメディのタイミングもぴったりだから、たぶん2人の笑いや間の取り方のセンスが似てるんですよね。例えばバイクの事故のあと(※編集部注:物語序盤で2人が追手に追われジャングルの中でサバイバルな状況に巻き込まれるシーン)、超しつこくなかったですか? なのにずーっと面白いから、いつまでも話してるの観たいと思っちゃう。それって現実でもそうだよね。あのシーンだと、その場でわーってアドレナリンが出てても「今の人たち死んだよね」「いや死んでないことにしよう」みたいな心理戦があって、そこはすごく人間らしい。そういうことが全部コメディシークエンスの中で起きてるのが、深入りしすぎずに観やすいんですよ。すごい大事な登場人物がいきなり死んじゃうのも、うまいこと笑いで乗り切って、観客が傷付かずに済むんです。
──あのシーンですね。そこはネタバレなのでそのへんで(笑)。
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つらい記憶を美しく上書きする物語(中野)