松本穂香が主演を務めたWOWOWオリジナルドラマ「グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ」がWOWOWで8月20日に放送・配信スタート。毎週金曜23時からの放送終了後には、TELASA(テラサ)で配信される。
本作はBL研究家の金田淳子が板垣恵介による格闘マンガ「刃牙」シリーズをBLとして読み解いたエッセイを原案にした物語。文房具メーカーで働く主人公・児島あかねが「グラップラー刃牙」に濃厚なBLの可能性を見出し、“1日30時間”の妄想に取り憑かれるさまを描く。映画ナタリーでは松本のソロインタビューと、あかねを取り巻く男性キャラクターを演じた岡山天音と神尾楓珠の対談をセッティング。また、それぞれに「刃牙」に絡めた一問一答にも挑戦してもらった。
取材・文 / 奥富敏晴撮影 / 向後真孝
刃牙さん、かわいい顔してるな
──ドラマの原案はBL研究家の金田淳子さんが「刃牙」シリーズをBLとして読み解いたエッセイです。主人公のあかねを演じるに当たりマンガは読まれましたか?
はい。ドラマに出てくる範囲は読ませていただきました。「グラップラー刃牙」から「バキ」まで。段ボールでバーンと大量に送っていただきました(笑)。
──台本には例えば「2巻12話・刃牙の裸を見て」など、あかねが読むマンガのシーンがとても具体的に書かれていて。台本とマンガはどちらを先に読んだんでしょうか。
先に脚本を読んだだけではよくわからなくて(笑)。あかねを演じるには、とりあえずマンガを読まないと話にならない。マンガと台本を往復しながら読み進めていきました。ストレートにマンガを楽しみつつ、あかね目線もあって。確かにBLっぽい。「刃牙さん、かわいい顔してるな」とか(笑)。筋肉同士のぶつかり合いを見てましたね。
──あかねは愚地克巳(※1)推しでしたが、松本さん自身の推しは?
最初は刃牙さんもかわいかったんですが、ビジュアルだけだとドイル(※2)です。ちょっとほかの人に比べてシュッとしてるじゃないですか。台本でもドイルについて話すことが多かったので……。なんだかんだ克巳も好きです。やっぱり人間力があって、死刑囚のドイルに対して包容力を見せた瞬間から。あとは(松本)梢江さん!(※3) 梢江さんの強さに憧れます。
※1 愚地克巳:マンガの第1部「グラップラー刃牙」から登場する男性キャラクター。「空手界の最終兵器(リーサルウェポン)」と評される若き天才。あかねの“気になる人”。
※2 ドイル:マンガの第2部「バキ」から登場した男性キャラクター。敗北を知るため、東京へ向かった最凶死刑囚の1人。電気椅子の死刑執行でも死なない強靭な肉体を持つ。
※3 松本梢江:「刃牙」シリーズのメインヒロインとなる女性キャラクター。主人公・範馬刃牙と同じ学校に通う高校生で、刃牙と恋人関係を築く。
モノローグの絶妙なあんばい
──脚本を読んだ感想も教えてください。
まず最初に題名を知って正直「これってドラマになるの……?」という不安な気持ちはありました。でも監督は山岸聖太さん、脚本は上田誠さん。絶対に面白いものになる!という期待もありました。
──2話の最後まで本当に「刃牙」の話しかしてないので驚きました。上田さんは自分の書いたドラマで「一番セリフが多い」とおっしゃっていますね。
その場にあかねしかいないシーンが多くて。私がセリフを言えないと成立しない。量の多さへのプレッシャーはありました。
──あかねのモノローグも非常に多いです。そして熱量がすごい。
家でマンガを読んでるときのリアクションって「あー」とか「おー」とか声はそんなに出さないのが普通。でも心の中ではすっごく興奮してる、っていう面白さを聖太さんは意識されてました。モノローグの収録では一言ずつ丁寧に演出を付けていただいて。「ここは淡々とナレーションに近く」とか「ここはもっとあかねさんらしいテンションで」とか。その絶妙なあんばいが作品にとって大事だったんだと思います。モノローグにあんなに時間を掛けたのは初めてでした。
──刃牙のもう1つの闘いを描いた「バキ特別編SAGA[性]」を取り上げた回もありますね。
はい。モノローグはあの回のテンションが一番高かったと思います(笑)。
克巳とお芝居
──ドラマでは各話に、あかねによる脳内妄想を具現化したパートがあります。視聴覚室、教育番組、ファンクラブなどさまざまなシチュエーションがあるようですが、一番印象に残っているのは?
台本を読むだけじゃわからなかったんですが、後半になるに連れて妄想シーンの規模も大きくなってるんです。あかねが教会で「聴衆に向かって、弁論をふるう」と書いてある妄想があるんですが、監督が「レ・ミゼラブル」をイメージされていて。民衆が野次を飛ばしてくる中、あかねが「SAGA」の魅力を説明します!
──ミュージカルのように歌う場面も?
さすがに歌いはしないです(笑)。しないけど、ずっと1人でしゃべっていたので、撮影が舞台の本番のような雰囲気もありました。妄想シーンは、監督のアイデアでどんどん変わっていくんです。あとKFC、克巳ファンクラブの妄想もすごかった。エキストラの皆さんにアイドルのファンのような一体感があって。撮影の合間も「克巳のあそこがよかったよね」と実際に雑談してるのを聞いてました。みんな熱量がありましたね。
──予告にもチラッと映ってますが、あかねが克巳と対峙する場面もありますね。
はい。克巳とお芝居しました(笑)。
──現場ではどのように?
テレビアニメで克巳の声優をされている川原慶久さんがドラマでも担当してくださっていて。私は現場に克巳の声が流れる中で、お芝居させてもらいました。
一生懸命さがちょっとおかしくて愛しい
──刃牙を読んだことのない方にドラマを薦めるなら?
あかねは好きなものに対して、とにかくまっすぐで一生懸命なんです。そこは多くの人が共感できると思います。本人は全然ふざけてるわけじゃないのに、その一生懸命さがちょっとおかしくて愛しい。繰り返し観ても面白いドラマです。
──マンガ「刃牙」を読むきっかけにもなりますよね。
今日もいろんな方に「刃牙のこと知らなかったけど、読みたくなりました」と言っていただいて。このドラマがそういう存在になれたらいいなって思います。
- 松本さんにとって闘いとは?
- うーん、愛!
- 人生において出会ってしまったものは?
- ジブリ!「耳をすませば」
- 習ってみたい格闘技は?
- ムエタイ
- 今、闘ってみたい(共演してみたい)役者は?
- 成田凌さん
- 闘い(撮影)の前に食べるものは?
- 元気が出るのは、唐揚げ。でも撮影前ではなくご褒美です
- 松本穂香(マツモトホノカ)
- 1997年2月5日生まれ、大阪府出身。2015年に「風に立つライオン」で長編映画デビュー。2017年放送の連続テレビ小説「ひよっこ」の青天目澄子役で注目を集める。翌2018年にはドラマ「この世界の片隅に」で約3000人の中から主人公すず役を射止め連続ドラマ初主演。2019年には「アストラル・アブノーマル鈴木さん」「おいしい家族」「わたしは光をにぎっている」、2020年には「酔うと化け物になる父がつらい」「君が世界のはじまり」「みをつくし料理帖」「君は彼方」と主演作が立て続けに公開された。2021年11月には出演作「ミュジコフィリア」の封切りを控える。
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岡山天音×神尾楓珠 対談ッッ!
「刃牙はBL」を語る