TELASAオリジナル「相棒 sideA/sideB」の配信が3月20日にスタートした。同作では杉下右京と亀山薫、それぞれの視点から1つの殺人事件の真相が描かれる。映画ナタリーでは配信を記念し、右京役の水谷豊と薫役の寺脇康文にインタビューを実施。“地上波ではできない初めての試み”である今作の魅力について語ってもらった。
取材・文 / 前田かおり撮影 / 清水純一
TELASAオリジナル「相棒 sideA/sideB」概要
水谷豊演じる杉下右京と寺脇康文扮する亀山薫、それぞれの視点で進む2つのエピソードから1つの殺人事件の真相を描くTELASA配信オリジナル作品。ある日雑居ビルの裏で遺体が発見される。別々の男を追っていた右京と薫は、やがて思いがけない真実にたどり着く。
©テレビ朝日・東映
地上波ではできない初めての試み(水谷)
──今回、TELASAで配信されるオリジナルドラマは、杉下右京視点のsideA、亀山薫視点のsideBに分けた形で1つのストーリーが描かれるというスタイルです。長年続いてきた「相棒」でこうしたスタイルは目新しく感じましたが、脚本を読んだとき、どんな印象を受けましたか?
水谷豊 TELASAで配信用のオリジナルドラマを作ることは聞いていたんです。地上波ではできないもの、やらないだろうというものを作ることになると。脚本は地上波も手がける徳永(富彦)さんなんですけど、読んでみたら、本当に面白いなと思いましたね。
──特にどこが面白いと感じられましたか?
水谷 時間軸の見せ方ですね。今回のスタイルは、1本にしようとすれば1本にできる話なんです。でも、それを1本にしないで、同じ話を右京と薫の視点の2つに分けて、それぞれを中心に描く。「相棒」では初めての試みですけれど、演じていてとても楽しかったですね。
──同じことを薫は違う角度から見ている感じですね?
水谷 そうです。そこが絶妙なんですね。交錯するストーリーをどう見せるか、監督をはじめ、チームが一生懸命考えたみたいです。
──寺脇さんはいかがでしたか?
寺脇康文 地上波ではできない試みで。いい意味で、なんだかマンガっぽいというか。昔、リモコンでチャンネルを頻繁に切り替えながらテレビ番組を視聴する“ザッピング”って流行ったじゃないですか。あっちの局の内容をチラ見して、こっちもチラ見するみたいな。それを思い出しました。
水谷 ほお。
寺脇 でも、今回の配信オリジナルドラマはそれとは違いますけどね。右京さんパート、薫パートでそれぞれ電話のシーンがあるとして、あれ、このとき薫はなんて答えていたんだろう、そして薫に対して右京さんはなんて言ってたんだろうということが、片方のパートを観ただけではわからない。でも両パートを観ることで、あ、ここでこういう掛け合いがあったんだと理解できたりするんです。
水谷 そうそう。
寺脇 両方を観ることで、あのとき薫が走っていた理由がわかったり。あの場面で右京さんはここにいたんだとか、種明かしのような側面もあって、何度も楽しめるのではないかなと思います。
──右京編からではなくて、薫編を先に観ても構わないですよね?
水谷 おっしゃる通りです。そういう楽しみ方もあります。1回だけでは、全部つかみ切れないところもありますからね、きっと何回も楽しめると思います。
寺脇 配信が観られる端末を2台置きながら、同時に観るというのはどうですかね。それはそれで面白いと思いますよ(笑)。
右京さんのキレキレの動きは変わらない(寺脇)
──今回の作品は、地上波のときよりもかなり激しいアクションがあったと聞いています。
水谷 そう、パルクールですね。
寺脇 大変でしたね、我々もね。
水谷 いや、あそこはね。
寺脇 よくあんなに飛びますよね。
水谷 こういう話し方してるとわかっちゃうでしょ?
寺脇 嘘ってことが?(笑) 僕らにパルクールはできませんよ。
水谷 まあ、そうですね。あれはプロの技と言いますか。やっているのを見ているだけですごかったですよ。もう今、すっかり自分がパルクールをやった気になってます(笑)。
──それは、楽しみにしています(笑)。「相棒」は長寿ドラマになりましたが、アクションの魅力も色褪せないですね。
水谷 今回は地上波でもアクションの見せ場があったんですよ、シーズン22の第1話から。
寺脇 そうですね。けっこうな大人数を相手に2人で戦いましたね。
──お2人は初期に組んで、寺脇さんが戻られてから2シーズンが経過しましたが、お互いの変化を感じるところはありますか?
寺脇 まったくないですね、右京さんのキレキレの動きは変わりませんよ。
水谷 できあがったものをあとでチェックすると、自分でもまだよくこんなに動くなと思うことがあります。本番ではただ夢中で演じているだけなんですけどね。
「相棒」が僕の健康作りに一番役立っている(水谷)
──水谷さんは右京という人物を20年以上演じていらっしゃいますが、体力作りや食生活などを含めて、長期にわたって演じ続ける秘訣のようなものはありますか?
水谷 何もしてないんですよ、本当に。トレーニングらしいことはもう十数年やっていません。だから、きっとそれまでの貯金があったんですね。……あ、銀行じゃありませんよ(笑)。
寺脇 いくらほど?(笑)
水谷 いくらほどありましたかね、体の貯金がね。でも、もう貯金がないと思ったときもありました。それでトレーナーの方に体の状態を見ていただいたら、「生活できるだけの筋力があれば、それで十分健康です。それ以上、体を作ろうとかいじめなくても大丈夫です」と言われて。
寺脇 えっ、こんなふうに腕立て伏せしたり、筋トレしたりしなくていいですか?(と言いながら腕立て伏せのマネを始める)
水谷 そう、こういうことはやらなくていいなと思っています(笑)。もちろん、足はきちんと整えておかないと、動けなくなってしまいますけど。特にトレーニングをしないのに動けているのは日々、撮影で歩き回っているからかなと思いますね。
──「相棒」が水谷さんの健康作りに役立ってるんですね?
水谷 うまいこと言いますねー(笑)。そうですね、今のところ「相棒」が僕の健康作りに一番役立っている作品ですね。
寺脇 トレーナーさんによると、豊さんの筋肉はもうアスリートというか、オリンピック選手並みの筋肉だそうなんです。持って生まれた筋肉の質のよさらしいんですよ。
水谷 僕からは言いにくいことをよく言ってくれました(笑)。実はよくトレーナーの方に言われるんです。だから、ちょっと休むと疲れが取れる。短い睡眠でも、すぐ体力が回復するんですって。
──寺脇さんはいかがですか?
寺脇 まあ、俺もフゥーッッッワ! フゥーッッッワ!って力を入れるような筋トレはしていないんです(笑)。ウォーキングするぐらいですね。歩くって、一番しんどくないし、続けられるという点では自分に合っているのかなと思って。で、公園とかに寄って、ちょっとだけ腕立てしたり、腹筋したりしていますね。
水谷 それだけじゃないんですよ! 現場まで1時間歩いて来て、さらに体を動かしてダッシュして、また1時間掛けて歩いて帰るというようなことをやっているんです。これは余談ですけど、去年(「帰ってきたマイ・ブラザー」という)舞台を一緒にやったんですけど、そのときもね、寺脇くんは朝も1時間ぐらいウォーキングをするんですよ、僕がまだ寝てる頃に。舞台は昼からなんですけど、終わって食事をすると、すぐに部屋に帰って寝ようとするんです。「おい待てよ」と言ってもね、「いや、ちょっともう眠くて」って。だいたい夜9時ぐらいに寝ようとするんですね。
寺脇 はい、9時だと、もうお眠の時間ですよ。
水谷 「相棒」をオンタイムで観てたら、ラストシーンで眠くなってるんじゃない? こてまり(劇中に登場する家庭料理店)が出てくるあたりで。
寺脇 眠くなる時間ではありますね(笑)。
水谷 寝てちゃダメだよ(笑)。でもそれぐらい、ずっとちゃんと体をケアしてますよね。
寺脇 実はその舞台の公演で福岡に行ったときに、豊さんから「ラーメンを食べに行こう」とお誘いを受けたんですけど、寝ちゃっていまして。共演者の高橋克実さん、堤真一くんと行ったみたいです。
水谷 博多に行ったんですから、博多ラーメンを食べたいじゃないですか。だから、夜中に電話したんですよ。でも寺脇くん、早めに寝ちゃって起きやしない(笑)。
寺脇 僕は起きるのが5時だから、毎日早く寝ちゃうんです、豊さんはけっこう宵っ張りですよね。
水谷 そうですね。僕は夜、起きているのが好きなんです。起きていると何かいいことがあるんじゃないかなと思って(笑)。
──伺っていると、とても意外というか。ストイックで早めに寝るのが水谷さんで、宵っ張りが寺脇さんのイメージがしますが、違うんですね?
寺脇 ダラダラ起きてる……もとい、粛々と起きてらっしゃるんです、豊さんは。
水谷 はははは(笑)。
14年経っても、右京と薫は変わらない(寺脇)
──十数年ぶりに右京と薫のコンビが復活し2シーズンを経て、さらにこのTELASAの配信オリジナルドラマを経験し、新たな発見や今後この2人だからやれそうなことなど気付いたことはありますか?
水谷 新たな発見というよりも、あのままずっと一緒にやっていたぐらいな感じすらします。14年間も空いていたのに。
寺脇 そう、14年……。
水谷 赤ん坊がもう中学2年生になってますからね。でも、なんの変わりもないです。ありましたか? 新たな発見。
寺脇 ないですよ、ははは。ただ、いつも豊さんがおっしゃるのは、たぶん2人とも変わっているところはあるんだろうと。でもそれは過剰に言葉にするものではなくて。変わるべきことは自然に変わってるから、頭で考えなくてもなるようになっていると。
水谷 変わったことと言えば……取材の合間の2人のトークはちょっと長くなって、面白くなったかなと(笑)。
寺脇 前はそんなにしゃべってなかったですか?
水谷 いや、しゃべってたかもしれないけどね。なんだか、漫才みたいなトークね。ふふふ。
寺脇 もしも、右京と薫というキャラクターではなくて、別のキャラクターで14年後にやっていたら、何か違う化学変化が起きていたかもしれませんけどね。右京と薫だから、変わらないのかな。
水谷 立場を変えてやりますか、僕が薫とか。
寺脇 そして僕が右京。やれる自信はあります、右京さんのモノマネなら!
水谷 ははははは。
TELASA(テラサ)
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プロフィール
水谷豊(ミズタニユタカ)
1952年生まれ、北海道出身。10代前半で劇団ひまわりに入団して以降、テレビドラマ、映画、舞台など多くの作品に参加してきた。出演作にドラマ「相棒」「男たちの旅路」「熱中時代」「刑事貴族」「だましゑ歌麿」「無用庵隠居修行」シリーズ、「バンパイヤ」「傷だらけの天使」「赤い激流」、映画「青春の殺人者」「幸福」「逃がれの街」「HOME 愛しの座敷わらし」「少年H」「王妃の館」などがある。2017年には「TAP -THE LAST SHOW-」で映画監督デビュー。「轢き逃げ -最高の最悪な日-」「太陽とボレロ」でも監督を務めた。
寺脇康文(テラワキヤスフミ)
1962年2月25日生まれ、大阪府出身。1984年に三宅裕司主宰の劇団「スーパー・エキセントリック・シアター」(SET)へ入団。1994年にSETを退団し、演劇ユニット・地球ゴージャスを結成する。1996年4月の放送開始から「王様のブランチ」の総合司会を10年間務めた。主な出演作にドラマ「相棒」「大岡越前」シリーズ、「らんまん」、舞台「帰ってきたマイ・ブラザー」などがある。