台湾映画・ドラマがさらなる躍進のとき! 「2022 TCCF クリエイティブコンテンツフェスタ(Taiwan Creative Content Fest)」|アジアのコンテンツビジネスの祭典で見た“台湾の本気” 「We Best Love 永遠の1位/2位の反撃」ジャン・ルイジー&「流星花園~花より男子~」アンジー・チャイのインタビューから探る台湾エンタメの魅力

「流星花園」プロデューサー
アンジー・チャイが考えるスターを生み出すことの重要性

アンジー・チャイ

“花より”はとても重要なキーワード

──アンジー・チャイ(柴智屏)さんがプロデュースされた「流星花園~花より男子~」は日本でもっとも愛されている台湾ドラマの1つです。チャイさんのキャリアにおいて、どんな位置付けの作品ですか?

「流星花園」は私の人生において、とても重要な作品です。私は大学時代に演劇を学んでいたのですが、卒業後はなかなか演劇に関わる仕事ができなくて、最初はバラエティ番組を作っていました。初めて制作することになったドラマが「流星花園~花より男子~」だったんです。当時は脚本家と面識がなかったので、オリジナル作品を作るのではなくて、マンガをドラマ化しようと考えました。

──それが神尾葉子さんが手がけたマンガ「花より男子」だったんですね。

そうなんです。「花より男子」はみんなに愛されているマンガです。最高の選択でした。ドラマをきっかけに、神尾先生とお友達になることができたのもとても幸せなことです。「流星花園」のおかげで、ドラマの制作会社を立ち上げることもできましたし、マネジメントの会社も作りました。何より、F4というグループを生み出すことができた。世界のファンに愛されるドラマを作ることができたことは、幸運なことです。

──「流星花園~花より男子~」はメディアミックスの大きな成功例の1つだと思います。成功した理由をどのように考えていますか?

理由は大きく分けて3つあると思います。1つは原作マンガの世界観を忠実に再現しようとしたことです。原作がとにかく素晴らしいので、ドラマ化するにあたってファンの期待に応えるため、さまざまな努力をしました。2つ目はキャスティングに成功したことです。ドラマの名前は「花より男子」です。だから“花より”はとても重要なキーワードなんです。F4を演じたジェリー・イェン(言承旭)、ヴァネス・ウー(呉建豪)、ケン・チュウ(朱孝天)、ヴィック・チョウ(周渝民)は美しい青年で、“花より”という言葉を見事に表現してくれました。3つ目は音楽です。ドラマのために作った「流星雨」などの楽曲が、視聴者に大きな感動を与えることができたのではないかと思います。

──「花より男子」は台湾でドラマ化後、韓国や日本、タイなどでも実写化されました。ほかの国のものは観ましたか?

観ましたよ。私が一番貧乏なプロデューサーだと思いました(笑)。予算があってうらやましい。

(一同) (笑)

スターになる俳優を育てることが一番重要

──「流星花園」のほか、チャイさんがプロデュースした映画「あの頃、君を追いかけた」は山田裕貴さん、齋藤飛鳥さん共演によってリメイクされています。台湾の青春映画が日本で人気な理由をどのように捉えていますか?

日本にも青春映画やドラマがあって、人気を得ていますよね。日本の作品を観ながら、じゃあなんで台湾の青春映画が日本で人気が出るんだろうと考えたりもします。自分なりに思うのは、おそらく台湾に旅行に来たり、そこで台湾人の親切さに触れたりして、特別な感情を持っている日本の方がいらっしゃるということが関係しているのかなと。

──確かに、文化的な近さや親近感は作品への共感につながるかもしれないです。青春映画やホラーが台湾で人気だと聞いていますが、今後注目のジャンルはありますか?

「呪詛」(画像提供:Netflix)

どんなジャンルが人気になるのかは予想が難しいのですが、最近すごく注目された作品がホラー映画の「呪詛」です。監督のケヴィン・コーさんとは以前、一緒にお仕事をしたことがあります。映画はどんなジャンルであっても、優秀な監督が、その人の得意分野でいい作品を作ることが重要。それがヒットにつながると思います。

──チャイさんご自身の得意分野は?

青春ストーリー、ロマンチックなもの、ファッション系です。ただ、どんなジャンルであれ、作品の中でスターになる俳優を育てることが一番重要なことだと思っています。私は「流星花園~花より男子~」で皆さんに知っていただくことができましたが、ドラマがきっかけで「偶像劇之母」(アイドルドラマの母)という愛称が付きました。私が作品の中で目指しているのは、視聴者に愛される俳優を生み出すこと。皆さんに愛されるスターを作ることは、作品がヒットするための大切な要素だと思います。だから役者の魅力は作品にとってとても重要なポイントです。私は自分の作品に出演した俳優たちにすごく感謝しているんです。いい演技をしてくれるから、世界で愛される作品が生まれるんだと思います。

──チャイさんが手がけた作品への出演をきっかけにスターになった方がたくさんいます。“新たな才能”を発掘する秘訣はあるんでしょうか?

人には見つけられない魅力を発見する能力があるかもしれないですね(笑)。友達に「この子はほかのイケメンとあまり変わらないじゃない」と言われても、何か特別なもの、ほかの人とは違うものを感じることがあります。それから、私は頭がよい俳優さんが好きなんです。彼らはユーモアがあるので、自分の魅力を世の中にアピールする能力を持っています。

──チャイさんは職業柄、いろんな国の作品をご覧になっていると思うんですが、台湾の俳優さんならではの魅力はどこにあると思いますか?

いろんな国にさまざまな魅力を持った役者がいるので、単純に比較するのは難しいですね。ただ台湾の俳優は、純粋なところがあるかもしれません。台湾の場合、エンタテインメント業界に入る前に演技の勉強をしている人は少ないんです。たまたま業界に入ったり、急に演技に興味を持ったり好きになってチャレンジしてみたり、すごくイケメンだからスカウトされたり。彼らが演技をすると、生活感が画面からにじみ出るというよさがあるかもしれないです。

TCCFでは作り手の思いを直接聞くことができる

──今回、アジアのコンテンツビジネスの祭典「2022 TCCF クリエイティブコンテンツフェスタ」を取材させていただいています。TCCFは台湾の作品を世界に届けるということを1つの目的にしていますが、台湾の作品がさらに、国際競争力を上げていくためには、どんなことが必要だと思いますか?

まずはスターを生み出すことですね。イケメンとか美人とかそういうことではなく、ほかの人と違う何かを表現できる人です。自分の魅力を作品を通して視聴者に届けることができる才能を持った人。そういう人が世の中に出てくると、新しいトレンドを作ることができます。

今は配信プラットフォームの発達によって、いろんなジャンルのコンテンツが世界各国で受け入れられやすくなりました。その中で、物語性の強いものを生み出していけば、競争が激しい中でも私たちの作品を観てもらうチャンスが生まれると思います。

アンジー・チャイ

──クリエイター視点で、TCCFにどのような魅力を感じていますか?

作り手がどんなところから物語を着想し、なぜこの作品を作ろうとしているのか。TCCFではそういった思いを直接聞いたり、コミュニケーションを取ることができます。作品の紹介文を読むだけでは、クリエイターが考えていることはわかりません。こういうイベントを通して、海外の投資者や視聴者が、作品の魅力をしっかりつかめるとよいと思います。

──TCCFがさらなる出会いの場になるといいなと思っています。最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

「流星花園~花より男子~」から、ご支援いただき本当にありがとうございます。私の作品が皆さんの青春と一緒に過ごすことができてうれしく思います。これからも皆様と“恋愛の道”をともに歩んでいきたいと思います。よろしくお願いします。

アンジー・チャイ(柴智屏)
1962年5月14日生まれ。ドラマ「流星花園~花より男子~」などを手がけたプロデューサー。そのほか携わった作品に映画「あの頃、君を追いかけた」「怪怪怪怪物!」などがある。

TCCF、クリエイターインタビューから見えてきたもの

ジャン・ルイジーが語る台湾作品の強み、アンジー・チャイが語る台湾俳優ならではの魅力に「うんうん、わかる」とうなずいた人も少なくないはずだ。2人に直接話を聞き、作り手がさまざまな題材にチャレンジすることができる自由な空気が台湾にあるということを改めて実感した。

また、TCCFの開幕式で、台湾の文化部部長・李永得(リ・ヨンデ)が2022年の金鐘獎で台湾オペラ・歌仔戲の俳優である陳亞蘭(チェン・ヤラン)が女性として初めて最優秀主演男優賞を受賞したことを報告していたことも強く印象に残っている。

これまでも世界的に高い評価を受けてきた台湾産の作品。コンテンツ産業に力を入れている韓国コンテンツが今、世界から熱い視線を集めているように、TAICCAが強力にコンテンツ産業を支援すると宣言している台湾の作品も間違いなく、国際競争力を増していくだろう。今後に注目だ。


2022年12月16日更新