顔面偏差値高すぎませんか?(笑)(熊坂)
──島田さんに観ていただいたのは“予測不能宮廷ラブコメディ”「夢織姫」です。
島田 ヒロインはグァン・シャオトン演じる武術が得意で正義感の強い型破りなお嬢様の班婳(はんかく)ですね。彼女は家族に悲劇が起きる予知夢を観るようになって一家を救おうと奮闘していきます。そんな彼女が出会うのがホウ・ミンハオ演じる親の敵討ちを狙う貴公子・容瑕(ようか)。班婳を利用して復讐計画を進めようとするんですが、そんな2人に恋が芽生えていきます。
──脇を固める家族もとっても魅力的に映りました。
島田 そうなんですよね。班婳と容瑕、正反対の2人が繰り広げる胸キュンラブも堪能できますし、超が付くほど仲良しな班家のパートはお気楽コメディタッチ。また、容瑕を朝廷内の権力争いに利用しようとする人間の策略によって2人が苦渋の選択を迫られたり、宮廷闘争ものとしての魅力も兼ね備えています。苦しい状況の中で班婳と容瑕の愛はどうなっていくのか!?というところが大きな見どころです。面白かった、スカッとした!と思える痛快ラブ史劇。登場人物、みんなが愛しくなるような作品です。
熊坂 最近のラブ史劇、顔面偏差値高すぎませんか?(笑) 何このまぶしいキラキラ感は。
一同 (笑)
──“顔面偏差値”最高カップルという、うたい文句も納得ですよね。
島田 ホウ・ミンハオは急に大人っぽくなりましたよね。仇討ちと家族、愛と国といったいろんなものを背負った大人の男性の苦しみを演じられる役者に成長したんだなと、魅力を改めて感じました。グァン・シャオトンは、美人だけど評判が悪くて嫌われ者のお嬢さまをとっても魅力的に演じている。彼女はきれいに着飾っているときももちろんすごく素敵なんですけど、「SHADOW/影武者」で見せたような、死に直面するシーンや命を懸ける場面のときに抜群に美しくなる。「夢織姫」にも何度かそういったシーンが出てくるので、そこもぜひ観てもらいたいです!
──このかわいらしさで、班婳が婚約破棄され続けているというのはつかみとしてバッチリですよね。
島田 グァン・シャオトンは、マイナスからスタートして一発逆転を決めるのがすごく得意な女優さんですよね。最初は敵だらけだけど周りがどんどん班婳のことを好きになっていく感じが爽快です。このドラマの原題「我就是这般女子」は、「私はこういう女なの」という意味なんですよね。自分の人生だから、私流にやっていくというヒロインの考え方と、男女主導権逆転の展開が面白いポイント。弓の撃ち方をヒロインが後ろからバックハグで教えたり、転びそうになった容瑕を班婳が抱き抱えたり。ラブ史劇あるあるも逆転してる。ばくちと勝負ごとにめっぽう強い男勝りなヒロインはとても楽しめました。
小酒 そうなんですよね。このドラマは女性が強いのが面白い。やっぱりグァン・シャオトンはドSな女の子が似合います(笑)。
熊坂 かわいいですよね。少女っぽさに加えて、メイクで女っぽくも見えるし、わがままだけど自分を失わないキャラクターを上手に表現できてる。
島田 あとは、脇キャラ同士のラブバトルも楽しい! 班婳の弟・班恒(はんこう)と謝家のお嬢さんのカップルが、とってもお似合いで大好きです。政略結婚をさせられて苦しむ彼女に「合わなきゃ、離縁しちゃえば」って言えちゃう班恒の、ノリは軽いけどさりげない優しさがかっこいいです。
──この作品はどんな方にお薦めですか?
島田 この作品は一種のファミリードラマでもあると思うんです。どんな身分、立場の人間でも最後に一番大事なのは家族のつながりや愛だというのが1つのテーマなのかなって。自由気ままな仲良し家族、班家の大活躍がめちゃくちゃ面白く描かれているので、痛快なストーリーに笑って元気になってスカッとしたい人にお薦めですね。
いろんな味を楽しめるのがラブ史劇の人気の秘訣(島田)
──今回は個性豊かなヒロインと彼女を愛する貴公子たちが登場するラブ史劇3本をご紹介しました。
小酒 現代的な価値観を持った芯の強いヒロインが増えていますよね。例えライトなコメディであっても、ヒロインが愛する人のために命を懸けるといったシチュエーションが出てくる。愛のために死ぬというのは1つの理想ではあるけど、自分だったらできないと思ってしまいますよね!?(笑) そういうドラマティックな生き方がラブ史劇では具現化されていて、命か愛かといったシチュエーションを普通に描けるのがラブ史劇の強みです。
──現代劇では大げさになりかねないですよね。
小酒 それでいて「夕月花」の冬月も「探偵麗女」の蘇瓷も、「夢織姫」の班婳も恋愛だけにとらわれているわけじゃない。自分の人生の目標や目の前にあるミッションに向かって生きているので共感できますよね。
──近年中国ラブ史劇の沼に落ちる人が増えていますがその理由をどのように分析されていますか?
熊坂 ベタ万歳! ラブ史劇あるある全部乗せで、やるべきことは全部やるみたいなところが安心して楽しめるところかもしれないですよね。衣装もきれいでかわいいし、お金も掛かっていて観ていて楽しいです。そしてキャストの顔面偏差値が高い(笑)。
小酒 最近はドラマを観て癒やされたいとかリラックスしたいといったニーズが前よりは高くなっていますよね。だから笑ったり、キュンキュンできるラブ史劇が人気を得ているのかなと思います。
島田 事件解決だったり、タイムリープだったり、予知夢回避のために奮闘したり、ラブだけじゃなく、いろいろな展開があって、物語としても長く楽しめるのが魅力なのかなって。いろんな味を1つの作品の中で楽しめるのがラブ史劇の人気の秘訣。今回の3本はどんな人でも観られる作品なので、入りやすいと思います。
プロフィール
熊坂多恵(クマサカタエ)
「中国時代劇で学ぶ中国の歴史 2022年版」ほか編集。映画雑誌の編集を経て、アジアのエンタメを紹介するムック本の編集や執筆に参加。
小酒真由子(コサカマユコ)
フリーライター。アジアから欧米までドラマについて執筆。「韓国TVドラマガイド」(双葉社)にて「熱烈推薦!! 中華ドラマはこうハマる!」を、Cinem@rtにて「アジドラ処方箋」を連載中。
島田亜希子(シマダアキコ)
中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆するほか、中文翻訳もときどき担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「中国エンタメニュース」を連載中。「中国時代劇で学ぶ中国の歴史」(キネマ旬報社)「見るべき中国時代劇ドラマ」(ぴあ株式会社)「中国ドラマ・時代劇・スターがよくわかる」(コスミック出版)などにも執筆している。
「探偵麗女」VS「夕月花」VS「夢織姫」あなたが観たいのはどれ?
「探偵麗女~恋に落ちたシャーロック姫~」
ストーリー
国の捜査機関である明鏡(めいきょう)署の蘇瓷(そし)は、天才的な推理力と洞察力で数々の事件を解決している名探偵。そんな頭脳明晰でクールな彼には、誰にも明かしていない秘密があった。それは、その正体が女性であるということ。一族が殺害された過去の真相を探るため、男装をして明鏡署に入り込んでいた蘇瓷はある事件の捜査中に裴昭(はいしょう)という遊び人と偶然知り合う。裴昭はひょんなことから蘇瓷の捜査に同行するようになるが、その正体は朝廷の陰謀を暴くために身分を隠す元将軍・斉王(せいおう)だった。互いに素性を隠す2人は次第に惹かれ合い……。
スタッフ / キャスト
監督:リー・シャオジャン
脚本:リウ・イン、ジャン・ヤーシー
出演:チェン・ヤオ(陳瑶)、ジャン・リンホー(張凌赫)、ジャン・ジアディン(張家鼎)、ワン・イージョー(王芸哲)、ホアン・イー(黄毅)ほか
©Shenzhen Tencent Computer Systems Company Limited
「夕月花(せきげつか)~三世を駆ける愛~」
ストーリー
7年に及んだ定遠(ていえん)の乱で命を落とした女将軍・聞心(ぶんしん)は、すべての記憶を失ったまま戦が始まる前の世界によみがえり、偶然出会った馮夕(ふうせき)から冬月(とうげつ)と名付けられる。そんな中、期せずして記憶が戻り、馮夕が定遠の乱の首謀者・陸遠潼(りくえんとう)と結託した奸臣であることを思い出す。未来を変えるため陸遠潼を暗殺しようとするが、そのたびに馮夕に阻まれてうまくいかない冬月。しかし馮夕は、ある目的のために彼女の暗殺計画を阻んでいた。次第に冬月は馮夕の本当の姿を知り、何度も運命的に巡り会う彼と心を通わせていくが……。
スタッフ / キャスト
監督:ウェイ・ハンタオ、シュー・フイカン
脚本:ジャン・ドゥートン、ヤン・ジーリー、マー・イーニン
出演:スン・イー(孫怡)、ジン・ハン(金瀚)、タン・ジェンツー(檀健次)、ルオ・チウユン(羅秋韻)、ユー・チョンエン(余承恩)ほか
©2020 Tencent Penguin Pictures & Drama Apple Limited
「夢織姫(ゆめおりひめ)~秘密の貴公子に恋をして~」
ストーリー
班家の娘・班婳(はんかく)は武術が得意で正義感の強い型破りなお嬢さま。ある日、家族が悲劇に見舞われる予知夢を見た彼女は、なんとか回避しようと自ら行動を起こす。そんな中、女性なら誰もが憧れる貴公子・容瑕(ようか)と出会う。まったく自分になびかないばかりか、偶然再会した祝宴会で彼に恥をかかされ、容瑕に興味を持つ班婳。一方、容瑕は両親の敵を討つべく復讐計画を進め、彼女を利用しようと考えていた。
スタッフ / キャスト
監督:チェン・ウェイシアン、ヤン・シアオボー
出演:グァン・シャオトン(関暁彤)、ホウ・ミンハオ(侯明昊)、リー・ゾンリン(李宗霖)、ジャオ・シュンラン(趙順然)、シア・ナン(夏楠)ほか
「夢織姫(ゆめおりひめ)~秘密の貴公子に恋をして~」ドラマ公式サイト
©Shenzhen Tencent Computer Systems Company Limited