「サマーフィルムにのって」|主演 伊藤万理華&監督 松本壮史 meet「映像研には手を出すな!」作者 大童澄瞳 初対面で意気投合!キーワードは“好き”と“創作欲” 描き下ろしイラストも

元乃木坂46・伊藤万理華の主演映画「サマーフィルムにのって」が8月6日に全国公開される。

本作は伊藤演じる時代劇オタクの高校生・ハダシが、仲間を巻き込み映画作りに奮闘するひと夏のSF青春ストーリー。CMやMVを手がけてきた松本壮史の長編映画デビュー作で、第33回東京国際映画祭に特別招待作品として出品された。

女子高校生3人組が中心となって映像制作に取り組む──そんな共通点から、アニメ化や実写化でも話題となった「映像研には手を出すな!」の作者・大童澄瞳に伊藤、松本との鼎談をオファー。3人とも少々緊張気味の対面となったが、物作りへの熱い気持ちを通じて意気投合していった。

取材・文 / 金須晶子撮影 / 玉井美世子

大童澄瞳から描き下ろしイラスト到着!

「サマーフィルムにのって」を鑑賞した大童が、本作の主要キャラであるハダシ(伊藤万理華)、ビート板(河合優実)、ブルーハワイ(祷キララ)をイラスト化。

大童澄瞳描き下ろしイラスト

伊藤万理華×松本壮史×大童澄瞳 インタビュー

なぜこの3人に?(伊藤)

──本日は「映像研には手を出すな!」の作者、大童澄瞳さんにお越しいただきました。伊藤万理華さんも松本壮史さんも、大童さんとは初対面ということで。

伊藤万理華

伊藤万理華 そうなんです。もちろん存じ上げてはいましたが。ちなみに、なぜ今回この3人に?

──「サマーフィルムにのって」と「映像研には手を出すな!」は、女子高校生3人が中心となって映像制作をするという共通点がありますよね。好きなものに一直線な気持ちだったり、メッセージ的な部分でも通ずるところがあると思って大童先生にお声掛けしました。

伊藤 なるほど。交わってはいけない作品なのかなと思っていたので、うれしい反面びっくりしました。「映像研」の実写版に近しい方々が出ていたりもするので(笑)。

松本壮史 この映画の予告編が出たとき、大童先生がTwitterで「なるほど」とコメントされていて。(作品の存在が)届いちゃった! ヤバい!と思いました(笑)。

大童澄瞳 あれは好意的な意味でした。「映像研」っぽいと言っている人がいたので予告を観てみたら、お、いいなと思ったんです。映画も楽しみだったので、このインタビューのオファーも、公開前に観れるじゃん!というのもあって受けました。

松本 そうだったんですね、よかったです!

くすぶっていることが青春になる(大童)

──ではさっそく、大童さんに映画のご感想をお伺いできればと思います。

大童澄瞳

大童 予告編でハダシが「よーい、スタート!」と叫ぶじゃないですか。いいなあ、人間だなと思ったんです。それで映画を観たら、まずハダシたちのキャラクターというか、人格表現が自分の好みに非常にマッチしていると感じました。キャラクターって、“造形としてのキャラ”と“人格としてのキャラ”の2パターンあると思っていて。ハダシたちは、僕が一番気持ちいいと感じる“普通っぽさ”が人格として描かれていました。“普通”を演出するのって大変だと思うんですけど、ちゃんと表現できていると言いますか。

松本 逆に“造形としてのキャラ”というのは? 詳しく聞かせてもらえますか?

大童 ポジションを狙って作られるキャラですね。例えばヒロインが複数人出てくるラブコメだと、絶対にツンデレとかお嬢様がバリエーションとして入る。「サマーフィルムにのって」はそういう役割的なキャラではなく、ハダシもビート板もブルーハワイも、いい意味で似た者同士の集まりのように感じました。学校や教室の中で、ちょっとはぐれ者っぽい3人。似た者でありながら、それぞれ個性が書き分けられているなと。

──実際にクラスでつるむのは似た者同士だったりしますもんね。

松本 なんだろう……めっちゃ気持ちいいマッサージをされてるみたい。そこそこ!みたいな(笑)。うれしいです。最初に脚本の三浦直之さんと企画を練ったとき、「映像研」と被るかも?というのはあって。そのときはまだ実写化の話は世に出てなかったんですけど、映画会社の知り合いに聞いたら「実写化するかも」みたいなことを言われて。わー、そうなのかと。でも(実写版キャストが)乃木坂46ということは知りませんでした。「映像研」の3人(浅草みどり、金森さやか、水崎ツバメ)も絶妙なバランスですよね。あの3人はどうやって造形していったんですか?

大童 形としては丸三角四角なんですけど、中身はほとんど僕から生まれています。小心者な自分、マネジメントや利益が好きな自分、ちょっとだけ社交性があってアニメーションが大好きな自分。それらを分けて3人のキャラを作りました。

松本壮史

松本 なるほど。「サマーフィルムにのって」を観て、近いなと思うところはありましたか?

大童 ハダシが「キラキラ青春映画め!」と思っているようなところは自分にもあって。僕、「映像研」は青春マンガではないと思っているんです。まあ、くすぶっていることが結果的に青春になっていくんですけど。どうしても「青春じゃない」と言い張ってしまう部分がまだあるので、そこは近いなと思いました。

──でも伊藤さんからしたら、この「サマーフィルムにのって」は青春の日々だったのでは?

伊藤 はい。ハダシにとっての青春は、私にとっての青春。すべて重ねていましたし、状況も通ずるものがありました。コロナ禍の影響で撮影が中断したんですけど、ちょうど似たような境遇のシーンのあとだったので。映画と向き合えないまま3カ月が過ぎて行きました。それで撮影再開が海の合宿シーンからで、また前を向けて……。好きなものに熱中する部分も共感できたし、だからハダシになれたんだと思います。