北川景子が主演を務める「スマホを落としただけなのに」が、11月2日より全国で公開される。志駕晃の同名小説をもとにした本作は、恋人がスマートフォンを落としたことをきっかけに、派遣社員・稲葉麻美が思いもよらない事件に巻き込まれていく恐怖を描いたミステリー。麻美を北川が演じたほか、連続殺人事件を追う刑事・加賀谷学に千葉雄大、麻美が頼るセキュリティ会社のSE・浦野善治に成田凌、スマホを落とした麻美の彼氏・富田誠に田中圭が扮する。
映画ナタリーでは、北川、千葉、成田、田中、監督の中田秀夫の座談会をセッティング。「リング」シリーズでビデオテープをモチーフにした中田が今作で“スマホ”を選んだ理由や、一筋縄ではいかないキャラクターを演じたキャストたちの素顔に迫る。
取材・文 / 熊谷真由子 撮影 / ツダヒロキ
「あるある」と思えるリアルを突き詰めた(成田)
──皆さん一筋縄ではいかないようなキャラクターでしたが役作りはどのようにしましたか?
千葉雄大 僕が登場するシーンはコミカルな雰囲気が多かったので、シリアスとのバランスやさじ加減を中田秀夫監督とお話して。監督からは「けっこうやっちゃってください」という指示だったので、振り幅を意識して演じていました。
成田凌 僕は衣装にわりとこだわりました。僕が演じる浦野が勤めるネットセキュリティ会社──IT系の人たちってどんな感じなんだろうなと思い、いろいろ話を聞きました。スーツやシャツなどの案もありましたけど、結果、ちょっと学生感も出るようなTシャツになってよかったと思います。作品全体に言えますけど、「あるある」と思えるリアルを突き詰めていて。田中圭さんのスマホの置き忘れ方とかも、「ああ、わかるわかる」みたいな感覚になれると思います。
中田秀夫 今回の作品では特に「あるある」と思わせるシチュエーションが大事でしたね。成田くんの衣装の話で言うと、実際にWebデザインをやっている会社の大変オシャレな代官山のオフィスに行かせてもらったんですが、そこで働いてる人たちは皆、ファッショナブルでした。だけどものすごくラフで、やっぱりTシャツなんですよ。ただ何気なく着てるTシャツも高そうなものなんですけど。
成田 そうですよ、fragmentのTシャツ着てましたもん。
田中圭 僕は(北川)景子ちゃん演じるあさみん(麻美)との関係性とか雰囲気、あとスマホを落とすときはちゃんと「あるある」というリアリティを感じさせるように意識していました。
常に憂いや陰りを忘れないように(北川)
──北川さんは以前、「スリリングな部分と日常の部分のコントラストに配慮するよう気を付けていた」とおっしゃっていましたね。
北川景子 麻美は秘密を抱えているので、そういう秘密がバレたら自分の人生がすべて崩れてしまうんだという恐怖や後ろめたさと、半面いつ自分の人生がどうなってもいいという気持ちと背中合わせで生きている人だと思っていました。なので、底抜けに明るくなったりは絶対しないように、常に何か憂いというか陰りを忘れないように演じていました。
中田 今おっしゃった秘密のところはとても難しかったですね。妙に陰のあるヒロインだと思われるのもよくないし、あっけらかんとしすぎるのも違うし、そのあんばいがすごく難しくて。でも北川さんが「どんどん言ってください」と言うので、そこの表情はもうちょっと上げてとかもうちょっと下げてとかすごく細かくやらせてもらいました。
田中 監督、現場で「もうちょっと」と言うとき、数字で言ってましたよね。
中田 北川さんには特に数字で言ってましたね。
田中 「1.3上げて」とか。
中田 「リング」のときから、「今はホラー5のうちの1です」とか「2です」とか説明していたんですよ。どうしても台本の順番通りには撮れないので気持ちがつなげられるように。だんだん1と2の間なら1.5って言ったり、1.5まではいかないから1.3とか言うようになって(笑)。
北川 「怒りがさっきより3割増しで驚きが2割減ってる」とか、そういう説明もありましたね。
成田 わかりやすかったです。
中田 そんな算数みたいに演技できないということはわかりつつも、僕は言葉足らずな部分もあるので。本当は何も言わずに演出できたら最高だと思っていて、実際そういう(監督の)先輩たちがたくさんいたんですけど、わかりやすい表現を使うことを優先しています。
100人のうちの99人がスマホを見ている(中田)
──「リング」ではビデオテープ、「クロユリ団地」では団地というモチーフがあり、今回はスマホという現代を象徴するアイテムですよね。
中田 20年前の「リング」では、テレビが一家に1台じゃなくて、子供たちが自分の部屋にも持つようになって、1人に1台になっていた時代なんですよね。それを言うと今、まさにスマホがそうじゃないですか。撮影途中で大きい公園へ休憩に行って、ふと周りを見たら100人くらいのうちの99人がスマホを見てました。1人だけおじさんが新聞を読んでたくらいで、ほぼ、100%の人がスマホ。この映画で田中さんが「スマホは分身」とか、北川さんは「宝箱」って言うけど、それくらい今みんなが持ち歩いている状態ですよね。
──スマホを扱うということで気を付けた点は?
中田 もう必死でした。画面がたくさんありますし、例えばスマホを見ている人の画面をずっと映していても飽きちゃうので、画面を2分割したり。実はあとで撮り足したところもあって、同じようなカットが続かないように意識していましたね。あと今回はホラーではなくて、実際に起こりうるミステリーで、日常のパートと、事件を追う刑事のパート、犯人のパートと3つが並走しているので、その雰囲気をうまく出すように。怖いばかりにならないように気を付けていましたね。
成田 最初に犯人が出てくるところの音楽がよかったですよね。ハワイアンみたいな。
中田 あれはプロデューサーと話して決めたんです。ほかにヨーデルとかワルツやサンバも入れてみたんですけど、ワルツは合うけど普通っぽい、サンバはあんまりノリノリすぎるのもどうかということでハワイアンになりました。
成田 犯人が小躍りしているようなシーンもあって合っていました。
中田 そうですね。ハワイアンのリラックス感もあるけど、実はサブウーファーを使って低音のウーという音を入れて、怖いことが起きてるんだよということを観客の方に言いつつ。
──ハワイアンが合っているのに違和感を覚えるという感じで絶妙でした。
成田 酢豚にパイナップルみたいな(笑)。
中田 ずっとハワイアンだとキツいので、リズムセクションや太鼓も入れてタヒチアンみたいにしたり。一方、捜査のシーンでは僕らがメインテーマと名付けた劇伴を入れました。エレキギターのパートにはメジャーバージョンとマイナーバージョンがあるんですけど、ちょっと「ツイン・ピークス」的な、ほらほら怖いぞというこれ見よがしではない静かな感じの曲に仕上がっています。
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全部計算なんで(千葉)
- 「スマホを落としただけなのに」
- 2018年11月2日(金)全国公開
- ストーリー
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派遣社員・稲葉麻美は、ある日彼氏のスマートフォンを拾ったという男と電話口で言葉を交わす。無事にスマホが返ってきて安堵した麻美だったが、その日を境に不可解な出来事が起こるようになる。時を同じくして、山の中で次々と若い女性の遺体が見つかる事件が発生して……。
- スタッフ
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監督:中田秀夫
原作:志駕晃「スマホを落としただけなのに」(宝島社文庫)
脚本:大石哲也
主題歌:ポルカドットスティングレイ「ヒミツ」(UNIVERSAL SIGMA)
- キャスト
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北川景子、千葉雄大、バカリズム、要潤、高橋メアリージュン、酒井健太(アルコ&ピース)、筧美和子、原田泰造、成田凌、田中圭ほか
- 「スマホを落としただけなのに」公式サイト
- 映画「スマホを落としただけなのに」公式 (@sumaho_otoshita) | Twitter
- 映画「スマホを落としただけなのに」公式 | Facebook
- 「スマホを落としただけなのに」作品情報
©2018映画「スマホを落としただけなのに」製作委員会
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- 北川景子(キタガワケイコ)
- 1986年8月22日生まれ、兵庫県出身。2003年に雑誌SEVENTEEN専属モデルとして芸能界入りし、2006年に「間宮兄弟」で映画デビュー。2018年の出演作には、映画「パンク侍、斬られて候」「響 -HIBIKI-」や、NHK大河ドラマ「西郷どん」、「フェイクニュース」などがある。2019年には1月スタートのドラマ「家売るオンナの逆襲」に出演。
- 千葉雄大(チバユウダイ)
- 1989年3月9日生まれ、宮城県出身。2016年の出演作「殿、利息でござる!」で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。2018年には「音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!」などに出演し、11月3日には「走れ!T校バスケット部」が公開される。2019年にはドラマ「家康、江戸を建てる」前編や、「家売るオンナの逆襲」が待機中。
- 成田凌(ナリタリョウ)
- 1993年11月22日生まれ、埼玉県出身。2013年よりMEN'S NON-NOの専属モデルとして活動。2014年に主演ドラマ「FLASHBACK」で俳優デビューを飾り、2018年には「ニワトリ★スター」「劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」「ここは退屈迎えに来て」「ビブリア古書堂の事件手帖」などに出演。2019年には「愛がなんだ」「チワワちゃん」「カツベン!(仮)」などの公開を控える。
- 田中圭(タナカケイ)
- 1984年7月10日生まれ、東京都出身。2003年のドラマ「WATER BOYS」で注目を集める。主な出演作に映画「図書館戦争」「伊藤くん A to E」「マンハント」、ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」「東京タラレバ娘」「おっさんずラブ」などがある。現在放送中のドラマ「獣になれない私たち」に出演。2019年には映画「美人が婚活してみたら」が公開される。
- 中田秀夫(ナカタヒデオ)
- 1961年7月19日生まれ、岡山県出身。にっかつ撮影所に入社後、1992年に「本当にあった怖い話」で監督デビューし、1998年に発表した「リング」が大ヒットを記録。代表作に「仄暗い水の底から」「ラストシーン」「クロユリ団地」などがある。2018年公開作「終わった人」では、主演の舘ひろしが第42回モントリオール世界映画祭にて最優秀男優賞に輝いた。