映画ナタリー Power Push - 「シン・シティ 復讐の女神」

ロバート・ロドリゲス×フランク・ミラー “アンチヒーロー”な2人が組んだ究極のハードボイルド映画

「バットマン」シリーズや「300<スリーハンドレッド>」などを生んだアメコミ作家フランク・ミラーによるグラフィックノベルを実写化した「シン・シティ」。モノクロ×パートカラーで表現されたスタイリッシュな映像はコミックと映画の垣根を軽々と飛び越え、2005年の公開当時おおいに話題を呼んだ。

それから9年の時を経て作られたのが、刺激に満ちた“罪の街”で繰り広げられる報復の物語を描く「シン・シティ 復讐の女神」だ。映画ナタリーでは、本作のBlu-ray / DVDの発売を記念して、共同監督を務めたロバート・ロドリゲスとミラーの2人が作品の魅力を語り尽くすインタビューをお届けする。

取材・文 / 渡辺麻紀

シリーズ1作目「シン・シティ」とは?

「シン・シティ」

フランク・ミラーのグラフィックノベルを、ロバート・ロドリゲスとミラーの共同監督で実写化したハードボイルドアクション。“罪の街”シン・シティを舞台に、一夜を共にした美女の死の謎を追う大男マーヴ、娼婦街を守るため戦う私立探偵ドワイト、連続幼女殺人魔に狙われたナンシーを救う刑事ハーティガンの3人を軸にしたエピソードを描く。劇中には、ロドリゲスの盟友クエンティン・タランティーノが演出したパートも。

「シン・シティ」

「シン・シティ」2015年7月2日発売
発売元 / ギャガ
[Blu-ray]3024円 / GABSX-1102

「シン・シティ」

「シン・シティ」

コミック「シン・シティ」(全4巻)
「シン・シティ(1)」
発売元 / 小学館集英社プロダクション
2484円

「シン・シティ」

ロバート・ロドリゲス×フランク・ミラー インタビュー

第1章:“シン・シティ ビギンズ” 2人の友情はこうして始まった

ロバート・ロドリゲス×フランク・ミラー。ハリウッドに愛され、ハリウッドを拒む異端児たちはどうやって出会い、どうやって手を組んだのか? その“笑える初デート”を2人が激白する。

ロバート・ロドリゲス(以下RR) オレはずーっとハードボイルドの大ファンで、フランクの大ファンだった。しかも、最初の「シン・シティ」を作った2004年にはフランクの画を動かせる映像技術が確立されていた。だからオレはフランクの画を生かした“ムービング・グラフィックノベル”を作ることにしたんだ。そういうことを話したいのに、フランクは最初、まったく耳を貸してくれなくてさ。

フランク・ミラー(以下FM) そりゃそうさ。私は「シン・シティ」を“ハリウッドが絶対映画化できないグラフィックノベル”のつもりで描いていたんだから。映画化の話なんて聞くはずがない。でも、ロバートはしつこかった。本当に何度も何度も電話してきて、仕方なくニューヨークのヘルズキッチンのバーで会うことにした。そこにいたのはテンガロンハットを被ったヘンなテキサス野郎だったんだ。

RR で、オレはフランクに、ノートパソコンに収めていた映像を見せた。でも、ピンとこないみたいだったからテキサスに呼んだんだ。

FM 行ってみるとグリーンスクリーンの前で役者がそろっていて、もうスタンバってた。私はその日の終わりには「じゃあ、明日はどんな撮影をするんだ?」って言ってたよ(笑)。お前はホント、最高のセールスマンだよ。

「シン・シティ 復讐の女神」撮影中の様子。左からフランク・ミラー、ロバート・ロドリゲス、マーヴに扮したミッキー・ローク。

RR 大丈夫、自分でもそう思ってるから(笑)。

FM 私は映画を作るのはハリウッドだと決め付けていたんだ。だが、テキサスでもできることを知ったし、その環境はハリウッドとはまったく違っていた。自由で物事が迅速に動く。

RR だから初めて会ったとき「オレはハリウッドとは違います。『シン・シティ』をハッピーエンドに変えたりしません」って言ったじゃないか。

FM いや、本当にそうだった。私は最高の相棒を見つけたんだよ。

第2章:“復讐”の名のもとに集まった4つの物語

今回のストーリーのベースになっているのは原作コミックの中でももっとも人気の高い「A Dame to Kill for」。そこにもう1本の既成エピソードと新エピソード2本が加えられ、4つのドラマが交錯する。それらをつなぐキーワードは“復讐”だ。

RR 今回は原作で人気のエピソード「A Dame to Kill for」をベースにすることは決めていた。ドワイト(ジョシュ・ブローリン)がエヴァ(エヴァ・グリーン)に復讐する物語だ。でも、撮影に入るまでけっこう時間があったんで、フランクと一緒にいろいろ原作をいじっているうちにオリジナル色の強いストーリーになったという感じだな。

FM そりゃちょっと違うよ。お前がいつも「さあ、フランク。オリジナルのキャラクターを考えようぜ」って言い続けたからじゃないか。まあ、それでちょっと毛色の違うジョニー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)が生まれたんだがね。ただし、私はあえて彼のイラストを描かなかった。

ジョセフ・ゴードン=レヴィット演じるギャンブラーのジョニーは、映画のために作られたキャラクター。

RR 演じてもらうジョセフからインスピレーションをもらってキャラクターを育てていったんだ。オレはそんなふうにして生まれたジョニーを気に入った。コインがトレードマークの若いキャラクターだ。ただし、彼の心にも復讐心が渦巻いている。というか、今回のメインのドラマが“復讐”だから当然なんだけど。

ナンシー(ジェシカ・アルバ)は命の恩人であるハーティガン(ブルース・ウィリス)のために復讐を果たそうとする。

FM 復讐ほど、この“罪深き街”にふさわしい激情もないよ。誰だって1作目の「シン・シティ」を観れば、ナンシー(ジェシカ・アルバ)の怒りと悲しみがわかるはずだ。私は彼女と、彼女の守護神ハーティガン(ブルース・ウィリス)の関係性が大好きだった。彼女を守るために自ら死を選んだ彼の生きざまもね。だからオリジナルのナンシーの復讐譚も入れようということになった。

マーヴ(ミッキー・ローク)はホームレスに火を放つ若者たちに容赦のない制裁を加える。

RR もう1人はマーヴ(ミッキー・ローク)。彼には自分の“正義”がある。もっと言うと、シン・シティの正義を体現していると言ってもいい。その部分が彼を復讐に駆り立てるんだ。オレはマーヴが大好きだから、この物語にも愛着があるんだよ。

「シン・シティ 復讐の女神」
「シン・シティ 復讐の女神」

フランク・ミラーのグラフィックノベルを、ロバート・ロドリゲスとミラーの共同監督で実写化した「シン・シティ」の続編。原作で人気の高いエピソード2話と、新たに書き下ろした2話で構成される復讐劇を疾走感あふれるアクションと共に描く。前作と同じく全編グリーンスクリーンで撮影され、光と影を印象的に使った映像を生み出している。

シン・シティのストリップバーで働くナンシーは、自分をかばって命を落とした刑事ハーティガンへの思いを断ち切れずにいた。その元凶ともいえる男が、街の権力者ロアーク。ナンシーはロアークが店を訪れるたびに復讐の機会をうかがっていたが……。

監督・撮影・編集:ロバート・ロドリゲス

監督・原作・脚本:フランク・ミラー

出演:ミッキー・ローク、ジェシカ・アルバ、ジョシュ・ブローリン、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、エヴァ・グリーン、ロザリオ・ドーソン、ブルース・ウィリス、レディー・ガガ、クリストファー・ロイドほか

Blu-ray / DVD「シン・シティ 復讐の女神」2015年7月2日発売 / ハピネット
コレクターズ・エディション 3D&2Dブルーレイセット[Blu-ray Disc2枚組] 6696円 / BIXF-0167
コレクターズ・エディション[Blu-ray Disc] 5184円 / BIXF-0168
コレクターズ・エディション[DVD] 4212円 / BIBF-2805
初回限定特典
  • アウタースリーブケース / ブックレット(12P)
特典映像
  • グリーンスクリーン本編ハイスピード映像 / キャラクタープロフィール / グレッグ・ニコテロの特殊メイク効果解説 / ジェフ・ダッシュノーのスタント解説 / コミコン(SDCC)2014 パネルディスカッション