完全無料のBS放送局・BS松竹東急(BS260ch)。同局が1月から2月にかけて放送するのは、クイーン、ビリー・ジョエル、GLAY、LUNA SEAといった海外・国内のビッグアーティストの映像作品だ。
映画ナタリーでは今回の放送作品8本を紹介。映画評論家・森直人によるクイーン関連作4本の解説、そして番組編成担当者のコメントを掲載した。
文(クイーン関連作解説)/ 森直人
映画「ボヘミアン・ラプソディ ライブ・エイド完全版」
2024年2月11日(日・祝)20:40~23:30
© 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation, Monarchy Enterprises S.a.r.l. and TSG Entertainment Finance LLC. All rights reserved.
劇場未公開の2曲が加わったマスターピース
クイーンというバンドの魅力を“いま”に甦らせ、世代も国も超えた人気に定着させた決定的なマスターピース。それが2018年公開の映画「ボヘミアン・ラプソディ」だ。タイトルは「♪ママ~」の歌い出しでおなじみの代表曲(1975年発表)から取ったものだが、映画の内容はリードボーカルであるフレディ・マーキュリーの波乱の半生を中心に綴るもの。厳密には史実とは異なる脚色が随所に施されているものの、むしろフレディの内面は正確に描けているとブライアン・メイら現存のメンバーが公認している。
全身全霊でフレディになりきった主演のラミ・マレックが素晴らしい。若き日から移民としてロンドン社会で差別を受け、自らのゲイというセクシュアリティをめぐり葛藤を重ね、バンドで巨大な成功を収めてからも孤独に苛まれたフレディ。そんな彼のマイノリティ意識が物語の核に置かれており、クイーンはフレディの個性を独自の表現として具現化するチームだったことがよくわかる。また音楽映画としての質が圧倒的。特に1985年のチャリティ・コンサート企画、ライブ・エイドのステージを再現したクライマックスシーンは“完コピ以上”の精度と話題になった。筆者の感覚としても、長らくクイーンの楽曲は懐メロ扱いされることが多かったが、まさしくこの映画のパワーが状況を変えた。リアルタイムで彼らを知らない世代をも巻き込み、永遠不滅のアンセムの数々として再浮上させたのだ。
日本では応援上映なども盛り上がったが、今回放送されるのは、劇場では未公開だった「ウィ・ウィル・ロック・ユー」と「愛という名の欲望」──名曲2曲のライブ・エイドでのパフォーマンスシーンを加え、新たに再編集した完全版となる。最高にエモーショナルな体験が味わえることは間違いない!
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映画「ボヘミアン・ラプソディ ライブ・エイド完全版」は、音楽ライブと情感豊かな物語を同時に楽しめる極上のエンターテイメント作品。「ウィ・ウィル・ロック・ユー」「地獄へ道づれ」など思わず身体が動いてしまう、思わず口ずさんでしまう誰もが一度は聞いたことがある名曲が惜しげもなく登場します。フレディ・マーキュリーの半生を中心に物語は進みますが、悩み苦しんだ孤高のスターが、輝き続ける事ができたのは、素晴らしい仲間たちの支えがあったからこそだと感じさせてくれる、何度見ても元気をもらえる作品だと思います。躍動感あるライブシーンをテレビの前で体感して頂けたら嬉しいです!!!
(BS松竹東急 編成部 映画担当・岡田雄介)
もうひとつの「スター・ウォーズ」!?
今観ると新鮮なアナログ特撮
根強いカルト的人気を誇る1980年のSF冒険活劇映画で、クイーンがサウンドトラックを手掛けた映画としても名高い(彼らの9枚目のオリジナルアルバムとして同名のサントラ盤が発売されている)。主題歌となった「フラッシュのテーマ」は、日本のCMやテレビ番組でも頻繁に使用されており、映画は未見だけど曲を聴いたことのある人は多いはずだ。当時、全英シングルチャートで最高位10位を記録。
作品自体は1933年に生まれた新聞連載のアメリカン・コミックが原作。ちなみにあのジョージ・ルーカス監督も同コミックの大ファンで、かねてから「フラッシュ・ゴードン」の映画化を切望していた。だがすでにディノ・デ・ラウレンティスというプロデューサーに権利を取られていたため果たせず、代わりにオリジナルで作ったのが1977年の「スター・ウォーズ」だ。なので「スター・ウォーズ」と「フラッシュ・ゴードン」はキャラクターや物語もよく似ており、両作ともギルバート・テイラーというカメラマンが撮影監督を務めていたりする。
結果的に「スター・ウォーズ」が大ヒットを記録した3年後、後塵を拝する形で公開された「フラッシュ・ゴードン」だが、こちらは当時賛否が分かれつつもマニアックな好事家に長く愛される一本となった。監督を務めたのは英国出身のマイク・ホッジス(2022年に90歳で逝去)。当時は超大作SFとして製作されたが、いまの目で観ると玩具的としか言いようのないアナログ特撮は可愛らしくてむしろ新鮮に映る。またブライアン・メイのサウンドメイキングの才能が全編にわたり確認できることでも貴重な一本だ。ハマった人は、2022年に邦訳が刊行された「メイキング・オブ・フラッシュ・ゴードン」(竹書房)もぜひ参照していただきたい。
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惑星モンゴから地球を襲う悪の皇帝を、アメフト選手が討つ! ツッコミどころ満載ながら、その過剰なまでのキッチュさに心わしづかまれる痛快作「フラッシュ・ゴードン」。クイーン特集の一環で映画を放送するならばこれは外せない!との思いで、ご用意させていただきました。高らかなコーラスが印象的な「フラッシュのテーマ」をはじめ、この映画でクイーンが手掛けた楽曲の数々は、極彩色の美術や衣装と相まって、作品世界をうっとりするほどきらびやかなものにしています。バンドとしてシンセサイザーを本格的に導入しはじめた時期にあたる1980年の、クイーンの「冒険精神」をお楽しみください。……それにしても、天体物理学者としても知られるブライアン・メイが、どのような思いでこの突き抜けた異星文明描写を見たのかとても興味深いです!
(BS松竹東急 編成部 映画担当・今井悠也)
「オン・ファイアー/クイーン 1982」
2024年2月12日(月・振休)19:55~21:00
©1996 The Copyright In This Video Recording Is Owned By Queen Productions Ltd.
ダレ場一切なし、絶頂期の“本物”のパフォーマンス
もともとDVD作品としてリリースされたライブ映像で、パッケージの原題は“QUEEN ON FIRE – LIVE AT THE BOWL”。1982年6月5日、イギリスのミルトン・キーンズ・ボウルで行われたホット・スペース・ツアーの公演を記録したもの。同じ音源がライブアルバムとしても発売されている。
「フラッシュのテーマ」が会場に流れる中、クイーンの4人のメンバーがステージに登場(キーボードのサポートで、モット・ザ・フープルのメンバーとして知られるモーガン・フィッシャーが参加)。そこから約50分、ほぼノンストップで畳み掛ける構成に再編集されており、ダレ場など一切なしだ。「ウィ・ウィル・ロック・ユー」の疾走感あふれる“ファスト・バージョン”から、フレディ・マーキュリーがピアノを弾きながら熱唱する「プレイ・ザ・ゲーム」や「ボヘミアン・ラプソディ」、そして「伝説のチャンピオン」まで──。名曲のオンパレードはまさに圧巻。タイムマシンで約40年前に時間旅行した気持ちで、絶頂期の“本物”のパフォーマンスを目撃して欲しい。
オンエア曲
- フラッシュのテーマ
- ザ・ヒーロー
- ウィ・ウィル・ロック・ユー(ファスト・バージョン)
- プレイ・ザ・ゲーム
- ステイング・パワー
- 愛にすべてを
- ナウ・アイム・ヒア
- ラヴ・オブ・マイ・ライフ
- セイヴ・ミー
- ファット・ボトムド・ガールズ
- ボヘミアン・ラプソディ
- タイ・ユア・マザー・ダウン
- 伝説のチャンピオン
- ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン
紅白にも出た“新生クイーン”の軌跡
昨年(2023年)の大晦日、第74回NHK紅白歌合戦に出演し、「ドント・ストップ・ミー・ナウ」を演奏したクイーン+アダム・ランバート。2月には4年ぶりとなる日本公演、ドーム・ツアーが控えている彼ら。この“新生クイーン”にまつわる貴重なドキュメンタリーがこれだ。2019年、テレビ用映画として製作された86分の作品。
1982年米国生まれのアダム・ランバートは、2009年にオーディション番組「アメリカン・アイドル」でクイーンのブライアン・メイ(ギタリスト)&ロジャー・テイラー(ドラマー)と初めて共演。それをきっかけに、フレディ・マーキュリー(1991年、45歳で逝去)という決定的なカリスマの不在を埋める後継者として、2012年からクイーンのボーカリストとして活動することになった。
このドキュメンタリーでは2019年2月、映画「ボヘミアン・ラプソディ」が最多4冠を受賞した第91回アカデミー賞授賞式でのパフォーマンス(曲は「ウィ・ウィル・ロック・ユー」)から始まり、これまでの活動や舞台裏の経緯を追っていく。証言者には俳優のラミ・マレック、デフ・レパードのジョー・エリオット、フー・ファイターズのテイラー・ホーキンス(彼は2022年に50歳で急逝している)など著名人が多数登場。アダム・ランバートがクイーンの新しいフロントマンとして立つことの重圧や苦悩も含め、数々の秘話を明かしてくれる。ファンはもちろん、新たにクイーンに興味を持ったビギナーも必見の一本と言えるだろう。
セットリスト
- プレリュード/怒れる若者
- マイ・ライフ
- 夏、ハイランドフォールズにて
- エヴリバディ・ラヴズ・ユー・ナウ
- ザンジバル
- ニューヨークの想い
- アレンタウン
- さすらいのビリー・ザ・キッド
- シーズ・オールウェイズ・ア・ウーマン
- グッドナイト・サイゴン
- マイアミ2017
- シェイムレス
- ディス・イズ・ザ・タイム
- キーピン・ザ・フェイス
- キャプテン・ジャック
- ララバイ(グッドナイト、マイ・エンジェル)
- リヴァー・オブ・ドリームス~ア・ハード・デイズ・ナイト
- ハートにファイア
- ガラスのニューヨーク
- イタリアン・レストランで
- 若死にするのは善人だけ
- アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア
- 私を野球に連れてって~ピアノ・マン
- レット・イット・ビー
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1965年にザ・ビートルズが、史上初となる野球場コンサートを開催。以降も、世界を牽引するミュージシャンがライブを行う場所として長く愛されてきたシェイ・スタジアム。今回の作品は、そんなシェイ・スタジアムの取り壊しに伴う最後の公演としてビリー・ジョエルが開催したもので、11万枚のチケットがわずか45分で完売したことでも有名な伝説のライブです。またトニー・ベネットやジョン・メイヤーら、超豪華アーティストも続々と登場しますので、こちらも是非お楽しみいただけたらと思います。なかでも、ポール・マッカートニーとの「レット・イット・ビー」の競演は必見! 無料放送で、是非“奇跡の夜”をご覧ください。
(湯浅)
オンエア曲
- OPENING
- HAPPY SWING
- 口唇
- グロリアス
- SHUTTER SPEEDSのテーマ
- More than Love
- サバイバル
- 生きてく強さ
- Yes, Summerdays
- summer FM
- INNOCENCE
- Freeze My Love
- HOWEVER
- ここではない、どこかへ
- LADY CLOSE
- TWO BELL SILENCE
- MISERY
- 誘惑
- COME ON!!
- ACID HEAD
オンエア曲
- BLEEZE
- GLOBAL COMMUNICATION
- グロリアス
- 誘惑
- ピーク果てしなく ソウル限りなく
- サバイバル
- 口唇
- MISERY
- HIGHCOMMUNICATIONS
- I'm in Love
- 疾走れ!ミライ
- BLACK MONEY
- FAME IS DEAD
- 彼女の“Modern…”
- VERB
- BEAUTIFUL DREAMER
- BE WITH YOU
- SAY YOUR DREAM
- Bible
- 生きてく強さ
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2024年5月25日にデビュー30周年を迎えるGLAY。先日公式サイトでも30周年のテーマが“GLAY EXPO”であることや周年を象徴するキービジュアルを「ONE PIECE」の尾田栄一郎氏が手掛けたことが発表され話題を集めていますが、今回、BS松竹東急ではそんなGLAYのデビュー30周年を記念して、“祝!デビュー30周年 2日連続!GLAY特集”と題し、過去のGLAY EXPOの映像をお送りします。
1日目(2月3日)は、「GLAY EXPO '99 SURVIVAL LIVE IN MAKUHARI」。1999年7月31日に千葉・幕張メッセの駐車場で行われたもので、日本音楽史上に残る20万人というオーディエンスを集めた伝説のライブ・イベントです。
そして、2日目(2月4日)は「GLAY EXPO 2014 TOHOKU」。こちらのライブはデビュー20周年を迎えたGLAYが当時、東日本大震災の被災地となった東北を中心に、日本を元気にしたいという思いから開催したもので、東北を拠点に活動するアーティストや地元のお祭りとのコラボなど、様々な企画が目白押しです。なかでも、TERUさんが大きな和太鼓を叩くシーンには何か祈りのようなものを感じて、心にとても響きました。
老若男女に愛され続けて、30年。今年は様々な企画が実施されるようですので、放送も楽しんでいただき&GLAY熱を高めて、今年の周年イベントにも是非是非参加してみてはいかがでしょうか?
(湯浅)
- こちらもチェック!
GLAY MUSIC VIDEO SELECTION①
2024年2月3日(土)12:00~12:30
※「サバイバル」「Buddy」「口唇」「BE WITH YOU」のMVを放送。
GLAY MUSIC VIDEO SELECTION②
2024年2月4日(日)18:00~18:30
※「限界突破」「Pianista」「VERB」「BLEEZE」のMVを放送。
オンエア曲
- IN FUTURE
- Dejavu
- G.
- END OF SORROW
- TRUE BLUE
- Rouge
- gravity
- Providence
- FALLOUT
- The End of the Dream
- STORM
- DESIRE
- ROSIER
- TONIGHT
- I for You
- BELIEVE
- WISH
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過去最大規模の全国ツアー開催を宣言したことでも話題を集めていますが、今回はそんなLUNA SEAの結成35周年を祝う気持ちで、ZEPP TOKYOで2012年に行われたライブの模様をお届けします。ライブハウスならではの迫力と観客との一体感は圧巻です。昨年にセルフカヴァーアルバム「MOTHER」「STYLE」をリリースしたLUNA SEAですが、YouTubeでも公開されている「LOVELESS」や「G.」を拝見したときに、これ…10年以上前の曲なのに、新鮮さがとてつもなくて“新曲”じゃないのか…?!と戸惑いました。今なお進化し続けるLUNA SEAの35周年がますます楽しみになっている僕ですが、そんな周年に向けての振り返りとしても、今回の放送を是非ご覧いただけると嬉しいです。
(湯浅)
2024年1月26日更新
初めての編成に挑戦、点ではなく面で魅せる
BS松竹東急は開局以来、様々な挑戦をしてきましたが、そのひとつに一昨年の12月から始まった音楽編成があります。アーティストのライブをたっぷりと無料でお届けする編成は、他局ではなかなか見られないのではと思います。
これまで放送日順に、吉田拓郎さん、吉幾三さん、布袋寅泰さん、舟木一夫さんのコンサートなどをお送りしてきました。今回のラインナップではBS松竹東急では初めてとなる「洋楽」と「バンドのライブ」の編成に“挑戦”しています。
また、BS松竹東急の編成の柱のひとつに「伝統から革新まですべてを見せる映画」があります。クイーン特集では、そんな映画編成とも連携。「来日記念! BS松竹東急 クイーン フェス」と題して、その日だけに終わらない、連日の特集編成。“点ではなく面で視聴者に魅せていく”そんな編成にこれまた“挑戦”しました。これからも常に挑戦する姿勢を崩さず、視聴者の皆様がワクワクするようなラインナップをお届けできるよう努めてまいります! どうぞ、ご期待ください!
(BS松竹東急 編成部 音楽担当・湯浅敦士)