映画ナタリー Power Push - 「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」

樋口真嗣監督インタビュー 日本映画という壁の中で

どうしても撮影したかった場所

──ロケ地となった軍艦島(長崎県・端島)についてお伺いしたいのですが、「007 スカイフォール」のロケ地になる予定だったのが、安全を考慮し、スタジオ撮影に変更されたという逸話がありますよね。

軍艦島での撮影は、僕が言い出しっぺなんです。別の用事で上陸して、見せてもらえる機会があって。そのときから「ここはすごい場所だし、何かのロケで使いたいな」とずっと思っていたんです。

──でも撮影するのは難しい場所なんですよね?

「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」より。

はい。波が少し高くなっただけで上陸できなくなるぐらいで。でも「007」の顛末に関しては、スタッフの人数や撮影スタイルの違いというのもあると思うんです。俳優さんたちの待機場所としてトレーラーを設置するような、いわゆる向こうのスタイルの映画作りには適していない場所なので。

──なるほど。

そういう厳しい条件の中でも、どうしてもやりたいと思える魅力がそこにあったのと、プロデューサーも「ここでやったほうがいい、こういう場所でやらないとダメだよ」と言ってくれて。製作陣によっては、「そういうのなしでやりましょう」ってなる場合も多いんですけど、すごく理解があって、感謝しています。1日でもいいから軍艦島で撮影できたほうが、俳優の入り込み方も違うと思っていたので、本当によかった。

希望する作品を制作できる幸せ

──樋口監督の好きなマンガを教えていただけますか。

マンガ、マンガ……マンガですか。すいません実は僕、マンガをあまり読まなくて。だから、好きな作品も「漂流教室」と「ザ・ワールド・イズ・マイン」、あとはやっぱり「進撃の巨人」ぐらい。

──そうなんですね。

「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」より。

あまりマンガを読まない分、好きなマンガに出会うのはオリンピックぐらいの間隔なので。あ、福本伸行さんの「最強伝説 黒沢」もすごい好きです。

──その中で実写化したい作品というのはありますか。

なんだろう……。プロデューサーの方とかがこの記事を読んで「じゃあ依頼してみようか」って思ってくれたらいいんだけど(笑)。「進撃の巨人」といい、やりたいと思うものは、作らせていただいてる幸せ者なんで。あ、今思い出したんですが、山田芳裕さんの「へうげもの」がやりたいです。戦国時代を舞台に物欲を満たしていくコレクターの生き様が小さすぎて大好きです。あとは小説になってしまうんですが、伊藤計劃さんの「ハーモニー」を実写化してみたいですね。もうじき劇場版アニメが公開されますが。

壁の中で何ができるか

──本作には巨大な壁に囲まれた世界が描かれていますが、樋口監督が今までに感じた一番大きな壁は何ですか?

壁か……なんだろう。答えになっているかわからないんですが、僕らが子供の頃、というかある程度の年齢になってからも、日本映画ってすごいバカにされていたんですよ。「アメリカと比べて日本ってダメじゃん」みたいに言われていて。どんなにいい作品でも日本映画ってだけで誰も観てくれないって感じで。

──なるほど。

この仕事を始めた頃から、それをなんとかしたいなっていう思いがあって。そのときよく「だったらアメリカで仕事すればいいじゃん」とか言われたんですよ。でも自分としては、むしろ逆で、誰も見向きもしていないからこそ壁の中で戦わなきゃと思っていたんです。

──それは壁の中だからこそ、できることがあると考えていたということですか?

「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」撮影現場での樋口真嗣。

その通りです。アメリカに行ってうまくいってもそれは「アメリカの環境のおかげじゃないか」と思われちゃう。それよりも閉塞している日本を変えたかった。特に日本の特撮映画にはそのような側面が濃厚にあると思うんです。だから僕は、壁の中で何ができるかということを考え、実践してきた。でも僕の奮闘とはあまり関係のないところで、いつのまにか昔ほど日本映画がバカにされなくなって(笑)。

──それはもちろんいいことですけどね(笑)。壁の中にいたからこそ、この「進撃の巨人」、そして樋口監督の今があるっていうことですよね。

そうですね。ただ作中で描いていることと、今僕が言っていることがめちゃくちゃで……。劇中では「壁の外に出ろ」と言って、でも実は「壁の中で戦え!」みたいな(笑)。言ってることとやっていることが矛盾していて、本当に申し訳ない(笑)。

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「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」
スタッフ

監督:樋口真嗣
原作:諫山創(講談社「別冊少年マガジン」連載中)
脚本:渡辺雄介、町山智浩
特撮監督:尾上克郎
主題歌:SEKAI NO OWARI「SOS」
音楽:鷺巣詩郎

キャスト

エレン:三浦春馬
シキシマ:長谷川博己
ミカサ:水原希子
アルミン:本郷奏多
ジャン:三浦貴大
サシャ:桜庭ななみ
サンナギ:松尾諭
フクシ:渡部秀
ヒアナ:水崎綾女
リル:武田梨奈
ソウダ:ピエール瀧
ハンジ:石原さとみ
クバル:國村隼

樋口真嗣(ヒグチシンジ)

1965年9月22日、東京都生まれ。1984年「ゴジラ」に造形助手として参加し、映画界入り。「ガメラ 大怪獣空中決戦」「ガメラ2 レギオン襲来」「ガメラ3 邪神<イリス>覚醒」などで特撮監督を担当した後、「ローレライ」「のぼうの城」(犬童一心と共同監督)「巨神兵東京に現わる」で監督を務める。監督最新作「ゴジラ2016(仮)」(総監督は庵野秀明)の公開を、2016年夏に控えている。

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