注目度急上昇中!中国時代劇が熱狂を生む理由とは?/ 次の注目作は明朝時代のホームズとワトソンが謎を解く「成化十四年~都に咲く秘密~」

今、日本でかつてないほど熱い人気を呼んでいる中国時代劇。「陳情令」「山河令」といったブロマンス時代劇や、ラブロマンス史劇「永遠の桃花~三生三世~」、宮廷ドラマ「瓔珞<エイラク>~紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃~」など、一口に時代劇といってもジャンルは多岐にわたり、それぞれ熱狂的なファンが出現している。そんな中チャンネル銀河で11月11日(木)に放送が始まるのが、ジャッキー・チェンがプロデュースを担当した大注目のミステリー「成化十四年~都に咲く秘密~」だ。中国・明の時代を舞台にした本作で描かれるのは、“武術”と“知恵”を駆使して謎と陰謀に立ち向かう明朝一の名探偵コンビ。しかも、美男子2人がワケあって同居するらしい!?──というのだからつかみはバッチリだろう。

今回、そんなドラマを楽しんでもらうため、中国人ジャーナリスト徐昊辰が“中国ドラマが熱狂を生む4つの理由”を解説。さらにコラムでは「成化十四年~都に咲く秘密~」の魅力をたっぷり紹介している。

取材・文 / 金子恭未子コラム / 小酒真由子

中国ドラマが熱狂を生む4つの理由
中国人ジャーナリスト・徐昊辰が解説!

プロフィール

徐昊辰(じょこうしん)

1988年中国・上海生まれ。上海国際映画祭のプログラミングアドバイザーや日本映画プロフェッショナル大賞選考委員のほか、Web番組「活弁シネマ倶楽部」の企画・プロデュースも担当。Weiboのフォロワー数は281万人。

巧みな海外戦略

「2gether」を生んだタイドラマとの共通点とは?

中国時代劇が今日本や東南アジアで熱い人気を呼んでいます。その理由の1つは、海外戦略の巧みさです。中国の3大配信プラットフォームの1つテンセント(騰訊視頻)の場合はYouTubeで英語字幕を付けて3カ月程度無料でドラマを公開しています。ファン層が拡大し、今ではコメント欄は英語ばかり。同じ方法を取っているのが日本でも爆発的な人気を獲得した「2gether」を生み出したタイです。面白いものを無料で観てもらって、人気を得てから売るというのが一番理想的で大きな利益を生む。中国ドラマ「山河令」も同じ方法で多くの支持を獲得しました。熱狂的な中国ドラマのファンが急増中なんです!

中国の浙江省に位置する世界最大級の撮影所・横店影視城。(写真提供:新浪)

中国の浙江省に位置する世界最大級の撮影所・横店影視城。(写真提供:新浪)

企画段階から集まる桁違いの予算

ほぼ赤字がありえないって本当!?

中国時代劇の華やかなセットや美術は海外ファンを惹き付ける大きな魅力の1つ。日本と中国の大きな違いは、テレビ局が作品制作に関わらないケースが多いことです。ドラマは制作会社が作って、それをテレビ局や配信プラットフォームに売る。話題のキャストが出ていたり、原作が強かったり、有名な脚本家が関わっていると、企画段階から莫大な予算が集まります。例えば「九州縹緲録~宿命を継ぐ者~」の総製作費は83億円です。制作会社の調査とデータ分析の精度が高いので赤字はほぼありえない。「成化十四年~都に咲く秘密~」ならジャッキー・チェンがプロデュースをしていて、人気小説家の梦溪石(モン・シーシー)が原作を手がけたことから予算が集まります。桁違いの予算をもとに圧倒的なスケール感を持った作品を作ることができる。それが中国ドラマの大きな強みです。

ジャッキー・チェン(写真提供:Sean Thorton/WENN.com / ゼータ イメージ)

ジャッキー・チェン(写真提供:Sean Thorton/WENN.com / ゼータ イメージ)

シビアな世界だからこそ、名作が生まれる!?

相手にするのは目が肥えたユーザー

とにかく中国ではDouban(豆瓣)の口コミが命! 中国で人気を得ているWebドラマのユーザーは若者と生活に余裕のある層です。彼らは普段から良質な海外ドラマを観ているので目が肥えていて、クオリティが高くないと見向きもしない。いい評価を得られないと脚本家も出演者も価値が下がってしまい次のチャンスを失ってしまう可能性があります。とてもシビアなので、クオリティは自然と上がっていくんです。

百花繚乱!多岐にわたるジャンル

老若男女楽しめるものへ

かつて中国時代劇と言えば堅い印象で、歴史好きや男性が観るものというイメージでしたが、1990年代後半以降は歴史に興味のない人や、女性も楽しめるような作品が増えてきました。ターニングポイントの1つになったと言えるのは1998年に放送がスタートしたヴィッキー・チャオの主演作「還珠姫 ~プリンセスのつくりかた~」。それまで時代劇と言えば史実にもとづいたものでしたが、この作品は時代背景を借りた娯楽作品という作りになっていました。さらにコメディ要素もあった。この作品の大ヒットによって若者が時代劇を観るようになっていったと思います。2000年代前半には「フレンズ」や「ザ・ホワイトハウス」「24 -TWENTY FOUR-」などの海外ドラマが中国に入ってきて、ドラマ製作者に大きな影響を与えました。経済成長と、ネットの発達も手伝って、さまざまなジャンルの作品が作られるようになったんです。

そんな中、中国時代劇が日本でここまでの人気を得るようになったきっかけの1つはリウ・シーシー主演の「宮廷女官 若曦」。中国で2011年に放送されたこの作品はタイムスリップしてきた現代の女性が康煕帝の9人の皇子たちと出会って恋に落ちる姿を描いたラブロマンスです。同年に中国で放送がスタートしたスン・リー主演の「宮廷の諍い女」も重要な1本。それまでは皇帝が主役だった歴史劇ですが、この2作品が放送されたあたりから女性が主役の物語も作られるようになったんです。セットも美術も華やかになりました。同性が主人公だと女性視聴者の共感、親近感を得られます。「宮廷女官 若曦」はファンタジーなので、今まで堅いイメージのあった歴史劇とは違った印象を受けた人も多かったと思います。そして2019年放送の「陳情令」、2021年放送の「山河令」といったブロマンス時代劇が爆発的にヒットしました。BLが描ける日本と描けない中国の差がいい意味で働いた。距離感の違いが、日本にはないものとして新鮮に映ったのだと思います。中国時代劇と一口に言ってもジャンルは多岐にわたり、それぞれ熱狂的なファンを生み出しているのです。

1994年に中国で放送された「三国演義」。(写真提供:新浪)

1994年に中国で放送された「三国演義」。(写真提供:新浪)

そして次の注目作「成化十四年~都に咲く秘密~」

まだ中国ドラマに触れたことがない方もいると思いますが、中国ドラマは全体的にクオリティがどんどん上がっています。中国は歴史が長いので、それぞれの時代を背景に自由なストーリーが作られていて、観ていると自然と歴史の知識も得られる。とにかく一度観たら面白いと思うはずです! 日本人の方にもなじみ深いジャッキー・チェンが製作している「成化十四年~都に咲く秘密~」は初めの一歩にちょうどいいのではないでしょうか!

「成化十四年~都に咲く秘密~」

「成化十四年~都に咲く秘密~」

今観るべき中国ドラマ!4つの注目ポイント

中国時代劇版シャーロック・ホームズ&ワトソン!知性派&肉体派の美男バディ登場

天然に見えて実は天才的な推理力を持つ名探偵の唐泛(とうはん)と、秘密警察として活躍するコワモテの隋州(ずいしゅう)は、シャーロック・ホームズとジョン・ワトソンを思わせる名コンビ。唐泛はマイペースで周囲を振り回すけれどピュアで憎めない“愛され男子”で、これを演じるのが「花より男子」の中国版「流星花園2018」で花沢類を演じてブレイクしたグアンホンというのがはまり役だ。一方、唐泛に手を焼きつつも彼のためなら護衛役にもなる隋州は、クールな顔をして心は熱い“ツンデレ男子”で、こちらは若手演技派として急成長中で映画「返校 言葉が消えた日」にも出演するフー・モンボーというツウなキャスティング。このようにキャラも演じる俳優もまったく違うタイプの2人なのに、唐泛と隋州は出会いのシーンから唯一無二のケミストリーを醸し出す。彼らが力を合わせて殺人事件の謎を追ううちに最強のバディへと成長していく姿から目が離せない。

「成化十四年~都に咲く秘密~」より、左からグアンホン演じる唐泛(とうはん)、フー・モンボー演じる隋州(ずいしゅう)。

「成化十四年~都に咲く秘密~」より、左からグアンホン演じる唐泛(とうはん)、フー・モンボー演じる隋州(ずいしゅう)。

原作はBL小説!謎解きミステリーが面白い&脇を固めるキャストも魅力的

BL小説が原作だけに主役コンビだけでなく脇役キャラも個性的で魅力的な男性がいっぱい。遺体の検視も行う医者の裴淮(はいかい)は変わり者のアウトローでも心はロマンティック。いつも唐泛とはケンカばかりしているのに彼のためなら危ない橋も渡る。また、朝廷でスパイとして暗躍する汪植(おうしょく)は、腹黒い冷酷な男なのに優しさと繊細さも垣間見せる謎めいたキャラ。唐泛と隋州の事件捜査を手伝ってくれるように見える彼はいったい味方なのか敵なのか、先の読めない展開にドキドキさせられる。さらに、悪役としてあとから登場してくる李子龍(りしりゅう)は劇中でも一番のクセ者。彼は事件を鮮やかに解決していく唐泛の才能に気づくと彼にロックオンして…!? そんなふうに謎解きのミステリーに胸を騒がせるブロマンス要素が絡み合うストーリーがスリリングで面白い!

マオ・イー演じる裴淮(はいかい)(右)。

マオ・イー演じる裴淮(はいかい)(右)。

リウ・ヤオユェン演じる汪植(おうしょく)。

リウ・ヤオユェン演じる汪植(おうしょく)。

ワン・マオレイ演じる李子龍(りしりゅう)。

ワン・マオレイ演じる李子龍(りしりゅう)。

アクション&ユーモア満載!ジャッキー・チェン作品らしいエンタテインメント大作

中国でも近年は動画配信サービスを行う会社が制作・独占配信するWebドラマが大人気。今ではそんなWebドラマの制作に映画界の大物プロデューサーや監督が参加することも珍しくなく、本作は世界的に活躍するジャッキー・チェンが初めて中国でWebドラマのプロデュースに乗り出した作品として大きな話題を呼んだ。アクションもジャッキーが率いるスタントマンチーム「成家班」が演出しているため、本格的でリアルなだけでなく、ユーモラスで愉快な活劇シーンが多いのが見逃せないところ。武術が得意な隋州が披露するかっこいい立ち回りだけでなく、ひ弱な唐泛が見せるかわいらしいドタバタシーンも楽しめるのは、ジャッキー作品ならでは。毎エピソードが映画並みのエンタテインメントに仕上がっているのに圧倒されてしまうはず。

「成化十四年~都に咲く秘密~」

「成化十四年~都に咲く秘密~」

「成化十四年~都に咲く秘密~」

「成化十四年~都に咲く秘密~」

ご当地料理が事件解決のヒントに!?明の時代のグルメが目にもおいしい

以上の見どころだけでもお腹いっぱいなのに、このドラマがすごいのはさらに“飯テロドラマ”でもあること。食いしん坊の唐泛は屋台や食堂でおいしそうなメニューに目ざとく飛びつき、出かけていく先々でさまざまなご当地グルメを堪能する。そんなシーンでは中国の伝統料理やお菓子などに関するウンチクが学べるうえ、登場メニューが事件解決のヒントになるなど、“食”がストーリーを盛り上げていく。また、唐泛と同居生活を送る隋州が実は料理上手で、唐泛の胃袋をがっつり掴んでしまうという展開もお楽しみ。隋州が手元の材料を使って手早く家庭料理を作り出す様子が、料理番組のように臨場感たっぷりに描かれるシーンは目にもおいしい。このように本作はこれまでの中国時代劇とは一味も二味も違うのがポイント。ぜひご賞味あれ!

「成化十四年~都に咲く秘密~」

「成化十四年~都に咲く秘密~」

「成化十四年~都に咲く秘密~」

「成化十四年~都に咲く秘密~」

物語を彩る美男子たち