常に全力で進み続ける俳優・山田裕貴と、アクション界に欠かせない監督・坂本浩一。そんな2人がタッグを組んだドラマ「SEDAI WARS」のBlu-ray BOXが8月27日にリリースされる。2020年1月期に放送された本作は、近未来の日本を舞台に、ゆとり世代や団塊世代など各世代の代表者たちがVR空間でバトルを繰り広げる異色バトルアクションだ。
2人の出会いは2011年に放送された山田のデビュー作「海賊戦隊ゴーカイジャー」までさかのぼる。それから9年、このたび4回目の顔合わせが実現。絶大な信頼を寄せ合う2人の“相思相愛”な胸の内から、「次はどんな作品を一緒にやりたい?」という願望まで語り合ってもらった。
取材・文 / 金須晶子 撮影 / 佐藤類
主役でも脇役でも、毎回“100”なんです(山田)
──「SEDAI WARS」は2020年1月期ドラマとして放送され、その予測不能な展開に毎週SNSを中心に盛り上がっていました。お二人にも反響は届いていましたか?
山田裕貴 俳優仲間のマネージャーさんに「観てるよ」とよく声を掛けてもらいました。皆さん「何このドラマ!?」とびっくりしてましたよ。
坂本浩一 自分も知り合いのプロデューサーや、ほかの現場のスタッフさんから「面白いね!」と言われることが多くて。業界注目度ナンバーワンだったかも(笑)。みんな「なんじゃこりゃ!」と思いながら観てしまうと言っていたので、思う壺にはまってもらえたようでよかったです(笑)。
──メイキング映像で浅川梨奈さんが本作を「深夜のニチアサ(日曜日の朝にアニメ・特撮が放送されている時間帯)」と例えていらして、確かにと思いました。
山田 なるほど! その表現はぴったりですね。
──山田さんはデビュー作「海賊戦隊ゴーカイジャー」で坂本監督と出会い、このたび4回目のタッグとなりました。しかも坂本監督の作品では初主演ということで。特別な思いがあったのでは?
山田 主演だからという部分では、実はそんなに変わらなかったです。
坂本 いつもがんばってるもんね。
山田 ありがとうございます。僕、本当に毎回“100”なんですよ。脇役でもそのキャラクターの人生の主人公だから、一生懸命(役を)生きようとする。「主演だから特に気合いを入れる」ということはなかったですね。でもデビューから9年間ずっと観てくださっている監督は坂本さんぐらいなので、甘えさせてもらえるという気持ちはありました。自分ができないところは補ってもらおうと。僕の成長した部分も変わらない部分も知っていますし、親戚同士みたいな感覚もあるので、今回の撮影もすごく楽しかったです。
坂本 山田くんとは2年に1回ぐらいのペースで組んできて、新しい作品をやるごとに彼の役も大きくなっていって。今ではもう手の届かないところに行っちゃいました。
山田 いやいやいや!(笑)
坂本 最初の「ゴーカイジャー」では、芝居するにもアクションするにも「カメラに対してこうやるんだよ」と1つひとつ教えていたけど、今では何も言うことはありません。お題を1つ与えると、それを何倍にもして返してくれる。だから僕は「アクション!」「カット!」と言えばいいだけなんですよ。
いい意味での悪ノリが楽しかった(坂本)
──メインキャストの中にこれだけ各世代がバランスよくそろっているのも珍しいですよね。
坂本 “やりたがり”な人が多い現場でした(笑)。特に歳上組のほうが当時を思い出して生き生きとやっていたかもしれないです。いい意味での悪ノリが楽しくて、山田くんも台本にないことをどんどんやってくれたよね。
山田 やっちゃってましたね。それをいかに自然に見せるというか、「“山田”出ちゃってるじゃん」と思わせない範囲でどれだけやれるかのせめぎ合いでした。悟が必殺技出すところなんて、台本には「技名を言う」しか書いてなかったんですよ。だから「キュインキュイン!」みたいな効果音も僕が“言っちゃってる”わけで。
坂本 あーやってるやってる!と思いながら見てたよ(笑)。それが毎回楽しみだったし。次は何やるんだろう?ってみんなモニター前に集まって来て、カットが掛かるとワハハって大笑いして。さすがにカメラ目線には驚いたけど(笑)。
山田 ああ……普段なんでも許してくれる監督もちょっと渋りましたよね(笑)。確かにカメラ目線でセリフを言うなんて、普通だったら即却下ですから。でも監督が「いいよ、1回やってみて」と言ってくださって。カットされるだろうなと思っていたら、しっかり使っていただいていたのでびっくりですよ。ドラマだからこういうことはしないとか、限界を決めずにやってみたら全部受け取ってくださったので。監督の心の広さがありがたかったです。
坂本 相乗効果だよね。俳優が投げてくれたものに対して、今度はこちらがそれをさらに面白くするにはどうすればいいのか考える。そうすることでキャラクターがもっと豊かになっていく。みんなのインスピレーションと情熱が詰まっています。あと、ドラマと同じようにキャストがだんだん仲良くなっていったのもよかったです。
──バブル世代の「ジュリ旋風斬」や、ミレニアル世代の「いいね!百裂拳」など、世代ごとの必殺技も印象的でした。
坂本 カメラが回っていないところで各自練習している姿が面白かったです。岡田(浩暉)さんがバブル時代のダンスを練習していたら、元タカラジェンヌの真飛聖さんが教え始めたり(笑)。
山田 団塊世代の(西岡)德馬さんが、技のポーズを真面目に練習しているかと思えば「撮影終わったらゴルフに行くんだよ」なんて言っていたのも、“世代”だなと笑ってしまいました。逆に一番若い浅川ちゃんが一番落ち着いてるくらいでしたもん。もっと「イエーイ!」みたいなノリで来るかと思っていたら、「へーそうなんですか」みたいな感じで(笑)。
悟役にぴったりでしょ?(坂本)
──悟の必殺技には、こう来たか!と思いました。
山田 悟の必殺技は、実は撮影当日に考えたんです。僕が使う必殺技ならいくらでも思いつくけど、悟が考えそうなものってなると意外と出てこないもので。
坂本 技名を言ったら胸ポケットのペンが消えるとか、最初はそういう小ボケを考えたよね。でも地味だからわからないんじゃないって。
山田 ありましたね。絶対気付いてもらえない(笑)。
──ちなみに、悟ではなく“山田裕貴”として必殺技を使えるとしたら?
山田 人の悪意みたいなものを消せる技、ですかね……。僕と目が合った人はみんな聖者のような心になるような技がいいです。あとはコロナをなくす。僕がいるだけで世界が平和になる。
──素敵な願いのこもった技だと思います。悟の「みんな仲良く」というセリフが印象的ですが、そこにもつながりますよね。
山田 本当にそうです。自分だけが幸せでもつまらないじゃないですか。みんなが幸せで、みんなが笑っているほうが絶対に楽しい。
坂本 (うれしそうに)ね、この役にぴったりでしょ?
──そう思います。特典に収録されたメイキング映像でも、監督は「台本の段階から悟役は山田さんで」と考えていたとおっしゃっていました。
坂本 ドラマの企画をいただいて、台本を進めるうちからずっと山田くんが頭にあったよ。
山田 それはうれしい……ありがとうございます!