映画ナタリー Power Push - 「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」松岡禎丞&戸松遥インタビュー

ひたむきな姿と具なしパスタにぐっとくる!? 初心を思い出させる圧巻の物語

川原礫の小説を原作にした「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」が2月18日に公開される。ハリウッドでのテレビドラマ化が決定している人気小説をもとに2012年に第1期、2014年に第2期が放送されたテレビアニメ「ソードアート・オンライン」の続編にあたり、劇場版キャストとして神田沙也加、井上芳雄、鹿賀丈史が出演する。

映画ナタリーでは主人公のキリトを演じる松岡禎丞、ヒロインのアスナに声を当てる戸松遥にインタビューを実施。劇場版の魅力だけでなく、2月22日発売のサウンドトラックにも収録される神田による劇中歌、そしてそれぞれのキャラクターソングが収められた3月22日リリースの「ソードアート・オンライン ソングコレクションII」についても語ってもらった。なお、音楽ナタリーでは主題歌「Catch the Moment」を歌うLiSAの特集記事が公開中だ。

取材・文 / 伊東弘剛 撮影 / 佐藤類

キリトとアスナの関係が進展する(松岡)

──本作は原作者の川原礫先生書き下ろしの劇場版オリジナル作品になります。まずは脚本を読んだ感想から伺えますか?

松岡禎丞 AR(拡張現実)という技術をうまく「ソードアート・オンライン」の世界で表現したなと思いました。あとテレビアニメ第1期の《アインクラッド》編、《フェアリィ・ダンス》編のときと同じように、キリトとアスナの関係が進展します。第2期ではシノンなどがフィーチャーされましたが、劇場版では再度2人の関係にスポットが当たり、原作の《アリシゼーション》編をある種補完するような物語になっています。

戸松遥 完全新作オリジナルストーリーということで、原作の新刊を読むような新鮮な気持ちで読ませていただきましたし、こう来たかという衝撃がありました。メインの舞台がARに変わっているので、今までのVR(仮想現実)とは世界のルールや設定が全然違い、新しい「ソードアート・オンライン」を観られそうだなと。あと、松岡くんが言ってくれたみたいに、キリトとアスナの関係においては初心を思い出させてくれました。

──町並みがダンジョンに変わったり、ARの表現がすごいですね。

「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」より。

松岡 脚本をいただいたとき、ARに対するイメージが狭かったんです。ARカメラとかのイメージが強くて。でもこの作品の世界は本当に進んでいて、現実にいながらにしてVRの世界を体験できるなんて本当にすごい。しかも、あんな小型の端末であそこまで莫大な処理ができるなんて。町並みがARによって「オーディナル・スケール」の世界に変わっていくシーンはアフレコのときから絵が付いていて、初めてゲームに参加するキリトのような新鮮な気持ちで挑めました。

戸松 実際に都内にある場所がたくさん登場するんですけど、おなじみのあの場所がこんなふうになるんだ!って皆さんびっくりされると思います。見慣れた風景がこんなふうに変わったら楽しいだろうな、やってみたいなって。何十年後かに実現するんじゃないかと思わせてくれるワクワク感もありました。

急によそよそしくなってたらどうしよう(戸松)

──収録にあたり心がけた点はありますか?

松岡 VRだとシステム補正があることで、テレビシリーズの中でアスナがお母さんに言っていたように「体が軽くなる」ような感覚になるんだと考えていたんです。でも今回のARというのは現実なので、いくら周りがVRのように変化したとしても肉体的な反応、剣を振る動作の衝撃や攻撃を受ける重みなどを強く感じると思うんです。

──テレビシリーズのような俊敏な動きは簡単にはできないと。

松岡 実際に剣を振り下ろしたら体ってどれぐらい衝撃を受けるのか、そのときに体を動かすとどういう声が出るのかを、水の入った2リットルのペットボトルを振ってみたりして自分で試してみました。具体的にキリトが持っている剣の重さというのはわからないんですが、体感としてはこんな感じなのでないかなと思って。実際に体を動かしてみることでVRとは違うということを認識して、アフレコに臨みましたね。

「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」より。

戸松 私は、急によそよそしくなっていたらどうしようってちょっと不安だったんです(笑)。作品の中の時間は第2期最終回の2週間後なんですが、みんなでそろってアフレコを行うのは2年ぶりぐらいだったので。

──第2期が放送されたのは2014年なので、けっこう時間が経っていますよね。

戸松 そのブランクは気にしました。なので、キャラクター同士、そして共演者との当時の距離感を思い出して収録に臨んだんですけど、実際みんなでそろったらそこは全然気にならなかったです。当時の空気感にスッと戻れました。

──そのときの空気が体に染み付いていたんですかね。収録時の印象的なエピソードなどはありますか?

戸松 松岡くんっていつもトイレのタイミングがすごく悪くて(笑)。テレビシリーズのときからそうだったんですけど、松岡くんがトイレに行くと、ディレクターさんから修正が入るんですよ。本当に毎回って言っていいぐらい。

松岡 (笑)。ブースに帰ってくると戸松さんが「つぐつぐ、トイレ? トイレ? トイレ?」ってちょっかいかけてきて。

左から松岡禎丞、戸松遥。

戸松 私がそうやってちょっかいをかけると松岡くんが「やめてくださいよー」って、いつもの調子で返してきてくれて「ああ、『ソードアート・オンライン』の現場だなー」ってほっこりするんです。そういえば、シャツを逆に着てなかった?

松岡 それはないです、それはないです! 今回は大丈夫です。それはテレビシリーズのときですよ。

戸松 テレビシリーズのときは3回に1回ぐらい逆だったんです(笑)。本当に伝説を残す人で、収録していて楽しかったです。

松岡 あとスタジオで、真ん中に置いてあるソファーじゃなくて、端にあるパイプ椅子に座っていたら、戸松さんから「それはやめてよ」って言われました。

戸松 主演は中央に座って、ヒロインの役者はその隣に座るというのが暗黙の了解で決まっているんですが、松岡くんは気が付いたら部屋の一番端に座っていて。「そこに座られたらみんな座れないから。つぐつぐ真ん中来てくれないかな」っていつも真ん中に引っ張り出すんです。

松岡 端が落ち着くんですけどね。

キリトの努力している姿にキュンとした(戸松)

──キリトは男らしくて人気のあるキャラクターですが、今回キュンとしたシーンはありましたか?

「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」より。

戸松 女心をわかってないなと思うシーンもあるんですけど、いろんなことを経たキリトが自分の気持ちをまっすぐ受け止め、立ち向かっていく終盤のシーンはカッコいいなと思いました。初めのほうはうだうだしてるので、カッコいいキリトが帰ってきてくれてうれしかった。

──終盤にかけてどんどんカッコよくなりますよね。

戸松 キリトは初め、ARゲームの中で活躍できないんですが、そのあとに努力しているところが垣間見れて。その姿にキュンとしました。ひたむきな姿がよかったです。

「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」より。

──ではアスナのキュンとしたシーンは?

松岡 冒頭からずっとキリトの世話を焼いてくれるんですよ。男からしたら本当にうらやましい。特に具なしパスタのくだりとか。

戸松 思ったより具入ってたよ(笑)。

松岡 本当にお母さんみたいな感じで(笑)。あと「オーディナル・スケール」のボス戦に参加するために秋葉原までキリトのバイクで行くシーンがあるんですけど、後ろに乗っていたアスナがバイクをぴょんと降りて、ヘルメットをバッと脱いで、髪をファサってするシーンがよかったです。

「劇場版 ソードアート・オンライン-オーディナル・スケール-」2月18日(土)全国ロードショー
「劇場版 ソードアート・オンライン-オーディナル・スケール-」
ストーリー

2022年、天才プログラマー・茅場晶彦の陰謀によりVRゲーム「ソードアート・オンライン(SAO)」の世界に約1万人のユーザーが閉じ込められるという事件が発生。ユーザーたちはゲーム中の死がそのまま現実の死につながるデスゲームをプレイすることに。そのゲームは、“英雄”キリトの自己犠牲的な行為によりクリアされるが、多くの死者を出す結果となった。ゲームクリア後も、「SAO」の中で出会った恋人アスナをはじめとする仲間たちとVRの世界での冒険や生活を満喫していたキリト。そんな中、次世代ウェアラブル・マルチデバイス「オーグマー」が発売され、AR機能を最大限に利用したゲーム「オーディナル・スケール」がブームに。アスナたちに誘われ、しぶしぶゲームに参加したキリトは、新たな陰謀に巻き込まれていく……。

スタッフ
  • 原作:川原礫(電撃文庫 刊)
  • 監督:伊藤智彦
  • 脚本:川原礫、伊藤智彦
  • キャラクターデザイン・総作画監督:足立慎吾
  • 音楽:梶浦由記
  • 主題歌:LiSA「Catch the Moment」(アニプレックス)
  • 制作:A-1 Pictures
キャスト
  • キリト:松岡禎丞
  • アスナ:戸松遥
  • ユイ:伊藤かな恵
  • リーファ:竹達彩奈
  • シリカ:日高里菜
  • リズベット:高垣彩陽
  • シノン:沢城みゆき
  • クライン:平田広明
  • エギル:安元洋貴
  • 茅場晶彦:山寺宏一
  • ユナ:神田沙也加
  • エイジ:井上芳雄
  • 重村:鹿賀丈史
松岡禎丞(マツオカヨシツグ)

9月17日、北海道生まれ。2009年、テレビアニメ「東のエデン」で声優デビュー。2011年放送のテレビアニメ「神様のメモ帳」で初主演を飾り、同年第6回声優アワードで新人男優賞に輝く。その後、「ソードアート・オンライン」「食戟のソーマ」「虹色デイズ」「モブサイコ100」などでメインキャラクターを演じる。放送待機作に「冴えない彼女の育てかた♭」「弱虫ペダル NEW GENERATION」など。主演作「劇場版 トリニティセブン -悠久図書館と錬金術少女-」が2月25日に公開される。

戸松遥(トマツハルカ)

2月4日、愛知県生まれ。2005年に行われた「第1回ミュージックレインスーパー声優オーディション」の合格をきっかけに声優活動をスタート。2008年に放送されたテレビアニメ「かんなぎ」で初主演を飾り、その後「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「妖怪ウォッチ」「ハピネスチャージプリキュア!」などで存在感を残す。出演作「魔法少女リリカルなのはReflection」が7月22日に封切られる。


2017年2月18日更新