「レオン」|知英と竹中直人が「入れ替わってるー!?」登場人物全員ぶっ飛び痛快コメディ

こんなにあります! “入れ替わりもの”アラカルト

他人同士の心と体が入れ替わる作品は古くから洋の東西問わず、数知れず。近年では驚異的なヒットを記録した「君の名は。」は記憶に新しいが、日本映画ファンならば思い出すのが、中学3年生の男女が入れ替わってしまう大林宣彦の名作「転校生」だ。この作品以降、「神社の階段から落ちると入れ替わる」というネタを使う作品が多数登場。舘ひろし扮する父親と新垣結衣演じる女子高生の娘が入れ替わるドラマ「パパとムスメの7日間」でも、もとに戻りたい2人が階段落ちを試すシーンがあった。ちなみに、本作「レオン」にも階段落ちネタがあるのでお見逃しなく。本作でおっさんになりきった知英は、遠藤憲一と菅田将暉が入れ替わるドラマ「民王」ですでに入れ替わり演技を経験済み。草刈正雄演じる政治家の父と入れ替わる娘役で出演し、キレ者オヤジになりきっている。

さらに、10代の広末涼子が主演した「秘密」も入れ替わりもの。母と娘が事故に遭い、生き残った娘の体に妻の魂が入ったことで、夫が葛藤するというなんともフクザツな心境になる作品。母と娘の入れ替わりでは、洋画「フォーチュン・クッキー」も。お堅い精神科医の母親と問題児の娘が不思議なおみくじクッキーをもらったことから騒動が始まる。そのほか「ホット・チック」「キスへのプレリュード」など洋画ではコメディ系が目に付く。そんな中、異色作といえるのがアクション映画の御大、ジョン・ウーが手がけた「フェイス/オフ」。ジョン・トラボルタ演じるFBI捜査官が情報をつかむため、ニコラス・ケイジ演じる昏睡状態のテロリストの顔を移植するが、目覚めたテロリストは捜査官の顔を移植し、究極の入れ替わりが起きる。おなじみの白い鳩も飛ばしてます。そんな数ある“入れ替わりもの”作品の中で、「レオン」はもっとも笑い飛ばして、スッキリできる抱腹絶倒なスイッチング・エンタテインメントになっている。

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エンドロールまで楽しめるハチャメチャなエンタテインメント

やっぱり度肝を抜くのは、見た目はナイスバディの美人OLなのに、中身は女好きなエロ社長という役どころに挑んだ知英のなりきり演技だ。特に、玲音と入れ替わった玲男が、病院のベッドに寝ている本来の自分の体の上に玲音の体をすりつけて必死にもとに戻ろうとするシーンは、女優生命を懸けた熱演と言っていいだろう。知英は主演ドラマ「オーファン・ブラック 七つの遺伝子」では1人7役という難役をこなしたが、その7役分のパワーをまとめて、今回のおっさんなりきり演技に盛り込んだ感じ。おまけに、ほどよいセクシーさとキュートな魅力でコメディエンヌとしての才能を発揮している。

そんな彼女と入れ替わる竹中直人の弾けっぷりも半端ない。芸達者だけにコメディセンスも抜群だが、ナヨナヨ乙女にスイッチしてからの内股歩きや表情など、ここぞとばかりに笑いのツボを押しまくり。この竹中と知英のケミストリーが絶妙で、どっと沸く笑いの仕掛けも効いてくる。また脇を固めるキャストの突き抜けた演技も見もの。イケメン俳優の吉沢亮が軽妙な演技を見せ、山崎育三郎が女性ファンから総スカンを食らいそうなプレイボーイ役を演じるなど、日頃とは違う役どころを嬉々として演じている。全編ハチャメチャな展開だが、派遣OLと社長が入れ替わったことで思わぬリベンジ劇に至っていくところは痛快で愉快だ。エンドロールもにぎやかで、誰もが楽しめるエンタテインメントなのだ。

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2020年8月6日更新