第90回アカデミー賞で長編アニメーション賞と歌曲賞を、そして第45回アニー賞で最多11冠を獲得したディズニー / ピクサーの最新作「リメンバー・ミー」が、3月16日に公開される。「トイ・ストーリー3」のリー・アンクリッチとエイドリアン・モリーナが共同監督を務めた本作では、メキシコの祝祭・死者の日を題材に、愛と音楽があふれる家族の物語を描き出す。劇中では大好きな音楽を禁じられた少年ミゲルがカラフルな〈死者の国〉に迷い込み、孤独なガイコツ・ヘクターと冒険を繰り広げていく。
映画ナタリーでは、テキーラ・マエストロの資格を持つほどのメキシコ通であり、“ダンスは世界共通言語”をテーマにDANCE EARTHプロジェクトを立ち上げたEXILE ÜSAにインタビュー。「映画館で家族で1列になって観たい」「お墓参りに行かなきゃ!と思った」といった本作の感想や、自身の過去と重ね合わせたというミゲルへの共感を語ってもらった。
取材・文 / 浅見みなほ 撮影 / 小原泰広
こんなにカラフルな〈死者の国〉があれば、死ぬのも怖くない(笑)
──まずは映画をご覧になって、いかがでしたか?
本当に素晴らしかったです。後半には涙が自然と出てきてしまいましたね。こんなにカラフルでハッピーな〈死者の国〉があったら、死ぬのも怖くなくなります(笑)。このカラフルさは、観ているだけで心が踊りますよね。
──観る前と観たあとで、印象の変化はありましたか?
亡くなった人の魂を迎えるメキシコのお祭り“死者の日”は、いつか行きたいなと思っていたんです。毎年10月末から11月頭のスケジュールを、ずっとチェックしているくらい(笑)。その“死者の日”のイメージがあったので、この映画はカラフルな音楽のお話なのかな?くらいに思っていたんですけど、まさか〈死者の国〉に行くお話だとは。しかもその世界が、テーマパークみたいににぎやかなところだなんて想像もしなかったですね。
──“死者の日”に行ってみたいとのことですが、本日ÜSAさんにお越しいただいたのは、大のメキシコ好きでいらっしゃることが理由の1つでして。そもそもメキシコに興味を持ったきっかけはなんだったのでしょう?
もともとはテキーラです。僕はダンスで世界をつなぐDANCE EARTHというプロジェクトをやっていて、いろいろな土地の食べ物を食べたり、お酒を飲んだりして踊ってきたんです。そんな中でテキーラを飲むと心が解放されて、踊りが一番キレキレになることがわかったので、何からできてるんだろう?と興味が湧きました。それからテキーラの蒸留所を巡って、先日はテキーラ村(工場や農場があるテキーラの産地)まで行ってきましたよ。
──かなりの徹底ぶりですね。
中でもすごい体験だったのが、テキーラ村へ行くまでに、テキーラエクスプレスという電車に2時間乗るんです。その電車は、乗った瞬間からテキーラ飲み放題(笑)。新幹線でお弁当を売っているようなカートに、テキーラやマルガリータみたいなカクテルが乗っていて。電車の中にはマリアッチ(メキシコ音楽を演奏する楽団)がいて、踊りながら楽しく過ごしているとテキーラ村に着くという、夢のような電車でした。
──では、ÜSAさんの考えるメキシコ文化の魅力とは?
やっぱり最初は、ちょっと治安が悪いんじゃないかという不安もあったんです。でも人々がすごく優しくて、情に厚い。すぐ友達になれるようなオープンな人ばかりなので、心地いいんですよね。だからディズニー / ピクサーの新作でメキシコの死者の日が題材になると知ったときはすごくテンションが上がりました。それで今日実際に映画を観たら、出てくる街並みも本当にテキーラ村そのもののような感じで。石畳の道があって、小さくてかわいい家が並んでいる。町がカラフルで、いたるところから音楽が聴こえてくるんですよね。公園で、マリアッチやクンビアっていう音楽に乗せて、おじいちゃんとおばあちゃんがペアで踊っているのも見ましたし。映画のように和む景色がたくさんありました。
いざとなったら家族が一番の味方
──お気に入りのキャラクターはいますか?
(ミゲルの人形を見ながら)ミゲル、かわいいなあ……(笑)。
──ミゲルはミュージシャンを夢見るものの、「音楽は禁止」という家族の掟に悩まされる少年でしたね。
子供が夢を描いて本当に好きなことをやるのは、素晴らしいと思います。僕、何か夢を持ったときに最初のハードルとして立ちふさがるのは、家族かなと思っていて。自分の夢に家族が納得してくれないと、すごくつらいじゃないですか。僕の家族はたまたま音楽好きだったんですが、「ダンスで飯を食う!」と志したときはやっぱり親からも「ダンスで食えるの?」「趣味でやるならいいけど、仕事にするのはどうなの?」と言われて。周りの友達にも「バカじゃないの?」って言われたり(笑)。そういう身近な人々がまず壁になると思うんですけど、子供たちにはそこに負けないでほしい。
──親の反対に遭うミゲルに共感されたんですね。
そうですね。がんばれ!って思いながら観ていました。でも応援してくれる人は必ずいるし、いざとなったら家族が一番の味方になってくれるんですよね。100人中99人に反対されたとしても、応援してくれる家族がいれば、世界は変わっていくと思う。「これが好き!」という気持ちは人それぞれ違いますし、その感覚はコントロールできないものですから。いい音楽を聴いて鳥肌が立つのは体が勝手に反応しているのであって、鳥肌を立たせようと思ってできることじゃない。好きだと思うパワーに勝るものはないと思うので、その直感を信じて絶対に続けるべきだと思います。僕もそう思ってダンスを始めて、なかなか食えるようにならないし、いつもお金がなかったし、くじけそうなときもあったんですけど、好きなことをやれている時点でつらさも半減するんですよね。
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お墓参りに行かなきゃ!って思いました
- 「リメンバー・ミー」
同時上映「アナと雪の女王/家族の思い出」 - 2018年3月16日(金)全国公開
©2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
- ストーリー
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家族に音楽を禁じられながらも、ミュージシャンを夢見るギターの天才少年ミゲル。ある日、彼はガイコツたちが楽しく暮らす、カラフルで美しい〈死者の国〉に迷い込んでしまう。日の出までに帰らないと、ミゲルの体は消えて永遠に家族と別れることに……。唯一の頼りは、陽気だけど孤独なガイコツのヘクター。だが、彼にも“生きている家族に忘れられると、死者の国から存在が消える”という運命が……。絶体絶命の2人と家族をつなぐ重要な鍵──それは、ミゲルが大好きな名曲“リメンバー・ミー”に隠されていた。
- スタッフ
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監督:リー・アンクリッチ
共同監督:エイドリアン・モリーナ - 日本語吹替版キャスト
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ミゲル:石橋陽彩
ヘクター:藤木直人
イメルダ:松雪泰子
フリーダ・カーロ:渡辺直美
おとうさん:横山だいすけ
エルネスト・デラクルス:橋本さとし
- DANCE EARTH PARTY「Anuenue」
- 2018年3月14日(水)発売 / rhythm zone
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豪華盤 [CD+Blu-ray Disc3枚組]
6980円 / RZCD-86498/B~D -
豪華盤 [CD+DVD3枚組]
5980円 / RZCD-86497/B~D -
CD+DVD
1944円 / RZCD-86499/B -
CD
1080円 / RZCD-86500
- CD収録曲
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- Anuenue
- 浪漫飛行
- Anuenue (Instrumental)
- 浪漫飛行 (Instrumental)
- 豪華盤 Blu-ray Disc、DVD収録内容
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- Anuenue (Music Video)
- DANCE EARTH FESTIVAL 2017 @ MAKUHARI SEASIDE PARK
※参加アーティスト:DANCE EARTH PARTY、EXILE THE SECOND、GENERATIONS from EXILE TRIBEほか
- CD+DVD盤 DVD収録内容
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- Anuenue (Music Video)
- EXILE ÜSA(エグザイルウサ)
- 1977年2月2日生まれ、神奈川県出身。2001年にEXILEのパフォーマーとしてデビュー。「The面接」や劇団EXILEの「太陽に灼かれて」「CROWN~眠らない、夜の果てに…」といった舞台に出演するなど役者としても活躍し、2009年には舞台「蛇姫様-わが心の奈蛇-」で単独初主演を果たした。2008年より「ダンスは世界共通言語」をテーマにDANCE EARTHプロジェクトを立ち上げ、書籍、絵本、映像などさまざまな形で作品を発表。2013年からはDANCE EARTH JAPANと題し、日本全国の祭りに参加し“日本を踊る旅”を開始した。2015年には正式メンバーとしてEXILE TETSUYAとDream Shizukaを迎えた音楽ユニットDANCE EARTH PARTYを本格始動させた後、自身はEXILEパフォーマーを卒業。2016年以降はイベントDANCE EARTH FESTIVALを主催している。