スティーヴン・スピルバーグの監督最新作「レディ・プレイヤー1」が4月20日に全国で公開される。本作はVRワールド[OASIS(オアシス)]と現実世界を行き来しながら、天才創設者が仕掛けた謎と莫大な財産を巡る争奪戦を描く壮大なアドベンチャー大作だ。
全3回で展開する映画ナタリーの特集第2弾では、原作者のアーネスト・クライン、プロデューサーのドナルド・デ・ライン、そして本作でハリウッドデビューを果たした森崎ウィンによる鼎談をセッティング。スピルバーグが本作に込めた思いや森崎出演の経緯、ハリウッド超大作の撮影現場、続編への展望について話を聞いた。
取材・文 / 小澤康平 撮影 / ツダ商会
妥協は許さない、壮大なVR世界を100%再現
──まずは原作者のアーネストさんとプロデューサーのドナルドさんに、「レディ・プレイヤー1」の制作過程に関する話を伺ってもいいでしょうか。
ドナルド・デ・ライン 今でも思い出すんですが、映画の製作が決まってスティーヴン(・スピルバーグ)に声をかけたとき、彼は極端と言っていいほどに興奮していて。「私が作るから」とすぐに言ったんです。
──それはどのような理由から?
アーネスト・クライン ありがたいことに私の原作のファンだったみたいで。ワーナー・ブラザースとの最初のミーティングのとき、スティーヴンは私の本を持って来てくれたんですね。その本には付箋がたくさん貼ってあって、「ここは絶対映画に入れたい」という部分がすべてチェックしてありました。
デ・ライン それだけ力を入れていたからね。スティーヴンはまず制作のためのチームを作ったんですが、原作の壮大なVR世界を表現することにも妥協を許しませんでした。「ブリッジ・オブ・スパイ」でも一緒に仕事をしたデザイナーのアダム・ストックハウゼンに声をかけて、複雑な仮想世界を100%再現しようとしたんです。そして、それは完璧に功を奏した。
クライン 私が最初にスティーヴンと会ったとき真鍮のデロリアンの模型を持って行ったんです。そこにサインをしてもらってるとき、「今までデロリアンにサインしたことありますか?」と聞いたら「初めてだね」と。だからスティーヴンのサイン入りのデロリアンを持っているのは世界で私だけ(笑)。実は現実でもデロリアンに乗っているから本当にうれしかったです。
ハリウッド大作に大抜擢!目の前のスピルバーグに緊張
──そんなスピルバーグに選ばれて森崎さんはハリウッドデビューを果たしたわけですね。
森崎ウィン そうなんです。いまだに実感が湧いてないですが。
──スピルバーグ自らが審査員を務めたオーディションで役を勝ち取ったと伺いました。その経緯を教えていただけますか。
森崎 一番最初は日本でオーディションを受けて、そのあと2次審査でロサンゼルスに行ったんです。そこでスピルバーグ監督ともお会いしたんですが、僕が受けたのはその2回だけで、半年待っても結果がわからなかった。だから落ちたんだなって。そしたら急に事務所からイギリスに行くためのビザ取得の話を伝えられたんです。どうやら事務所には役が決まったという話が来ていたようなんですが、守秘義務があるみたいで僕にはギリギリに伝えられたという(笑)。気付いたらイギリスにいた感じですね。
──オーディションではどういった演技を?
森崎 2次審査は英語のスクリプトを1枚渡されてそれを読むだけでした。2、3行の文なんですけど、目の前にスピルバーグ監督が立っているからめちゃめちゃ緊張して。小さいビデオカメラを回しながら「OK、ウィン。レッツゴー」みたいなことを言われた記憶があります。
──アーネストさんとドナルドさんから見て、森崎さんの演技はいかがだったでしょう。
森崎 うわ、緊張するなあ。
デ・ライン ははははは。いや、あんなに素晴らしい演技をしていたのに緊張する必要ないよ。現実世界のトシロウとVR世界の彼のアバター・ダイトウはかなりギャップがありますが、振り幅のあるキャラクターを見事に演じ分けていたと思います。
クライン ダイトウにはカンフーの要素がありますが、ウィンはそこもきっちり表現できていて。劇中ではいろいろな人のお尻を蹴飛ばしてるんですよ(笑)。もうコテンパンにやってます。
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OASISはワクワクする究極のおもちゃ箱のようなもの
- 「レディ・プレイヤー1」
- 2018年4月20日(金)全国公開
- ストーリー
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そう遠くない未来。環境汚染やエネルギー危機により人類はスラム街での暮らしを余儀なくされ、人々の唯一の希望は超リアルな理想郷・VRワールド[OASIS(オアシス)]だった。ある日OASISの創設者から、全世界に向けてメッセージが発信される。この広大な世界に隠されたイースターエッグを最初に見つけた者はOASISを継承できるというのだ。今、全人類による史上最大の宝探しアドベンチャーの幕が開ける!
- スタッフ / キャスト
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- 監督:スティーヴン・スピルバーグ
- 原作:アーネスト・クライン「ゲームウォーズ」(SB文庫)
- 脚本:ザック・ペン、アーネスト・クライン
- 美術:アダム・ストックハウゼン
- 音楽:アラン・シルヴェストリ
- 出演:タイ・シェリダン、オリヴィア・クック、マーク・ライランス、サイモン・ペッグ、T.J.ミラー、ベン・メンデルソーン、森崎ウィン
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- 森崎ウィン(モリサキウィン)
- 1990年8月20日生まれ。「天国からのエール」「闇金ウシジマくん」などの作品に参加し、尾崎豊にオマージュを捧げた映画「シェリー」で初主演を果たした。監督のスティーヴン・スピルバーグ自らが審査員を務めたオーディションで勝ち抜き、「レディ・プレイヤー1」でハリウッドデビュー。2018年5月には大野いととの共演作「クジラの島の忘れもの」の公開を控える。また音楽ユニットPrizmaXのメンバーとしても活動中だ。
- アーネスト・クライン
- 1972年3月29日生まれ。小説家。2011年にアメリカで発表されたデビュー作「Ready Player One」がベストセラーとなり、その後「ゲームウォーズ」のタイトルで日本でも出版される。映画「レディ・プレイヤー1」ではザック・ペンとともに脚本を担当。スター・ウォーズのファンを主軸にしたコメディ「ファンボーイズ」や、ドラマ「Red vs. Blue(原題)」といった作品にも携わってきた。
- ドナルド・デ・ライン
- マーク・ウォールバーグやシャーリーズ・セロンが出演した「ミニミニ大作戦」、リドリー・スコットの監督作「ワールド・オブ・ライズ」などにプロデューサーとして参加。ザック・スナイダーが手がけたファンタジーアニメ「ガフールの伝説」では製作総指揮を執った。
2018年4月6日更新