「レディ・プレイヤー1」原作者アーネスト・クライン×川原礫 対談|超リアルな未来を体感!スピルバーグが“なんでもあり”のVR世界を映像化

VR分野はものすごい速さで進化。確実に私たちの生活に深く入り込んでくる

──それではVRが今後、私たちが生きるこの世界でどう作用していくかについても伺えればと思います。

アーネスト・クライン

クライン VR分野は想像以上にものすごい速さで進化していると思います。オキュラスリフト(オキュラス社製のヘッドマウントディスプレイ)がリリースされたり、それ以外に商業版のヘッドマウントディスプレイも出てきていますよね。

川原 少なくとも日本に関して言えば人口減少に象徴されるように、いろんなところがシュリンクしていく時代に差し掛かっていると思うんです。今から30年後、2040年代には社会のあらゆる部分にほころびが出てきて、それを取り繕うためのテクノロジーとしてVRは利用されると考えています。

クライン そう思いますね。30年後は確実にVRが私たちの生活に深く入り込んでいる。

──「ソードアート・オンライン」のキャラクターたちのように、仮想空間に閉じ込められるといった事態は起こり得ると思いますか?

川原 いやあ……それを可能にするにはヘッドマウントディスプレイを超強力接着剤で頭に付けるとか、いろいろな工夫が必要になるので(笑)。

クライン 自分の脳を完全に機械に明け渡してしまう状態と言いますか、脳に直接働きかけるやり方であれば起こり得ないとも言えないと思います。例えばクリストファー・ウォーケン出演の「ブレインストーム」には自分の体験を他人に伝達する機械が出てきたり、キャスリン・ビグロー監督の「ストレンジ・デイズ 1999年12月31日」では自らの体験を録画して他者と共有するVRシステムが登場します。もしそういったことが可能になって、人々がドラッグにハマるかのように魅了されていけば、仮想世界から抜け出せなくなることも考えられるかもしれないですね。

「レディ・プレイヤー1」と「ソードアート・オンライン」でコラボ実現!?

──では脳に直接働きかけるような技術が開発され、それを人々が利用するようになるのはいつ頃だとお考えでしょう。

川原礫

川原 ブレインジャックのようなテクノロジーが開発されるには、僕はあと50年はかかるんじゃないかと思ってるんですが。どうですかね?

クライン うーん……それは難しい問題ですね。VR分野は私がかつて思っていたよりもはるかに速いスピードで進化しているので。50年よりも早い可能性はあると思っています。

──それはなぜでしょうか?

クライン すでに目や耳に関しては脳に直接コネクトするテクノロジーの開発が進んでいるんです。カメラが視覚を担当する大脳皮質につながっていて、それによって目が見えない人が見えるようになったり、耳が聞こえない人の脳の一部を電気で刺激して耳を聞こえるようにしたり。

川原 僕も電磁波によるインプットは50年よりも早いと思います。でもアウトプットがなあ……脳から直接信号を拾うというのがいつになるかは予測できないですね。

アーネスト・クライン

クライン 確かにまだアウトプットは実現していません。でも義手や義足を脳で考えるだけで動かすといったことが徐々にできるようになってきてると思うんです。数十年後にはどうなってるのかなあ……子供の頃にはまったく想像できなかったことが2018年現在では実現していますからね。

川原 僕は「レディ・プレイヤー1」のように仮想現実を堪能できる時代までなんとか生き延びたい……。

クライン はははは! ミートゥー! 私は仮想世界の中で生きることができるようになったら、意識的に現実世界には帰って来ないです。

川原 それは私もです! そしたら「レディ・プレイヤー1」と「ソードアート・オンライン」で何かコラボすることもできますかね。

クライン いいですね。ぜひコラボしましょう、仮想世界の中で(笑)。

「レディ・プレイヤー1」特集
原作者 アーネスト・クライン × 川原礫 対談
森崎ウィン×原作者 アーネスト・クライン
×製作者 ドナルド・デ・ライン 鼎談
樋口真嗣が語る「レディ・プレイヤー1」
「レディ・プレイヤー1」
2018年4月20日(金)全国公開
「レディ・プレイヤー1」
ストーリー

そう遠くない未来。環境汚染やエネルギー危機により人類はスラム街での暮らしを余儀なくされ、人々の唯一の希望は超リアルな理想郷・VRワールド[OASIS(オアシス)]だった。ある日OASISの創設者から、全世界に向けてメッセージが発信される。この広大な世界に隠されたイースターエッグを最初に見つけた者はOASISを継承できるというのだ。今、全人類による史上最大の宝探しアドベンチャーの幕が開ける!

スタッフ / キャスト
  • 監督:スティーヴン・スピルバーグ
  • 原作:アーネスト・クライン「ゲームウォーズ」(SB文庫)
  • 脚本:ザック・ペン、アーネスト・クライン
  • 美術:アダム・ストックハウゼン
  • 音楽:アラン・シルヴェストリ
  • 出演:タイ・シェリダン、オリヴィア・クック、マーク・ライランス、サイモン・ペッグ、T.J.ミラー、ベン・メンデルソーン、森崎ウィン
アーネスト・クライン
1972年3月29日生まれ。小説家。2011年にアメリカで発表されたデビュー作「Ready Player One」がベストセラーとなり、その後「ゲームウォーズ」のタイトルで日本でも出版される。映画「レディ・プレイヤー1」ではザック・ペンとともに脚本を担当。スター・ウォーズのファンを主軸にしたコメディ「ファンボーイズ」や、ドラマ「Red vs. Blue(原題)」といった作品にも携わってきた。
川原礫(カワハラレキ)
1974年8月17日生まれ、群馬県出身。小説「アクセル・ワールド」で第15回電撃小説大賞の大賞に輝きデビューを果たす。その後「ソードアート・オンライン」や「絶対ナル孤独者」を発表。松岡禎丞や戸松遥をキャストに迎え製作されたテレビアニメ「ソードアート・オンライン」は絶大な人気を博し、2017年には「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」が公開された。九里史生、攻打引という別名義を持っている。

2018年4月6日更新