「プペル」を観てほしいフィギュア選手は……?
──この映画では、ルビッチが信じ続けるものの対象として“星”が描かれます。現役時代の織田さんにとっての“星”、つまり自分の原動力となるような夢や目標を具体的に挙げるとしたらなんでしょう?
フィギュアスケート選手にとっては、オリンピックに出場してメダルを獲ることが最高の目標なので、それが自分の“星”で精いっぱい努力したことだと思います。努力を重ねていくうちに、応援してくれる方々も増えていったと実感しました。本気でがんばる人にはみんな付いて来てくれるんだなって。ルビッチもそうでしたよね。“えんとつ町”では星を見るなんて無謀だし、ありえないこと。ルビッチ自身も本当に星があるかどうかわからなかったと思うし、不安だったはずです。でも信じる力が強ければ強いほど、どんどん人を巻き込んでいくんですよね。映画を観ながら、今の自分にここまで何かを信じられる力ってあるかなあと考えさせられました。引退してからのらりくらりやっているので(笑)。現役時代を思い出したというか、こんなふうに本気だった時代が自分にもあったなと気持ちがよみがえりました。
──では、自分が“えんとつ町”にいるような気持ちになった経験はありますか? 原作者の西野さんは「夢を持てば笑われて、行動すればたたかれる現代社会の縮図」を“えんとつ町”として表現したそうです。
僕の現役時代を見てくださっていた方はわかると思いますが……正統派というよりコミカルな演技が多かったので、そういう意味では人に笑われたりすることも多くて。もっと正統派なスケートのほうがいいのかな?と迷ったときもあります。でも今振り返って思うのは、笑われるのがちょうどいい。人間、笑われるくらいの夢や望みがあったほうが楽しいと思います。負けず嫌いだからかもしれませんが、「いいじゃん」よりも「そんなん絶対無理やろ」と言われたほうが、じゃあやったろか!と燃えちゃう。たぶん僕は“えんとつ町”でも生きていけます(笑)。
──ルビッチと仲良くなれそうです。
むっちゃ友達になりたい! でも西野さんが「プペル」で描きたかったのって、きっとそういうことですよね。西野さんも芸人という枠にとらわれず絵本を作ったりされていますが、それを笑う人もいたんだろうなと。僕は、人間いろんなことにチャレンジしていいんちゃう?と思います。自分の専門分野以外にも情熱を持って取り組めるのって逆にすごい。でも世間はそう思わないんでしょうね。僕はそこに世間とズレを感じていて、やってみたらええやんって思いながら生きてるんですけど。自分も西野さん派です(笑)。
──ポジティブですね! 今何かに迷っている人に織田さんの言葉が響くと思います。
本当ですか?(笑) この映画で描かれた物語は、“えんとつ町”の世界を丸ごと変えてしまうような出来事だったと思うんです。きっとルビッチに対する周囲の目も大きく変わったはず。ルビッチや西野さんほどの大成功は難しいですけど、例え小さくても、ほら見たことか!と思えるような何かを持てるといいですよね。そのためには、まず“星”を見つける努力を毎日して、自己研鑽していくことが大事だと思います。
──それでは最後の質問です。交友関係の広い織田さんですが、この映画を知り合いにお薦めするなら、どなたに観てほしいですか?
そうですね……。今パッと思いついたのは、髙橋大ちゃん(髙橋大輔)。ルビッチみたいに周りからいろいろ言われながらも、星を見ようと努力している姿が重なるかなと。大ちゃんは今アイスダンス選手としてがんばっていますが、シングルからアイスダンスに転向する場合って普通はもっと若いんですよ。あれだけシングルで実績を残して、しかも30歳を過ぎてから変わるなんてものすごいチャレンジ。この前の大会(グランプリシリーズNHK杯)も短期間でここまでできるんだと驚きました。ぜひ大ちゃんに映画を観てもらい、“星”を見つけてほしいです。
──ぜひ織田さんからお薦めしてください!
伝えておきます(笑)。