キングコング・西野亮廣が手がけた大ヒット絵本をアニメーション化した「映画 えんとつ町のプペル」が12月25日に全国公開される。
2016年に発表され、“大人も泣けるストーリー”として話題を集めた絵本「えんとつ町のプペル」は60万部(※2020年12月時点)を超えるヒット作に。その原作を「鉄コン筋クリート」のSTUDIO4℃がアニメ映画化し、独創的でファンタジックな世界観をさらに押し広げた。
物語では、夢や信じることの大切さ、そして父と子の絆が描かれる。そこで映画ナタリーでは、フィギュアスケートの世界で数々の成功を積み重ねてきた織田信成にオファー。映画を鑑賞してもらい、登場人物になぞらえながら、理想の父親像、現役時代の葛藤、自分を貫く勇気などを語ってもらった。また本作をお薦めしたいフィギュア選手についても聞いてみた。
取材・文 / 金須晶子
大人も泣ける物語は、西野亮廣の実体験から
2011年頃に西野亮廣が書き上げた全10章からなる映画の脚本が完成。その一部を抜粋して映画化前に認知を上げるため、まずは2016年に絵本が発売された。「大人も泣ける」と瞬く間に話題となり、勢い止まらず60万部を超える大ヒットを記録する。その理由は、新しいことに挑戦しようとしたときの周りの反応、夢や希望を信じ続けることの大切さなど、現代社会にも通じるメッセージが詰まっており、幅広い年代に評価されたから。そして映画では、絵本で描かれない「えんとつ町」の全貌がいよいよ明らかになる。
豪華キャストの集結、未体験の映像
キャラクターに息を吹き込むボイスキャストには、ゴミ人間・プペル役の窪田正孝、ルビッチ役の芦田愛菜、そして立川志の輔、小池栄子、國村隼らそうそうたる顔ぶれがそろった。映画のアニメーション制作を手がけたのは、海外にも熱狂的ファンの多いSTUDIO4℃。「鉄コン筋クリート」で第31回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞、2019年には「海獣の子供」が米アカデミー賞の長編アニメ映画部門にエントリーされた実績を持つSTUDIO4℃が、3Dアニメーションにより綿密でファンタジックな絵本の世界観を立体化させた。
とにかく“全お父さん”に観てほしい
──もともと原作絵本を読まれていたそうですね。
はい。病院の待合室だったかな……たまたま置いてあったのを手に取ったのがきっかけで。西野さんが絵本を出されているのは知っていたので、これがうわさの!という感じで読んでみたら面白くて。去年大阪で開催された展覧会(「チックタック~約束の時計台~光る絵本展と光る温泉宿」)にも家族で行ってきました。
──絵本のどういったところに惹かれましたか?
とにかく絵が細かくてきれいで。あと、大人に突き刺さるストーリーだと思いました。自己啓発の要素もあって、絵本という枠の話じゃないというか。展覧会では「チックタック~約束の時計台~」も読めたんですけど、「チックタック」も「プペル」も1つの街で起きる出来事が壮大に描かれるんですよね。「チックタック」は時を重ねていく壮大さ。「プペル」は世界をも変えていく壮大さで、自分の幸せについて改めて考えさせられました。子供たちも「すごいね!」と喜んでいましたが、大人が一緒に読んでも面白いはずです。
──では映画をご覧になっていかがでしたか? 絵本では描き切れなかったストーリーも深掘りされていました。
本当に1時間半あっという間で。ずっと目が釘付けでした。絵本からさらに深く描かれた点で言うと、ルビッチのお父さん(ブルーノ)にグッと来ました。僕自身も父親なので感情移入してしまいました。ブルーノはおそらく、夢を信じ抜く力……誰かにバカにされても信じ続けることが必要なんだと息子に伝えたかったんでしょうね。そこに共感しすぎて、もう後半は父親目線でしか見られなかったです。
──グッと来たとおっしゃっていますが、涙もろい織田さんは泣けてしまうシーンも多かったのでは?
だいぶウルウルしながら観ましたが、特にクライマックスはキました。今こうして思い出してもウルウルしちゃうくらい。詳しくは言えないですけど、とにかく“全お父さん”に観てほしい映画ですね。ブルーノは町の子供たちに紙芝居で星の話を聞かせるんですけど、バカげてると一蹴されてしまう。でもブルーノの背中で見せていくスタイルがかっこよくて。「星は絶対にあるんだよ」と言うだけで終わるんじゃなく、自分の行動で子供たちに影響を与えていく姿に憧れました。
フィギュアスケートという“普通”ではない道
──ルビッチもプペルも「星を見る」という願いを実現させるため、強い気持ちで困難に立ち向かっていきます。もし織田さんのお子さんたちが夢のために険しい道を歩もうとしていたら、親としてどのように応援したいですか?
僕自身、フィギュアスケートという“普通”ではない道を選んだ人間なので。だから子供たちの夢は全力で応援したいですし、他人が笑ったとしても、家族だけは一番に応援してあげられる存在でありたい。あと、これからいろんな夢を持つと思いますが、何を目指すにしても「ちゃんと勉強しなさいよ」とは言いたいです。自分がテレビゲームしながら「ちゃんと勉強しいやー」と言っても意味ないと思うので(笑)、そこはブルーノを見習って背中で伝えたい。ちょうど英語をまた学ぼうかなと思っていたので、自分も勉強して、そういう姿を見せられるようでなきゃ駄目だなと「プペル」を観て改めて実感しました。普段から気付けって話ですけど(笑)。
──具体的に「こういう行動で示したい」と考えているのは素晴らしいと思います! 織田さんもフィギュアスケートの道を進む中で、ご自身の努力はもちろん、周りの人が信じてくれたことも大きな力になったはずです。ルビッチの家族は彼を激励しましたが、織田さんのご両親はどのように応援してくれましたか?
小さいときは母親に言われてスケートを習っていたので、本意ではなかったというか、そんなに楽しくなくて。中学に入るぐらいの頃、スケートをやっていこうと自分で決めました。フィギュアスケートってお金がとても掛かる競技なので、本当にたくさんの資金が必要なんです。だから両親の金銭的なサポートがあってこそでしたし、一方でそういう苦労を見せず、僕が邪念や不安なく打ち込める環境を作ってくれていたと感じます。「がんばれ」とか「こうしたら?」とはまったく言われず、静かなサポートで力になってくれました。
──自分が大人になるにつれて「あのとき、ああしてくれていたんだな」と気付けるものですよね。
はい。だから自分も両親を見習いたいと思っています。“やってあげてる感”のあるサポートより、気持ちと気持ちでつながるほうがいい。僕がやってもらったみたいに、集中できる環境を与えるぐらいにしておくのが信じていることの証にもなるのかなと思います。
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「プペル」を観てほしいフィギュア選手は……?