「パーフェクト・レボリューション」リリー・フランキー×清野菜名|寿司を投げつけ、「マリオ」でジャムる!ナイスコンビの笑えるラブストーリー

ミツの言葉は希望に満ちあふれてる(清野)

──好きなセリフを教えてください。

清野 「不可能を可能にしろ」というミツがちょいちょい叫ぶセリフが印象に残っています。あと「あなたと私みたいな不完全な者同士が幸せになったら、それってすごいことだと思わない?」とかミツの言葉は希望に満ちあふれていて大好きです。

「パーフェクト・レボリューション」

リリー ミツのセリフってすごい難しい。精神に異常をきたしている役なので、若い女優さんはやりたがる人が多いと思うんですけど、うまく演じないとセリフが上滑りしちゃう。「跳べ、不可能を可能にしろ」って言葉も、言う人によってはすごく平べったく聞こえるというかセリフ然としてくる。でも菜名ちゃんが言うとミツという人物の内面からの言葉にしっかり聞こえる。マンガっぽいセリフも多いのにすごい女優さんだなと。

清野 ありがとうございます。撮影中は自分はミツだと思ってたので、私の言葉として言えたんです。

──クマのセリフで印象に残っている言葉はありますか?

リリー うーん……クマは大していいこと言わないよね。理屈っぽいし。

清野 マイナスなことばっかり言うから。「だからー、やればいいんだよ!」って言いたくなる。グチグチ言っていないで行動しなよって。

リリー 今の言葉聞くと、ミツの持ってるいい部分と菜名ちゃんの素はやっぱり似てるよね。

啓蒙的なだけではない障害者が主役の映画(リリー)

──リリーさんはほかのインタビューの中で「面白い映画を観に行ったついでに、障害者の性に関することも理解できる」とおっしゃっていますね。

左からリリー・フランキー、清野菜名。

リリー 宣伝の仕方がすごい難しい作品なんです。障害者の愛とか性っていうのを前面に出すとドスンと重たい映画なんだなと思われちゃうので。でもこの作品は障害者が主人公のエンタメ映画なんです。障害者が主人公になったり、心の病を抱えた人が描かれていると聞くと重たく啓蒙的な作品を想像してしまう人が多い。それは、そういう映画しかないからだと思う。でもこの作品はそうではなく、脳性麻痺の男と頭のおかしい女を描いた作品なのにすごい笑えて面白い。それはこの映画のいいところ。

清野 そうですね。

リリー 熊篠の実体験がもとになっているのですごくリアルなシーンもありますよ。法事のシーンとか特に。でもミツの周りに「マトリックス」のエージェントみたいな奴らが集まりだしてからのファンタジー感はヤバイです(笑)。

清野 あれヤバイですよね(笑)。あとスタンガン持って「わー」って言うシーンとか。

リリー リアル一辺倒で行かなかったことがよかったところもある。エンタテインメントとしてまとめることに意味があったと考えています。

恋愛っていろんな形があるはず(清野)

──これから作品を観る人にメッセージをお願いします。

左からリリー・フランキー、清野菜名。

清野 さっきのリリーさんの話でも出たように、重い作品と思われてる人もいるかもしれないですけど、そのようなシーンばかりでなく私たちがポップに楽しくやっているシーンもたくさんあります。だから気軽な気持ちで、恋愛映画として観てもらいたい。恋愛っていろんな形があるはずなのに、私の世代の子たちは恋愛に選択肢がないですし、ある形に固まってしまっている子も多いと感じるんです。だから、この作品を観てそういうタガとかを外してもらえたらいいな。あと、この2人が自分のやりたいことにまっすぐに向き合おうとしている人の背中を押せたらうれしいです。

リリー 障害を描く映画は少なくない。でも重くするばかりで、この作品のように明るいものがないこと自体が差別だと思うんです。障害者にも恋愛感情があるし性欲もあるっていう当たり前のことを熊篠が言い続けていること自体がおかしい。それは健常者がそのように考えていないからだと思う。恋愛などの人間関係において、障害者も健常者と同じような感情を抱くんです。だからラストに行くに連れて障害者という色眼鏡が外れて、1つの恋愛映画として楽しめると思います。まあ「マトリックス」とビリビリは「えー」と思うかもしれませんが(笑)。

キャラクター紹介

  • クマ(リリー・フランキー)
    クマ(リリー・フランキー)
    幼い頃に患った脳性麻痺の影響で、手足を思うように動かせず車椅子で生活している45歳。障害者の性に対する理解を訴えるために活動している。講演を聴きに来たミツに惚れられ、付きまとわれる。
  • ミツ(清野菜名)
    ミツ(清野菜名)
    幼少期の経験によって人格障害を抱えた風俗嬢。ひたむきなクマの姿に惹かれ、過激なアプローチを連発する。さまざまな問題を抱えているが本人はいつも前向き。
  • 恵理(小池栄子)
    恵理(小池栄子)
    長年にわたってクマをサポートしてきた介護士。クマとミツの恋を優しく見守る。
  • 悟(岡山天音)
    (岡山天音)
    恵理の夫。ベンチャー企業で社長を務める。
  • 晶子(余貴美子)
    晶子(余貴美子)
    親代わりにミツの世話をする占い師。ミツの過去を知っている。
「パーフェクト・レボリューション」
2017年9月29日(金)全国公開
「パーフェクト・レボリューション」
ストーリー

幼少期に脳性麻痺を患い、手足を思うように動かせず車椅子生活をしているクマ。セックスが大好きなクマは、身体障害者の性への理解を訴えるため本の出版や講演、動画の投稿などさまざまな活動を行っている。そんなある日、彼は美少女・ミツと出会う。障害を抱えながらも前向きに生きようとするクマに恋心を抱いたミツは猛アプローチを開始。「あなたと私みたいなのが幸せになれたらすごいことだと思わない? それを世界に証明するの!」などと真剣に語るミツに戸惑うクマだったが、同じ時間を共有するうちに距離が縮まっていく。介護士の恵理にも祝福され、テレビ番組の出演も決まるなど順風満帆な2人だったが、ミツが精神のバランスを崩し……。

スタッフ

監督・脚本:松本准平
企画・原案:熊篠慶彦

キャスト

クマ:リリー・フランキー
ミツ:清野菜名
恵理:小池栄子
悟:岡山天音
晶子:余貴美子

リリー・フランキー
1963年11月4日生まれ、福岡県出身。武蔵野美術大学を卒業後、イラストやデザイン、文筆、音楽など多彩な分野で活動。実体験をもとにした長編小説「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~」は映画、テレビドラマ、舞台化されている。俳優として2004年公開の「盲獣vs一寸法師」で初主演を飾る。2008年に公開された「ぐるりのこと。」での演技が高く評価され第51回ブルーリボン賞新人賞などを獲得。2013年公開の「そして父になる」では第37回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞をはじめ多くの賞に輝いた。現在出演作「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」が公開中。公開待機作に「探偵はBARにいる3」「一茶」「blank13」などがある。
清野菜名(セイノナナ)
1994年10月14日生まれ、愛知県出身。2007年に雑誌ピチレモンの専属モデルとしてデビュー。2014年に園子温監督作「TOKYO TRIBE」でヒロインを演じ、第36回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞する。2015年に公開された押井守監督作「東京無国籍少女」で初主演を務め、同作の演技で第4回ジャパンアクションアワードのベストアクション女優賞を獲得。その後「雨女」「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」などに出演する。2017年は「暗黒女子」、舞台「劇団☆新感線『髑髏城の七人』 Season 花 Produced by TBS」、ドラマ「やすらぎの郷」などで活躍。また9月23日に出演作「ユリゴコロ」が公開されるほか、10月2日より主演ドラマ「トットちゃん!」の放送が開始される。